ハルヤスミ句会 第百二十二回

2010年12月

《 句会報 》

01 枯野行くうつくしき蛇ふところに  佳子(順・益)

02 だんだんと頭空つぽ枯蓮      海音

03 大銀杏はらはら舞い散る多賀社   あたみ

04 短日や母はリハビリして帰る    順一(海・波)

05 赤い羽根もとの姿を想像す     ねね

06 口ずさむごとく寒さを言ふ君等   てふこ(佳・春)

07 冬日中じつと動かぬ蠅を打つ    つよし

08 厨子仏身をしゃがむれば息白し   波子

09 耳当を取りて耳朶触らせる     ぐり(て・益・佳・波)

10 撒きし餌に日向の庭の寒雀     山渓

11 手袋に残る火種の匂いかな     益太郎(ぐ・鋼・春)

12 蓮っ葉な言葉でからかひ枇杷の花  無三

13 凩に暮れて見えなくなりし橋    春休(て・ぐ)

14 被爆樹も電飾化粧十二月      益太郎(順・ね・山・あ)

15 大根引く力まかせが腰の痛     あたみ

16 粕汁にお玉沈んでしまひけり    春休(ね・海)

17 大根を煮てをり電話鳴つてをり   海音(て・益・ぐ・鋼・春)

18 嫗なるも長靴履きに紙を漉く    山渓

19 狼藉や坂一面の冬紅葉       無三

20 熱燗や発車のベルを背(せな)に聞く 山渓(波・鋼)

21 蒲団干す日と決めてまた二度寝かな ぐり

22 柚子風呂や風呂の蛇口は漏れ続け  順一(山・鋼)

23 白障子桟の投網の模様浮く     山渓

24 熱燗やアンテナ少し尖り出す    益太郎(佳)

25 柚子湯する客の興味も我がものに  あたみ

26 でたらめの限りはつくせましたか寒の月 無三(ね)

27 霙きてかたまりゐるは龍の髭    つよし

28 息白く打ち合わせから打ち合わせ  てふこ(ぐ)

29 賀状書く誰もが皆んな懐かしく   あたみ(順・山)

30 伊勢海老の様な大きな海老を食べ  順一

31 書道展師走と言うに鎌倉に     あたみ

32 人参の皮を剥くとか剥かぬとか   佳子(あ)

33 捨て惜しむ母と言ひ合ひ日を数う  つよし

34 年の瀬の天理教会だんご汁     波子(あ)

35 闇汁や懐かしき青春時代      山渓

36 絶交にポインセチアの赤に水    波子

37 結氷期息吐き切つてから勝負    ぐり

38 湯豆腐や豆乳汁の中にある     順一

39 マトリョシカのごとき隣人回覧板  ねね(佳)

40 オリオンや泳がなければ死ぬ魚   佳子(益・春)

41 姫りんご後部座席に転げたる    ねね(海・あ)

42 梟の闇ふくらんできたりけり    海音(ね・波)

43 冬枯れの丘にふたりでならぶけり  無三(順)

44 牛鍋の肉を卵につけて食べ     順一

45 クリスマスツリーの灯とてしぐるるよ 春休

46 枯松葉庭がこんなに広いとは    無三(て・山)

47 忘年やあつといふ間に酒つめた   てふこ(海)



【 石川順一 選 】
○01 枯野行く  季重なりが気にならない程表現が清新かと思いました。「うつくしき蛇」と言うのがやはりアクセントになって居ると思った。
○14 被爆樹も  被爆樹の電飾装飾と言うのが美しいと思いました。
○29 賀状書く  皆んな懐かしいと言うのが珍しい心の動きだと思いました。
○43 冬枯れの  「ならびけり」のつもりか、誤植なのか、まあそれはいいとして並ぶ二人が如何様にも想像出来て楽しい気分になりました。

【 湯木ねね 選 】
○26 でたらめの  自問自答は年の瀬だからでしょうか。斎藤和義の曲に、月と話をする、というのがあったなと思い出してみたり。
○16 粕汁に  あわわ・・・一緒に途方にくれました。
○14 被爆樹  見慣れてしまった景色も、木の視点になって見ると違ってみえるかも。
○42 梟の闇  ふくらむのが、ふくろうなのか闇なのか、境目があいまいなほどの不気味さも心地よいですね。

【 涼野海音 選 】
○04 短日や  お母様を見守るあたたかなまなざし。
○16 粕汁に  しまった!という気持ちが「しまひけり」で伝わりました。
○47 忘年や  時間の経過が酒の冷たさに託された一句。
○41 姫りんご  「後部座席」にリアリティあり。あえて「姫りんご」といっているところもまた意味深長に思えました。

