ハルヤスミ句会 第百二十回

2010年10月

《 句会報 》

01 エンピツを離れゆく文字天の川  佳子(て・益・無・春)

02 朝刊がちよつと遅くて鵯の森   春休(佳・阿)

03 硝子戸に映りし秋の雲ひとつ   阿昼

04 グライダーの着地地点の草紅葉  山渓(海)

05 杉箸を割くその音も雁の時    無三(華)

06 友引の日や斎場にくる小鳥    佳子(海)

07 とんぼうが私の目線を通り過ぎ  順一(無)

08 母さんに月の兎の仙薬を     ぐり(て・阿)

09 花梨の実抱へ足湯の諏訪湖畔   山渓

10 鶏頭の鶏頭押しのけ咲きにけり  無三(益・佳・鋼)

11 花を愛ぜ夫亡き庭に金木犀    あたみ

12 養老の秋の滝なり父母と行く   順一

13 どんぐりや闇にはまりし罠となり ねね

14 秋の鴨中の一羽の歩み来る    はなの(順・無)

15 カップルは動画静止画秋の滝   順一

16 口あくとあかぬ実のありあけび棚 華(山・あ)

17 草勢の治まる気配九月尽     つよし

18 秋祭にて飼主を求む犬      春休(ぐ)

19 秋祭ばちを激しく大太鼓     あたみ(山)

20 友泣かせたる子おろおろ木の実落つ 春休(て・山・ぐ・は)

21 早瀬なり姿見えねど秋の鳶    はなの

22 悪性の癌ちふ友や身に入みぬ   つよし

23 踏切を待つ人のなき凶年よ    春休(佳)

24 大小の蘭に囲まれ開店す     あたみ

25 孫を抱く好古翁に伊予の月    阿昼

26 鳳仙花父の墓には入らぬと    無三(益・は・春)

27 秋の蚊の骨あるごとき力かな   益太郎(ね・華・春)

28 吊橋へ差す手のごとき焦げ紅葉  波子

29 保育園園児は眠り秋の滝     順一

30 旧友と並び歩いて蜜柑買ふ    阿昼(華)

31 アルプスの見ゆる牧場や赤蜻蛉  山渓(順)

32 風呂敷を解いてくわりんの実をくるる 海音(ぐ・鋼)

33 夜泣き子を抱きてたゆたう虫の海 ねね(鋼)

34 鳳仙花浅川マキも逝っちまった  無三

35 匙いれて茸餡なる茶碗蒸     華(ぐ・は)

36 予定なし栗ご飯炊く準備する   ねね(順・あ・鋼)

37 コスモスやマリアのごとき初孫と あたみ

38 着ぐるみのジッパー上げて赤い羽根 ぐり(佳)

39 小鳥来し日に印ある手帳かな   ぐり(ね・無)

40 椋の群れ本丸跡の一木に     はなの(海)

41 銀杏落つ先祖の蔵を壊しけり   つよし(海・あ・春)

42 豊年の寺に洋式トイレかな    海音(順・阿)

43 お互いに個の独立を秋の滝    順一

44 閉店の続く町かな鶏頭咲く    無三

45 背伸びして風船蔓の支え棒    あたみ

46 あきざくら此処よりうまれかはる風 佳子(華・益)

47 新蕎麦に列のしんがり並びけり  山渓

48 皮にちよと残る葡萄の実の惜しや 春休(◎阿・ね)

49 塩の道の赤花蕎麦の棚田かな   山渓

50 赤とんぼ石の弁財天の胸     波子(て・山)

51 猫背にも背骨はありて芋の露   益太郎(は・無)

52 魔物棲む森を遠くに曼珠沙華   波子

53 秋霖の卓に音たて牌打てり    華

54 ふる里に残した初恋棗の実    益太郎(あ)

55 電気メーターしづかに回り秋の暮 海音(ね)



【 石川順一 選 】
○14 秋の鴨  純粋にいいなあと思いました。偶々私が今朝走りに行った時に川に居る鴨を見たからでもありますが。
○31 アルプスの  赤蜻蛉は小さいからいいのかなあと他愛もない事を思って見ました。
○36 予定なし  「予定なし」と言うのが効いて居るかなと。日常の些事も馬鹿に出来ないなと思いました。
○42 豊年の  和式トイレを念頭に置いての事かと思いますが、軽い驚きが季語と共に映えて居ると思いました。

