ハルヤスミ句会 第十四回

2001年11月

《 句会報 》

01 烏瓜いろはにほへとちりぬるを   呂木

02 逆立ちの蜘蛛の眼に入る鰯雲    つよし(呂・ふ・春)

03 犬痩せて秋の翳よりあらはるる   春休(む)

04 だう見ても食せぬ茸曲がり坂    つよし(む)

05 点滴の左腕より冷え上る      阿昼

06 黒々と石の濡れたる今朝の冬    春休(阿)

07 立冬や空の青さに箒干す      つよし(呂)

08 機の翼冬の日中に入りにける    呂木

09 埠頭にてコートの前をきちと閉め  ふみ(阿)

10 点滴す行火だんだん熱くなる    阿昼(春)

11 捨てに行く銀杏落葉の軽きかな   むかご(つ・ふ)

12 石蕗の花触れんばかりの流れかな  春休

13 飯粒の無き側からの空ツ風     呂木

14 傘を手に見る貨物船今朝の冬    ふみ

15 麦の芽や四つの島が一つに見え   むかご(つ・ふ・春)

16 点滴に柱時計の寒き音       阿昼

17 納屋の戸のガララゴロロと小春かな むかご(呂・阿)

18 山合の谷を埋めたり朴落葉     つよし

19 冬の日の水上バスで帰りたり    ふみ(む・つ)



【 沼呂木 選 】
○07 立冬や  これは絶対、疊箒ですね。それも柄の長い奴。ちょっと掃き癖などがついてるなら尚良し。
○17 納屋の戸の  ガララゴロロだけで○ 小春が納屋から出てきた図
○02 逆立ちの  逆立ちの蜘蛛ってどんなんですか? 非日常に対して○です。ただ、鰯雲だとおとなしい・・・・・・
05 点滴の  下五が「冷え入りぬ」だったら○でした

【 松尾むかご 選 】
03 犬痩せて…秋の翳がこの場合は決まっている 見える人には見える白い犬ですね
04 だうみても・・・あきらかに毒茸ですね、外灯の中うすぼんやりと光ってて・・・・・・ 曲がり坂が怖さを引っ張る。
19 冬の日の・・・どうってことないただ水上バスで帰りましたとあるのに、電車よりバスより、自動車より、句の後ろに広がる世界が、豊かで、面白い
(その他)
09 上五が説明になっている、したのフレーズが生かせると面白い句にないそう
18 谷埋め尽すが、気になる、がなんか捨てがたい

【 中村阿昼 選 】
○06 黒々と   早朝、がらりと硝子戸を開けると、雨上がりの庭石が黒々濡れて、空気がひやりと肌を刺して、いかにも「今朝の冬」。ただし「黒々と」という言い方がやや常套的か。
○09 埠頭にて  「風の強い埠頭だから」、という理屈に読めてしまうかもしれないが、あまりそれが気にならないのは、「きちと」というところに妙な生真面目さがあって、それが可笑しみになっているからだと思う。
○17 納屋の戸の  なんでもない日常の景だが、「ガララゴロロ」に臨場感があり、戸が開いた納屋の中に差し込む小春日の光が見えてくるようだ。
03 犬痩せて  翳の一部が痩せ犬になったような感じがして面白い句なんだけど、「秋の翳」があいまい。
12 石蕗の花  石蕗の花が折れてる? きっといいところを見ているんだろうなと思うのだが、ちょっとわかりにくい。 
P.S. 最近忙しくて俳句ができなかったのですが、風邪引いて点滴してもらっている間、暇だったので点滴の句を作ってみました。風邪は結構しつこかったけど、なんとか治って、12月の童子の全国大会は無事行けそうです。皆様も風邪にはご用心を。

【 鋼つよし 選 】
11 捨てに行く  銀杏というのは、生きた化石とか、太古の歴史があるので、落ち葉の中でも、べつの感慨をもってみています。
15 麦の芽や  麦の芽という季語が、詩情をひろげているようだ。
19 冬の日の  格別なことを言っているのではないけれど、冬と水上バスが、言外にいろいろ想像させるところがある。
選評  点滴の句が三句。点滴というもの受けたことがないのだけれどちかごろは、お若いかたでも、点滴治療をされるそうだから、年配と、受け取るのは間違いなのだろう。05、16 はわかりやすいので、 10 点滴す行火だんだん熱くなる 良いかも。

【 中村ふみ 選 】
02 逆立ちの  蜘蛛の目のことより何よりとりあえず、蜘蛛は逆立ちをして巣にいるのだという事が、私にとって発見でした。
11捨てに行く  捨てるものは重いものだとたいてい決まっているのに・・・。何かさりげない意外性があって面白かったです.
15麦の芽や  四つの島が一つに見えるなんて、一体どんな風景なのでしょうねえ。最初の「麦の芽」があっているのかどうか、ちょっと私にはわからないのですが、それでもとります.

【 小川春休 選 】
○15 麦の芽や  麦の芽から島へと思い切り良く視点を移した遠近法が心地よいです。しかし字余りにしてまで「一つに見え」と言う必要があるのでしょうか。他の言い方もあるはずです。たとえば中七下五を「重なり見ゆる四つの島」とすれば五七五に収まる。
○02 逆立ちの  「逆立ち」がうまく働いていない感じはしますが、蜘蛛の眼に入る鰯雲、で○にさせていただきました。「眼」は「まなこ」と読ませることで字数を増やすこともできます。推敲してみてください。
○10 点滴す  点滴三句の中では、これが一番良かったと思います。点滴のイメージ(病気・病院・静けさなどなど)に対して「だんだん熱くなる行火」っていうのはちょっと裏切りがある。ただ、上五で切るのか下五で切るのか文法的なとこをきちっとした方が良い。今のままだと句末が締まらない。
01 烏瓜  久保田万太郎に、よく似た句があった気がします。ちょっと記憶が不確かですが…。「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」だったかな?
04 だう見ても  上五中七に対して「曲がり坂」が効果的かどうかというと、あまり効果的でない気がします。
07 立冬や  気持ちの良い句ですが、「立冬」と「空の青さ」と具体性の弱いものが並んでいるところが少し弱いのではないでしょうか。季語をもっと具体的なものにすればもっと良くなると思います。
11 捨てに行く  これは「捨てに行く」という上五が状況説明的ですね。描写と説明とがどう異なるか、私自身にとっても難しい問題ですが、この上五はきっと説明に違いない、という気がします。もっとよく見て自分の表現にするか、語順を入れ替えるなどして「捨てる」という行為自体にリアリティを持たせるか。ちなみに春休流だと「軽きかな銀杏落葉のひとかかへ」。
14 傘を手に  「傘」「貨物船」「冬」と道具立てが多すぎるために句にまとまりがない感じがします。あと、「見る」という言葉は、なるべくなら言わずに読み取らせたい言葉ではありますね。
19 冬の日の  何も言わない潔さには好感を持ちましたが、ちょっと具体性に乏しい感じもします。このあたりのバランスが難しいところですね。

来月の投句は、12月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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