ハルヤスミ句会 第九回
2001年5月
《 投句 》
01 水温みしやべり続ける女かな 夏実 02 こんもりと水の上なる落花かな 春休(ふ) 03 藤の蔓藤の毛虫の列なせり つよし 04 パラソルの遠くに見える観覧車 ふみ 05 蒲公英の絮完璧な珠出来上がる つよし(な・春) 06 みどりかな又みどりかな夏立ちぬ 呂木(つ) 07 草笛や遠く近くと響きけり なつめ 08 かたくりの色濃き国に来たりけり 春休(阿・ふ・つ) 09 鉄線花緋の蘂凛と開くなり つよし 10 子らの声若葉まといて山に入る 呂木(春) 11 文庫本開いて閉ざす夏野かな なつめ(◎阿・呂・ふ・夏) 12 かげろふやジャングルジムの青と赤 ふみ(△な・つ・春) 13 雨粒を放ちてゆれる若楓 春休(夏) 14 遠足のジャングルジムを乗り越えぬ 夏実 15 夏の潮我をさらひに来られたし なつめ(阿・呂) 16 南風に太陽の塔なじみをり ふみ(な) 17 新緑や人の芯にと入りにける 呂木(◎な) 18 初恋の話続きて花氷 なつめ(夏) 19 指姫を八十八夜に待つ畑 呂木 20 新作の水着の水を歩くなり 夏実(呂) |
【 中村阿昼 選 】 今月は連休明けで忙しくて投句できなかったので、選句のみ参加させていただきます。 ◎11 文庫本 高原の夏って感じですね。閉じたのは眠くなったからか、それとも散歩に出かけるのかも。 どちらにしてもうらやましい。 ○08 かたくりの 津軽のかたくりはまさにそうでした。たんぽぽも色が濃くて、短い春に子孫を残さないといけないので、鮮やかな色になるのだとか。私の好みでは、かたくりは堅香子、国も旧字のほうが雰囲気でるかも。 ○15 夏の潮 自分には詠めないタイプの句で、思わず採ってしまった。旅先からこういう手紙を受け取った人はきっとどきどきするんだろうなあ。 02 「水の上なる」が説明っぽいけど、「こんもり落花」はいいですね。 06 「夏立ちぬ」が答えになっているけど、「みどりかな」の繰り返しには好感。 【 沼呂木 選 】 11 文庫本 文学少年(これは死語ですか)を彷彿とさせられます。夏野を閉ざす文庫本がどれほどのものかは見当もつかないのですが 15 夏の潮 砂浜にたたずむの図が浮かびます。さらひに来られる我の存在がはっきりしていますね。 20 新作の 最近の水着は泳ぐためのものではないのでしょう。水を歩くという表現は適切な感じです 【 中村ふみ 選 】 02 こんもりと きれいな句.でも、それが何の花なのかがわかったら、もっと良いような気がするんですが、どうなんでしょう。 08 かたくりの これは反対に、どの国を指しているか分からないぶん、面白いように思われます。ちょっとレトロなエキゾチック気分が出ていて、良い感じ。 11 文庫本 これもまた、少し古めかしい空気が漂いますが、それが好きです。正統派文学少女というものが存在していて、彼女たちは夏の午後、太宰治や堀辰雄をぼうと読む、そんな時代の空気が感じられますね。 【 かたぎり夏実 選 】 13 雨粒を 青々した若葉の色が見えますね。すがすがしい景です。 18 初恋の 幼なじみ?クラスメイト? どっちにしても恋人同士ぢゃないよね…。 11 文庫本 開いて閉ざす、がちょっと…。でも気持ちはわかります。本なんか読んでないでお日様の元へ出ましょ〜! 【 瀬尾なつめ 選 】 ○05 蒲公英の …”完璧な”がちょっと説明的かな?とも思ったのですが、『絮が完璧な珠』という発想に惹かれました。 △12 かげろふや 後半は面白いのですが、『かげらふ』という季語が効いてない気がしてすごくもったいないです。 ○16 南風に 読みは”なんぷう”?。一見、見たままなのに、繰り返して読むと大阪万博の『太陽の塔』と南風がフィットしてくる不思議な句です。 ◎17 新緑や 芯、を『心の奥』ととらえて取らせていただきました。新緑という季語は意外と句が平凡に見えてしまうけれど、後半の重厚さでうまくカバーしてると思います。 【 鋼つよし 選 】 06 みどりかな 杉の林に若葉の木々をみているとほんとうにこの通り。 08 かたくりの かたくりは好きな花のひとつ、どんな濃い色なのか、想像を掻きたてられました。 12 かげろふや 青と赤のゆらぎが見えるようです。 そのほか3句選にいれたいなあーの句。 02 こんもりと 水を池とかなにか具体性があれば。 14 遠足の 12番を選にいれたので割愛しました。佳句と思います。 15 夏の潮 こんな気分、分かるような気がしました。 17 新緑や 人を我にされたらなお良いとおもいます。 18 初恋の 花氷といいう季語が意味深さを暗示しているようでおもしろい句と思います。 【 小川春休 選 】 ○12 かげろふや 奇しくもジャングルジムの句が2つ出ましたが、こちらの方が、季語が働いているように思います。「かげろふや」と切り出して「青と赤」で締めたことによって、私にはだだっぴろい小学校の校庭が見えてきました。そして、暑さも。動詞の少ない句は、構造的に強い感じがしますね。 ○05 蒲公英の 茅舎・たかしの作風を思わせますね。ただ、字余りにもある種の表現効果は期待できますが、それは五七五では伝えきれないものがある場合のことで、この句は「蒲公英の絮完璧な珠なせり」ときっちり五七五にした方が良いでしょう。 ○10 子らの声 上五中七の感覚は、私には絶対に出てこない発想ですね。把握が独特です。それだけに、なんだか下五が状況説明的に感じられるのが悔まれる! 03 藤の蔓 上五、「藤蔓に」でしょうね。 06 みどりかな あの圧倒的な山の緑のイメージを句にされたのでしょうが、ちょっと漠然としてますね。 07 草笛や 「草笛」で「響きけり」はたぶん蛇足。あと、一句の中に「や」と「けり」の2つの切字を入れると句がばらけた感じになります。 09 鉄線花 「凛と」は鉄線花の本意に含まれています(つまり、言わなくても伝わる内容ということ)。ここからもう一歩先に進まねば。 16 南風に 個人的には、「太陽の塔南風になじみをり」と太陽の塔を始めに持ってきた方が、インパクトが強いし、太陽の塔が見えてくる感じがします。採りたかった句です。 17 新緑や 若々しい感覚に好感を持ちましたが、「人の芯」という表現がやや観念的なため、そこが弱みになっています。たとえば「指の芯」などとしてもう少し具体的にすれば、若葉に指が触れる様子まで見えてくるかもしれません。これも採りたかった句。 18 初恋の 「花氷」できれいきれいな句になってる感じがします。例えば、ですが、これがもし「冷奴」なら、句にちょっと複雑な表情が出ますね。えっ、こんな席で、こんな人が初恋の話をするなんて、という軽い驚きみたいな。 |
来月の投句は、6月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら |
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