ハルヤスミ句会 第百十五回

2010年5月

《 句会報 》

01 浜砂に網針(あばり)を拾ふ桜冷え   波子(は・ぐ)

02 はつ夏やポストの上のしづくの朱   春休(波・あ)

03 初夏(はつなつ)や風に自転車倒れ行く 順一(鋼)

04 古民家の背戸の裏山花みかん     山渓(順)

05 卵白をぴんと泡立て窓若葉      華(無・あ・春)

06 すかっとせぬ曇り続きや柿芽吹く   つよし

07 シュプレヒコール噴水の高さまで   佳子(て・益・は・無・鋼)

08 鬼のゐぬかくれんぼうや昭和の日   無三(華・て・鋼)

09 クレマチス力尽きたる如く散る    ぐり

10 かくれんぼうそのまま消えて昭和の日 無三(は)

11 盛大にうつつを抜かす朴の花     春休

12 立ち上がれ言われて困る亀が鳴く   益太郎

13 鯉幟腹まつすぐに泳ぎけり      てふこ(順・佳・ぐ)

14 山若葉パラグライダー谷間より    あたみ

15 たんぽぽや風の決めたる本籍地    益太郎(無)

16 アンケート電話で答ふ初夏(しょか)の日に 順一

17 めまとひをつつ切る黒のワンピース  春休(華・益・佳・阿)

18 ゴールデンウィークも野球部の声   あたみ(波)

19 夜濯のくやしくやしと泣きながら   てふこ

20 ひるめしは松藻ゆれをる池の端    華

21 ゆるゆると壁ころげ落ちががんぼう  春休(て・は)

22 熊の毛を水の滴る薄暑かな      阿昼

23 夏ごろも影絵のやうな母が座し    佳子

24 西瓜苗雨の日に買い晴れの日に植う  順一

25 笹を食ふ象の耳より青葉風      阿昼(無・鋼・春)

26 青草や二日続けて犬の尿       順一

27 廃校の決まる坂道黄水仙       波子(山・阿)

28 木戸開く庭の柚の花匂ひけり     山渓

29 母の日やテープまはせば間延びして  華

30 薫風やスプレー缶に穴開ける     順一(ぐ)

31 水槽の鯵掴み取りの競争す      あたみ(順)

32 薫風やただ黙々と写経せり      山渓

33 外来に人のあふるる牡丹かな     華

34 青嵐移植の苗の吹かれやう      つよし

35 豆飯や料理講師のつけまつ毛     華(あ)

36 梅干のおむすび三個青葉冷      つよし

37 息合はぬままカーニバル終りけり   佳子

38 いたどりや道に影踏む女工どち    波子

39 校章は桐の花なり聖五月       ぐり(山・佳・阿)

40 丹沢で夏風邪もらひ来し男      てふこ(ぐ・波)

41 網代港祭だ鯵のたたき喰え      あたみ(春)

42 億年の色なき雨や花は葉に      益太郎(あ)

43 それとなく母の日のこと尋ねけり   無三(益・佳・阿・春)

44 赤虫をひきちぎり食ひ金魚かな    ぐり(華)

45 遠き日の額の傷や豆ご飯       無三(山・順・益)

46 民宿の玉葱吊るす軒端かな      山渓

47 門付けの獅子囃す歌田植寒      無三(華)

48 兄ちやんはみぞれを選ぶかき氷    阿昼(山・波)

49 一本の松葉刺さりし蟻地獄      春休(て)

