ハルヤスミ句会 第二回

2000年10月

《 投句 》

01 二十世紀長十郎と食らひけり    九鈴

02 石たたきまづの一歩を左足     つよし

03 月の夜の猫が箪笥を駆け降りる   夏実(つ)

04 宵の月 薄荷の味にちがいない   芳美

05 おのおのの良きやうにせよ芋煮会  春休(阿)

06 夜業の灯落とせば他所の夜業の灯  阿昼(つ・桂・九)

07 壇上のコスモス白くそっぽ向く   芳美(庚)

08 秋天の屋根をつくつてゐるところ  光世(夏・阿)

09 サルビアに隣て出たり曼珠沙華   つよし

10 一人夜の天体観測水澄めり     なつめ(桂・光)

11 蛇皮の模様の月は東から      芳美(春)

12 葬送のCD光るひよ飛べり     九鈴

13 世紀末いやじや悪夢じや蛇穴に   桂香

14 コンビニを三歩離れてちちろ虫   阿昼(夏・つ・九)

15 分別のごみ箱だらけ豊の秋     夏実(庚・春)

16 食道を水の流るる夜長かな     九鈴(ね・な)

17 十三夜紅葉の刺青(タトゥー)のぞかせて 光世

18 背を向けて月の光りにふたりかな  夏実

19 抜けるまで青き空なり鵙の贄    つよし(ね)

20 コスモスの花弁むしる秋の闇    芳美

21 夕暮の蘆間の水の光りけり     春休

22 口紅に細き皺寄す新酒かな     夏実(桂・な)

23 木犀香来たる窓辺や『迪』ひらく  桂香(庚)

24 各駅の車窓を月が追い抜かす    芳美

25 黄落や塾の勧誘ながながと     夏実

26 色白の千手観音秋思かな      なつめ(ね)

27 菊膾迎ふる舌のうすきこと     春休(な・光)

28 秋の雲半端に切れしセロテープ   なつめ(夏・阿・春・九・光)

29 免許取り足裏の落葉遠くなる    芳美

30 訥弁は金木犀のことよりぞ     光世

31 一匹は徹夜の朝の鉦叩       阿昼



【 薗部庚申 選 】
07 壇上のコスモス白くそっぽ向く   講演もつまらないのだろう。
15 分別のごみ箱だらけ豊の秋   確かに今は分別が多すぎる、リサイクルで仕方ないのだろうがゴミの仕分けに頭を悩ます昨今。
23 木犀香来たる窓辺や『迪』ひらく   迪子さんへのお祝い句。目出度いとかを言わずに、木犀の香で祝う心を表わした手柄。

【 かたぎり夏実 選 】
◎ 08 秋天の屋根をつくつてゐるところ    全然違うのになぜかバベルの塔を思い出してしまった。空と屋根しかなくて潔いところがとても好きです。
○ 14 コンビニを三歩離れてちちろ虫    秋の夜長、その店内は昼のように明るく…。でも帰り道に、今は夜中で、もうとっぷりと秋なのだと実感するのでした…。
○ 28 秋の雲半端に切れしセロテープ    秋の雲とセロテープの取り合わせが、きらきらとした透明感という共通項で結ばれている…。 ⇒ 秋雲や切れ損ないのセロテープ ぐらいではどうでしょうか? なんとなくリズムがぎったんばっこんという感じだったので…。
その他
 11 蛇皮の模様の月は東から   ちぃとぶきみ…。他の模様だと他の方角から昇ってきそうなので、『…月が昇りけり』とかではどうでせう?
 13 世紀末いやじや悪夢じや蛇穴に   なんか、もがきが切実…。おかしくて好きです。明るい21世紀をお迎えください…。
 20 コスモスの花弁むしる秋の闇   花占い(かな?)は、日中、明るいところでしましょ〜! ⇒ 『コスモスの花弁むしるや…』と、切ってもいいかも?
 05 おのおのの良きやうにせよ芋煮会   現場(会場?)の雑然とした様子が伝わってくるやうです。楽しそう…!
 31 一匹は徹夜の朝の鉦叩   作者も一緒に徹夜明けでしょうか。ごくろうさまです。

【 六本木ねね 選 】
16 食道を水の流るる夜長かな   ねむれなかった夜みたい。なんども水を飲む。
19 抜けるまで青き空なり鵙の贄   小学校の帰り道。緑色のフェンスから飛び出た針金にかえるの足がぴろぴーんてなっていて、その向こうの空の濃いことといったらない。
26 色白の千手観音秋思かな   うっとりと首かしげた、寂しそうな仏様が好きです。

【 鋼つよし 選 】
 03 月の夜の猫が箪笥を駈け降りる
 06 夜業の灯落とせば他所の夜業の灯
 14 コンビニを三歩離れてちちろ虫
 選評
 05 おのおののよきやうに 13 世紀末いやじゃ 17 十三夜紅葉  25 黄落や塾の  これらも選にいれたいところ。
 28 秋の雲 は中七がどちらにもかかる「山本山」先生の中でも賛否あるようだけど、私は避けた表現のほうがよい。 

