ハルヤスミ句会 第百三十九回

2012年5月

《 句会報 》

01 夏近し生春巻にすける海老     愛(ち・タ・順・は・佳)

02 街中にいくつ数えし春日傘     遊介

03 佐保姫に付かず離れずペダル漕ぐ  波子

04 春惜しみけり灯台は雲の中     海音

05 塩梅は朧原発再稼働        益太郎

06 ナビゲーションのいふまま左折麦の秋 つよし(ひ)

07 春の蝉句友が逝きて耳敏し     波子

08 葉桜のそよぐ参道宮参り      山渓

09 春惜しみつつ蜂蜜の瓶拭きぬ    海音(ち・ひ・忠・ぐ・は)

10 旧館の重き扉や春長る       遊介

11 いま姓の変はりし白シャツのひとよ 春休(ち・佳)

12 内地より嫁ぎし祖母やライラック  遊介(タ・波)

13 母の日や左手に砂糖右手に塩    益太郎

14 五月来る森の匂ひのケーブルカー  海音(て・佳・つ)

15 抽斗に朱印の手形子供の日     波子(山・は)

16 外つ国の種を蒔きみる五月かな   つよし(春)

17 藤棚やブラスバンドの部活の子   山渓(遊)

18 メーデーや肩組む人の力瘤     遊介(タ・山)

19 持込みのベビーフードや子供の日  タロー

20 肩に首乗せて見上ぐや青葉風    阿昼(ひ・忠)

21 卯の花や給湯室で泣く女      益太郎(ち)

22 猫どもの住処化したる空地刈る   つよし

23 隣の絵までを歩みぬうすごろも   春休(順)

24 引かんとす薺の種の八方に     はなの

25 青嵐犬の位牌に目礼す       愛(遊・順)

26 錠剤のかたさが喉に青葉冷     てふこ(ひ・益・佳・春)

27 竹皮を脱ぐや昇降機は上へ     佳子(忠・山・益・阿)

28 石ころも貝と見たれり汐干狩    山渓(は)

29 右肩の後ろ傷付き若葉冷え     順一

30 母のゐぬ子と父ゐぬ子薬降る    忠義(波・春)

31 緑さし込む彩色の筆ぼかし筆    ひなこ(春)

32 私だけ帽子も日傘もないのです   阿昼(ち・益)

33 雹に頭をうたれし後の深眠り    春休(て)

34 夕立や新装開店嘘の花       ちこ(益)

35 雑巾で顔拭いてゐる子供の日    阿昼(タ・波)

36 朝一で豌豆取りに行かんとす    順一

37 千枚の棚田をすべる緑雨かな    ひなこ(遊・山・阿)

38 再放送見ながら食べるマーボ茄子  ちこ

39 見えにけり米粒ほどの鹿の子の歯  春休(つ)

40 新緑のなまこ壁なる演説会     遊介

41 撫でるほど脱けし猫の毛庭わかば  はなの(遊・順)

42 夏めくやビニール傘にピンクの柄  タロー(山)

43 学校と並ぶ神社や楠若葉      山渓(海)

44 眼病のなほると言はれラムネ飲む  愛(つ)

45 ナイターへ行く前父母と密議する  順一

46 とめどなく茉莉花匂ふとめどなく  てふこ(タ)

47 青葉風ペットボトルが木の上に   阿昼(て)

48 人おらぬ部屋に西日がさしており  ちこ(海)

49 山椒魚小さき流れを二分して    忠義(順・益・は)

50 脇腹にバッグが触れて穴子食ぶ   順一(波・阿・春)

51 婚礼写真まくなぎを払ひつつ    佳子(海・て・ぐ・つ)

52 ICカード定規代はりや更衣    春休

53 辻井戸にカラーの咲くや純喫茶   阿昼(忠)

54 白靴のかかと踏まれてありにけり  タロー(海)

55 氷菓得て彼女の手荷物揺れにけり  順一

56 筍や先にぎざぎざ口につけ     忠義

57 薔薇と書き薔薇欲しくなる机かな  佳子(て・ぐ・波・阿)

58 寝転んで花火の匂いかいでいる   ちこ(佳・つ・阿)

59 香水に濡れて手首の輝けり     てふこ(ひ・遊)