50 豆飯のお代りしたる夕の膳      山渓



【 林 華 選 】
○08 鬼のゐぬ  かくれんぼうに鬼がいないというのはよく分からないが、なんだか昭和の日に響いていていい。
○17 めまとひを  めまとひの中を急ぎ足の姿が見える。つつ切るがいい。
○44 赤虫を  金魚の凄さが怖い。ひきちぎり食ふ、としたいと思いました。
○47 門付けの  いい景ですね。見てみたい。
 01 浜砂に  桜冷えのころの誰もいない浜辺の様子が見える。。
 02 はつ夏や  ポストの色がしづくに透けているのが分かりますが、上、まで言わなくてもいいかと。
 04 古民家の  古民家と言わない方がいいと先生が仰ってたように思います。
 06 すかっとせぬ  曇りなら、すかつとせぬは当たり前かな。
 11 盛大に  朴の花の咲いた状態の表現が面白い。
 15 たんぽぽや  たんぽぽに本籍地があるような、面白さを感じた。ちょっと違うが〈本籍は青田の中にありにけり 正巳〉を思い出した。
 19 夜濯の  泣きながら夜濯ぎ。分かります。
 21 ゆるゆると  ががんぼうの姿を上五、中七でよく捉えている。
 22 熊の毛を  動物園の熊でしょうか。「水の滴る」か「薄暑」のどちらかにした方がいいのでは。
 23 夏ごろも  影絵のように ではどうでしょうか。「夏衣」と漢字の方が分かりやすい。夏の頃もと誤読されそう。
 24 西瓜苗  晴れに植う、と五七五にしたい。
 25 笹を食ふ  象も笹を食べるのですか。中七下五面白いですね。
 30 薫風や  穴開けて と止めたいように思います。
 32 薫風や  景がよく見えますが、ちょっと付きすぎかとも。
 34 青嵐  何の苗かとも思いますが、「吹かれやう」がいい。
 39 校章は  季語が妙にマッチしていい。
 41 網代港  勢いがあっておいそうでいい。
 45 遠き日の  豆ご飯の度に幼き日のことを思い出す。柱の傷でなく額の傷ですね。
 49 一本の  よく見ている。

【 松本てふこ 選 】
○07 シュプレヒコール  弧を描くような「シュプレヒコール」という言葉の響きが噴水の形状と不思議な調和を見せる。声のボリュームや話者のテンションを噴水の高さで計ろうとする視点に、あくまでも傍観者である作者の姿が垣間見える。
○08 鬼のゐぬ  10の句と対になっているが、独立させて読めるようになっている。ちょっと理が勝ち過ぎているとは思うが、昭和(というか戦後?)を自らの時代と思い生きた人でないと作れない句であることは確か。
○21 ゆるゆると  落ちゆくががんぼうの脚の動きを語らずに現前させる「ゆるゆると」が手柄。もつれるように落ちたんだろう、きっと。
○49 一本の  上五中七が冴えている。松葉を伝うような、作者の視線が見えた。
その他の注目句
 25 笹を食ふ  耳から風、という思い切った言い方が面白い。口から食べて耳から出す、という循環を感じさせる展開も青葉風の季語にぴったり。欠点はないが、象の夏の句ってけっこう現代俳句で見る気がして、新鮮さを感じなかった。
 29 母の日や  作者の母親観が見える句。母親の生き方や、彼女が生きる時間が子供(何となく、息子さんだと思いました)にはのんびりしているように映るのだろう。「テープまはせば」が、録音・録画の意味の他に過去の音源・映像の再生とも取れてしまい、どっちつかずな印象だったので取れず。

【 足立山渓 選 】
○27 廃校の  廃校が決まって寂しい心を黄水仙で紛らしている、そんな心境がうかがえる。
○39 校章は  授業中の静まり返った校舎に刻まれた金色に輝く桐の花の校章と、「聖五月」の季語とがマッチしている秀句。
○45 遠き日の  この作者も兄弟げんかか何かで、額に傷をつけたようですね。小生は運転手に内緒で、坂道をゆっくり登る木炭車に飛び乗ったが降りる際に上手く降りられず額を深く傷付け今も傷跡が残ってをり、子供の頃が懐かしくよみがえりました。
○48 兄ちゃんは  弟さんは何を選んだのでしょうか。楽しく想像でき、すばらしい句です。
 14 山若葉  景は素晴らしいがなにかリズムが良くないですね。
 15 たんぽぽや  「風の決めたる本籍地」はたんぽぽの絮のことを詠んでいるのだから上五は「たんぽぽの」 としたほうがよいのではないでしょうか。
 25 笹を食ふ  象が耳をぱたぱたして起こる風は青葉風とは言わないのでないでしょうか。
 30 薫風や  せっかくの心地よい薫風の吹くなか、人工的な臭いのスプレー缶を開ける表現は季語とマッチしていないのではしょうか。
 36 梅干の  青葉若葉の郊外でおむすびを食べている楽しい光景が浮かんだが、せっかく楽しい光景も「青葉冷」で台無しになってしまった。「青葉風」ならば特選としたかった。

