ハルヤスミ句会 第百十四回

2010年4月

《 句会報 》

01 三月の草より淡き蛙かな      阿昼(華・益・ぐ・佳・春)

02 大空に上履き放り卒業す      波子(華・◎山・阿・あ)

03 一本の糸のほぐれやしだれ梅    益太郎

04 ペンギンの頭が脚に届く春     無三(阿)

05 四月来るバージンロード踏んで来る 佳子(山・鋼)

06 烏貝採るに使ひし指二本      華

07 すかんぽや腹這う牛も喰む牛も   はなの(順・益)

08 郷党の友よ遅日の丘を打て     順一

09 辛夷咲いて田んぼの中のお家かな  つよし

10 玄関に藁屑散るや雀の巣      山渓

11 激痛の膝をかかえる四月ばか    あたみ(鋼)

12 初蝶のまだつけている地の匂い   益太郎(順・無)

13 強風の中を遅日や本借りる     順一

14 大手門姫路の桜幟旗        あたみ

15 枝低く伸びし一樹や花の宴     てふこ(山・ぐ)

16 本貸して隙間生まるる春の風    春休(て・阿)

17 遠足の朝触れてみる犬の鼻     ぐり(て・佳・春・あ)

18 青き目の甲冑纏ふ春祭り      山渓

19 指さして枝垂桜のみな遠し     てふこ

20 赤ん坊の声よくとおる花の雨    つよし(華)

21 囀りの漲る瀧のほとりかな     春休(ぐ)

22 ファスナーの噛みて壊れて亀鳴けり ぐり

23 白鷺堂あなご昆布巻き花の店    あたみ(阿)

24 酒蔵の試飲の列や春うらら     波子(山・鋼)

25 菜の花や水筒じやまさうに駆けり  春休

26 銃眼より花降らせをる小さき手   阿昼

27 散る花を見る雪豹に翳りかな    無三

28 藁一本除けて流せる花筏      山渓

29 荒布干すかつては塩を商いて    華(順・春)

30 狼煙台址を彩る山桜        山渓

31 鳥の糞とって居る間も桜舞う    順一(佳)

32 石垣の黒きは火事と桜守      春休(て)

33 うずまいて吹きだまりへと花の塵  はなの

34 図書館で本を借りれば遅日かな   順一

35 花屑の中で飯食ふ我と獏      無三(は・春・あ)

36 傘持ちてささずじまひの虚子忌かな 春休(順・は・無)

37 若芝やそこでスクイズ決めていけ  佳子

38 自転車の次々倒れ遅日かな     順一(無)

39 残業の指の汚れや夜の緑      ぐり

40 花の頃生まれましたと猿の檻    無三(ぐ・は)

41 すつてんとすべりし跡も春の蕗   はなの

42 白熊は寝そべつてるだけ暮の春   無三(鋼)

43 夜桜の好古園にて影二人      あたみ

44 疲れたかだらりと垂れし鯉幟    山渓

45 金沢の街や花冷え緩みだす     つよし

46 海市への電話がいつも話し中    佳子(て・益・無)

47 春潮の寄せて礁にしぶきをり    華

48 鯨尺膝を打たるる目借時      波子

49 花冷のスープにたらす辣油かな   てふこ

50 いつの世も花咲く花の力かな    益太郎(華・あ)

51 菜の花や旅に出たいと四歳児    阿昼(益・は・佳)



【 林 華 選 】
○01 三月の  生まれたての蛙の色が見えてくる
○02 大空に  卒業の気分がよく出ている実感あり
○20 赤ん坊の  花の雨が効いている
○50 いつの世も  本当、花の力とは凄い、言いえている
 03 一本の  比喩としても分かりにくいのでは
 05 四月来る  四月が効いているか?六月でも良さそう
 07 すかんぽや  のどかな景がいい、すかんぽもいい
 13 強風の  「や」の位置が変では?
 14 大手門  三段切れですね。盛り込みすぎなので整理するといいのでは
 16 本貸して  面白い、季語を変えるともっといいと思う
 28 藁一本  〈一本の藁除け流れ花筏〉という意味でしょうか
 35 花屑の  何だか夢の中のようでもあるし、動物園の飼育係とも思えて面白い
 48 鯨尺  答を言ってしまっているような
 49 花冷の  花冷えだからと理がつくように思う。いい句なので季語を変えるといいのでは?
07 すかんぽや、35 花屑の は次に採りたかった句です

