ハルヤスミ句会 第百三十七回

2012年3月

《 句会報 》

01 洛北の朽ちぬ石庭余寒かな     遊介

02 湯たんぽの中でわんわん泣きたけれ 春休(て・益・ぐ)

03 残り雪丸く黒ずむ下屋の隅     遊介

04 永き日のアッフォガートや島のやう てふこ(忠・海)

05 走るうちふつと腑に落つ柳かな   ぐり(ね・春)

06 春霞ひようたん島の浮くごとく   ひなこ(ち)

07 花曇待ち遠しきや校了日      ちこ

08 陰雪の僅かな雪を見て歩く     順一

09 朧夜や喪章掲げて輪のかたち    てふこ

10 パンジーの傍の置物小売店     順一

11 七不思議の五つ目よりはおぼろかな 春休(忠・て・波)

12 無造作に財布開きぬ柳の芽     遊介

13 春江を時折見ては坂下る      順一(遊)

14 キリストに揺れぬ髪ある朧かな   佳子(ち・海)

15 春や寒あさぎ色なる京の空     ひなこ

16 跋文のたつた三行はるのゆき    佳子(忠・順・海・ぐ・波)

17 霾や放り込みたるカレールゥ    ぐり(ひ・遊・海・春)

18 揚げ船を洗ひ尽くせる春の雨    波子(山)

19 はるうれひ鉄骨は鉄ヒトはみづ   佳子(タ・て・ぐ・波)

20 老婦人光るさよりの身をつつき   忠義(遊・佳)

21 突風のあとの静けさ名残雪     つよし(山)

22 北窓を開くや野球部の声す     海音(ぐ)

23 黄雀や躊躇いあるも飛び立てり   遊介(ね)

24 芽出し雨たつぷり溜めて一輪車   はなの(順)

25 笹鳴に廚の妻を手招きぬ      山渓

26 春泥にまみれし後は付くままに   つよし(◎ひ・佳・春)

27 梅が枝に孕雀が淡島堂       タロー(鋼)

28 草青み電柱の影斜めなり      順一

29 吉野山わつと湧き出す桜かな    愛(遊)

30 春風や天守の見ゆる高架駅     山渓(タ)

31 春雨や後ろ姿に一目惚れ      タロー

32 ボートレース深爪の予想屋に聞く  ぐり(ち・益)

33 脱ぎさしや鶯餅を食ひそこね    忠義(ね)

34 菜の花の一本咲ける官舎かな    はなの(て・佳)

35 如月や節税脱税紙一重       益太郎

36 春蘭やくの字に下る峡の道     山渓

37 歌舞伎町麝香が強く香る春     ちこ(愛・忠)

38 大震災知らず目覚める雛かな    益太郎

39 女子会に草餅配りをる女      海音(愛)

40 つばくろや棚田ひろがる奥三河   山渓(鋼)

41 春寒やビール頼めば生ぬるき    タロー(ひ)

42 巣立ち鳥フワリ立ち寄る本の店   ちこ(順・益)

43 経年のヤケある辞書やつちふれり  波子(山)

44 石の上(へ)を白く流れて水温む   順一(ひ・春)

45 掛軸を取り替ふてより冴返る    つよし(愛・山)

46 柳芽や流れにまかす京友禅     愛(タ・鋼)

47 春の海会ひたき人があのあたり   てふこ(益)

48 トルソ−の限りある空春の服    波子(ね)

49 「子供みたいに」と歌ふ子とうぐひすと 春休

50 般若湯明日治聾酒に変はるらし   忠義

51 春泥や長き尾先を玩ぶ       遊介(ち)

52 連翹の玻璃明るかり点滴す     はなの

53 松山の旅二日目の春の雪      ひなこ(遊・順)

54 三椏のこれも花なり東慶寺     愛(鋼)

55 臘梅やダークダックス聴く昭和   益太郎(愛)