【 石川順一 選 】
○04 古民家の  古民家と言うだけでは有人か無人か分かりませんが、何かおもむきを感じます。そこへ白くかれんな蜜柑の花と言う取り合わせ、つきすぎず、程好い組み合わせ、場面の切り取りだと思いました。
○13 鯉幟  もう直球でいい場面を過不足無く詠んだ句だと思いました。
○31 水槽の  ほのぼのといい雰囲気をこの句から感じた。
○45 遠き日の  人間の味覚は記憶にも左右されるらしい。傷を負ったからとて憂鬱な記憶とは限らぬであろう。私はこの句からずばり作者は良き思い出を回想して居るのだと推察した。

【 川崎益太郎 選 】
○07 シュプレヒコール  懐かしい言葉です。そうなんです。どんなに叫んでも噴水の高さ以上には届かない。実感の句。
○17 めまといを  めまといを手で払わないで、体で押しのけていくキャリアウーマン。気持ちのいい句。
○43 それとなく  誰が誰に尋ねるのか、はっきりしないが、そこがこの句のいいところ。母の日に対する作者の複雑な思いが伝わる。
○45 遠き日の  額の傷は、戦争? もっと身近な傷を連想した。豆ご飯が効いている。
 昭和の日とかくれんぼの句が2句。どちらもいいと思ってたけれど、結局どちらもとれなかった。同じ作者とすれば、類句、類想を自ら暴露している感じがして損をしているのではと感じた。

【 草野ぐり 選 】
○01 浜砂に  網針のひんやりとした手触りと花冷えが合いすぎているかとも思ったがとても感覚的にわかる。
○13 鯉幟  本当だったら少しはしなうはずの腹をまっすぐと言い切ったところが面白い。気分のいい句。
○30 薫風や  スプレー缶を捨てる時きちんと穴を開ける正しい律儀さと薫風との何ともいえない離れ具合がいい。
○40 丹沢で  丹沢という具体的な地名が効いているというか何故か間抜け感がでて楽しい。
 11 盛大に  朴の花がうつつを抜かしているようにとれる。うつつ抜かすやで切ればどうだろう。でも何にうつつを抜かしているのか知りたい。
 17 めまとひを  映像が浮かぶ。採りたかった句。
 21 ゆるゆると  これもよくわかる。ころげ落ちがちょっと気になった。

【 二川はなの 選 】
投句はお休みさせて頂きましたが、選句で今月も参加させて頂きたいと思います。
勝手な事を書き綴りました。宜しくお願い致します。
○01 浜砂に  上五、中七の行為そのものは、どういうことか見たこともないのですが「桜冷え」にぴったりのように感じ頂きました。
○07 シュプレヒコール  上がる気勢、噴水の方が「もっと、もっと」と囃し立てているようで面白い。
○10 かくれんぼう  茫然自失な感が上五、中七から伝わる。上六が効いていると。
○21 ゆるゆると  本当によく見ておられる。よく気がつかれ・・・。
他に好きな句
 05 卵白を  「窓若葉」が気持ちよい。
 19 夜濯の  運動部の試合後の景?「夜濯」で合宿中のことを思い出した。
 34 青嵐  本当に。共感します。
 41 網代港  威勢の良さが港祭りにぴったり。鯵と網代港もあってる。
 43 それとなく  遠慮がちに当日の母の予定を聞いたりして・・・。何故か「それとなく」なんですよね。遠慮がちに聞くのですね。
 45 遠き日の  額の傷は取っ組み合いの兄弟喧嘩を思い出させるのでしょうか。豆飯と共に郷愁を感じずにいられないこと・・。
 48 兄ちゃんは  何でもお兄ちゃんが目標の下の子、きっとこの子も真似をして・・。
気になりました。
 32 薫風や  中七「ただ黙々と」は写経にあっては当然のことではないでしょうか。

