ハルヤスミ句会 第百四回

2009年6月

《 句会報 》

01 菖蒲の葉垂らして緋鯉釣らんとす  阿昼

02 君は今あの橋あたり春の蝉     波子(あ)

03 人混みに高く掲げる百合の花    つばな(ま・波)

04 裏山の桑の実もうすぐ食べ頃に   あたみ(鋼)

05 禅寺に百畳を咲き藤の花      波子

06 八重咲のどくだみ育ていらんかね  つよし(あ)

07 産室へアッパッパーで駆けつけぬ  まどひ(波・阿・春)

08 虎杖や末っ子らしきしかめつら   波子(鋼・春)

09 クロバーの四葉見つけて梅雨に入る つよし(あ)

10 夕立亀甲羅籠りをいたしけり    春休

11 朝風呂にどっぷりつかり梅雨の宿  あたみ

12 五月雨に墨磨りかけしまま居らず  春休(山・ま)

13 産み終へて汗ぬぐふやら煽ぐやら  まどひ(山・阿)

14 欠伸して椅子から落ちる夏の猫   つばな

15 夏風邪や腹に飛び乗る子に叫ぶ   阿昼

16 眠りこけ梅雨たけなはのバスの客  春休

17 五月雨の山へと続くレールかな   つばな(ま)

18 積年のたばこを止めて心太     つよし(春)

19 夏風邪や本持つ腕の重くなり    阿昼(山)

20 梅の実のジャムを作りて瓶詰めに  あたみ

21 炎天下蛇口にホース巻き付きぬ   春休

22 嬰眠る他なにもなき夏座敷     まどひ(鋼・阿)

23 胡瓜喰ひながら冷やかすテキ屋衆  春休(波)

24 ボタン押す瞬間喜雨の起らぬか   順一

25 スコールよ現実界は凡な雨     順一

26 図書館の帰り西日に呪いかけ    順一

27 鉄線は去年も詠んだ植物で     順一

28 豚肉やキャベツの上にのせられて  順一



【 鋼つよし 選 】
○04 裏山の  桑の実の色付きと山の緑が浮かぶ
○08 虎杖や  抽象的だけどなんとなくわかる気がする
○22 嬰眠る  昔はよく見た光景で懐かしい気がした。

【 梅原あたみ 選 】
○02 君は今  蝉の一生は短く、春の蝉ゆえになでか、夏に向い準備に追われている、みはらしの様だ、が考えてみると人間と蝉の違いも又面白い。
○06 八重咲の  楽しい句に感じました。どくだみをいらんかね?私は畑に一杯有り整理しきれません。
○09 クローバの  子供の頃は良く探しては友達と楽しんだものです。今はこの様な状況も俳句になる事を知りとても楽しい時間です。

【 山田つばな 選 】
○12 五月雨に墨磨りかけしまま居らず
○13 産み終へて汗ぬぐふやら煽ぐやら
○19 夏風邪や本持つ腕の重くなり

【 舟まどひ 選 】
○03 人混みに  新鮮な句です。実景なのでしょうか、視点が面白いです。百合の花粉まで見えてきます。人波とどちらがいいでしょうか。
○12 五月雨に  硯に残された墨と五月雨だけの世界。音がありながらこれ以上の静かさはないような。
○17 五月雨の  ものとしてのレールの存在感、質感がうまく表現されているとおもいました。丸く高い山と平たく細く地面を這うレール。山は雨を吸いレールははじいている。

【 喜多波子 選 】
○03 人混みに  高く掲げた百合の花・・作者の心が垣間見れます
○07 産室に  生れる喜びがアッパッパ―が物語っています 軽い即興句のようですが これからの重大さが滲んでいます
○23 胡瓜食い  下5の展開がユニ―クで 好きな句です

【 中村阿昼 選 】
○22 嬰眠る  今は玩具が散乱しているうちの居間も、生まれたばかりの頃はこうだったような。涼しげな夏座敷で、嬰の寝顔も涼しそう。
○13 産み終へて  私は夏のお産は経験していないけど、いまどきの冷房のきいた病院でも、やっぱりこんな感じなのかな。汗をぬぐったり煽いだりしてくれたのはダンナ様(?)お疲れ様〜といういたわりの気持ちが伝わってくる。
○07 産室へ  急なお産だったんでしょう。取るものもとりあえず、という感じがよく出ている。産室、ということは、きっとまだ生まれたばかりだったのですね。
他に好きな句
 02 君は今  春の蝉がやさしくていいなー。「あの橋あたり」に具体性が欲しい気も。
 03 人混みに  背の高い百合を更に高く掲げて。「人混みに」で説明っぽくなるのが惜しい。
 08 虎杖や  虎杖が動かないか微妙だけど、きかん気なしかめつらが末っ子らしい。うちの子のしかめつらもなかなかのものです。
 18 積年の  うちのダンナにもたばこを止めて欲しい。甘いものも止めてほしい。心太にしてくれ〜。
 23 胡瓜喰ひ  ワイルドな「胡瓜食いながら」にひかれたが、「テキ屋衆を」なのか「テキ屋衆が」なのかが読み取りにくかった。

【 小川春休 選 】
○07 産室へ  即吟らしいスピード感が良いと思います。
○08 虎杖や  上手く説明はできませんが、雰囲気はよく伝わってきます。「虎杖」がなかなか良い雰囲気を出してます。
○18 積年の  「心太」に、ちょっと簡単には割り切れない心情がうかがわれます。ほろ苦いユーモアというべきでしょうか。
 02 君は今  雰囲気は良いと思うのですが、雰囲気に流されている感もちょっとあります。「あの橋あたり」にいる「君」ですが、こちらに向かっているのか、帰っていくところなのか、読み取る手がかりがあればもう少し句の景がくっきりしてくるのでは?
 03 人混みに  「高く掲げる」だと、百合が通行人に触れてしまわないように高く掲げた、という理が見えすぎるように思います。「掲げて高き」とすれば、あまり理が表に出てこず、景そのものに焦点が当たると思いますが、いかがでしょうか。
 05 禅寺に  「に」と「を」が説明的な感じです。「禅寺の百畳の藤咲きにけり」とすっきり詠んだ方が迫真性があると思いますが、いかがでしょうか(「禅寺に」もOKか?)。ぜひ推敲してみてください。
 06 八重咲の  飄々としたたたずまいが良いですね。
 13 産み終へて  厳密に言えば、「産み終へて」だと妊婦本人が自ら汗を拭い煽いでいるように読めます。妊婦の汗を付添い人が拭う景であれば、「産み終へし」とするべきかと。
 17 五月雨の  すっきりとして広がりのある句です。「山へとレール入りゆく」などの表現もありかな、と思います。
 19 夏風邪や  中七下五にとてもリアリティがあって好きな表現なので、「夏風邪」だと理が付いてもったいないなぁ。もっとふんわりと遠い季語の方が句に広がりが生まれそうな気がします。たとえば「合歓の花」とか…。
 26 図書館の  呪いたいぐらいの強烈な西日だった、という気持ちは分かりますが、その「強烈さ」が描写されていないと、読み手はその気持ちに共感することができません。単に「図書館の帰り」というよりも、「両手に重たい本を提げて」とか、何でそんなに西日が嫌かを推測できるような表現があると、もっと書き手の気持ちが伝わるのではないでしょうか。
 28 豚肉や  広島風お好み焼でしょうか? 「のせられて」だけではちょっと物足りない感じなので、もう一歩踏み込んだ描写を考えてみてください。

来月の投句は、7月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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