【 遠藤ちこ 選 】
○13
亀鳴きて 東京事変で亀田さん。即、とらせていただきました。「亀鳴く」は春に雄が雌を慕って鳴くことなのですね。
○41
小児科の 風邪でも引いたのでしょうか?小児科には午前中の明るい日差しが射し込んでいるイメージがあります。日本昔話が並んでいて。そこにはヒヤシンスが似合います。
○52
猫の子に 猫の子に指を舐められている、平和な昼の写生なのになぜかエロさを感じます。真昼からか、なめられてゐるからか、不思議な句です。
○54
春風に マックポテトはおいしいけれど、細いからすぐしなびます。忙しいのか物思いにふけっていてすぐ食べられなかったのか、色々想像させます。
【 滝ノ川愛 選 】
今月は選句のみです。
○11 姉の名が刻まれて居る冬林檎
○19
この通り寡婦ばかりなる深雪なる
○33 探梅や草の名問ふて径問ふて
○37 ほどほどでよいと言ふのに積もる雪
【 土田ひなこ 選 】
○05
わが頬を 芸子さんの豆撒きに行ったことがあります。ほんとにこの通りでした。意外と拾えないものですね。
○20
おしくら饅頭 おしくら饅頭をしたくなかったのかしら、少年の気持ちが見えるようです。
○34
森の墓地 ええっ!墓地の隣に幼稚園があるのですか? 森も墓地も幼稚園もみんな春なのですね。
○36
猫逝くや ちょっかいでも出したい気持ちですね。
【 小林タロー 選 】
○05
わが頬を 家庭内ではなく大きなお寺の節分会の豆うちのようだ。豆が当たらなかったのは鬼ではなかったということでしょう。
○09
二月のチョコ で 季語となるのか?少し無理があるようにも思えるが 原色の包み紙 ということで 高揚した気分は伝わる
○12
薄氷の 都会の薄汚れた水の景が読めます
○44
白椿 自分と同じ仕草の男がいるのか、同じ仕草の複数の他人がいるのか 一人の男が同じ仕草を繰り返しているのか、わからない 白椿も何だか変だ が、そこが面白いかなっと思いました。
【 森田遊介 選 】
○04
春一番 春一番を最大に写生しているように思いました。撞木が大きく揺れるほどですもの相当なの春一番なのですね。
○05
わが頬を 私の前をかすめて過ぎるのは豆だけでなく歳なのかも知れません。豆まきの賑やかな中にも人生の哀れを感じます。
○09
二月の 2月に限らずチョコレートは美しく包装されています。でも2月は特に原色の包装紙。私を見て!と言っているのでしょうか。これをもらった人の気持ちを知りたくなります。
○30
農小屋の 上五中七と季語の取り合わせがよいと思います。寒い夕暮れ薄暗い中にほのかに漂う梅の香りがします。
○37
ほどほどで 言っても仕方の無い事と知っていてもつい口にしてしまうこの雪降り。自然が降らせる雪を恨めしくも思う自然界の中の人間生活を感じました。
【 小早川忠義 選 】
○04
春一番 この撞木が鐘を鳴らす程になると台風になってしまうわけで、春一番だからこそ句になり得た気がします。
○20
おしくら饅頭 押し返したり押されたりで、もみくちゃになっているところに空を見たらまた押されて。空の色を気遣っている場合じゃないですね。
○29
夫の忌や 雪が積もっているところにまた雪が降って。今年のような気候。その瞬間が見事に切り取られています。
○52
猫の子に とても和やかな真昼。何にも忙しい自体に巻き込まれていない作者の状況まで見えてきます。
19
この通り 男手のいないところで大雪が降れば、深くなるでしょうね。寡婦って言葉がどうにも重い。
26
深鍋に 泣く泣く選から落としましたが、これから料理を作ろうとする気概と納税期の一山越さなきゃという気概が響いています。
36
猫逝くや 春炬燵は本来「手持ち無沙汰」であって然るべきだと思うんです。
37
ほどほどで 多分、「雪積もり」とした方が据わりが良いような気がします。
41
小児科の 「明るさ」をもうひとつの言葉で表せなかったかどうか、考えてみたいところです。
【 石川順一 選 】
○04
春一番 見たままだと思うのですが、描写されて居ない「鐘」や寺の鐘と言えば「安珍」と「清姫」のストーリーなどを思い描くと結構いい句だと思えました。
○05
わが頬を こう言うたわいもない出来事の方が緊張感が味わえると思いました。あまりに極端な場合は感覚が麻痺してしまうと思うからです。そしてその緊張感はこの句に良い印象を付与して居ると思いました。
