ハルヤスミ句会 第百回

2009年2月

《 句会報 》

01 雪女居るらし気配後ろから    波子(鳴)

02 福は内鬼は外へと豆少し     あたみ(山)

03 立春のヘリコプターが真上かな  阿昼(山・春)

04 身の内に百鬼居座り年の豆    波子

05 春寒し新聞に紐食ひ込みて    春休(阿・ま・鳴)

06 チャンネルを変へて一人の春炬燵 つばな(あ・阿・波)

07 隣には宅配便よ春の風邪     春休(鋼)

08 余寒とはしかと向き合ひ寝入りけり 鳴雪(鋼・あ)

09 黄水仙香りいちめん境内に    あたみ

10 銅像の眼鏡ごつつき紀元節    春休(ま・波)

11 自転車を漕ぎつつ教へ春の花   阿昼

12 まとまらぬ筆先なだめ鳥の恋   春休

13 春の日やわづかに細みたる眼   つばな

14 春風や新聞飛ばす事なかれ    鳴雪

15 春潮や大観覧車ゆか透けて    まどひ(阿・鳴・春)

16 猫浮かれけりドライヤー焦げ臭く 春休(ま)

17 湯之町のたんぽぽまでを案内かな 阿昼

18 片付けの遅々と進まぬ春の蠅   つばな(春)

19 ゆき所なくふらここを漕ぎはじめ まどひ(山)

20 コンビニも春の夕暮れ受け入れて 鳴雪(鋼・あ)

21 涅槃図や蛇の隣が空いてをり   まどひ(鋼・波)

22 如月や陽だまり談の笑い声    あたみ

23 ビ−トルズ聴こゆ前山の笑ひ初む 波子



【 鋼つよし 選 】
○07 隣には  風邪で臥せていると案外外の喧騒が聞こえてくる
○08 余寒とは  余寒と麻疹 こんなこともあるよね
○20 コンビニも  ドラマのワンシーンにあるような画面を想像する
○21 涅槃図や  あれと思った発見でよい句だが「や」で切ってしまうとどうだろうかと思う

【 梅原あたみ 選 】
○06 チャンネルを  まだまだ炬燵を仕舞う事が出来ません。テレビが友達なんて寂しいのですが、俳句の友達がいてくれるのが何より幸せを感じる私、一人暮らしの生活を楽しみましょう。
○08 余寒とは  余寒に向き合う事が季節の変わり目を強く意識し、今夜も無事一日を終わり寝入りけりとなるのでしょう
○20 コンビニも  なんとも愉快な詩に思います。お店に並ぶ品々が春を受け入れるものが多くなったのでしょう

【 中村阿昼 選 】
○05 春寒し  きつく結ばれた紐が、春寒の頃のまだまだ固い木の芽を思わせる。
○06 チャンネルを  面白いテレビもないし〜と、一人の時間を持て余しているのかな。春炬燵で、ものうい感じが出てます。
○15 春潮や  高所恐怖症なので、ゆかの透けた観覧車を想像するだけで眩暈がしそうです。まして春潮。
他に好きな句
 10 銅像の  いかつく気骨のある明治の男を想像しました。
 19 ゆき所  「ゆき所なく」がせつない感じです。
以上です。

【 山田つばな 選 】
○02 福は内鬼は外へと豆少し
○03 立春のヘリコプターが真上かな
○19 ゆき所なくふらここを漕ぎはじめ
他に好きな句
 05 春寒し新聞に紐食ひ込みて
以上です。

【 舟まどひ 選 】
○05 春寒し  凝ったところのなにもないよさ。春寒しという単純な季語が動かないように思いました。
○10 銅像の  銅像と紀元節は付き過ぎですが眼鏡ごっつきのリアリティーが俳味をだしています。
○16 猫浮かれ  浮かれて毛が舞ってそれにドライヤーにまとわりついているような。そして猫がいざ出陣でお洒落しているような。

【 石川鳴雪 選 】
○01 雪女  雪女を愉快な者に思わせてくれる
○05 春寒し  新聞が妖艶な者に思えて来る。
○15 春潮や  こう言う景色、取り合わせが好きです。

【 喜多波子 選 】
○06 チャンネルを  早春の誰も居ない日曜日を想像しました ノンビリした雰囲気に春炬燵が決めています
○10 銅像の  ごつい眼鏡が銅像の人となりまで解る句で頂きました
○21 涅槃図や  ヘビに罪はないのですが 全く好きになれない性質です ヘビの隣りが空いていて・・くすっ!としました ◎好きな句です

【 小川春休 選 】
○03 立春の  意外なところから春がやってきた!という感じですね。
○15 春潮や  大観覧車の床が透けるということに対して、爽快と感じるか怖いと思うか、人によって反応の分かれるところだと思いますが、「春潮」という季語を手がかりに読めば、書き手は爽快寄りなんだろうなと思います。私も爽快な句として読みました。
○18 片付けの  片付けというものは往々にしててきぱきとは進まぬものですが…。進まなくても良いじゃないか気にしない気にしない、という大らかな感じを受ける句です。だって蠅も気ままに飛んでますし、ね。
 01 雪女  雪女の句としては、驚きや不気味さがちょっと足りないように思います。歳時記などの例句も参考にして想像を膨らませてみてください。
 06 チャンネルを  家族が多いとチャンネル権も争いの元になったりするものですが、一人だとそれもないですね。「一人や」と切った方が「春炬燵」が生きてくると思うのですが、いかが?
 08 余寒とは  寒さがひしひしと伝わってくるような句です。「けり」が効いてます。
 17 湯之町の  雰囲気は良いと思うのですが、どんな情景か想像すると案外曖昧というか…。野暮なことは言わず、雰囲気を楽しむ句ではあります。
 19 ゆき所  書き手の狙いは分かるのですが、「ゆき所なく」で狙いが分かりすぎてしまうのが難点。描かれた事実から感情が読み取れるような句を、私は望みます。良いお手本として、大野朱香さんに「午後二時のサラリーマンがぶらんこに」という句がありましたね。
 20 コンビニも  「受け入れて」が分かるようで分かりませんでした。「も」でイメージが拡散している気もします。
 21 涅槃図や  実際そうだったんでしょうけど、事実を坦々と描写した面白さがあります。この場合「や」で切らずに「の」にする方が焦点がブレない気がするのですが、どうでしょうか。
 23 ビ−トルズ  「ビートルズ」と「山笑ふ」の取り合わせの句ですが、中七の字余りに必然性を感じません(「の」を省くだけで五七五に収まるので…)。また、ミュージシャンの名が出てくれば、わざわざ「聴こゆ」と言わなくても伝わることが多いです。推敲してみてください。

来月の投句は、3月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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