ハルヤスミ句会 第百一回

2009年3月

《 句会報 》

01 姉の古希祝ぐかに舞ふや雪の花  波子

02 丁寧に雪吊縄をはずしをり    つよし

03 斑雪山また斑雪山バスの旅    波子

04 クロッカスまずは黄色が咲きはじむ つよし(あ・波)

05 小やまびこ大やまびこに続く春  春休(あ)

06 きさらぎや美容室までぶらぶらと あたみ

07 まなこ赤くかげろふ見据ゑ白蛇よ 春休

08 焼烏賊のげその踊れる涅槃西   まどひ(春)

09 目薬の滲ませてゐる春宵よ    春休

10 水かける観音様や猫の恋     つばな

11 海風に若布祭りや幟旗      あたみ

12 また金を盗られたなどと日永し  つばな(鋼)

13 九十に届く母なり青き踏む    つよし

14 おおよそは百人分の若布汁    あたみ(鋼・ま)

15 春燈に生ハムうすく切り分けて  まどひ(山)

16 彼岸寺電子レンヂの上に猫    つばな(鋼・春)

17 どこまでも青信号の朧かな    まどひ(山)

18 卒園や吊し石鹸より雫      春休(あ・山・ま・波)

19 あたたかき弁当届く川普請    波子(鋼・ま・春)

20 加湿器に水たつぷりと春惜しむ  春休(波)



【 鋼つよし 選 】
○12 また金を  認知症の方だろうか、日永がなかなか良い
○14 おおよそは  若布汁 景色が大きくてよい
○16 彼岸寺  寺に電子レンジがあり、猫がいて今様をあらわしていて良い
○19 あたたかき  川普請の景色が浮かんできて秀逸と思う

【 梅原あたみ 選 】
○04 クロッカスまずは黄色が咲きはじむ
○05 小やまびこ大やまびこに続く春
○18 卒園や吊るし石鹸より雫
 皆さんのご意見を参考に致します。

【 山田つばな 選 】
選お願いします。
○15 春燈に生ハムうすく切り分けて
○17 どこまでも青信号の朧かな
○18 卒園や吊し石鹸より雫

【 舟まどひ 選 】
○14 おおよそは  百人と言ったことでそれぞれの椀に入った暖かい澄まし汁と新鮮な若布がありありと見えてきました。
○18 卒園や  園庭や可愛らしい上っ張り胸のハンカチそして子供特有の匂いまで感じられます。
○19 あたたかき  川普請がいいのです。花冷えに届く美味しそうなお弁当。

【 喜多波子 選 】
○04 クロッカス  黄色は幸せの色です 優しい俳句の目が好きです
○18 卒園や  慣れ親しんだ園ともお別れです 石鹸の雫は 良く見ていると感心しました
○20 加湿器に  乾燥しがちな冬場と違い たっぷりとした「水」に行く春の実感があります

【 小川春休 選 】
○08 焼烏賊の  句の最後の「風」を書き忘れているものと思いますが、何だか楽しい句なので採りました。気になった点は一つ、「烏賊」と「げそ」両方必要か、ということ。「焼かれをるげその踊れる」「鉄板にげその踊れる」などでも焼烏賊だと分かるし、その方が、げそ(及びげその動き)がクローズアップされてより鮮明な句になる気もしますが…。ぜひご検討ください。
○16 彼岸寺  寺に電子レンジがある驚き(よくよく考えればあってもおかしくはないのだが)、そしてその上に猫のいる驚き。そんな軽い驚きがとぼけた味わいの一句にまとめられている。
○19 あたたかき  恥ずかしながら、不勉強で「川普請」が冬の季語だということを知りませんでした。何故「川普請」が冬の季語かと考えてみると、冬は川の水が少ない時期、普請(改修工事)には最適な時期という訳です(工事中に河川が増水すれば、改修どころか工事中の箇所が余計に崩れてしまうおそれもある)。そういうことを思い合わせると、この「あたたかき弁当」の有難みが身に沁みてきますね。
 01 姉の古希  中七の修飾的な表現が、一句の答えになってしまっている。雪の花の華やかさを丁寧に描写すれば、自然と書き手が姉の古希を祝う気持ちは伝わるはず。
 02 丁寧に  なぜ書き手はその動作を「丁寧」と感じたか、そのポイントをこそ書いてほしいと思います。
 06 きさらぎや  雰囲気は良いと思うのですが、印象が淡く、句会では目立たない句かもしれません。採りませんでしたが、これはこれで良いとも思います。
 11 海風に  気分の良い句なのですが、如何せん季語(若布)から近いもの(海風・幟旗)ばかりが書かれているため、句に広がりがない。ならば遠いものとは何か。若布祭という「非日常」にも紛れ込んでいる「日常」であったり、若布祭という「明」るい場にもたらされるちょっと「暗」いニュースであったり。
 12 また金を  「また」「などと」という書きぶりからすると本当に盗られたわけではなさそうなのですが、ちょっと唐突な感じは否めません。
 14 おおよそは  勢いも良く、気分の良い句。三句選にはもれましたが、良いと思います。
 15 春燈に  「春燈」と「うすい生ハム」は取り合わせとしては合っていると思いますが、中七下五にそれほど動きの面白さがない気がします。
 17 どこまでも  書かんとした意図は分かるのですが、「どこまでも」という表現はちょっと大づかみな印象です。具体的な数(十・二十等)やその並び(一直線に等)など描写すればよりしっかりした句になるのではないでしょうか。一案として「信号の青列なして朧かな」など。

来月の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい
・・・・・・投句はこちら

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