【 松本てふこ 選 】
○16 本貸して  秋の風だと本とつきすぎだし、隙間ともどこか響き合いすぎてしまうだろう。春の風の斡旋がもたらす優しさ、すこしの冷たさが句の特色となっている。人と人とを繋ぐのが本を抜いた後の隙間、という思考の反転がなんとなく可笑しい。
○17 遠足の  家に帰るまでが遠足なら、家の外を一歩出ればもう遠足は始まっている。この犬はきっとこの子供(?)の日常に組み込まれているのだろうが、この日初めて触ってみているのだな、と分かる。遠足という冒険に踏み出すまえに行われる、日常からの小さな逸脱を「みる」に感じる。鼻っていうのがまた、諧謔。
○32 石垣の  石垣、火事、桜守。使い方によっては雅にも妖しくもなりそうな言葉が、21世紀のまったりした昼間の空気をまとっている。遠い昔の火事を思う心はもちろん、日永の気分も出ている。
○46 海市への  蜃気楼に電話って何なんだ! って読者に突っ込ませておいて、逆に引き入れる。何でこの人何回も電話かけてんの、何で電話つながるの、何で電話話し中なの…疑問は尽きない。だめだこれは、何でって思った時点でこちらの負け。作者にばかされたような、楽しくて虚ろな一句。それこそが海市!?
その他気になった句
 33 うずまいて  全体の調べというか、雰囲気は綺麗にまとめているのだが、中七の「へと」が気になって取れず。「へと」というと一定の方向性がある進み方を想像するのだが、うずまいて吹きだまりへ、という進路とあんまり合わないように思えた。
 40 花の頃  下五の「でも結局檻にいれてるんでしょ」という突き放し感がひりひりと伝わってきて印象深いが、生まれたのが「花の頃」なので、その後どの季節にこの檻を観てもこの句は成り立ってしまう、という点で春の句じゃないなあ、と思ってしまった。
今月は動物園の句が多かったですね! 私も行きたくなりました。

【 足立山渓 選 】
◎02 大空に
○05 四月来る
○15 枝低く
○24 酒蔵の

【 石川順一 選 】
○07 すかんぽや  すっと読んですっと分かる句でそれで居て月並みな感じが無いのがいいと思いました。
○12 初蝶の  そこはかとない想像力を刺激してくれる句で心地よい気がしました。
○29 荒布干す  ああそうですかと言う覚めた感覚では無くて、俳句として先ず先ずうまく行って居るのでは無いでしょうか。
○36 傘持ちて  この句も下手すると、あっそうの一言でスルーしそうな句ですが私はいいと思いました。
他に4句選にはとりませんでしたが、
 51 菜の花や旅に出たいと四歳児
も、なかなかいい句では無いかと思いました。

【 川崎益太郎 選 】
○01 三月の  三月のまだはっきりしない緑よりまだ淡い蛙。取り合わせの上手さ。
○17 遠足の  遠足の朝、まず気になるのはお天気。犬の鼻を触って天気を占う。作者の浮き浮きした気持がよく表されている。
○46 海市への  いつも話し中ということで、海市のもやもや感がよく表されている。
○51 菜の花や  旅に出たい、と四歳児が言った、この諧謔味。菜の花との取り合わせもかわいい。

【 草野ぐり 選 】
○01 三月の  三月の草といえばまだ薄い若草色、それよりさらに淡い蛙。見てみたい。
○15 枝低く  その低く伸びている枝にもみっしりと花をつけているのだろう。
○21 囀りの  囀りが漲るとはどんなにぎやかさだろうか。春一色の景。
○40 花の頃  檻ごしに猿がぺこりと自己紹介しているような不思議な句、そしてなんだか淋しい句。
 04 初蝶の  惹かれたが地の匂いが漠然としていてイメージがつかみにくかった。
 20 赤ん坊の  春らしい明るさがあって好きだった。
 29 荒布干す  塩を商いてが渋い。
 38 自転車の  ほんとに泣きたくなる出来事だが遅日の効き目が弱いか。