【 水口佳子 選 】
○13 鯉幟  「腹まつすぐに」によって気持のよい風を感じる。しかも風をさえぎるもののない広々とした風景、日差まで見えて来る。またこの言葉には素直な子に育って欲しいとの親の気持ちもあらわれている。「けり」が気持ちいいなあ。
○17 めまとひを  めまとひもワンピースも黒。しかし一方は糢糊としており、もう一方ははっきりとした塊である。糢糊とした黒いものの中を突っ切っていく黒いワンピース、同じ黒でありながら決して紛れることはない。強い意思のようなものを感じる。
○39 校章は  もしかしたら女子高だろうか「聖五月」にはそんなイメージがある。初々しい女学生の弾むような声。古き良き時代の日活映画のような・・・ ちなみに私の高校時代の校章は柏の葉だったが。「校章は柏の葉っぱ・・・」ではあまり鮮明にイメージはわかない。
○43 それとなく  「それとなく」という上五によって深い句となった。なぜ「それとなく」尋ねる必要があったのか、それを考えるといくつもの物語が生まれて来る。切ない。
他に好きな句
 01 砂浜に  中七の具体性がよい。
 24 西瓜苗  字余りでなく「晴れに植う」の方がよいと思ったが。字余りにしたい訳があったのだろうか?
 48 兄ちゃんは  兄ちゃんとみぞれが妙にあっている。弟はイチゴかなあ。
気になる点
 08、10 かくれんぼう  「かくれんぼう」と「昭和の日」が即きすぎと思います。昭和・・・戦争・・・防空壕そんなイメージかしら
 09 クレマチス  比喩が当たり前すぎました。あっと思わせてしかも納得させるような比喩を。
 12 立ち上がれ  動詞を整理したい。
 19 夜濯ぎの  気持はわかります。分かり過ぎるのが欠点かも。
 21 ゆるゆると  「ががんぼ」を「ががんぼう」と言ってよいものか疑問が残りました。
 31 水槽の  材料が多いですね。何を一番言いたいかを整理すれば省略できる言葉が決まると思います。 
 44 赤虫を  中七の表現がやや乱暴のような。
 50 豆飯の  「夕の膳」で説明してしまいました。

【 小津無三 選 】
○05 卵白を  初夏のすがすがしが、硬く立った卵白につながって爽やかです。
○07 シュプレヒコール  最近元気なシュプレヒコールを聞くこともなくなったが、この句では、噴水もシュプレヒコールも勢いがよく快い。
○15 たんぽぽや  風に吹かれるままに。そして落ちたところから始まる。いいですねえ。
○25 笹を食ふ  動物の匂いは生きている証だから、生臭いものではあるけれど、笹とか青葉風と詠まれると、なによりも爽やかな初夏の日差しの中で満足そうに食べている象が伝わってきます。「耳より」がうまいなあと思うのです。

【 喜多波子 選 】
○02 はつ夏や  ポストの上の雫がはっきり見えます
○18 ゴールデンウイーク  はつらつとした少年の声がこだまします
○40 丹沢で  丹沢を登った山男さんの夏風邪が可笑しい!
○48 兄ちゃんは  妹か弟は じゃなにを選んだのか?興味が沸きます

【 梅原あたみ 選 】
○02 はつ夏や  いまはポストをあまり見かけませんネ子供頃のポストを見ては「かくれんぼ」の遊び場所だつた。大人の見る目がポストの上のしずくの朱に変わるんだ**こんな受け止め方をしました。
○05 卵白を  美味しそうな御菓子を作っているのでしょう**外の若葉が目にしみる午後の一時幸せな時間はご家族の事を思いつつ御菓子を作るに間違いありませんネ
○35 豆飯や  集中しようにも若い講師のつけまつ毛が気になってついこのように一句が出来たとでも言いたい気分**豆飯は美味しく出来ましたか、明るい気持ちになりました。
○42 億年の  色なき雨と言う言葉にロマンチックなあじわい深さを感じそこに雨がもたらす花の行く先*大きな葉の上か、はたまた小さな葉の上なのか億年の色なき雨