【 中村阿昼 選 】
○05 おのおのの良きやうにせよ芋煮会   こののんびりさ加減が芋煮会ならでは。鍋の中ではいろんな形の芋があっち向きこっち向きして。
○08 秋天の屋根をつくつてゐるところ   作りかけの屋根の隙間から抜けるような青空が見えるよう。「秋天の屋根」が上手い。
○28 秋の雲半端に切れしセロテープ   セロテープのリアリティに拍手。秋の雲は、あっ形が似てるのね。と分かるまで私の場合時間がかかってしまった。もっと離れた季語の方がよいかも。
△22 口紅に細き皺寄す新酒かな   細かい描写。上手いとは思ったが、新酒が動くかも、と。
△03 月の夜の猫が箪笥を駆け降りる   題材は好きなんだけど、散文的なのが気になった。

【 北村桂香 選 】
* 06 夜業の灯落とせば他所の夜業の灯    夜業を終え安堵した瞬間、さっきまで自分もあのように仕事に励んでいたのだと、立場を分かったその対比が秋の灯を通してしみじみと感じられます。
* 10 一人夜の天体観測水澄めり   アンドロメダやその他の銀河に興味ある私としては、ほって置けない一句です。観測は月のない闇夜が適しているので聴覚や嗅覚をきかせた季語の方がよいように思われますが如何でしょうか。月面観測だったりして・・・。(ごめんなさい)
* 22 口紅に細き皺寄す新酒かな   おちょぼ口で盃に注がれた新酒をお迎えに。観察の細かさ!ボージョーレ・ヌーボーだとしたら、どんな句を詠まれますか。東も洋も味わえる日本て本当にいいですね。

【 瀬尾なつめ 選 】
○16 食道を水の流るる夜長かな   *秋の夜長にずっと水が流れている訳ではないであろうが、取り合わせの妙に感嘆させられました。
○22 口紅に細き皺寄す新酒かな   *新酒の香りの高さと、口紅に寄る皺の艶。細き、がちょっとひっかかりますが、素敵だと思いました。
◎27 菊膾迎ふる舌のうすきこと   *菊膾の季語が生き生きとしてくる、舌のなまめかしさ。美しい。想像する色彩もまた。

【 戸田九鈴 選 】
06夜業の灯落とせば他所の夜業の灯   連帯感をもつひととき。エールをおくります!
14コンビニを三歩離れてちちろ虫   実感。深夜の町の感じがします。
28秋の雲半端に切れしセロテープ   中七が上にもしたにもかかる形なので「秋雲や」でいただきました。が、もしかして「雲が半端に切れてる、セロテープ!(でつなぎたいヨ)」だったのかも?

【 坂本光世 選 】
10 一人夜の天体観測水澄めり   上五の言いまわしはちょっとひっかかるけど、中七下五の露けさ、爽やかさは捨てがたい。ほんと、秋っていい季節ですねーと言いたくなりますね。
27 菊膾迎ふる舌のうすきこと   これはまたうまいし艶のある句。モデルは絶対妙齢のたおやかな女性だな。
28 秋の雲半端に切れしセロテープ   「ぴっ」と音がしそうなところに惹かれます。秋の季感も十分と思うのですが。

【 小川春休 選 】
○28 秋の雲  さりげなくて好きな句。惜しいのは「半端に切れし」が上五にかかるのか下五にかかるのか曖昧なところ。上五を「秋雲や」と切るなどしてはっきりさせたい。
○11 蛇皮の  「月が蛇の模様のよう」は比喩としておもしろい(下五は「のぼるなり」とした方が良さそうだけど)。ヘンなリアルさがある。うさぎを食べた罰として、ぐるぐる巻きにされた白ヘビが未来永劫地球の周りを回るのだ。
○15 分別の  たくさんのゴミ箱が並ぶ様は、言われてみれば豪勢だ。ゴミもいろとりどり。
 01 二十世紀  ストレートで良い。3句選でなければ○でした。
 04 宵の月  作者に「薄荷の味にちがいない」と感じさせたモノ・行動・状態をこそ私は読みたい。
 06 夜業の灯  これも良いのだけれど…。3句選ってキビシイ。
 08 秋天の  余計なものの削ぎ落とされた景が印象的。でも「秋天に」かな?
 12 葬送の  「葬送」を省いてシンプルに表現した方が、ひよの俊敏さと響き合うと思う。
 18 背を向けて  「月の光に背を向けている二人」か「背を向け合って月に照らされる二人」かが曖昧。
 19 抜けるまで  切れが効いている。
 24 各駅の  「各駅」でぼやけてしまった。一つの駅・一つの列車などに絞りたい。印象的な駅名が入ってもおもしろそう。

来月の投句は、11月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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