60 大粒な青梅並ぶ道の駅       山渓

61 節電省エネといふ暑さかな     ひなこ

62 遠雷や映画の半券まじまじと    はなの(◎忠・海・ぐ)




【 遠藤ちこ 選 】
○01 夏近し  生春巻きが夏らしい。海老がすけているところもも涼しげでいいと思いました。
○09 春惜しみつつ  蜂蜜の瓶から蜂蜜がたれているのを拭いている少しゆったりした朝。蜂蜜を塗ったトーストを食べたくなりました。
○11 いま姓の  今まさに 区役所で結婚届を出しているところでしょうか?正装ではなく、白いシャツを着て行っているところが爽やかで若々しい。
○21 卯の花や  給湯室では泣いたり笑ったり噂話をしたり色々あります。新入社員が給湯室でこっそり泣いていそうでこの時期にぴったりでした。
○32 私だけ  昼休みに日傘を忘れて外にでて日差しが強いと、しまったと思うことがよくあります。

【 滝ノ川愛 選 】
(今回は選句お休みです)

【 土田ひなこ 選 】
今月は選句のみでよろしくお願いいたします。
○06 ナビゲーションのいふまま左折麦の秋
○09 春惜しみつつ蜂蜜の瓶拭きぬ
○20 肩に首乗せて見上ぐや青葉風
○26 錠剤のかたさが喉に青葉冷
○59 香水に濡れて手首の輝けり

【 小林タロー 選 】
○01 夏近し  季語が動くかと思いいろいろやってみましたが、春の終り初夏の始まりのこの季感がぴったりと感じました。
○12 内地より  嫁いで3世代、地域にも馴染みようよう暮らしも安定し一息、ということがライラックでうかがわれます。
○18 メーデーや  労働者の祭典 だということが思い起されます。
○35 雑巾で  外遊びして帰ってきた子供が庭の散水栓で、足を洗い手を洗い、ええいついでに顔まで洗ってしまえ---タオルがないので干してあった雑巾で---という天気の良い日の元気な子供の景がみえました。
○46 とめどなく  匂いに「とめどなく」と言うだろうか、いう違和感はありますが、茉莉花の特徴をとらえていると思いました。
 気になりました句
 32 わたしだけ 口語で字余り切れも無く、「帽子」「日傘」も一般名詞の働きしかしていないように思えます。であれば俳句ではなく散文ではないのかなと思いましたが---どうなのでしょうか?正直わかりません。

【 森田遊介 選 】
○17 藤棚や  藤棚の下に腰かけ遠目で学生等の楽しげな様子を伺っている穏やかな情景です。子供らの姿を身ながら自分の学生時代を思い出しているのでしょうか。ちょっとセンチな気持ちになる一句です。
○25 青嵐  きっと可愛がっていた愛犬なのでしょう。否、飼い主の方が愛されていたのかも知れません。動物と人とが同一線上で深い愛情を下五で表現されていると思います。
○37 千枚の  古い事ですがDiscover Japanのポスターを思い浮かべました。すんなり情景が浮かぶ綺麗な句です。
○41 撫でるほど  私ごとですが、愛猫(Paggy)が逝って早三ヶ月になります。私個人としてホロリとしてしまう一句です。毛が抜ける時季になったのですね。しみじみ彼女(Paggy)の事を思いだしました。
○59 香水に  そんなにリキを入れておしゃれをするなんて何処へお出かけなのでしょうか?一瞬の情景をうまく詠んだと思います。
 今回は読みごたえがありました。全般的に爽やかな句が多かったと思います。
 私の5月と皆様の5月をダブルで楽しんているように思います。だから「俳句って楽しい!」

【 小早川忠義 選 】
○09 春惜しみつつ  いくら拭いても何かしら残っていそうな蜂蜜と惜しむ気持ちが上手く呼応しています。
○20 肩に首  どんなスタイルであれただならぬ関係。そこへ吹いてくる風は温かくて心地よい。
○27 竹皮を  竹が伸びるのに音は聞こえないように感じるものです。エレベーターみたいに伸びるのかも知れません。
○53 辻井戸に  中七の「や」が疑問の「や」に見えます。「咲くや」を「咲きぬ」でいただきます。
◎62 遠雷や  あの日に映画を見た。そして映画のストーリーとその前後に展開された思い出。ちっぽけな半券でも大切なもの。蛇足ながらやはり映画で「遠雷」といえば女優の石田えりさんのことを思い出します。
 07 春の蝉  松蝉の声か、それとも春の蝉という言葉を聞いただけで縁のある人を思い出すこともあります。耳が研ぎ澄まされると感じるのもそのせい。
 22 猫どもの  語呂がちょっと耳障りなので、切れ字を入れるか刈るという動作を言わないでおくか。
 26 錠剤の  病への不安感が出ています。「かたさが」というのがどうにも気になります。
 32 私だけ  抑揚の無い文章は、俳句というフィールドには心に掛からない分勿体無い気がします。
 47 青葉風  誰かが乗っていたこと、落ちないでいたこと、いろいろ心に掛かる部分はありますが、青葉風が効いているのかどうか。