【 鋼つよし 選 】
○03 初夏(はつなつ)や  初夏の明るい日差しの中広々とした景色に見えてよい
○07 シュプレヒコール  噴水の高さという比喩がいいと思う
○08 鬼のゐぬ  昭和の日という季語が懐かしさもあらわし言いえている
○25 笹を食ふ  大きな象と笹の葉 青葉風のとりあわせがすがすがしい

【 中村阿昼 選 】
○17 めまとひを  めまといが群れるような田舎道を、黒のワンピースの女性が突っ切ってゆく。夏に黒のワンピースとは、お葬式の帰りなのかもしれない。引き結んだ口元が見えるようで、はっとさせられる光景だ。
○27 廃校の  瀬戸内の島々でも、過疎化で廃校や学校統合になったりしているようだ。松山沖のそんな島のひとつに、ここ数年よく海水浴や藷掘りに行くのだが、坂道を登りきった場所から眺める瀬戸の風景は絵のように美しい。この句の黄水仙の咲く坂道からの風景もきっと。
○39 校章は  野山に一際丈高く咲く桐の花が校章なんて、志高くという感じでかっこいい。聖五月という季語は甘くなりがちで難しいが、この句の場合、すっきりと効いている。
○43 それとなく  「何がいい?」ときいてもいつも「何もいらない」という義母へのプレゼントに、結婚して以来、頭を悩ませてきた。この句の「それとなく」には、そんなお互いのちょっとした遠慮や気遣いが感じられて、共感。困ったあげく、今年は「好きなものを買って」と心ばかりのお包みをしたが、それだけでは味気ないので、子供と一緒にカーネーションの寄せ植えの鉢を作った。自分の分と、実家の母の分と合わせて3鉢、結構楽しかった。
下記の句も好きでした。今回、好きな句が多かったです。
 02 はつ夏やポストの上のしづくの朱
 05 卵白をぴんと泡立て窓若葉
 13 鯉幟腹まつすぐに泳ぎけり
 36 梅干のおむすび三個青葉冷
 40 丹沢で夏風邪もらひ来し男
 41 網代港祭だ鯵のたたき喰え
 45 遠き日の額の傷や豆ご飯
 49 一本の松葉刺さりし蟻地獄