【 湯木ねね 選 】
○27 秋の蚊  憎いけど、こういう誉め方もあるのだな、と。
○39 小鳥来し  庭の赤い実を食べにくるのは椋鳥でしたっけ。
○48 皮にちよと  くやしくて、もうひとつ。
○55 電気メーター  まわる速度と、秋の暮れの重さが、いろいろなことを想像させてくれるような。

【 涼野海音 選 】
○04 グライダーの  畳み掛けるような「の」の使用で、着地したときの安定感が出ていると思いました。
○06 友引の  この句の背景には様々な物語がありそう。「友引の日」は深読みさせる要素としてうまく働いているようです。
○40 椋の群れ  下五の焦点の絞り方が効果的。
○41 銀杏落つ  先祖代々の蔵を壊すにはさぞ勇気がいったことでしょう。でも「壊しけり」という素っ気無さが逆に味を出しています。

【 林 華 選 】
○05 杉箸を  杉の箸を割るほんの小さな音に季節感を感じたというところがいかにも俳句らしい。季語の雁がいい。雁の頃ではどうでしょう。    
○27 秋の蚊の  中七以下の表現が新鮮で秋の蚊のしぶとさを感じる。
○30 旧友と  歩いていてふと目に留まった蜜柑を買ったという何気なさがいい。きっと二人で公園かどこかで食べたのでしょうね。
○46 あきざくら  中七以下いいですね。コスモスの風の景とさわやかさが出ている。ひらがな表記もやさしい。
次に採りたかった句
 08 母さんに  やさしい気持ちが分かる。
 14 秋の鴨  みんな泳いでるのに一羽だけが自分の方にきた。微笑ましい。
 18 秋祭にて  飼主求む、などと貼紙があったのかな。取り合わせが面白い。
 41 銀杏落つ  きっと大銀杏だったのだろうな。無念さも伝わる。
 55 電気メーター  夏の間忙しく廻っていたメーター。ようやく静かに。
ちょっと一言
 04 グライダーの  草紅葉がいい。どんなところにグライダーが着地したかよく分かる。「着地」を省略できればもっといい。
 13 どんぐりや  どんぐりが何かの罠にしかけてあるということでしょうか。「や」で切っているのでちょっと分かりにくいです。
 31 アルプスの  絵葉書のよう。
 32 風呂敷を  風呂敷にかりんの実をつつんだ?のは面白い。解いてくくる、がよくわかりません。広げてということでしょうか。
 45 背伸びして  背伸びしたのは作者か、風船蔓?
 47 新蕎麦に  <新蕎麦の列しんがりに並びけり>でしょうか。

【 松本てふこ 選 】
(今月は選句のみ参加です。)
○01 エンピツを  「離れゆく」という情緒的な表現が天の川と響き合っています。文字への愛惜も天の川に集約されて、一句としての仕上がりがとってもロマンチック。私が作者なら「エンピツ」というカタカナ表記は軽いと感じ、漢字にします。
○08 母さんに  口ずさみたくなるリズム感もある、童話のような一句。この句の、『手ぶくろを買いに』などを思わせる、俗世間とかけ離れた寂しく澄んだ空気は季感と観念の世界とが並び立ったからこそではないかと。
○20 友泣かせ  心配な気持ち、でも自分で解決してごらん、という気持ち、両方が下五に託されている。おろおろ、がとぼけた味わい。リズムがちょっと危ういところを魅力と取るかが評価の分かれ目かも!?
○50 赤とんぼ  「冬薔薇石の天使に石の羽根」という草田男の句を思い出しました。草田男の句は西洋だなあ、と思いますが、こちらの句は和風ですね。石の胸を想像するあたりに、屈折していないぬけぬけとしたスケベ心が現れていて好感が持てました。赤とんぼの導入が中七下五とうまくイメージを繋げきれていない点が気になりました。
その他気になった句
 42 豊年の  めでたさとシニカルで現世的な視点の交錯。寺にごーっと響く、水洗の際の音が聴こえてくるようです。
 53 秋霖の  窓の外の秋霖が雀卓にもしみ込んでくる心地がしたのでしょう。まとわりついてくる様々なものを振り払いながら麻雀に興じる姿が浮かびます。私は全く麻雀が分からないのですが、湿り気とタバコの煙の向こうにうっすらと無頼を見ました。
 以上です。うーん休詠はやっぱり悔しい…!!

