ハルヤスミ句会 第七回

2001年3月

《 投句 》

01 予定なき一日を雪掻きにけり    夏実(つ)

02 街を田を朝な朝なの名残雪     つよし

03 闇夜にて深き呼吸す残り梅     ねね

04 盲人のための標や春の雪      つよし

05 春雪に昼の灯りをともしけり    春休(桂・ふ)

06 寒越えのキウイフルーツ熟女かな  呂木

07 春の雲肩から背へと涅槃仏     桂香(ね)

08 下萌のすつぽり入る楠の蔭     阿昼

09 十指たて春のいぶきをつかみおり  呂木(ね)

10 水平線わからぬままに春鴎     ふみ

11 初蝶の影がぺたりと土の上     春休(阿)

12 枕まで一直線に春の月       夏実(呂・ふ)

13 やわらかき土の湿りにいちご植ゆ  ねね(阿)

14 春風に棕櫚は一葉ずつ鳴れる    阿昼(桂・夏)

15 春の野に在ればくつつく飴と飴   春休(呂・ふ・ね)

16 頬冷えて菜の花抱く遠賀川     ねね(桂・春)

17 春色のユニクロメッキそのままに  呂木

18 ちよと絡み花へゆく蟻戻る蟻    阿昼(春)

19 梅の花三分の朝を氷るなり     つよし

20 桃色のミシンを濡らす春の雨    ふみ(阿・夏)

21 春うららタイ字新聞パピプペポ   桂香(つ)

22 春闇に第二放送洩れ聞こえ     呂木

23 春月や滑走路にて踊りたし     ふみ(つ)

24 三箱に七段分の雛納む       夏実

25 卯の花に世俗の脂戻しやる     呂木

26 象に乗りかくんかくんと春日傘   桂香(呂・夏・春)



【 沼呂木 選 】
○26 象に乗り  『かくんかくん』が好きです。日傘にはレースがあるのでしょうね。象の動きに少し遅れて揺れる。乗ってるお方はどなた?
○15 春の野に  飴にも春が来たのですね。春の日差しは飴をも軟らかくして
 でもくっつく飴ってどんな状態にあるのですか。(サクマドロップという、缶に入った飴。くっついて出てこなくなるのです。春休)
○12 枕まで  月光だけでなく春風も届いている感じがします。春の匂いがありますね。

【 北村桂香 選 】
05 春雪に  句の響きに水気を含んだ春の雪のやわらかさが伝わってきます。
14 春風に  棕櫚の葉の動きがまるでオルガンの鍵盤のように見えてきます。葉擦れの音は一枚では起こり得ぬとは思えども・・・
16 頬冷えて まだ見たことのない遠賀川をホームページで探ったら「春の河川敷は菜の花でいっぱい」というPhotoに出会いました。頬の冷えと菜の花の取り合わせが清潔感を感じさせます。

【 鋼つよし 選 】
01 予定なき 雪が降らなければ心配、降れば困り者。いやいやなのかもしれませんね。
21 春うらら  タイという国は暖かそうな国だから、タイへ旅行した時の句? 春うららと照応している。
23 春月や  外にも出よ触るるばかりに春の月  中村汀女  春月の気分が出ている。

【 中村阿昼 選 】
11 初蝶の  「影がぺたり」がちょっと不気味で惹かれる。初蝶らしさが出ているかは疑問だけど。
13 やわらかき  ちょっと散文的だけど、「湿りに」植えるのが「いちご」という明るさが好き。
20 桃色の  ミシンと春の雨の取り合わせが懐かしい感じ。桃色じゃなくてもよいかもしれないけど