【 石川順一 選 】
○01 夏近し  料理のヴィジュアル面については極めて着目点が多様過ぎて、着地点を見失って仕舞いそうですが、この句では具材に着目する事によって無難であると同時に尚且つ陳腐とは思えない詠み振りとして一定の成功を収めているのではないでしょうか。
○23 隣の絵  季語は「うすごろも」。内容的には何てことは無いと思いつつその詠み方が極めていい意味で作者の主観が表現形式に現れて居ると思いました。絵に感動した、或いは何か詠まれて居ない部分で作者をはっとさせるような出来事があった、などいろいろ想像する楽しさをこの句は掻き立ててくれるのだと思いました。
○25 青嵐  今ではペットでも葬儀を執り行い墓標を建てて慰霊をしっかりやるといいます。この句ではペットと言えども人間並みに遇そうとする礼の心が伝わって来ました。
○41 撫でるほど  老猫でしょうか。それとも句作者の錯覚か、何れにしろペットと人間の良好な関係を感得出来ました。
○49 山椒魚  井伏鱒二の「山椒魚」を思い出しましたが、「山椒魚」や「小さき流れ」からのんびりとした印象を受けました。言って見れば見たままと言える情景かも知れませぬが、何か他に句作者をはっとさせるような状況があったのでは無いかと推察しました。
 取れませんでしたが他に注目した句に
 03 佐保姫に付かず離れずペダル漕ぐ
 07 春の蝉句友が逝きて耳敏し
 16 外つ国の種を蒔きみる五月かな  
 22 猫どもの住処化したる空地刈る 
 35 雑巾で顔拭いてゐる子供の日  
 57 薔薇と書き薔薇欲しくなる机かな
 58 寝転んで花火の匂いかいでいる
が、ありました。

【 湯木ねね 選 】
(今回はお休みです)

【 涼野海音 選 】
○43 学校と  学校と神社、「動」と「静」といえる場所。賑やかな学校と静かな神社が隣り合うって,なるほど実際そういうこともありますね。
○48 人おらぬ  空虚な雰囲気が漂っております。
○51 婚礼写真  あるある俳句とでも言いましょうか。実際体験したことはないけど、あるあると納得。
○54 白靴の  注意深い観察力に脱帽しました。まるで探偵のようです。
○62 遠雷や  どうして「まじまじと」みたのかとても気になりました。そう思わせるのは「遠雷」の効果でしょうか。

【 松本てふこ 選 】
○14 五月来る  ファンタジック! 季語が意外と動かない。
○33 雹に頭を  雹の質感を自分なりの視点で描写する心意気!
○47 青葉風  自然と目線が上にいく、嫌みのない前向きさ。
○51 婚礼写真  こんな時にまくなぎ…というトホホ感で読ませる方法は目新しくないが、言葉の選び方に迷いがなくていいと思った。
○57 薔薇と書き  薔薇が直接出てくるわけではないが、どんな机なのだろうと読者に思わせる。薔薇が似合わない、小学生風のデスクマットが可愛い机なんかだともっと可愛いと思う。

【 足立山渓 選 】
○15 抽斗に  赤子の時の手形を見ながら、幼稚園に通う我が子を見つめ感動している親の気持ちがうかがえる。
○18 メーデーや  元気な肉体労働の方だろうか。肩を組みながら労働歌など歌っている景が目に浮かぶ。
○27 竹皮を  中七の途中に切れ字を用い、竹皮は下、そして昇降機は上と、俳句の技法に感心。
○37 千枚の  中七の措辞に感服。
○42 夏めくや  季語と「ピンクの柄」の取り合わせは佳い。