【 足立山渓 選 】
○16 口あくと  報告書的であるが、よく観察している。
○19 秋祭  中七の表現が豊作に感謝しているようで良い。
○20 友泣かせ  ついつい友達を泣かせて困っている姿が目に浮かぶ。内孫の姿を見ているようだ。
○50 赤とんぼ  止ったところが弁財天の胸、ユーモアがあって桂。

【 川崎益太郎 選 】
○01 エンピツを  エンピツで字を書くさまを、エンピツを離れゆくと表現した面白さ。天の川の季語もぴったり。
○10 鶏頭の  鶏頭は、頭をくっつけあって咲いている。それを鶏頭が鶏頭を押しのけると表現。人生に通じるものも感じられる。
○26 鳳仙花  父の墓に入らぬという強い反発心が、鳳仙花の措辞で、詩的に表現された。人生に対する作者の思いがよく出ている。
○46 あきざくら  あきざくらと風はよく使われるフレーズであるが、うまれかはる風としたところに新鮮さを感じる。

【 草野ぐり 選 】
○18 秋祭  何やら犬の方が上から目線の感じが。一体どんな犬だろう。きりりとした和犬かな。
○20 友泣かせ  泣かせた子、泣いている子、どうしていいかわからない空気のなかをしきりに木の実が落ちる。素直なストレートさにきゅんとした。
○32 風呂敷を  風呂敷を解く手元がクローズアップされる感じ。しなやかな動きがある句。
○35 匙いれて  茸餡、、。初めて聞いたが秋の味覚がどっさり入った茶碗蒸なのだろう。匙いれてでますます美味しそう。
 14 秋の鴨  人懐っこい一羽がひょこひょこと。秋の穏やかな一日。
 42 豊年の  何の脈絡もないのだが、『洋式トイレかな』のすっとぼけた感じが豊年のめでたさと妙にあっている。
 48 皮にちよと  わたしもいつもそう思います。惜しや の嘆きがいい。

【 二川はなの 選 】
○20 友泣かせ  かわいらしい姿と見つめる大人の優しい視線が。
○26 鳳仙花父の墓には入らぬと
○35 匙いれて  おもむろに匙を入れて「どれどれ・・」
○51 猫背にも背骨はありて芋の露

【 水口佳子 選 】
○02 朝刊が  鵯は姿も鳴き声も少し異様で、ダークなイメージであるのだが「鵯の森」と言われると急に物語が生まれて来るようでそこに惹かれた。朝刊が遅かったのはその日だけなのか、或いはいつもほかの所に比べて遅く来ると言うのか、そのあたりよく分からないが、物語の始まるシーンとして「朝刊がちょつと遅くて」という、いかにもどこにでもよくありそうな事をフレーズとして据えたのもよいと思う。
○10 鶏頭の  「鶏頭」の字面がこの句の場合よく効いていると思う。鶏頭同士がヅツキをしているような。向日葵とかコスモスとかほかの花と置き換えてみたけどやっぱり鶏頭が一番合っているように思う。また子規の鶏頭の句に対する論争(名句か駄句か)のことなども頭をよぎった。
○23 踏切を  踏切には遮断機が下りていて、その遮断機が上がるのを待つ人・・・という意味での「を」だと思う。待つという行為自体、何かしらわくわくする気持ちに繋がっているようにも思うのだが、「待つ人のなき」と「凶年」という言葉によってそこには失望感がただよう。
○38 気ぐるみの  赤い羽根共同募金も、街中で売っているところはほとんど見かけなくなった。気ぐるみを着てのキャンペーンであろうか。気ぐるみを着ている人の時給はいくらなのかしら・・・などとオバサンはすぐそっちの方を思ってしまうのだが。着ぐるみの中の暗さと街の賑わいが「ジッパー上げて」によって一瞬のうちに隔てられた。着ぐるみはいつも笑顔で、でも近づくと案外薄汚れていたりもする。「赤い羽根」の舞台裏を垣間見た感じ。
 ほかに気になる句
 07 とんぼうが  トンボの動きが見えて良い句だと思いましたが、「目線」は「視線」とした方がよいのではないかと思いました。
 11 花を愛ぜ  「愛ぜ」は「愛で」(終止形愛づ)が正しいと思います。
 18 秋祭  秋祭の賑わいとその中で飼い主を求めている犬と・・・好きな句でした。ちょっと切なくなりますね。ただ「飼主を求む犬」の「求む」に引っ掛かりました。貼り紙などではよく「飼主を求む」と記してありますが、この句の場合は犬に掛っているので「求むる」ではないかなあと思いますが。「犬」を省略するという手もありますね。
 26 鳳仙花  種子がぱっと飛ぶ鳳仙花がこの場合よく効いていると思いました。 34の鳳仙花もいいですね。
 42 豊年の  これは意表を突かれました。面白い句だと思います。シンプルなところもいい。
 48 皮にちよと  目のつけどころがユニーク。でも「惜しや」まで言わない方がいい。
 50 赤とんぼ  弁財天の胸は冷たかったでしょうか、それとも意外と暖かだった?よくできている句だと思います。
 55 電気メーター  惹かれた句です。季語がややつき過ぎのようにも思います。