○36
猫逝くや 悲しいのか空虚なのかお気持ちお察しします。「春炬燵」が猫と化して居るのだろうかと思いました。
○50
口ずさみ 春に寄せる期待が愉快さとうまく交わって居ると思いました。「口ずさみつつ」が効いて居るかと。
【 湯木ねね 選 】
(今回はお休みです。)
【 涼野海音 選 】
○26
深鍋に 納税期の慌ただしさとバターの様子がどことなく響き合う気がして頂きました。
○30
農小屋の やや古風な印象を受けましたが、誰でも入ってゆける景と言えば良いでしょうか。心落ち着く一句です。
○41
小児科の 窓のかがやきとヒヤシンスの白。清らかな雰囲気に包まれます。
○51
入口に 現代的な景。消毒液の冷たさと余寒がいかにも相応しい。
【 松本てふこ 選 】
○09
二月の バレンタインデーのチョコじゃないんだよ、って言いたいんですね。二月のチョコという言い方はちょっと強引ですが、いびつなリズムが可愛くなくて可愛いです。
○13
亀鳴きて 東京事変がロックバンドだって分かった方がこの句会メンバーにどれくらいいるかな…という危惧を抱きつつ。東京事変より椎名林檎ソロにお世話になった私ですが、亀鳴く、って季語が彼女たちのギミックいっぱいな中に真面目さもしっかりこもってる音楽性と絶妙にシンクロしている気がして、ちょっとしてやられた感がありまして。これ、メンバーの亀田さんの名字と引っ掛けたりとかしてますかね…引っ掛けてたらやだなあ!
取るのやめようかな、と考えてしまうくらい。でも、愛が感じられる一句。
○19
この通り 上五はちょっと意味不明な気もするのですが、迫力があります。この通り、ってどういうこと?という。ちょっとフランス映画にありそうな設定。深雪がとってもドラマチック。なり、なるって続いちゃうのは疑問。
○26
深鍋に 取り合わせがあわれ深くて。
その他気になった句。
05
わが頬を 景はマンガっぽいのですが、リアルな生活の疲れが感じられていいですね…。
49
初蝶に ふんわり香る嗜虐のこころ。ほんとうに眩しいのは初蝶そのものであるのに、初蝶自身はそれに気付かない。
【 足立山渓 選 】
○02
女生徒の 寒さいとわず、ミニスカートの女学生の健康な姿態が目に浮かぶ。
○37
ほどほどで 今年は日本海側は大変だったようですね。降らなくても困るが、降りすぎも困りますね。
○45
斑鳩の 上五・中七の措辞が季語とよくマッチしている。
○51
入口に 寒さがぶり返して風邪ひかぬように手洗い励行の消毒液。病院の入り口が思い出される、
【 川崎益太郎 選 】
○12
薄氷の 薄氷とピザのチラシとの取り合わせ。読めに、日常に対する反骨心が見える。
○43
ビッグマック 薄いと雨水、言葉遊びの気もするが、大きなマックを薄いという俳諧。
○49
初蝶に ちょっと残酷な気もするが、眩しすぎるに救われる。
○53
ぼた山は 分かりにくい句だが、ぼた山と雨の鶯の取り合わせに妙に惹かれた。
【 草野ぐり 選 】
○07
針箱の 針供養をもってくると付き過ぎな気がするが、針箱に指輪をしまっていたお母さんが印象的だ。お母さんしか知らない物語がありそうでイメージがふくらむ。
○24
アンビション 少年よ,大志を抱け!夢や大志を唱える鼻が、結氷期の冷え冷えとした空気の中でつんつんしているのだろう。鼻骨がいい。ぎゅっと若さが詰っている。
○26
深鍋に 泡立つがいかにも美味しそう。台所で深鍋でことこと煮込み料理をしつつ、数字と格闘しているような。
○52
猫の子に こんな日はもう何もやる気が起きないだろう。気怠くアンニュイでそしてちょっと色っぽい、春の一日。
【 二川はなの 選 】
(今回はお休みです。)
【 水口佳子 選 】
○05
わが頬を 鬼に向って投げられたはずの豆が自分の頬をかすめていった。偶然か故意か・・・投げたのは?当たらなくて良かった。笑える句。
○09
二月のチョコ 赤だの緑だの確かにバレンタインチョコの包装は原色が多い。ああでもないこうでもないと渡す方は必死だが、 もらう方は案外包装紙など心にとめないものである。包装紙でなく中身で勝負しなくちゃ。
○34
森の墓地 お寺などが幼稚園を経営していることはよくあるので、現実に幼稚園の敷地のつづきに墓地があることもあるだろう。〈森の墓地〉の静けさと〈春の幼稚園〉の明るさの対比、子供たちの声は死者にも届いていることだろう。