56 わが胸の高さに五人囃かな     海音(タ・佳・波)

57 霾やツインタワーの名古屋駅    山渓





【 遠藤ちこ 選 】
○06 春霞  かなり霞んでいます。何が見えているのでしょう。ひょっこりひょうたん島を想像して楽しくて取らせていただきました。
○14 キリストに  春の夜、教会の前、霞んでいるところにキリスト像があって風が吹いているけれどキリストはそのまま立っている夜の様子が浮かびます。
○32 ボートレース  ボートレースに行ったことはありませんが、春のボートレースとよく聞くので、ボートレースは春が多いのでしょうか?予想屋と深爪の取り合わせがよかったです。深爪してそうで。
○51 春泥や  尾の長い鳥が水遊びではなく泥の中で尾先を玩ぶところがいいと思いました。キジでしょうか?

【 滝ノ川愛 選 】
○37 歌舞伎町  今時麝香の香水とは。主人公はレトロなマダムでしょうか。湿度の高い、むっとするような春の宵に麝香とはさぞかし強く香ったことでしょう。 ちなみに香水は湿度によって香りが変わりますね。
○39 女子会に  いるいるこういう女(ひと)。これが男子会だとビールを注いで回ったりして。私もその一人。クラス会などで「すいませ〜ん、こちら お刺身一皿足らないのですが」とかついShoutしてしまいます。
○45 掛軸を  本当に今年はいつまでも寒い! え〜い、もう春だからと掛軸を替えたら、この寒さ。私もダウンのコートをクリーニングに出して
後悔しています。
○55 蝋梅や  ダークダックスは今も歌っていますよね。でもダークダックスと言えばやはり昭和ですね。聞いている自分も昭和生まれでしょうか。季語の蝋梅が慶應育ちの上品な彼らに良くあっています。

【 土田ひなこ 選 】
○17 霾や  放り込む、ここ好きです。
◎26 春泥に  私もそうです。
○41 春寒や  生ぬるく感じたのでしょうか?
○44 石の上(へ)を  美しい景、こうして春が深まるのでしょう。

【 小林タロー 選 】
○19 はるうれひ  あるとき人間は水なんだと気が付いた。それ以来のアンニュイな気分がひらがな、カタカナ、漢字まじりでのやるせない表現に出ている。
○30 春風や  旅の途中古い城下町の高架駅で乗り換えを待っている、駅から町の向こう側の天守が見え、間の低い街並みの上を春風が抜けている、自分も見ているような気がします。
○46 柳芽や  春の鴨川の景でしょう、柳芽とあっています。ただ、「友禅流し」と言ってしまえばそれっきりのような気もします。
○56 わが胸の  今年もお雛様をお祭りしたが、過ぎ去った歳月、思い出がわが胸の に表れている。

【 森田遊介 選 】
○13 春江を  普段は気にもしない川の流れでも春になると水の流れが気になるもの。春の到来を喜んで足取りも軽いように感じました。
○17 霾や  季語と下五の距離感がよいと思います。離れてはいるがなんとなく霾とカレールゥが重なり合ってきます。
○20 老婦人  お上品な婦人なのでしょうか?中七からさよりをつつく手に大きな光る指輪までも想像してしまいます。
○29 吉野山  吉野山の桜はさぞかしこんな様子なのでしょう。吉野の観光ポスターよりも吉野の実景が見えます。
○53 松山の  一日目は多分晴天だったのでしょう。松山で二つの景色を観るとはラッキー!とほくそ笑んでもいるように感じました。