【 小津無三 選 】
○39 小鳥来し おだやかなゆとりある暮しがうらやましいです。
○01 エンピツを 浪漫的な響きに惹かれました。
○07 とんぼうが 今年は当地ではトンボを見ることがほんとに少なかったです。トンボが目の前をよぎる様が、素直に的確に捉えられています。
○14 秋の鴨 こういうこともあるんでしょうね。何かほのぼのとしていて好きな句です。
○51 猫背にも とぼけた味が魅力の句です。

【 喜多波子 選 】
(今月は選句お休みです。)

【 梅原あたみ 選 】
○16 口あくと  見たままを詩っていらっしゃいますが、なんだか温かさを感じました。
○36 予定なし  いきなり予定なし、がこの句の注目をするところの様に思います。私なら来客用に! または亡き主人の好物ゆえに仏壇に! なぞなぞと予定が一杯有ります考えるとおもしろい、ゆかいな方ですネ
○41 銀杏落つ  古き良き物を壊す、一言には言えない思いがおありの事でしょう。俳句になさいますといつまでもこの時の感情が残り宝物に成ります。
○54 ふる里に  この様なロマンチックな詩にホットしています。発表の日の楽しみに!

【 鋼つよし 選 】
○10 鶏頭の  いかにも秋らしい景色が描かれている。
○32 風呂敷を  こんなタッチの句が好きですね。
○33 夜泣き子を  虫の海はちょとわかりづらいが虫時雨のことと頂いた。
○36 予定なし  おいしそうで良い句と思う。

【 中村阿昼 選 】
◎48 皮にちよと  そうそう、誰もが一度は思ったことがあるけれど、誰も句にしたことがない(たぶん)。ことを、実に的確に過不足なく詠んでいる。
○02 朝刊が  朝刊をとりにでると、今日はまだ来ていない。向こうの森からしきりに鵯の声。空は澄んで、いかにも秋の朝。
○42 豊年の  足腰の痛いお年寄には、やっぱり洋式じゃないと、という声も多いらしく、うちの近くの公民館のトイレも改装されるらしい。一見ばかばかしいような句だが、そういう思いやりも感じられるような。
○08 母さんに  月の兎の仙薬はお月様の色なのかな。こんな可愛いことを子供が言ってくれたら、病気なんてすぐ治ってしまいそう。
 以下の句も好きでした。
 05 杉箸を割くその音も雁の時    
 27 秋の蚊の骨あるごとき力かな   
 32 風呂敷を解いてくわりんの実をくるる
 34 鳳仙花浅川マキも逝っちまった  
 37 コスモスやマリアのごとき初孫と 
 55 電気メーターしづかに回り秋の暮 