【 川崎益太郎 選 】
○26 錠剤の  錠剤が丸ごと喉を通るときの何とも言えない感触をよく表している。錠剤が精神面の薬であればなお更に。
○27 竹皮を  竹の成長は早い。まるでスカイツリーのエレベーターのように。
○32 私だけに  帽子も日傘もない、まったくの無防備。私だけ、が効いている。いろいろ連想させる句。
○34 夕立や  新装開店と嘘の花の取り合わせが上手い。嘘は時と場所を選ばずどこでも咲く。まるで本当の花であるように。
○49 山椒魚  小さな源流に棲む山椒魚。まるで流れを二分するように。山椒魚をこんなにきれいに詠んだ句を見たことない。

【 草野ぐり 選 】
○09 春惜しみつつ  どうしても蜂蜜の瓶って蜂蜜でべたべたに。それは四季を通じてそうなのだが瓶を拭きつつ春を惜しむ作者の暮しを愛おしむ様子が感じられて好きです。
○51 婚礼写真  結婚式場の庭園だろうか、まくなぎを払いつつも笑顔を決める正装の人々。
○57 薔薇と書き  豪華な薔薇の花束ではなく机だからささやかな一輪の薔薇だろう。素直でいてどこか陰影のある独特さに惹かれる。
○62 遠雷や  何故まじまじと?感銘を受けたからか、とんでもない映画だったからか。遠雷や、だからきっと一人で見に来たのだろうなーとかいろいろ想像できて楽しい。

【 二川はなの 選 】
○01 夏近し  生春巻の透け感に、夏到来を予感。確かに・・・。
○09 春惜しみつつ  
○15 抽斗に  ご自分の手形か、お子様のものか、私も抽斗に入れたままの手形を思い出しました。
○28 石ころも  ユーモラスで共感
○49 山椒魚  鈍重な山椒魚の動きが感じられる。
 他に好きだった句
 12 内地より  どんなお婆さまだろう、ライラックの涼しげな色に想像を巡らせました。
 51 婚礼写真  まくなぎを払うのが夫婦で協力する第一の仕事?現代は婚礼写真を公園で撮影するケースも。
 57 薔薇と書き薔薇欲しくなる机かな

【 水口佳子 選 】
○01 夏近し  うすい春巻の皮から赤みがかった海老が透けて見えるのは何だか涼しげ。それに羽化していく昆虫のイメージが重なり、〈夏近し〉の季語へと繋がっていく。〈すける〉は漢字がいいようにも思うが。
○11 いま姓の  〈白シャツの人よ〉という呼びかけのような詠嘆に惹かれる。何もかもまっさらの初々しさが心地良い。
○14 五月来る  きっと若葉のなかを抜けてきたケーブルカーなのだろう。特に新緑はよく匂う。「〜の匂い」はうまく使わないと陳腐になってしまいがちだが、この句の場合は成功しているように思う。
○26 錠剤の  錠剤を呑み込んだときしばらく喉にその感触が残っているときがある。そのちょっとした違和感を〈青葉冷え〉でうまく言い表しているのではないか。 
○58 寝転んで  つまりこの人は花火をしていない人で、そんな子供じみたものつまらんとか何とか言って、でもちょっとだけ気になる、そんな心理が窺えておかしい。〈かいでいる〉という動詞が生きているように思う。
 他に気になる句
 19 持ち込みの  句材が面白いです。 
 37 千枚の  気持のいい句。〈すべる〉と表現したのがいい。 
 48 人おらぬ  惹かれた句でしたが、下5が不要のようにも。

【 喜多波子 選 】
○12 内地より  内地と言う言い方・・私と同じ道内の方かと思いました。祖母様へのいたわりが見えます。
○30 母のゐぬ  薬日に降る雨は、何故か寂しい。
○35 雑巾で  何故か昭和の匂いがして元気な童を思いました。
○50 脇腹に  脇腹にバックが触れて・・ それに全く関係の無い意表をつく下5が良いと思いました。
○57 薔薇と書き  机の上で薔薇と言う字の練習をしていて・・ この机に薔薇が有ったらと静かな感動が心底にある好きな句です。 