○54
春風に 〈春風に〉の〈に〉は何だろう。春風によってしなびたと解釈すると句がつまらなくなる。が、気持ち良い春風の中に時を忘れているうちに、と読むと句も広がっていく。〈マックポテト〉という弾んだ音に春を感じる。
他に好きな句
11
姉の名が 何で名前が刻んであるんだろう、ちょっと不思議な句。
41
小児科の きっと優しい先生が診察してくれるに違いない。ヒヤシンスがいいなあ。
52
猫の子に なんて平和なひとときなんでしょう。内容は駘蕩とした気分なのに〈真昼〉という言葉が句を締めているように感じます。
【 喜多波子 選 】
○26 深鍋にバター泡立つ納税期
○33
探梅や草の名問ふて径問ふて
○45 斑鳩の静かなる朝小豆粥
○49 初蝶に眩しすぎたる展翅板
選句のみで失礼します。
【 鋼つよし 選 】
○16 寄せ鍋の 最近の世相の句だが滑稽な味が良い。
○20
夫の忌や 中七、下五のリズムがよく、余韻のある句になっている。
○33 探梅や 吟行の一こまユーモアがありよい。
○35
鳥の巣の 目に入るや句になって、決まっている。
4句選に入れたかった句
36 猫逝くや手持ち無沙汰の春炬燵
51
入口に消毒液のある余寒
【 中村阿昼 選 】
(今回はお休みです。)
【 小川春休 選 】
○08
伝兵衛てふ 何とこれは御利益のありそうな茶碗。こんな茶碗があっては鬼も寄り付かなさそうです。ごつごつした字面に関わらず、読み上げるとリズミカルで楽しい。
○26
深鍋に 一人暮らしをされている方で、鍋を持たずフライパンだけで生活しているという話を聞いて先日驚いたのですが、深鍋にバターとなると、これはけっこう本格的ですし、出来上がりの量も多そうだ。「納税期」はいろいろな雑事が重なって鬱陶しい時期でもありますが、旨い物をしっかり食べて、それを乗り切ってやろうという意気込みのようなものが感じられる句です。
○35
鳥の巣の きっと毎年鳥の巣作りを見ている人なのでしょう。もっと高い位置に懸けないと、猫や蛇にやられてしまうのを知っているのです。しかし、どうしてやることも、できない。
○44
白椿 白椿の前、パントマイムのように同じ仕草の男が佇む。どこかこの世ならぬ雰囲気が漂います(鏡の世界、のようなものでしょうか)。現実を描きながら、幻想への入り口の存在を感じさせる句です。
01
部活の子へ 上五中七の雰囲気は悪くないですが、下校の鐘がなる時間帯と「日脚伸ぶ」は内容的にだぶります。鐘で夕方ということは分かるので、季語を再考された方が良いと思います。
02
女生徒の こちらも上五中七は具体的で良いのですが、下五で雪が降って寒いから、という説明になってしまっています。季語はもう少し離れたものを選ばれた方が良いのではないでしょうか。
04
春一番 きちんと出来てはいますが、風が吹いたから揺れた、という理が見えてしまう部分で損をしている句だと思います。
05
わが頬を 家族だけの豆撒きよりも、大きな寺などの豆撒きを思う。流れ弾ならぬ流れ豆が飛んできたのでしょう。
07
針箱の 意外な場所に指輪を見つけた驚きを表すには、「針箱の」よりも「針箱に」とするべきでしょうね。
09
二月の 「にんがつ」と読むのでしょうね。語調を整える俳句特有の読みです。句の内容ですが、「二月」を強調するよりも、もっと「原色」にスポットライトを当てた方が良いのではないでしょうか。たとえば「原色や二月のチョコの包み紙」など。
10
うすらひに 具体的な所に目をつけていて好感を持ちましたが、「小枝」「気泡」「水の皺」のそれぞれの関係性を示す、句の肝になるような表現が欲しいところです。
11
姉の名が 日光が当たらぬようにシールを貼って、林檎に文字を入れているのは見たことがありますが、「刻む」とは包丁か何かで刻み込んだのでしょうか。
13
亀鳴きて 東京事変解散という句材を採り上げたチャレンジ精神は素晴らしい。ですが季語のチョイスがぴんと来ませんでした(というよりもそれが判断できるほど東京事変に詳しくないです、私)。
14
バレンタイン ……もてもてですね…。
15
ヴァレンタイン 面接する方かされる方かでも分かれば、もう少し読み込みようがありそうな気もするのですが。読むための手がかりが少ないようです。
16
寄せ鍋の ちょっとさみしい句ですが、口調が暗くならずに軽妙なところが味になっている。
