ハルヤスミ句会 第六回

2001年2月

《 投句 》

01 雪晴や川に沿ひたる靴の跡    夏実(つ・ふ・阿・春)

02 雪しずく春のしずくとなりにけり つよし(呂・夏・春)

03 毛糸玉ひつじの国のにおいして  呂木

04 青猫もくしやみするなり黄沙ふく ねね(つ)

05 針千本打ち揚げられし砂丘かな  ふみ

06 風船の割れて結び目残りけり   春休(つ・ね・夏・阿)

07 寒明や羽根のやうなるちぎれ雲  阿昼

08 秋空は音叉鳴らしういずるはラ  呂木

09 春寒やチョコ溶かしたり固めたり 夏実(阿)

10 永き日の駱駝の口のよく動く   春休(つ・夏)

11 ハチ公と見紛うほどの日向ぼこ  呂木

12 真白さをいやましきたり春の雪  つよし(呂・ね・ふ)

13 砂丘へと笑顔で入る春ショール  ふみ

14 草萌におのが尻尾を追ふ仔犬   春休(呂・ね)

15 春雨や毛布の耳も噛む日暮    ねね(つ・春)

16 虫音さえ蝕の終わりに息ひそめ  呂木

17 落椿ぐしやりとふみぬ今日も雨  ねね

18 建国日瀬戸内海の温みけり    阿昼

19 かっちりとぶつかりし歯や斑雪  ふみ

20 菜の花やコートの花粉払ひ合ふ  阿昼

21 ドクダミを踏みて気付くや罪深さ 呂木

22 風来れば雲迅くなる辛夷かな   夏実(ふ)

23 朝鵙や雪吊縄にゆるびきし    つよし



【 鋼つよし 選 】
01雪晴や  中七にすこし工夫があればと思うけど、俳諧の味があり。
04青猫も  青猫もわたしもだろうけど、青猫のとしたい気分。黄沙ふくという景色がよい。
06風船の  こんなことが詩になるとは、俳諧ならではの感。
10永き日の  「永き日の鶏柵を越へにけり」 芝不器男 季語を考えてみたけれど永き日が駱駝と合いそう。
15春雨や  耳もを耳をとしたい。春雨、毛布の耳を噛む、日暮 取り合わせが新鮮な感銘を受けました。

【 沼呂木 選 】
○12 真白さを  春の息吹が感じられ、色づきはじめた世界に雪。「いやましきたり」が感性ですね。
○02 雪しずく  根雪からのポタンポタンという雫でしょうか。雪国育ちのリズムに共鳴して。
○14 草萌に  春ですね。文句なしに情景が浮かぶので ○

【 六本木ねね 選 】
06 風船の  さみしいなあ。あんなにうれしかったのに、こんなになって。
12 真白さを  ぽってりと、重い雪だねえ。でも好き。 
14 草萌に  知合いの子(3歳)を思い出した。

【 中村ふみ 選 】
01 雪晴や  どこへその足跡は続くのか、そしてどんな足跡なのか、想像力が膨らむ句ですね。
12 真白さを  今回の句の中で、最も好きな句。当然白いものだと思っていた雪が、さらに白さを増しているとは。しかも、冬も終わりの頃の雪で。綺麗で寂しい句ですね。
22 風来れば  空の青さに、雲と辛夷の花の白さが良く合っている。辛夷の花の香りが、風と共に香ってきそうな爽やかでおおらかで、かつ品のある句です。

【 かたぎり夏実 選 】
06 風船の  わっびっくりしたっ! しわしわの残骸と堅い結び目だけが夢色の風船だった証…。
10 永き日の  の〜んびりした駱駝がいつになくせわしく口を動かしている…。駱駝はやっぱり冬より暖かい方が好きなのでしょうかね。
02 雪しずく  まんまなんですが、しづかで素朴な感じがして…そこはかとなく好きです。

【 中村阿昼 選 】
○09 春寒や  春寒が結構効いている。期待と不安にゆれ動く心を感じさせる。
○06 風船の  「どうしたからどうなった」という報告っぽい作りが気になるが、情けない姿となった結び目がせつない。
○01 雪晴や  やや普通っぽい句だが、川面も靴跡もきらきらしているんだろうな、と思わせる気持ちよさがある。
△11 ハチ公と  面白いけど、「見紛う」は無理がある。「呼ばるるほど」ぐらいでは?
△15 春雨や  春雨と毛布の耳の取り合わせは好き。「日暮」はいらないのでは?
△19 かっちりと  上五中七に惹かれたが、斑雪とどう響くのかわからなかった。

【 小川春休 選 】
○01 雪晴や  雪の晴れ間に、靴の跡のあざやかなこと。そして、まだ靴跡の少ない朝の感じが伝わってきます。
○02 雪しずく  「春のしずく」にロマンを感じます。旧仮名であれば「しづく」ですね。
○15 春雨や  良いですね。ただし、この「も」は「を」にすべきだと思う。「も」だと、毛布の耳以外の何を噛んだんだろう? 恋人の耳かな? とか余計な連想を呼ぶおそれがあります。
 03 毛糸玉  毛糸玉にひつじのにおいがする、という内容は、当たり前のようでいてけっこうおもしろいと思うのですが、「国」と言い切ってしまうと、めるへんになりすぎる気がします。
 04 青猫も  この「も」は「の」とした方が良さそう。3句選でなければ○の句。
 07 寒明や  「やうなる」や「如く」を用いるときは、やはりある程度飛躍してないと…。羽根と雲はイメージ的に近すぎるのでは?
 08 秋空は  秋の空と音叉という取り合わせは良いと思いますが、もっと良い言い様があるはず。いろいろと推敲してみてください。あと、句会では、今現在(に近い)の季語を用いた方がより読み手に伝わるのではないでしょうか。
 09 春寒や  「溶かしたり固めたり」はリズミカルなのですが、句の中の時間の流れが長すぎて景が見えにくい気がします。もっと瞬間を!
 16 虫音さえ  内容は良いと思うのですが、表現が流れてしまっている気がします。たとえば「虫の音も息ひそめるや蝕のはて」などとして、切れを入れたり、句末を体言で止めたりすると、句が引き締まった感じになるのでは?
 17 落椿  「ふみぬ」と書き手の動作にしてしまうと、すこしわざとらしさが見えてしまう気がします。「ふまれ」とすれば、客観的にクールに表現できそう。
 20 菜の花や  ちょっとおもしろいかな、とも思ったのですが、菜の花の、もう暖かくなってきた感じとコートとが合わない気がしました。
 21 ドクダミを  下五が答えになってしまっていて、読み手の方で句の世界を広げることができません。踏まれてしまったドクダミの痛々しさを描いた方が、書き手の気持ちが届くと思います。
 22 風来れば  上五と中七が原因結果っぽくなってるのが悔まれます。上五の内容は省けるのでは?
 23 朝鵙や  「に」じゃなくて「の」ではないでしょうか。これも3句選でなければ○の句。

来月の投句は、3月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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