【 林 華 選 】
(今月はお休みです。)

【 松本てふこ 選 】
○09 耳当を  少し思わせぶりな仕種。親密さの表現?下五の終止形が曖昧な句の世界をきりりと終わらせていて好感が持てました。耳当に守られていた耳朶の温もりが言葉で伝わり、不思議に心地好い気恥ずかしさを覚えます。
○13 凩に  凩に、と切って読むのでしょうか。中七下五のあわれさが染みます。じわじわくる読後感。
○17 大根を  煮えながら透き通ってゆく大根の色と、鳴りつづける電話。今ふうのマナーモードだの着うただのではなく、ジリリ、と鳴るような昭和の頃の呼び出し音が似合いますね。いたってシンプルな一句。ただただこの日常の一瞬の逡巡を味わいたいです。
○46 枯松葉  ぽかん、とした一句。感慨があまりにも無防備に詠まれています。何で枯松葉なのか、必然性はあまり感じなかったのですが、「まあまあいいじゃないの」と作者に丸め込まれたような、そんな気分。

【 足立山渓 選 】
○14 被爆樹も  広島へは行ったことがありませんが、景が浮かびます。上五が効きますね。
○22 柚子風呂や  経験あります。
○29 賀状書く  確かに宛先を書く時思いますよね。
○46 枯松葉  確かに葉が散ると広く感じますね。口語調がいいですね。
 01 枯野行く  いくら美しい蛇でも蛇を懐に抱いて枯野を行く」なんて想像するだけでも気持ち悪いですね。
 03 大銀杏  中八は感心しませんが。
 12 蓮っ葉な  「軽薄な言葉」と「枇杷の花」との関連は?。意味不明。
 15 大根引く  経験あり景は理解できますが中七から下五へのリズムが悪いですね。
 16 粕汁に  「根深汁」「のつぺい汁」「闇汁」季語が動きますね。「味噌汁」にだってお玉はするつと滑って沈みます。
 17 大根を  「・・・をり・・をり」面白い表現方法ですね。しかし、それでどうした?。
 19 狼藉や  上五と季語との関係は?。真っ赤な冬紅葉の坂道で突然切りつけ血しぶきが上がった、などの映画のシーンでしょうか。
 21 蒲団干す  「また二度寝」とあるから合計4回なのか?
 24 熱燗や  酔ってくるとアンテナも尖って見えますよね。
 26 でたらめの限りは  基本的には俳句は五七五。中十一ですね。それでいて意味不明。
 30 伊勢海老の  羨ましいですね。切れがないので、それでどうした。ということになりますね。
 32 人参の  そうですか。それでどうしたの。
 33 捨て惜しむ  いい景ですね。「言ひ合ふ年の暮」だったら◎ですね。
 34 年の瀬の  教会の信者でないと年の瀬の教会のことはわかりませんね。
 36 絶交に  意味不明
 37 結氷期  意味不明
 38 湯豆腐や  「湯豆腐や」で切れている。すると豆乳汁の中にあるものは何ですか。
 39 マトリョシカの  ごめんなさい。どれが季語ですか。
 40 オリオンや  解かりません。寒鯉など動かないが死なない。
 41 姫りんご  面白い景ですね。
 43 冬枯れの  下五が「けり」だから連用形の「並びけり」ではないでしょうか。
 44 牛鍋の  「食べ」と連用形で終わっているので、切れが無いですね。食べてどうしたの?。
 45 クリスマス  「クリスマスツリー」「しぐれ」は季重なりではないでしょうか。

【 川崎益太郎 選 】
○01 枯野行く  「うつくしき蛇をふところに」という幻想的な表現に惹かれた。季重ね多少気になったが、枯野と蛇が同等の価値観を持ちながら句が壊れない力強さを感じた。
○09 耳当を  ほのぼのとした甘い青春のかわいいエロス。この先が知りたい。
○17 大根を  をりをり俳句は、パターン化した感じもするが、大根と電話の取り合わせが上手い。作者の心境がよく出ている。
○40 オリオンや  魚は泳ぐもので、これを止めると死んでしまう。当たり前のことであるが、オリオンと取り合わされて、奥深い詩になった。

