ハルヤスミ句会 第八回

2001年4月

《 投句 》

01 さつきから柳のふれてくる桜    阿昼(ふ)

02 江ノ電は縫うようにあり春日暮れ  呂木(春)

03 のこる花三波春夫の逝きたるを   春休(呂)

04 陽炎や運ばれて行く競走馬     ふみ(夏・九)

05 摘草の残る茎より白き汁      九鈴(夏・阿)

06 初蝶の初蝶色の壁にかな      つよし(ね)

07 猫の仔の前肢後肢のふたまたに   夏実

08 ここからは舐めたさきから溶ける蛸 海南江

09 葉脈を透かして春の嵐知り     呂木(ね)

10 一草庵いつも春泥踏んでゆく    阿昼(つ)

11 悠々と魚雷のごとく春の鯉     九鈴

12 青葉より遙か遠くの女囚船     海南江

13 床嗅いで猫はなびらを見つけたる  夏実(つ)

14 鴉の巣まある見えなる梢かな    つよし(春)

15 議事録をはらはらめくる花の昼   阿昼(九)

16 羊毛の焼けゆく煙春の果て     ふみ(つ)

17 蝶生れ翅の重さを曳きにけり    春休(呂・ふ・夏・ね・阿)

18 EGOISTとロゴる車や櫻降る     つよし

19 戸惑いもラッピングせず春の声   呂木

20 かさぶたのはづれて水の温みたり  夏実(ふ)

21 おかあさん ケミカルリンゴケミカルリンゴ 海南江

22 地下の茎引けばどくだみついて来る 九鈴

23 黄水仙群れかたまりて背きあふ   春休

24 さざなみに夕日さしきぬ櫻かな   つよし

25 パトカーのぱかぱか光る春の夜   ふみ(呂・九・阿・春)



【 沼呂木 選 】
○25 パトカーの  あのクルクル回る光、「おおっ」と思わせる何かがありますね。『春の・・・』で大きな事件ではないような気がする分、共感持てます。『ぱかぱか』が活きている。
○03 のこる花
田舎のおふくろへ
『おーい、元気かい』
母は三波さんが好きでしてね。「チャンチキおけさ」はオハコ。花はいつかは散ります。でもまた別の花が咲くことを期待しましょ。
○17 蝶生れ  翅が徐々に伸びてくるときというのは感動ものですね。『重さを曳きにけり』命の尊さ感じます。

【 中村ふみ 選 】
01 さつきから もう少し推敲できそうな気もするけれど、やさしげで 麗らかな良い句だと思う。
17 蝶生まれ 蝶をよく見ている。それをこのように何のてらいもなく、着実に言葉で表現している。このような態度には、感動します。
20 かさぶたの かさぶたのはがゆさやじれったさが、春特有の何だか落ち着かないもどかしさと良くあっている。

【 かたぎり夏実 選 】
05 摘草の 摘み取った草(花)ではなく残った茎の方に視点を持って行ったのがよかったと思います。かぶれにご注意!
17 蝶生れ まだ完全に開いていない薄緑色をした分不相応に大きなはねを持て余している弱々しい紋白蝶の影が見えます。
04 陽炎や 個人的に馬の句なので…。いよいよシーズン開始で、こういう風景よく目にするようになるのでせうね。とはいっても浦河あたり行かないと札幌じゃ全然だけどね。

【 戸田九鈴 選 】
○04 陽炎や  牧場とは全く違う世界へと入っていく馬のシチュエーションとしていいなあと思いました。
○15 議事録を  書記は昼休み。どんな議事進行だったのか知らないけれど、春の風がはらはらめくっていると・・・・えっ!?作りすぎ?
○25 パトカーの  「パトカーのぱかぱか」で採らなければ、と思いました。発砲事件か、酔っ払いケンカか、交通事故か。穏やかならぬ気持ちにさせられます。

【 六本木ねね 選 】
○17 蝶生れ  しっとりしてて、好き。
○09 葉脈を  うすみどりいろの嵐、きれいだなあと思って。
○06 初蝶の  あったかな色。ひなたの色に近いような。    
20 かさぶたの・13 床嗅いで

【 中村阿昼 選 】
○17 蝶生れ  「曳きにけり」に生まれたての蝶ってきっとそうなんだろうな(見たことないけど)って思わせられる。でも、「重さ」じゃなくて、翅自体を描写したほうがよいのでは?
○25 パトカーの  春の夜が動くかもしれないけど、「ぱかぱか」に惹かれた。
○05 摘草の  摘んだ草のほうではなくて、残った茎に注目したのが面白い。ただ、「白き汁」だけではやや当たり前かな。
20 惹かれるものはあるが、取り合わせ的にやや近いか。
23 まさに、と思うが、類句あるかも。

【 鋼つよし 選 】
 10 一草庵  思いをそのまんま東で好感がもてました。
 13 床嗅いで  猫の表情を想像します。 上五の床嗅いでを名詞化できないか、推敲されたら佳句になると思います。
 16 羊毛の  日本の風景はた外国かも、匂いと煙と、雄大さもあり佳句と思います。


【 小川春休 選 】
○14 鴉の巣  梢が見えてくる、鴉の巣が見えてくる、そして遠くに春の空が見えてくる。
○02 江ノ電は  とても好きな景です。気になる点は一つ、「あり」では、走っている江ノ電の姿が見えてこないこと。いっそ「あり」を省いて「江ノ電は春の日暮を縫うように」とすると、逆に江ノ電の動きが見えてくるのでは?
○25 パトカーの  「ぱかぱか」の一語で、当り前の景を童話の一場面へとがらっと色合いを変えてしまっている、おもしろい句ですね。
 01 さつきから  「さつきから」って、表現として効果ないんじゃないかな。どのように柳が桜に触れているかが、ぜんぜん見えてこない。
 06 初蝶の  なかなかおもしろいのですが、3句選だったので…。
 08 ここからは  中七下五、感覚的かつ実感のある表現ですね。上五がちょっと漠然としているのが気になりますが…。「ここから」がどこからなのか、作り手にしかわからないと思うんですよね。
 09 葉脈を  「葉脈が透ける」と「春の嵐」の取り合わせは、新鮮な感じで良いと思います。ただ「知り」でとても曖昧になってしまってるので、もっと鮮明に伝わるように推敲してみてください。
 10 一草庵  「春泥」って、そういつもいつも有るもんじゃないと思うんですが…。季語の本質って、「期間限定商品」であるってこともあると思うし。
 11 悠々と  魚雷って、魚みたいだから「魚雷」と名付けたもの。鯉がそれに似てるのは、文字通りのことなのです。たとえば、鯉幟と鯉が似ているというのと近いレベルで。
 13 床嗅いで  「床」ではなく「土」「地を」だったらぜったい○にしてたのに!
 15 議事録を  「春風のつまかへしたり春曙抄」(蕪村)を思い出しますね。ただ、議事録って「はらはらめくる」ようなものじゃない気がする。そんなの読むの、純然たるお仕事ですから。
 21 おかあさん  なんだか気にかかる句です。ケミカルリンゴって何でしょうか? 化学的に合成した林檎?
 24 さざなみに  「ぬ」「かな」と、切れが二つあります。


来月の投句は、5月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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