ハルヤスミ句会 第百六回

2009年8月

《 句会報 》

01 転写観る部分日食梅雨晴間    つよし

02 ひまはりの飛び立ちさうな葉のそよぎ 佳子

03 孫を背に同級生も祭りの夜    あたみ

04 四次元の消しゴム匂ふ酷暑かな  波子(佳)

05 さそわれて故郷祭り網代港    あたみ

06 明け切らぬ内に発ちけり草雲雀  春休

07 山車を引く最後の晩のしゃがれ声 あたみ(無)

08 蛇口ひねる八月六日朝八時    無三(春)

09 携帯電話八月六日を素通りす   佳子

10 秋の蚊のよほど飢えをる秋の寺  つばな(無)

11 縞蛇の庭を動かず今朝の秋    つよし(無)

12 草市に螺子を巻きたるオルゴール きさ

13 混み合うて盂蘭盆近き銀行よ   春休(き)

14 烏瓜咲きて一人になりにけり   無三

15 蜩である身を終へる川の音    つばな(波・春)

16 盆休嫁もらへとてしつこかり   きさ

17 合歓咲くや未だパズルの解けぬまま 無三

18 何やらの秋草の茶ぞ何と苦が   春休(あ)

19 包丁の力及ばぬ大オクラ     つばな(鋼・あ)

20 銭数ふ筋ばりし手や秋遍路    きさ(山)

21 秋さびし果実の種を取りのぞき  佳子(き・あ・山・春)

22 桃熟れて鈍き痛みのものもらひ  春休(波)

23 蝉時雨腹は七分に留むべし    つよし

24 明易の自販機はまだしゃべらざる 無三

25 さくさくと鎌の切れ味今朝の秋  波子(鋼・佳)

26 苦ぐすり秋水たんとまゐらせよ  春休(き)

27 座るたび好きになる椅子秋の声  波子(鋼・佳)

28 終電を逃せし駅の鋏虫      無三(波・山)



【 鋼つよし 選 】
○19 包丁の  包丁のおよばぬとはどんなオクラかと思わせる
○25 さくさくと  涼しさが感じられて良い
○27 座るたび  秋の声の季語はどうかと思うが上五、中七がよい。

【 山下きさ 選 】
○13 混み合うて  盂蘭盆と銀行の混み合うという取り合わせとても面白い。銀行がいい。
○21 秋さびし  景が見えてきてしんみりと好きな句です。
○26 苦ぐすり  ホント、ホントという感じ。中七、下五の言い方がいい。
 02 ひまはりの  風の強さを葉で表現したところが新しい。
 04 四次元の  酷暑を四次元の消しゴムであらわしているのでしょうか?ちょっと分かりにくいです。
 05 さそわれて  網代のお祭はどんなお祭でしょう。祭りの様子を具体的に言うといいのでは?故郷はなくても言いかと思います。
 07 山車を引く  しゃがれ声に祭りの果てる頃というのがよく出ています。「最後の晩」は別の表現ができるともっといいのでは。
 08 蛇口ひねる  広島の原爆忌ですね。気持がよくわります。この日にJ蛇口から水がほとばしったというふうに言えると、なお伝わりますね。
 14 烏瓜咲きて  なぜ一人になったのでしょう。はぐれた?みんな帰っちゃった?何だかよく分からないけど、季語と合っている気がします。いろいろ想像がふくらみます。
 17 合歓咲くや  う〜ん。パズルが気になる・・・。合歓の花が思わせぶりでいいです。
 18 何やらの  秋草の茶というのは、お茶にできる草ですか。それとも色?面白い句になりそうですね。
 19 包丁の  そんなオクラがあるの?と驚きました。見てみたい。
 22 桃熟れて  ものもらいの薄赤く腫れているのと桃熟れるは、ちょっとつき過ぎではないでしょうか。
 25 さくさくと  立秋の朝の気持ちよさが上五、中七によくでている。
 27 座るたび  お気に入りの椅子なのですね。いい句ですね。