【 小早川忠義 選 】
○04 永き日の  島のようにコーヒーを注ぐアッフォガートは掛け過ぎのような。でもどこかへ出かけたくなるような日永の昼下がりが表れています。
○11 七不思議の  七不思議とか言われても実態はそんなものなのかも知れません。五つ目という具体性も。
○16 跋文の  たとえ三行でもその句集への跋文は師からの的確かつ心にしみる忘れられない言葉。名残り雪が消えたら次のステージが控えています。
○37 歌舞伎町  これは「ムスク」などという洒落た名前じゃなしに「麝香」の重い誘惑の香り。それが歌舞伎町のどぎついネオンと発情期を思わせる春が相俟っ て異様な世界が見えてきます。
 22 北窓を  北の窓が開いていようが閉じていようが、甲子園を目指す球児に休みは無い。
 34 菜の花の  官舎がどんな官舎なのか。一本だけなのか一本咲き始めたのか。それで随分違って来そう。
 36 春蘭や  春蘭って、自生するものじゃなしに栽培するものなのではないでしょうか。
 43 経年の  焼けがあるのは経年しているからであって、勿体無い言い回しのような気 がします。
 46 柳芽や  風の流れと川の流れ。ちょっとつき過ぎてはいないでしょうか。
 55 臘梅や  ダークダックスって言うと「銀色の道」とか「スキー」とか冬のイメー ジっぽい気がします。「幼なじみ」や「筑波山麓合唱団」のデュークエイセスの方がほのぼのしていたような。あと昭和とは言わなくても十分で しょう。
 56 わが胸の  恐らく、わがという視点は要らないのだと思います。そこからどうとでも 展開が可能でしょう。

【 石川順一 選 】
○16 跋文の  「跋文のたった三行」から作者がどう思ったか大変興味がありますが、「はるのゆき」と言う季語から期待と不安の入り混じった複雑な心境かと推察しました。「はるのゆき」の使い方が自然かなあと思いとりました。
○24 芽出し雨  寡聞にしてよく分かりませんが「芽出し雨」は「木の芽雨」から来ているかと思いました。(私の季語辞典では「木の芽雨」はあったが「芽出し雨」は無かった。)「たっぷり溜めて」と言うのが「一輪車」を引き立たせていると思いました。
○42 巣立ち鳥  「フワリ」と言うのが軽薄かと思ったのですが、これはこれでおもいしろいなと。雛鳥のうきうきした感じと自分のうきうきした感じがいい感じでミックスして居るかと思いました。
○53 松山の  何てことは無い内容であると思いながらも、詠みぶりが面白いと思いました。「旅二日目の」と言うのが単なる報告の様で居て、その人の個人史を彩る、ルポルタージュにも匹敵する事だと思えたのです。むしろ詠まれて居ない内容を想像させられて内容的には深いと思いました。
*なお取れませんでしたが以下の句にも見るべきものがありました。
 02 湯たんぽの中でわんわん泣きたけれ
 05 走るうちふっと腑に落つ柳かな
 17 霾や放り込みたるカレールゥー
 19 はるうれひ鉄骨は鉄人はみづ
 22 北窓を開くや野球部の声す
 25 笹鳴に厨の妻を手招きぬ
 29 吉野山わっとわき出す桜かな
 31 春雨やうしろ姿に一目ぼれ
 52 連翹の玻璃明るかり点滴す

【 湯木ねね 選 】
(今回は選句のみ参加です。)
○05 走るうち
○23 黄雀や
○33 脱ぎさしや
○48 トルソーの

【 涼野海音 選 】
○04 永き日の  この句を読むまで「アッフォガート」を知りませんでした。ウィキペディアの写真を見たところ、なるほど,「島のやう」。初めて食べたときの直感的な把握でしょうか。
○14 キリストに  実景であればキリスト像か、はたまた歴史の世界に想像力を飛躍させたのか、いずれにせよ「揺れぬ髪」に注目したところで成功。
○16 跋文の  この跋文を味気ないと読むか、いさぎよいと読むか・・・。本の著者の人柄がみえてきそう。「はるのゆき」とすべて仮名書きにしているところが意味深長、作者にその意図を聞いてみたいところ。
○17 霾や  「放り込みたる」がワイルド。大人数の分のカレーを作っているのでしょうか。林間学校やキャンプでのワンシーンかも。