【 二川はなの 選 】
○35 花屑の  夢を食う「漠」と花見。夢をみているのか面白い。
○36 傘持ちてささずじまひの虚子忌かな
○40 花の頃  名前の由来か、下五が愉しい。
○51 菜の花や  子供は五歳までの間に、一生分の親孝行をするという。そんな言葉を思い出した。かわいい。
その他思いついたこと。
01 三月の  「より」の意味が「もっと」とも「から」とも取れてしまうのでは?
02 大空に  くたびれ汚れきった上履き、今までのことは精算して「あ〜清々」
04 ペンギンの  玉子がかえった?
14 大手門  上下名詞
48 鯨尺  拙案「目借時鯨尺にて膝打たれ」

【 水口佳子 選 】
○01 三月の  まだ少し寒さの残る三月、冬眠から覚めたばかりの蛙であろうか。まだ地上の光に馴染めないでいるような、命の頼りなさがあらわれている。「草より淡き」がよい。
○17 遠足の  なぜ、遠足の朝犬の鼻に触れるのか?遠足の朝は心も浮き立ち、いつもはしないような行為をしてみたくなるのかもしれない。こういう句にはかえって説明をしない方がいい。単に犬でなく「犬の鼻」まで言ったところがよい。感触が伝わってくるようだ。
○31 鳥の糞  鳥の糞をとるという行為がリアル。何でもない日常の行為とそれを取り囲む自然。鳥と人と桜は関係を持たないようで、しかしどこかでつながりを持っている。
○51 菜の花や  悩み多き4歳児?幼稚園などに通い始めると急にいろいろなことを覚えてきて、生意気なことを言ったりするもの。その成長ぶりを微笑ましく思う。「菜の花」がよく効いている。
他に好きな句
 19 指さして
 20 赤ん坊の
 49 花冷の
その他
 08 「丘を打て」が分からない。「畑を打つ」ということ?
 10 下五が種明かしのようになってしまいました。
 16 中七は「隙間の生まる」として終止形にしないと隙間が生まれたのは春の風のようにとれますね。
 23 「白鷺堂」とあるので下五の「店」は不要と思います。
 28 「流せる」は「流れる」とした方がよい。花筏は水に落ちた花びらがあつまってできたものなので、自然に流れていくものだと思います。
 40 「花の頃」が曖昧。
 42 中八がリズムを崩してしまいました。
 47 春潮の説明になってしまいました。

【 小津無三 選 】
○36 傘持ちて  結局は使わなかった傘と虚子忌の即きかたが大変おもしろいです。
○46 海市への  いろいろなことを想像する楽しみのある句ではないでしょうか。
○12 初蝶の  実際に蝶の匂いを嗅いだことはないわけですが、このように表現されると納得ですね。
○38 自転車の  春の強風に次々倒れていく自転車。斡旋された季語が新鮮でした。
その他好きな句
 07 すかんぽや腹這う牛も喰む牛も
 22 ファスナーの噛みて壊れて亀鳴けり
 31 鳥の糞とって居る間も桜舞う

【 梅原あたみ 選 】
○02 大空に  新学期が始まり学校と我が家の様子が子供のしぐさの中にいろいろの思いがこもっていると思いつつ想像してみました。
○17 遠足の  愛犬に言葉も掛けて鼻をなでてあげる、それは今日の遠足がどれほぞまちどうしかった事か喜びを愛犬にまで伝える微笑ましいです。
○35 花宵の  大胆に物言う中にもここが一番お気に入りの様子いいですね、この様な時間を大切に人生を過したいものです。
○50 いつの世も  全く同感です。

【 鋼つよし 選 】
○05 四月来る  明るく軽快な感じが良い。
○11 激痛の  四月馬鹿の季語がどうかと思うがこんなこともあると思う。
○24 酒蔵の  景色が浮かんで楽しそう。
○42 白熊は  のんびりした気分を表している。

【 中村阿昼 選 】
○02 大空に  高校の卒業かな。これで上履きともおさらば。開放感にあふれた句。
○04 ペンギンの  ペンギンの頭が脚に届くのは春だからってこともないのだろうけど、このほのぼの感は春ならでは。
○23 白鷺堂  花の頃の旅先での一句かな。名物のあなご昆布巻きが美味しそう。
○16 本貸して  なんとなく青春っぽい。
次の句も好きでした。
 07 すかんぽや腹這う牛も喰む牛も
 29 荒布干すかつては塩を商いて
 40 花の頃生まれましたと猿の檻
 41 すつてんとすべりし跡も春の蕗

