ハルヤスミ句会 第十三回

2001年10月

《 句会報 》

01 桐一葉しばらく風のなすがまま   春休(呂・む)

02 コスモスや抜きん出ている寺の屋根 むかご(春)

03 福助の鞐鈍かり秋の足袋      呂木

04 口ぢゅうに林檎をつめて咽にけり  つよし(む)

05 二人きり水引草を分け入りて    阿昼

06 芋掘るや丘の突端まで畑      むかご(◎つ・ふ・阿・春)

07 枇杷熟れてながながしきは猫の胴  春休(ふ・阿)

08 靴下にまた来てみても秋の蚊よ   つよし(呂)

09 月光や大爺の音紡ぐ指       呂木

10 水底を亀は歩くや秋深し      むかご(呂・つ・阿・春)

11 水引の蕊から蕊へ蜘蛛の糸     阿昼(む・つ)

12 水引の花てのひらに滑らせて    阿昼

13 オケを駆る黒装束に秋の雷     呂木

14 秋茜糞りて息の治まりぬ      つよし

15 障子貼つて鴉の声のあたたかき   春休(ふ)



【 沼呂木 選 】
01 桐一葉  そのまんまに感動して、○ですね。そう『しばらく』ですよね。注目されるのは・・・・これが秋というものでしょう。
08 靴下に  この感じも秋ですね。薄い靴下でさえも射通すことができないんでしょうね。哀れさに共感をもって○最も強い蚊もいますけどね
10 水底を  澄んでいるんでしょうね。この水は・・・・・・ 亀が歩いているのに注目できるのも秋。水面に映る空の色が見えてくるようです。出だしを『天空に』ではどうなんでしょう?

【 松尾むかご 選 】
01 桐一葉…読み手も桐の葉になってみると、気持ちが軽く、ゆったりしてくる
04 口ぢゅうに…林檎以外のものなら詩にならないがつがつとした、荒々しいエネルギーを感じる
11 水引の…ごま粒の様な水引の花の先に1本糸くずの様に飛び出している蕊この蕊と蕊に蜘蛛の糸が掛かっているなんて、いつも虫眼鏡を持ち歩かなくては(実は確かめに行きました蕊なんて見たことなくてありました)
(その他)
03 福助の…鞐の1つ1つに福助が付いてい鈍く光ってる目の付け所が面白いが秋の足袋がね、鞐といえば足袋は、なくてもわかるのでは

【 鋼つよし 選 】
(特選)06 芋掘るや  広々とした、サツマイモ畑なんでしょうね。サツマイモの葉っぱが風にゆれているようだ。
10 水底を  作者は、水底を歩く亀をみて秋の深さを感じた次第。私だったらなにを感じるかなと考えました。
11 水引の  水引の蕊に蜘蛛の糸、きれいな、かわいい景色。
疑問?
13 オケを駈る  オケというのはオーケストラを指揮しているとのことですかね。とするととても面白いのだけれどオーケストラと字余りにしたらとおもいます。

【 中村ふみ 選 】
06芋掘るや  牧歌的かつ、丘の上まで一面、芋の蔓が絡まっているという怪しい風景にひかれました。作者のひょうひょうとした態度も良い。
07枇杷熟れて  猫の長々としたからだと、産毛が生えている枇杷の実の手触りとが、良く合っていて
おもしろいです。
15障子貼つて  鴉の声を“あたたか”だと感じるとは、どれほど穏やかで落ち着いた心持ちなので
しょう。きっと、障子もきれいに貼れているはず・・・。
今回は選句のみなのですが、おもしろい句が多くて自分も投句すべきだったと思っています。来月は、力を入れますから、よろしくお願いします。

【 中村阿昼 選 】
○07 枇杷熟れて  枇杷の木の下に猫が長く伸びて昼寝しているのだろうか。熟れた枇杷の色があたたかく、平和で心地よい秋の昼を想像した。ただ、「は」が理屈っぽく読めてしまうので、「ながなが寝たる」とかの方がよいのでは?
○06 芋掘るや  「丘の突端まで畑」で、突端の芋の葉のことに風に翻る様やその向こうの青空が想像できて、気持ちがよい芋掘りの光景。
○10 水底を  水底を亀が歩くというのがまず面白い。が、「秋深し」が唐突だし、「深い」と「底」が近いかな。別の季語のほうがよいのでは。
04 口ぢゆうに  「咽にけり」の当たり前を面白いと思えるかどうか。うーん、ちょっと苦しいかな。

【 小川春休 選 】
○06 芋掘るや  中七下五の叙述の単刀直入さは心地よいですね。この単刀直入な描写に上五の「芋掘るや」の飾り気のなさがうまく響いているように思いました。
○10 水底を  好きな景です。ただし、「を」「は」の助詞及び「歩くや」の切字はこれが最善手ではないかもしれません。「水底を亀の歩みて秋深し」などの形も考えられてしかるべき、という気がします。
○02 コスモスや  余計なものがない点に好感を持ちました。でも、もう一味欲しい気がするのもたしか。
(ええっ、3句ともむかごさんの句だったとは!!)
04 口ぢゅうに  下五がオチというか、答えになっちゃってますね。
05 二人きり  うーん。甘いなぁ。「二人きり」であることと「水引草を分け入」ることとがあんまり有機的なつながりになってない感じがするんですよね。たぶん、この両方を言おうとするから甘くなっちゃうんだと思う。二人きりであることから句を広げるか、水引草から句を広げていくか、そのどちらかに焦点を絞った方が句としては良くなるのでは。
08 靴下に  ? 「また来てみても」とはどういう意味でしょうか。ちょっと難解ですね。
11 水引の  「蘂から蘂へ」というところに作者の発見があるわけですが、私もよく似た句をつい最近作ってるんですよね。というわけで、あまり目新しく感じなかったのです。
12 水引の  なぜ? なぜ水引の花を手のひらに滑らせたのでしょうか? 意図がよくわかりません。
13 オケを駆る  うーん、ちょっとかっこよすぎるかなぁ。あと、「オケを駆る」という描写は、けっこう観念的なまとめかたではありますね。どのように指揮しているのか、読み取る手がかりが少ない。「タクトを振るう」とか言えばもうちょっと具体的になりそうです。推敲してみてください。
14 秋茜  波多野爽波の『湯呑』に、「鶴凍てて花の如きを糞りにけり」という句がありますが、これは「ひりにけり」と読むか「まりにけり」と読むか、説の分かれるところですね。爽波は当初「まりにけり」と意図していたようですが。そしてこの「秋茜」の句ですが、作者は「ゆばりて」もしくは「いばりて」と読ませる意図で書いたようですが、これは大の方ではなく小の方のことでしょうか? 小の方なら「尿りて」と書いた方がわかりやすいと思いますが。それでもわかりにくい場合は、平仮名で書く方が読者に親切ではあります。

来月の投句は、11月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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