【 松本てふこ 選 】
○02 湯たんぽの  中に入るなんて考えたこともなくて!でも居心地良さそうです。小さな人になった自分を想像しているのかな。
○11 七不思議の  季語とも何ともつかない、おぼろという言葉の響かせ方が面白い。謎のある句。
○19 はるうれひ  春愁の句はどうしても観念に寄りがちですが、ひとを水という、春を連想させやすいものにつなげたことで春愁に具体性が生まれ、取り留めのないところから深まっていく思考をイメージしやすくなっています。
○34 菜の花の  官舎がどんな場所かがわかる。一本である、ということは誰かが植えたのではなく、鳥なり生き物が運んできたのだろうな、と推測。菜の花が一本だけ咲く姿は孤独だけれど、そこに咲いている理由は孤独ではないのが面白い。

【 足立山渓 選 】
○43 経年の  長い年月を経過して色あせた辞書と黄沙により空が黄色っぽくなったこととの取り合わせが抜群。
○45 掛軸を  部屋を春の装いに替えた途端、寒さがぶり返した。今年の気象状況をうまく表現された。
○18 揚げ船を  春の観光シーズンも真近い。湖畔に引き上げられていた舟に埃がたまっていたが、春の雨が洗い流してくれた。春を待ちわびた景が浮かぶ。
○21 突風の  上五中七のフレーズと季語の組み合わせがいい。

【 川崎益太郎 選 】
○02 湯たんぽの  湯たんぽの中で泣きたい作者。湯たんぽの中なら遠慮なくわんわん泣ける、湯たんぽと泣くの取り合わせで微妙な心境が詠めた(読めた)。
○32 ボートレース  深爪の予想屋は当たるのでしょうか。深爪が面白い。
○42 巣立ち鳥  鳥とフワリ、付き過ぎの感もあるが上手い。本の店も本屋かな、としないで、詩情を増幅させている。
○47 春の海  春の海、と言われると、震災を思わずにはいられない。行方不明者もまだたくさんいる。春の海のたりのたり・・・の心境で詠めない(読めない)のが辛い。

【 草野ぐり 選 】
○02 湯たんぽの  湯たんぽを抱いてではなく中に入ってお湯に体が溶け出すくらい全身全霊で泣きたい。あります。そういう時。
○16 跋文の  後書が3行とは。はるのゆきと合いすぎている気もするがその本の持っている佇まいが想像される。
○19 はるうれひ  春の危うさとそれにどうしようもなく左右されてしまう人間の脆さを思う。鉄骨は鉄なのに。ひらがなとカタカナの表記も効果的だと思った。
○22 北窓を  野球部といえば声。声と一緒に光と風が差し込む感じだ。
 他に気になった句
 07 花曇待ち遠しきや校了日
 09 朧夜や喪章掲げて輪のかたち
 14 キリストに揺れぬ髪ある朧かな

【 二川はなの 選 】
(今回は選句お休みです。)

【 水口佳子 選 】
○20 老婦人  光りものをいっぱいつけた老婦人か?その夫人がさよりをつついている。老婦人はますます怪しく光っていく・・・〈老婦人光る〉といきなり冒頭で言い切って、イメージを焼きつけたのが成功したように思う。ちょっとシュールでこの老婦人はだんだんさよりになってしまうのでは?と思わされてしまう。
○26 春泥に  初めは汚れることを気にしつつ、しかしどうにもならないと分かると、その後はむしろそれを楽しむように。春泥に限らず生きてる中でそういうことってあるなあと、つい考えさせられた。(本当はそこまで考えない方がいいんだけど)
○34 菜の花の  〈一本〉としたところに想像を掻き立てられる。周囲に菜の花畑があってその中に官舎が建っており、種が飛ばされてきたのか、それとも菜の花畑だったところに官舎が建てられこの一本はその名残なのか、〈官舎〉というかたい響き、〈菜の花〉の牧歌的なイメージが句に広がりを与えたように思う。
○56 わが胸の  〈胸の高さの五人囃〉が乾いた感じで良い。三人官女や内裏雛ではわざとらしい句になってしまう。
 他に好きな句
 09 朧夜や 〈朧夜〉と〈喪章〉は面白いと思ったが〈掲げて〉の言葉で分からなくなってしまいました。
 32 ボートレース 〈深爪の予想屋〉がとてもいかがわしそうで面白いと思いましたが、予想屋というからには、このボートレースはいわゆる競艇のことを言っているのであって、季語としてのそれとは異なるのではないかと思いました。でも〈深爪の予想屋〉はいいなあ。
 44 石の上を 〈白く流れて〉は見たままというより心象的な言葉と受け取りました。静かで希望を感じさせる句だと思います。