【 鋼つよし 選 】
○14 五月来る  リズムがよく新緑らしい句
○39 見えにけり  発見した喜びが的確にあらわされている。
○44 眼病の  なんでも試して見ようという眼病の人の気持ちがよく出ている。
○51 婚礼写真  映画でも採用されそうな一場面と思う。
○58 寝転んで  子供でも大人でもこんな人いそうな景色。
  五句選以外では
 40 新緑のなまこ壁
 48 人おらぬ部屋に西日
 28 石ころも貝と見たれり
 50 脇腹にバッグが触れて
 が佳句と思います。

【 中村阿昼 選 】
○27 竹皮を  取り合わせにも、句のリズムにも勢いがある。
○37 千枚の  棚田に山々の緑がうつって、まさに緑雨という感じがする。
○50 脇腹に  身体感にあふれる句。鰻じゃなくて穴子というのがさっぱりしてていい。
○57 薔薇と書き  一輪の薔薇が似合うこんな机はわが家にはないので憧れる。
○58 寝転んで  庭先の花火。おとーさんは一杯やってもう眠いのかも。

【 小川春休 選 】
○16 外つ国の  下五の「みる」から、これまで蒔いた事のなかった種を蒔く、かすかな心の弾みが伝わります。「外つ国」とは雰囲気があり、響きも軽やかな良い言葉ですね。
○26 錠剤の  錠剤の硬さに着目したところが秀逸。水とともに飲み下した錠剤の硬さを喉や食堂に感じる、そうした身体の内部の感覚と、青葉時の急な冷え込みとが感覚的に響き合っており、印象深い句でした。
○30 母のゐぬ  単なる初夏の雨の情景というにとどまらず、身体の傷や病よりも、心の中の欠落の方が重い、そしてこの、似た欠落を持つ子らは、そのうち分かり合える日が来るのか…。そのようなことを思わされました。
○31 緑さし込む  大きな窓のあるアトリエを思いました。色彩感覚も豊かですが、筆先の毛の硬さの違い、質感まで眼に浮かんできます。
○50 脇腹に  繁盛している店なのでしょうか、狭い席に沢山の客が詰めて座って食べている。小脇に置いたバッグが当たって邪魔だけど、この店が旨いんでしょうね、きっと。観察眼の効いた、生き生きとした句です。
 01 夏近し  彩りも美しく、いかにも美味しそうです。
 02 街中に  林田紀音夫の〈黄の青の赤の雨傘誰から死ぬ〉を思い出します。「街中」はちょっと指し示す範囲が広すぎるのではないでしょうか、地理的にも時間的にも。もう少し焦点を絞りたいところです。
 03 佐保姫に  「付かず離れず」で示される位置関係がよく分かりませんでした。
 06 ナビゲーションの  「左折」がそれほど生きていないように感じました。「麦の秋ナビゲーションのいふままに」で良いのでは?
 07 春の蝉  句友との思い出のある春の蝉だったのでしょうか。余韻のある句です。
 09 春惜しみつつ  雰囲気のある句で惹かれましたが、「拭きぬ」の「ぬ」が少々気になりました。「ぬ」は「動作・作用が完了または実現したことを表す」助動詞。句の雰囲気、「つつ」との整合性から見ても、拭いている途中である方が良いのではないかと思います。
 14 五月来る  雰囲気は良いのですが、ケーブルカーに動きが出れば、もしくは自分との関わりが出てくれば、もっと句が活き活きしてくると思います。例えば「ケーブルカー来る新緑の匂ひさせ」など。
 15 抽斗に  私が知らないだけかも知れないのですが、「朱印の手形」という言い方は正しいのでしょうか。「朱の手形」なら分かりますが、「印」と「手形」は相容れないのでは?
 17 藤棚や  気候も良く、外で練習しているブラバン部の子らが見えますが、下五がもったいない印象です(部といえば「子」ということは言わなくても分かりますし)。「藤棚やブラスバンド部○○○○○」として下五でブラバン部の子らの様子や動きを掘り下げたいですね。
 19 持込みの  面白くなりそうな素材ですが、「持込みの」では動きがなく想像が広がりません。「ベビーフード」に対して「子供の日」というのもさすがにツキスギでしょう。例えば「葉桜にベビーフードを取り出しぬ」等、季語や動きのある表現を考えてみてください。
 20 肩に首  描写からすると大人が子供(もしくは老人?)をおんぶしているのでしょうか。景も見え、気分の良い句です。
 21 卯の花や  「卯の花」のイメージから女性の姿が浮かびますが、女性に対するステレオタイプなイメージをなぞった句という印象も受けてしまいます。その延長で、「女」より「男」にした方が句としては意外性があり、迫真性が出そうだなぁ、などとも思いました。