【 中村ふみ 選 】
05春雪に   おだやかでとても上品。個人的にはもう一味欲しい気もするんだけど、そうしたら詰め込みすぎになるのでしょうかね。この、ほんわか感を保ちながらも、的確な写生をしてみたいです。
12枕まで   春の月といえばぼんやりとしたイメージがありますが、それが一直線に差し込むとは、まだ肌寒い初春なのでしょう。童話の始まりのようで耽美、耽美。
15春の野に  春の野と、飴玉という可愛らしい取り合わせで、なんだかほのぼのとした感がありますが、くっついた飴ってよく考えると、そんないいもんじゃない。べたべたして、すごい始末に困るものです。そんないろいろを考えさせられる一句。

【 かたぎり夏実 選 】
26 象に乗り  何年か前、娘と一緒に象に乗ったことがあります。かさかさした皮膚が妙に暖かいのです…。眼がちいさくてやさしいのです。
14 春風に   「は」が少々説明っぽいかなと思いますが、びびびという音が聴こえて参ります。棕櫚って私の中では夏の雰囲気でした…。
20 桃色の   春の雨に桃色はチョーつきすぎかとも思いますが、紗の掛かった粗大ゴミの映像が静かでかなしいです。

【 六本木ねね 選 】
◎07 春の雲   のどかで、でっかくて、空をみてたら口があいた。
◎09 十指たて  爪の中まではいってくる。
◎15 春の野に  散歩した。ひとりでも楽しい。二人だったらもっと楽しい。
○22 春闇に・○12 枕まで
 なんか、春のイメージって、真昼か夜にわかれるのかな。そういう季節の二面性って好きだ。今日は昼の気分だったから上の3句。もし夜の気分なら次の。

【 小川春休 選 】
○16 頬冷えて  この「頬冷えて」は、風の冷えてきた感じや日の暮れてきた感じを触覚的に感じさせる面白い表現だと思う。下五の地名も力強い。
○26 象に乗り  たぶん旅吟だと思いますが、成功してると思います。擬音語も独特だし句に無駄がない。「春日傘かくんかくんと象の上」という案もあるが、7対3くらいで原句の方が良い気がする。
○18 ちよと絡み 如月真菜さんに「ありんこはありんこにあふ」という遍路の句がありますが、この句はこの句で花時のはなやぎをとらえているのではないかと思う。
 02 街を田を  「街」「田」「朝な朝な」と言葉のリズムは良いのですが、句の焦点がはっきりせず、景が見えてこないのです。
 03 闇夜にて  「にて」が固いため、説明っぽくなってしまっている。「夜の闇に吐く息深し残り梅」など、自分なりにいろいろ推敲してみてください。
 08 下萌の   どことなくユーモアの感じられる句。3句選でなければ○にしてました。
 09 十指たて  もし「春のいぶき」が空気・雰囲気のようなものであるのならば「つかみおり」の見立てが突飛すぎるし、何か具体的なものを「いぶき」と言い換えたのなら、その具体的なものを書いた方が鮮やかに伝わると思う。
 13 やわらかき 気持ち良い内容の句なのだけど、土に対して「やわらかき」や「湿り」はとってもとっても多いんです。
 17 春色の   中七のような日常に即した事柄を詠むのは良いと思うのですが、「そのままに」が、何がどうそのままなのか、元の状態も今の状態も見ていない読み手には伝わらないと思う。
 21 春うらら  楽しい句ですね。3句選でなければ○にしてます。
 23 春月や   「や」で切ってしまうと、句末の願望「たし」がバランス的にどうしても軽くなってしまう。「や」を「の」にすることで「たし」1つに焦点を絞ることができるのでは?
 24 三箱に   言葉を選ぶことや語順を考えることで句のどこかに焦点を当ててやらないと、俳句は単なる17文字の散文になってしまう。例えば「雛納む七段分を三箱に」とすると、上五、つまり季語が強調されてくると思います。「七段の雛三箱に納めけり」「納むるや七段の雛三箱に」など、いろいろと推敲してみてください。
 25 卯の花に  なんだか不思議にひかれた句。ただ、読むための手がかりが少ない。「卯の花に脂を戻す」のは誰なのか何なのか、どのように戻すのか、もっと伝わる言い方があると思います。


来月の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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