【 喜多波子 選 】
○11 七不思議の  七不思議を考えてしまいました。想像が広がる句です。
○16 跋文の  あとがきがたった3行!季語の重みを感じました。
○19 はるうれひ  ヒトは、みづが俳諧的で巧い!
○56 わが胸の  じゃ・・ 最上段はどの部分かしら?等と読者が入り込める余韻が楽しい巧い句だと思いました。

【 鋼つよし 選 】
○27 梅が枝に  きれいな絵に孕雀がさらに平和な世界にしている。
○40 つばくろや  景色の大きさとつばくろの取り合わせが良い。
○46 柳芽や  柳芽が中七、下五の措辞にあっている。
○54 三椏の  春の風景がよく出ている。
 選に加えたかった句
 22 北窓を開くや野球部の声す
 28 草青み電柱の影斜めなり
 35 如月や節税脱税紙一重

【 中村阿昼 選 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選 】
○05 走るうち  上五中七の感慨は、よく分かる、共感しやすいものですが、それを下五でどのように完成させるかが問題。この句の場合、この下五は景としても、その季節の気分としても上五中七とよく響いていると思います。
○17 霾や  大きな鍋でカレーを作る景が目に浮かびます。きっとかなりの量なのでしょうね。カレールーはどぽんと音を立てたでしょうか。「霾や」で景が大きくなっています。
○26 春泥に  最初は泥に気後れしていたのが、汚れてしまえばもう気兼ねなく思い切り立ち働けようというもの。景と心情とがすーっと入ってくる句です。
○44 石の上(へ)を  この白さは、躍動する細かい泡の集まり、ぶつかり合い。そこに春の訪れを感じた訳です。抑制の効いた言葉で、的確に景を描き出しています。
 04 永き日の  永き日には、食べ甲斐のある、島のようなアッフォガートが嬉しいですね。気候ももうだいぶあたたかなのでしょう。しかし「島のやう」という比喩がちょっと安易な気も…。
 06 春霞  「ごとく」の指し示す対象が曖昧なようです。春霞のことを指すのか、それとも言外に実際の島を指しているのか。もし春霞であれば、そんなにくっきりと形状が分かることはないと思います(形がくっきりしているのは、霞というより雲では?)。
 07 花曇  言い回しというか語順というか、少々不自然です。「や」で切っているために、素直に読むと待ち遠しいのは花曇の方で、校了日ではありません。しかし書き手の意図はそうではないのではありませんか? 校了日の方が待ち遠しいのであれば、中七下五を「待ち遠しきは校了日」とする方が良いと思います(上五をどうするかは要再考)。
 09 朧夜や  この喪章はサッカー選手が腕に着けるようなタイプのものでしょうか。じんわりと伝わるもののある句です。
 12 無造作に  何をしようとして財布を開いたのか、読む手がかりが少しあると良いと思いました。しかしこの「読む手がかり」がなかなかの曲者で、あまりあからさまにすると、ツキスギになったり報告っぽくなってしまったりするおそれも…。
 14 キリストに  キリストの髪が揺れぬのは、それが彫像であるからかもしれませんが、どこか周りの世界との異質さを感じさせますね。
 16 跋文の  こうした句を読んで句集を思うのは、日頃俳句に接する機会が多いからでしょうか。簡潔をよしとする美意識を感じます。
 19 はるうれひ  中七下五の内容が描写というより観念・認識であるだけに、上五はもっと具体性のある季語の方が良いのではないでしょうか。