 24 引かんとす  「引かんとす」とはこれから引こうとすることで、まだ引いていない状態です。それなのに種が八方に散らばるのは時系列的におかしくないでしょうか。
 25 青嵐  心地良い初夏、窓を大きく開けると家の中を青嵐が通り抜ける。この時期が好きな犬だったのか、それとも命日か何かだったのでしょうか。さりげない描写から、感情がじんわりと伝わります。
 27 竹皮を  不思議な取り合わせですね。竹とエレベーターのある建物が同居する景というのが、どうも上手く思い描けませんでしたが…。いわゆる本格的な竹林ではなく、建物の傍らに植えてあるような竹でしょうか。
 32 私だけ  不思議な読後感の句ですが、ちょっとつかみどころがなく、一句としては弱い気がしました(連作の中なら、また印象が違うかもしれませんが)。中七「日傘も帽も」とした方が自然のような気もしましたが、こういう句の場合、不自然さが魅力ということもあるので、難しいところですね。
 35 雑巾で  あららら雑巾で。やんちゃな子供の様子が見えますね。
 37 千枚の  「かな」で大きくまとめてしまうより、「来る」「行く」などを入れて動きを出し、自分との位置関係も明確にしたいですね。例えば、「千枚の棚田をすべり来る緑雨」とすると、棚田を自分の方へ雨と雨雲が向かって来るような感じがして、躍動感が増すと思いますが、いかがでしょう。
 40 新緑の  ちょっとまとまりがない印象です。
 41 撫でるほど  猫もだいぶ年を取ったということでしょうか。細かいことかもしれませんが、これも「撫でるほど」と「脱けし」の時制の整合が取れていない(いま撫でているのかそれとも撫で終わっているのか曖昧)ように思うのです。例えば中七を「猫の毛抜けて」とすれば、それも気にならなくなります。推敲してみてください。
 42 夏めくやビニール傘にピンクの柄  
 44 眼病の  少し不安もあるが、医者は治ると言うのでひとまず安心、というほっとする気持ちが出てますね。眼病は自分ではその重さがよく分からない繊細なもので、他の病気とは少し違う心情がありますね。
 48 人おらぬ  花が「咲く」のと同様、西日が「さす」のは当たり前。なので、下五は何も言っていないに等しく、とてももったいないです。部屋の様子や西日の強烈さを活き活きと印象付ける、下五を考えてみてほしいところです。たとえば一例として「人おらぬ部屋を西日のとほりぬけ」とすると、西日の射し込む角度や部屋の広がりが見えてきたりするのではないかと思います。
 49 山椒魚  じっと身動きせず、岩のような山椒魚の存在感がよく見えます。
 51 婚礼写真  まくなぎがいるような場所ということは、緑の美しい屋外で婚礼写真を撮影したのでしょう。微笑ましい景で、自然とこの新婚夫婦を応援したいような気にさせてくれます。
 53 辻井戸に  非常に魅力のある景ですが、カラーの咲きよう、存在感など、句の表現はもう少し工夫ができるのではないかと思いました。
 54 白靴の  「48 人おらぬ」の下五と同様、この下五ももったいないという印象です。
 56 筍や  「先」とは先端のこと? それとも時間的な「先」? 
 57 薔薇と書き  とても印象的な句です。広々とした机の上に便箋と僅かな筆記用具、そのような景が目に浮かびます。
 58 寝転んで  いろいろな場面が想像されますが、私が思うのは広島県・安芸高田市の土師ダムのほとりで開催される8月末の花火大会。ダムのほとりに寝そべって打ち上げ花火を見物できるのです。その花火の間の準備時間や、花火が終わった後など、余韻に浸るように花火の火薬の匂いを吸い込んだのを思い出しました。
 61 節電省エネ  むむむ、ちょっとサラリーマン川柳っぽい感じですね…。
 62 遠雷や  とても印象に残った句です。半券を見て、その映画のことを思い出しているのか、それとも映画を共に見に行った人のことを思っているのか。細かいことを言わない分想像の広がる句と思いました。
 


来月の投句は、6月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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