【 小川春休 選 】
○01 エンピツを  天の川、文字、となると、想い人への手紙でしょうか。どれだけ思いを込めて文字を書いても、最後には鉛筆は文字から離れざるを得ません。そして手紙も、仲介者の手に委ねるほかない。人を想うということの本質的な淋しさが感じられる句。
○26 鳳仙花  投げ出すような「父の墓には入らぬ」。発言者が息子か娘かもはっきりしませんが、「鳳仙花」を手がかりに読めば、どちらかと言うと娘かなぁと思われます。父に対する娘の怒りや嫌悪といった感情が感じられますが、何と言っても「鳳仙花」ですから、それほど深刻、陰湿な感じはありません。
○27 秋の蚊の  秋の蚊がまだまだ元気である、という裏切り自体はそれほど珍しくはありませんが、それを「骨あるごとき」と表現したことによって、その蚊の力強さや体付きまで想像されます。「力かな」というまとめは少し大雑把な気もしますが、具体的な動作等にするとかえって句の勢いが削がれてしまうかもしれないですね。
○41 銀杏落つ  情に流されずに描写した点に好感を持ちました。秋らしい気候の中、先祖代々続いてきた蔵を壊したのでしょう。そして来年以降も、秋には同じように銀杏が落ちるのでしょう、そこにはもう、あの蔵はありませんが…。
 04 グライダーの  「着地地点」という表現、確かに正確ではあるのですが、硬い気がします。その硬さのせいで、せっかくの「グライダーの着地」という動きのダイナミックさが感じられないのが何とももったいない。動きのダイナミックさと草紅葉の鮮やかさとを、もっと生き生きと取り合わすことが出来るのではないでしょうか。ぜひ推敲を!
 05 杉箸を  雰囲気は好きなのですが、「その」「の時」と重なると少々回りくどいようにも感じます。例えば「かりがねや杉箸を割くその音も」等、切れを活かしてすっきりと仕立てた方が句に広がりが出るように思います。
 08 母さんに  幻想的な句ですが、欲を言えば、ちょこっとだけリアリティが欲しい。ディテールの描写などにかすかなリアリティがあればこそ、幻想にも命が宿ると思うのです。
 10 鶏頭の  しっかりした写生句ですが、波多野爽波の〈帚木が帚木を押し傾けて〉に近いような気がしています。
 11 花を愛ぜ  「めづ(愛づ)」の活用はダ行下二段活用なので、この句の場合「めで(愛で)」となります。少なくとも、ザ行の活用にはなりません。
 13 どんぐりや  それぞれの動詞の主体が何なのか、読み取りづらい(敢えて曖昧にする、という方法もない訳ではありませんが…)。何が「闇にはま」ったのか、何が「罠とな」ったのか。それとも「罠」の隣に何かがある?
 16 口あくと  素朴・率直な描写ですが、「あけび棚」であれば「実」は不要のような気もします。例えば「口あくとあかぬとありてあけび棚」のような感じでしょうか。
 19 秋祭  確かに祭らしい句ではありますが、祭というものはだいたいこういうもの、という枠に収まっているように思います。もう一歩、観察を深めてほしいところです。
 21 早瀬なり  澄んだ鳶の声が聞こえてきます。崇徳院の〈瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ〉を思い出しました。
 22 悪性の  江国滋の〈おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒〉を思い出しました。こういう想いの表出の句は季語がツキスギでも、それもまたよし、という感じがしますね。
 29 保育園  「園児」とだけ書けば保育園(または幼稚園)だと分かるので、上五の説明は不要かと思います。「眠り」だけでは「秋の滝」との距離・関係も分からないので、もう少し描写に具体性が欲しいところです。
 30 旧友と  何げないひとときが一番幸せなときかもなぁ、とこの句を読んで思いました。
 32 風呂敷を  素朴な厚情があたたかい句ですが、「風呂敷を解いて呉るるやくわりんの実」と下五に「くわりんの実」を持ってきた方が、景の焦点が絞られ、安定感が増すように思います。
 34 鳳仙花  湿っぽい季語ではなく「鳳仙花」というところが良いですね。私は世代が違うので「浅川マキ」の存在が実感としてはよく分からないのが残念ですが…。
 35 匙いれて  すんなりと詠まれているところが良いですね。
 37 コスモスや  お孫さんが女の子だったのでイエスではなく「マリア」なのかと思いますが、マリア様の赤子時代の絵姿等を拝見したことがなく、あまり想像がつきません。
 38 着ぐるみの  「赤い羽根」のおかげで景はよく見えるのですが、何のための「着ぐるみ」かの説明になってしまっている面もあり、上五中七の面白さを損なっている気もします。もう少し離した季語の方が句のイメージが広がるかもしれません。
 45 背伸びして  背伸びをしたのは「支え棒」? 「風船蔓」? それとも句中の主体である人が背伸びをして「支え棒」を設置した? この辺りがすんなり分かるように書いてほしいところです。
 46 あきざくら  風そのものは目に見えないのですが、秋桜の様を見てこのように感じた表現に共感しました。
 49 塩の道の  すっきりとした描写に好感を持ちました。個人的には、「赤花蕎麦の」よりも「花蕎麦赤き」とした方が、より景が鮮明になるように思いました。
 52 魔物棲む  「魔物」という難しい素材を詠み込もうとしたところは買いますが、残念ながら「曼珠沙華」ではツキスギです。
 55 電気メーター  「電気メーター」に着目した点は面白いと思いますが、もっとその着眼点が活かされる描写、季語があるのではないでしょうか。もっと良くなる句と思います。


来月の投句は、11月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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