18
元庄屋の 取り合わせとして、植物同士(松と寒牡丹)はあまり効果的でないように思います(取り合わせ方にもよるのかも知れませんが)。
19
この通り 内容はその地域の実情をすぱっと詠まれていて良いと思いますが、中七と下五の「なり」「なる」の重複が気になります。下五は「なる」でなくても良い(五音使い切る雪関係の季語でOK)と思うのですが。
20
おしくら饅頭 良い所を句にしていますが、中七の「して」がゆるい印象を与えます。例えば「おしくら饅頭空仰ぐしかめ面」とすると、八五五の句またがり&一字字余りですが、句の勢いは原句より増すのではないでしょうか。
21
短期間 中七の「日」と「水曜日」は意味的にだぶる部分があるようです。そのせいかちょっともたついた印象です。
22
すぐ終はる 作者の意図するところなのかもしれませんが、言葉が硬い印象です。「昼食休憩」は「昼休憩」で良いと思うし、「すぐ終はる」というのも、実際に終わったのか、休憩が短いという認識を示しているだけなのか、ちょっと判然としないところがある。例えば「風花や昼休憩のすぐ終はり」などとすれば、意味ははっきりしますが、テイストもだいぶ変わってしまいますね。悩みどころです。
27
髪切れば 句中の春の雪が幻想的だと感じることもありますが、それは、「幻想的な」と書かれているから、という訳ではありません。それは、春の雪を幻想的たらしめる描写や表現に支えられて初めて成立する現象なのです。幻想を句の中に成立させるためには、幻想の正体を見極め、それをいかに表現するかという過程が必要なのだと思います。
29
夫の忌や しっかり出来ていますし、雰囲気も良いと思いますが、「雪に雪積む村」が「しづか」なのは言わずもがなという感じがします。雪の降りようをもっと具体的に描写することが出来ればおのずと情景も見えてきて、「村」という場所の説明ももしかすると不要かもしれません。もっと良くなる句と思います。
30
農小屋の きちんと出来ている句と思います。
32 根が無くて 根がない寒菊とは、切花ということでしょうか?
33
探梅や 梅がメインですが、草の名も問うてみた。気持ちの弾みのなせるわざでしょう。リズムもよく、採りたかった句です。
36
猫逝くや 雰囲気はよく伝わりますが、「手持ち無沙汰」という出来合いの言葉より、もっと適切な表現がありそうです。
37
ほどほどで 今年は結構降りました。雪が言うことを聞いてくれれば良いんですけどね。
41
小児科の 季語には暗示力というものがあり、ヒヤシンスという花は(向日葵ほどではないものの)、それだけで日差しや明るさを感じさせる花です。「明るさ」と言ってしまうよりも、こうした暗示力を活かした句にした方が、より実感のある明るさが読み手にも見えてきます。例えば、「小児科の窓の広さやヒヤシンス」とすると、景もより具体的に、明るさもより強く感じられるのではないでしょうか?
42
春疾風 中七がよく分かりませんでした。御茶ノ水に箱がいっぱいあるということ? 箱の中いっぱいに御茶ノ水があるということ(箱庭みたいなもの)?
45
斑鳩の いかにも俳句らしい句。
46
消防の 「消防のはしご」は少々曖昧な表現。消防車ならそうはっきり書いて良いと思います。
47
草餅の 何でもないところに目をつけている点に好感を持ちましたが、下五が少々ゆるい印象です。例えば「草餅の焦げ目を避けてまはし食ふ」などとすると、草餅の形や食べる人の動きも具体的に見えて、より実感のある句になると思います。
49
初蝶に 初蝶がいきなり標本になってしまうのも何かさびしい感じがしますね。さびしい眩しさと言うべきでしょうか…。
51
入口に 句としてはきちっと出来ていると思いますが、新型インフルが流行したときに私も同じような句を詠んだことがあります。なので、個人的に類想感がありました。
52
猫の子に 感覚的なものをしっかり詠み込まれている。これも採りたかった句です。
53
ぼた山は 「山笑ふ」という季語を用いた言葉遊びの句ですが、この季重ねはあまり効果的でないと思いました。
54
春風に ううーん、「に」かなぁ…。「や」の方が良い気がします。もしくは「春の風」として助詞を挟まないのも良い。
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