【 水口佳子 選 】
○04 四次元の  四次元の消しゴムは時空をさまよい、過去や未来を行き来している。そこまでは虚の世界。にもかかわらず「匂う」に現実味があり面白い。「酷暑」もいい。
○25 さくさくと  句中に繰り返される「K」音に秋の澄んだ空気感が通う。計算された句だと思う。
○27 座るたび  この句の素直さに惹かれた。〜のたび〜になるというのは一つのパターンかもしれないのだけれども。
 06 明け切らぬ  上五・中七にドラマがあり最後まで迷った句。
 10 秋の蚊の  「秋の寺」の「秋」が不要。季語が二つになっています。
 16 盆休  先月の「お見合いの話・・」の句の続編のような・・・「しつこかり」が言い過ぎのようにも。
 23 蝉時雨  やや教訓的か。

【 梅原あたみ 選 】
○18 何やらの秋草の茶ぞ何と苦が
○19 包丁の力及ばぬ大オクラ
○21 秋さびし果実の種を取りのぞき

【 小津無三 選 】
○07 山車を引く  祭りもいよいよ最後の夜。それまでの張り切り様とその晩を盛り上げようとさらに声を張り上げる様子が、生き生きと詠まれていると思います。
○10 秋の蚊の  そうそうと思わず納得する秋の寺の様子が、俳味をもって表現されていると思いました。
○11 縞蛇の  立秋を蛇をもって表現するおもしろさで、いただきました。

【 喜多波子 選 】
○15 蜩で  十七文字に蜩の哀しさが凝縮されています 下五の川の音が利いています
○22 桃熟れて  中七そして ものもらひには 驚きがありました
○28 終電を  乗降者もいない終電のティ−ルランプが見えそうです 過疎地の駅舎で 鋏虫と遊ぶ作者が鮮やかです

【 山田つばな 選 】
○20 銭数ふ筋ばりし手や秋遍路
○21 秋さびし果実の種を取りのぞき
○28 終電を逃せし駅の鋏虫

【 小川春休 選 】
○08 蛇口ひねる  朝八時、と限定することで、六十四年前の八月六日、原爆投下の十五分前に、自分と同じように蛇口をひねっていた人がいたかもしれない、という確かな共感の手掛かりが生まれています。
○15 蜩で  息絶える寸前まで鳴いていた蜩、そして命が終ったときに残るのは川の音だけ。「蜩である身」という言い方が、その背後に輪廻転生を思わせます。
○21 秋さびし  果実の種を取り除いた後に生じる空洞と、「秋さびし」とがゆるやかに響き合っているのが良いです。
 01 転写観る  「梅雨晴間」だから日食が観られた、という理がついてしまうのが残念。
 04 四次元の  とても気になる句だったのですが、ちょっと読み切れませんでした(力不足申し訳ありません)。暑さのせいで次元の境界が曖昧に…ということでしょうか? 四次元ポケットは何でも入るポケットなので、四次元消しゴムは何でも消せる消しゴムということ?
 07 山車を引く  内容は良いと思うのですが、このままの句形(下五に「しゃがれ声」)だと、連日山車を引いたから喉が嗄れて、声がしゃがれてしまった、という原因・結果があらわになっています。たとえば「声しゃがれ最後の晩の山車引けり」とすれば、山車を引くという動きの方が句の中心になり、原因・結果はさほど気にならなくなるように思いますが、いかがでしょうか。
 10 秋の蚊の  中七の措辞など面白いのですが、「秋の寺」はちょっと大雑把な印象です。「御本堂」とか、もっと良い下五がありそうな気がします。
 12 草市に  草市にオルゴールが売られていること自体には興を覚えますが、「螺子を巻きたる」という描写はあまり効果的ではないようです。思い付く例を挙げると、「螺子金色の」「螺子の錆びたる」「螺子の壊れし」「螺子の重たき」などなど、オルゴールの存在感をより確かにする描写がきっと他にあるはず。
 19 包丁の  句意は分かりますが、「力及ばぬ」という描写からさらに踏み込んで欲しいところです。全く歯が立たなかったのか、それとも刃がオクラの途中で止まってしまったのかなど、臨場感のある描写となるよう、よく見て、読み手にもよく見えるように。
 23 蝉時雨  腹八分でも多すぎる、という訳ですね。上五がもっとイメージを広げてくれるような季語であれば、このフレーズが生きてくるかもしれません。
 27 座るたび  上五中七は好きなのですが、「秋の声」がちょっと漠然としているような。もし「虫の夜」とかだったら採ったのですが…。


来月の投句は、9月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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