【 小川春休 選 】
○01 三月の  淡いと言ってもそれほど大きな差はないのでしょうが、そのわずかな差を感じ取ったのが手柄。「淡く」とした方が蛙の存在感が引き立つような気もしましたが、いかがでしょうか?
○17 遠足の  「遠足」という気持ちの弾みが、いつもはしない行動を取らせた、と読みました。いつもより早く目が覚めて、日頃の登校時間より、少し早いのかもしれませんね。穏やかな表現で、かすかな、しかし確かな気持ちの弾みが伝わってくる句だと思いました。
○29 荒布干す  塩やたばこなど、古い看板をたまに目にしますね。「かつては」と言うのだから今はもう塩は売っていない。渋いが中々深みのある味わいの句です。
○35 花屑の  このままでも良い句だと思いますが、「中や」とした方が「我と獏」の存在感が引き立つのではないかとも思います。ぜひ検討してみてください。
 02 大空に  屈託のない明るい「卒業」ですね。開放感があふれています。
 04 ペンギンの  立っているペンギンが足元をつつこうとした姿でしょうか? ペンギンの意図がよく分からないため、ちょっと確信が持てない描写です。「春」も合っているかどうか。
 06 烏貝  「し」では説明になってしまう気がします。「使ふや」もしくは「使ひて」の方が良いのでは?
 07 すかんぽや  「も」を使うときは説明的にならないように注意が必要ですが、この句の場合も「も」ではない方が良さそうです。「と」に置き換えると句が軽やかになりますし、「すかんぽに腹這う牛や喰む牛や」などという形もある。言おうとする内容に対して何パターンもの言い方がある、その中からどの形を選び取るか、そこに俳句を書く面白さがあるのではないかと思っています。
 09 辛夷咲いて  良い意味で馬鹿馬鹿しさのある句で好感を持ちましたが、「お家」が少しやり過ぎかなぁという印象です。下五「屋敷かな」「一軒家」などではいかがでしょう。
 10 玄関に  言わんとすることはよく伝わりますが、雀が巣を作ったら玄関に藁が散った、という原因・結果があらわになっているのが難点です。たとえば「玄関に散る藁屑や雀の子」などとした方が、生き生きと雀の子の姿も見えてくるのではないかと思います。
 11 激痛の  何だかせつないような可笑しいような句です。「ばか」のひらがな表記も好きです。「膝かかえるや」と切ってはいかがでしょう。
 12 初蝶の  感覚の繊細さには好感を持ちましたが、「つけている」が少し冗長な気がします。「初蝶にまだ地の匂い」だけで十分意味は通じるので…。
 13 強風の  語順が不自然ですんなりと読めません。自然な語順で並べると、たとえば「遅き日の強風の中本借りる」のような漢字でしょうか。推敲してみてください。
 15 枝低く  「花の宴」の句で桜の「一樹」を描写するとは、ど真ん中ストレート勝負といったところでしょうか。
 20 赤ん坊の  逆説的に、「赤ん坊の声」以外は雨にかき消されてよく聞こえない。どこか気の遠くなるような景ですね。
 22 ファスナーの  下五でちょっと面白くしすぎちゃったかなぁ、という気がします。
 23 白鷺堂  上五に「白鷺堂」とあるので、「店」は重複する内容です。推敲の際には、上下名詞を避けた方が良さそうな気もします。
 26 銃眼より  中七「花を降らすや」と切った方が「小さき手」への驚きのようなものが感じられると思うのですが、どうでしょう。
 27 散る花を  「散る花」と「雪豹」の組み合わせが美しいです。
 39 残業の  疲れ、手の汚れ、仕事の充実感、それら様々なものが生き生きとした「夜の緑」と響き合っているようです。採りたかった句。
 40 花の頃  他の方の指摘もありましたが、檻の説明書きは年中同じですので、季語としては成立しないでしょう。
 46 海市への  雰囲気のある句ですが、初見の際に違和感を感じました。よくよく考えると、「いつも」があるために「海市」も「いつも」存在しているように読め、そのために「海市」の持つ不思議さが損なわれてしまっているようです。その点が解消されれば良くなりそうです。
 49 花冷の  冷えるからスープに辣油を入れてあったまろう、と読めてしまうのが難点。季語次第で良くなりそう。
 51 菜の花や  三歳にして伊予訛りの彼ももう四歳ですか…。吾子俳句として、しっかり甘さが抑制されていて、味わいのある句になっていると思います。

来月の投句は、5月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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