【 草野ぐり 選 】
○11 手袋に  この手袋は軍手だろうか、(薪をくべる時とか)そうなると四季を通じて使うようにも思うが匂ひが火種の匂いとも冬の匂いとも感じられる。しんとした寒さも。
○13 凩に  寒々とした風景、橋が見えなくなるほどとは外灯もないようなところなのだろう。一層寒さが沁みる。
○17 大根を  大根を煮ている、電話が鳴っている、慌ただしい一日、あ、でも作者は電話をとろうとしないのですね。そうなるとちょっと不安な気分にさせる句だ。
○28 息白く  まさに働き盛り、息白くがエネルギーに溢れている。
 01 枯野行く  幻想小説のはじまりのよう。
 14 被爆樹も  電飾化粧というごつごつした言い方が被爆樹のイルミネーションに切なくあっている。
 39 マトリョシカの  うちのマンションにもマトリョシカのごとき親子がいます。季語が欲しい。

【 二川はなの 選 】
(今月はお休みです。)

【 水口佳子 選 】
○06 口ずさむ  〈君等〉というと三鬼の句を思い出すが、その句が下敷きにあるようにも思える。〈口ずさむごとく〉言うのはやはり女子高生か。明らかに〈君等〉と作者とのあいだには距離がある。キャピキャピした娘たちを少しだけ冷めた目で見ているようにも・・・
○09 耳当を  (触らせる)という下五に両者の信頼関係がうかがえる。母子だろうか恋人同士だろうか、きっと白く柔らかな耳朶だろう。余計なことを何も言わず、スッキリまとめてあり、想像の膨らむ句。
○24 熱燗や  〈熱燗〉を呑んで少しだけ酔いが回ってきたところか。そういう時は神経が過敏で人の声がストレートに耳に伝わってくる。作者は〈アンテナ少し尖り出す〉とその感覚を表現した。のんべえにはよくわかる感覚。
○39 マトリョシカの  〈マトリョシカのごとき〉とは一体どんな感じなのか・・・単に似ているというのでは面白くない。可愛いけど無表情といったところか。例えばお隣もそのまたお隣も、そのまたまたお隣もマトリョシカのような人なのかもしれない。そして次々回覧板を回してくる・・・そういえば最近の若い子は皆同じ顔しているように思えてならないのだが。少し不気味な感じがしないでもない。

【 小津無三 選 】
(今月は選句お休みです。)

【 喜多波子 選 】
俳句王国 川崎様ご苦労様でした!
ドキドキしながら 見せていただきました。
○04 短日や  多くを言わず短日の実感溢れる上手い句です
○09 耳当を  耳当ての効果を耳に触れさせるやり方が温かくて好きな句です
○20 熱燗や  発車のベルを聞きながらもう少し居たい縄のれん 男の背中が淋しく見えます!
○42 梟の  梟も・・森の中の闇も膨らんでゆく様な静寂な夜を感じます
皆様 良いお年をお迎えくださいませ
また来年も宜しくお願いします

【 梅原あたみ 選 】
○14 被爆樹も電飾化粧十二月
○32 人参の皮を剥くとか剥かぬとか
○34 年の瀬の  私は二十歳の時奈良の天理教に三ヶ月居ました。懐かしく思います。
○41 姫りんご後部座席に転げたる

【 鋼つよし 選 】
○11 手袋に  句のリズムがよく匂いを感じたのが良かった。
○17 大根を  大根と電話 をり をりの繰り返しが良い
○20 熱燗や  様子が私なりに浮かんで良い句と思う。
○22 柚子風呂や  タイル張りの年季の入った風呂を想像して柚子風呂に合っているようだ。
 以上よろしくお願いします。
 一年ありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください

【 中村阿昼 選 】
(今月はお休みです。)