 20 老婦人  「光る」が曖昧であり(光っているのはさより?老婦人?)、句を甘くもしています。もっと老婦人とさよりとの結びつきをしっかりと描き出してほしいところです。
 23 黄雀や  よく見て、よく書こうとする心意気を感じた句ですが、語順、言い回し等、もっとすっきりさせることで、句の焦点ももっと絞れそうな気のする句です。ぜひ推敲を。
 24 芽出し雨  「芽出し雨」とは使ってみたくなる良い季語ですね。しかし、一輪車のどこに溜まったのでしょう。私の知る限り、一輪車には「たつぷり」雨が溜まる部位はない。「たつぷり」よりも、もっと具体的に見える描写で一輪車を描き出してほしいところです。
 27 梅が枝に  中七の「が」に少し無理があるような。「や」もしくは「よ」で良いのでは?
 31 春雨や  俳句は不思議なもので、強い言葉を使った方が印象が弱くなったり、弱めた言葉の方が印象を強めることがあります。例えばこの句の「一目惚れ」、強い言葉なのですが印象は弱い。強い言葉を共感させるだけのバックボーンを句が備えていないからです。それよりも例えば「ちよと惚れし」などと軽い言葉で表した方が、読者も共感しやすく、印象に残る場合があります。難しいところですね。
 32 ボートレース  この予想屋のキャラクターを深爪という要素から推理すると、爪を常にきっちり切らずにはおけない、几帳面(すぎる)な性格。予想もデータ重視でしょうか。人間臭さを感じる句ですね。
 35 如月や  うーん、情緒たっぷりすぎる俳句も考えものですが、この句は実務的な印象が強すぎると思います。
 36 春蘭や  中七下五のか行音の多用が、耳に心地良い句です。
 37 歌舞伎町  要素が多すぎて、ごちゃごちゃした印象の句になってしまっています。「麝香が香る」もしくは「麝香の香」とだけ言っても、香りを強く読み手に意識させることは出来ます。句の内容のメリハリが大事です。
 39 女子会に  年齢はいざ知らず、本人たちは「女子」と自称していますが、詠み手は「女子」ではなく「女」と冷静に書いているところが何となく可笑しかったです。
 40 つばくろや  きちんと出来ている句です。奥三河はどのような地理か、棚田ということは山間の風景でしょうか。それを実際に知っていればもっと良い句に感じるかもしれません。
 41 春寒や  この句のビールはちょっとまずそうですね…。師辻桃子は「食べ物飲み物の句はおいしそうに」と指導していますが、浅い意味ではそういう句の方が読んで心地良いということもあるし、深い意味では飲食物をいただくことへの感謝が俳人としての志と根本でつながっている、ということもあると思っています。
 45 掛軸を  春らしい内容の掛軸に掛け替えた途端に、寒さが戻ってきたのでしょう。皮肉なものですね。
 48 トルソーの  「限りある空」とはどういうことでしょうか。「トルソーの」と空がどのようにつながるのかも、よく読み取れませんでした。
 52 連翹の  中七で「明るかり」と言い切るより、「玻璃を明るく」などとした方が句としてはまとまりが良いと思います。
 53 松山の  天候の定まらぬ春の旅ですが、春の雪をも楽しむ余裕を感じる句です。しっかり出来ている句ですが、句会より、手紙などの方が似合う句かもしれません。
 56 わが胸の  となると、さらに上がある、非常に大掛かりな雛壇が見えてくる。徐々に上へと上がってゆく視線を感じる句です。


 


来月の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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