【 小川春休 選 】
○05 卵白を  景も鮮明で、「らん」「ぴん」とリズムも良く、とても心地良い句です。上手いなぁ。
○25 笹を食ふ  象の耳を吹き過ぎて自分の方へと青葉風が吹いてきた。笹の匂いや象の匂いの入り混じった青葉風です。「笹を食ふ」という上五の響きが涼しげなのも良い。重層的に風を感じさせてくれる奥行きのある句だと思います。
○41 網代港  勢いの良さ(特に「だ」が良い)、「網代港」という固有名詞の強さ、最後の命令形も力強い。こういう句、私も書きたいです。
○43 それとなく  女性の場合は知りませんが、男性の多くは母の日に何を贈れば良いか等悩むのではないでしょうか。それとなく尋ねちゃう気持ち、よーく分かりますね。
 01 浜砂に  「網針を拾ふ」というと拾った人もしくは拾う動作が句の焦点となりますが、「拾ふ網針や」とすると拾った物の方に焦点が絞られます。想定される色々なパターンの中から、自らの書きたいのはどういうことか、考えてみるのもたのしいのではないかと思います。
 07 シュプレヒコール  噴水ってそんなに高い訳ではないので(せいぜい3mぐらい?)、シュプレヒコールも少し勢い不足のように感じてしまいました。
 09 クレマチス  花が「散る」って普通こういうものなのでは? 更に踏み込んでほしいところです。
 10 かくれんぼう  08の句はよく読み切れませんでしたが(鬼がいなくてかくれんぼが成り立つんでしょうか?)、こちらはうまくぼかして雰囲気のある句になっているように思います。
 12 立ち上がれ  某政党名でしょうか。困ったのは主体か、それとも亀か、ちょっと曖昧な書き方になってますね(意図的にそうしたようにも思われますが)。ただ、動詞が多すぎてまとまりがない印象になっているので、もう少しすっきりした方が良いように思います。
 14 山若葉  内容は良いと思うのですが、言い回し等勢いがもう少しあると、もっと良い句になると思うのですが…。ぜひ推敲してみてください。
 18 ゴールデン  句またがりなのでどこで切るかが問題ですが、五七四になっているようです。「野球部の声す」「野球部の声が」「野球部の聞こえ」などとして五七五にしたい。
 19 夜濯の  「夜濯」と「泣き」の二つの動作を「ながら」で並行させる作りはちょっと散文的な印象。下五「泣いてをり」「泣きにけり」等の方が良いように思います。
 20 ひるめしは  このままでも気持ちの良い句ですが、個人的には「ひるめしや」と上五で打ち出したいところです。
 22 熊の毛を  「毛を」よりも、体のどの部分か読み取れるような表現であればもっと生き生きとした句になるのではないかと思います。
 27 廃校の  学校は何故か坂の上にあることが多いですね。朝の登校時間にはいつも見られた生徒の姿が、廃校となると見られなくなる。その感慨と黄水仙が響き合っています(この黄水仙も、生徒たちが世話していたものかもしれませんね)。ただ、「決まる坂道」はちょっと省略し過ぎの表現のような気も。「決まりし坂や」などとすれば何とかまとまるように思います。
 30 薫風や  感覚的には理解できますが、もっと合う季語があるのではないかという気もします。
 31 水槽の  中七最後の「の」を除いて字余りを解消したいところです。
 32 薫風や  30の句もそうですが、「薫風」という季語はどんな内容でも違和感なく一句になってしまう。しかし逆に、「薫風」しかない!と思わせるような、生き生きとした句にするのは中々難しい季語だと思います。この句ももっと良い季語ありそう。
 33 外来に  五月病とは違うのでしょうが、季節の変わり目で体調を崩しやすい時期ではありますね。「あふるる」から「牡丹」へ繋がる言葉の流れが(あふれたのは牡丹ではなく、あくまで患者なのですが)、「牡丹」の存在感をふくらませているようです。採りたかった句。
 36 梅干の  「冷」の一字が変に読み手に勘ぐらせるところのある句です。一個ぐらいは梅干じゃない方が良かったのかな、そもそも梅干むすびがあんまり好きじゃないのかな、とか…(つまり梅干むすび三個に対して否定的、ということ)。書き手がそういうつもりでない(梅干むすびに対して肯定的)のであれば、下五は「青葉山」などと変な含みのない季語にした方が良いと思いますよ。その方がおむすびが美味しそうな感じがしますし。
 38 いたどりや  「影」は虎杖の影のことだと思うのですが、だとしたらこのように離して書くのはあまり効果的ではないように思います。「いたどりの影や女工ら踏み急ぎ」等とはっきりと書いた方が良いのでは?
 40 丹沢で  西日本の人間にはあまり馴染みのない地名だったので調べてみました。神奈川県北西部に広がる山地で、秩父山地等と合わせて関東山地とも呼ばれているとのこと。かの『ゴジラvsモスラ』の舞台ともなったそうです。山の寒さで風邪を引いたのか、登山仲間からもらったのか。中々に味のある句。
 48 兄ちやんは  子供はちょっとずつ大人っぽい食べ物を食べられるようになるので、兄ちゃんがいちごやレモンでなく「みぞれ」を選んだことが、弟分の子から見ればまぶしく見えたのでしょう。ちなみに春休兄ちゃんは34歳にして珈琲はブラックで飲めるようになりました。


来月の投句は、6月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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