【 小川春休 選 】
○06 口ずさむ  「君等」の性別も年齢も書かれていない訳ですが、普通に読めば、少なくとも書き手(の世代自体が謎なのですが)よりは若い世代。ハイティーンから二十代前半の世代という印象です。寒さを口にするのに世代によって差があることを巧みに描写している。西東三鬼の〈おそるべき君等の乳房夏来たる〉に着目した佳子さんの鑑賞がありましたが、鋭い鑑賞だと思います。
○11 手袋に  簡潔ながら想像の広がる句。無駄のない句の作りが良いです。
○17 大根を  慌ててしまうシチュエーションを、突き放して坦々と詠んでいる点がユーモラス。こういうユーモアは俳句ならではだなぁ、と思います。
○40 オリオンや  調べてみると、泳がなければ呼吸ができなくて死んでしまう魚はけっこういるようですね。その印象的な魚の生態から、夜空と海とがつながります。
 01 枯野行く  現実的な蛇の運搬作業ではなく、象徴的に詠もうとされたのだと思いますが、それにしても材料を盛り込みすぎの印象です。蛇をふところに入れているだけで十分に印象的なので「うつくしき」は言いすぎのような気がします。写実的な句でもそうでない句でも、言葉少なく印象は深くありたいものです。
 05 赤い羽根  こういう句もありだと思うのですが、「想像す」だと、想像している人の姿も一緒に見えてきてしまう。「もとの姿はいかならん」などと疑問形で終われば、赤い羽根と鳥の姿とに焦点が絞られるのではないかと思います。
 09 耳当を  内容はあたたかみと茶目っ気があり良いと思うのですが、少々散文的なのが気になります。例えば〈耳当を取りてさはらせ右の耳〉など、下五を名詞で終わらせると、句も安定し、物もよく見えてくるように思います。この句に限った話ではありませんが、一句の中で「動き」を主とするのか「物」を主とするのか、意識しながら句作すると、適切な表現にたどり着くのに非常に助けになるように思います。触らせるという動作と耳たぶという物と、どちらを主とするべきか、考えながら推敲してみてください。
 14 被爆樹も  「電飾」は季語ではありませんが、やはりクリスマスシーズンのもの、という気がします。となると「十二月」があまり効いていないかなぁ、とも思います。
 21 蒲団干す  「また」と「二度寝」は意味としては重複します。頭痛が痛い、などというのと近い。
 22 柚子風呂や  こちらも重複、「風呂」を二回言う必要はないでしょう。上五が「柚子風呂や」であれば、わざわざ「風呂の」と言わずとも、「蛇口」とだけ言えば風呂の蛇口だと分かります。
 24 熱燗や  夕暮れどきから熱燗をやりはじめて、日がさらに落ちると、冬の月光のもとに先ほどよりアンテナがその鋭さを増したように見えてきた。外の寒々とした景との対比が、熱燗のある幸せを際立たせてくれる。
 25 柚子湯する  「柚子湯する」という言い方は正確ではないのでは? 柚子湯に入っているのか、柚子湯の仕度をしているのかよく分かりません。そこが分からないので、「客」が何の客なのか分かりにくい。柚子湯に入っていたら客が覗きに来るということ?
 26 でたらめの限りは  かなりの破調ですが、上五の大幅な字余りと読むべきでしょうね。ただ、季語「寒の月」が読む手がかりにもあまりならず、効いていないようです。書き手がどういう意図で書いたのか気になった句です。
 28 息白く  打ち合わせから打ち合わせへの移動での屋外、白い息を吐きながらダッシュです。句のリズムも勢いがあり、元気があってよろしい。
 29 賀状書く  気持ちは良く分かりますが、「賀状」とはそういうものという概念の枠の内に収まってしまっているように思います。
 32 人参の  姑「人参は皮の所に栄養があるんだから剥かずに食べた方が良いのよ!」嫁「栽培するのに農薬だって使ってるんですから、皮は剥かなくちゃだめですよ!」みたいなやりとりが目に浮かびます…。
 33 捨て惜しむ  「捨て惜しむ母」という表現は簡潔にして人格を見事に言い表しています。しかし、一句全体で見ると、動詞が多すぎるせいもあり、まとまりがない印象です。せめて下五を名詞の季語に言い替えたいところ。
 35 闇汁や  「青春時代」を形容するのに「懐かしき」は当たり前すぎると思います。
 36 絶交に  赤いポインセチアに水をやるという行動と、「絶交」との取り合わせは分かりますが、「絶交に」の「に」が曖昧なのではないでしょうか。「絶交や」と切りたいところです。
 37 結氷期  勝負といってもいろいろあります、剣道・柔道・囲碁・将棋・その他もろもろ。何の勝負か分かるような手がかりを詠み込むことで、句の具象性が確保され、「結氷期」も生きてくるように思います。
 39 マトリョシカの  「マトリョシカのごとき隣人」から、隣人の佇まいや、隣人そっくりの子どもたちがいるのかなど、想像が広がります。しかし、下五の「回覧板」は単なる説明に過ぎず、面白くないんじゃないかなぁ。季語にした方が良いとは限りませんが、もっと良い下五があるはず。
 47 忘年や  中七下五のフレーズは面白いと思うのですが、季語があまり効いていないというか狙いが見えすぎるというか…。「忘年」だと、熱燗が冷えたというだけでなくて、一年もあっという間に過ぎてしまったなぁ、みたいな感慨に直結してしまう。もう少しとぼけていても良いのでは?

来月の投句は、1月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

back
back.
top
top.