ハルヤスミ句会 第百四十回

2012年6月

《 句会報 》

01 鼻にしわ寄せてあくびや聖五月  てふこ(遊)

02 夏来るや薄着に透けしあばら骨  愛(奥・山)

03 のりたまをご飯に振るや夏燕   海音

04 犬だって待つのは嫌い木下闇   ちこ(順)

05 脇腹の痛み反復植田かな     順一

06 ちらばれる太陽の輪の涼しかり  ひなこ

07 風死して掲示板針穴だらけ    春休(忠・て)

08 父匂ひ網戸を閉める虚像かな   順一(て)

09 初成りの胡瓜のにほひの確かなる つよし(奥)

10 じっくりと漫画を読む日五月闇  ちこ

11 網戸越し声を掛け合う裏小路   遊介

12 ビニール傘越しの夜店の異国めく ぐり(愛・ち・て・佳・春)

13 傾ける度に光りぬラムネ玉    遊介(奥・鋼)

14 瀧近く鞄の端を強く持つ     春休(土・愛・ぐ・波)

15 パレードの先頭初夏の風を切り  ひなこ

16 風死すやマトリョーシカの胎の内 忠義(ち・海・佳・春)

17 朝晩に沸かす麦湯や日本人    ぐり

18 まくなぎや地に椅子の足こすりつけ 順一(奥)

19 兄よりも弟強し柏餅       益太郎(遊・山)

20 撫子の枯れるや凛と額の花    つよし

21 袋には細かな文字や新茶汲む   山渓(愛)

22 一族の墓見えてゐる夏木立    海音(遊・忠)

23 風こばむ一人静の大所帯     波子

24 起き抜けに屋敷畑の初茄子    山渓

25 虹を見る眼に涙袋かな      てふこ(タ・益)

26 若僧の徐々に滾るや実梅打つ   タロー

27 書架の森きのふの白蛾とも違ふ  佳子(タ・土・順・ぐ・鋼)

28 梅の実を秤にかける朝市女    山渓(奥・忠)

29 ラムネ飲む老いたる父の喉仏   遊介(海・山・佳・波)

30 扇風機出せば特殊な顔をする   順一

31 我無くば筵飛ぶべし青嵐     春休(順)

32 寝床にも聞えてきたり瓜きざむ  山渓

33 旅の果てマルコポーロは黄の薔薇に ひろ子(益)

34 畳むより干すのが好きだ白いシャツ ちこ

35 鈴懸の花を一身(ひとみ)にホルン吹く 波子(山)

36 入院子くもと遊べる一日かな   愛(ち・順)

37 木の椅子に憩ふ媼や青葉風    山渓

38 消しゴムがノートを汚す羽蟻の夜 佳子(土・海・て・益・ぐ・春)

39 底蹴つてするりとプールより上がる 春休(土・ち・忠・ぐ)

40 日傘たたみ身ぬち一気に影ろひぬ 佳子

41 剣道の突きは禁じ手心太     益太郎(◎山・波・遊)

42 少しずつ白髪光り更衣      ひろ子(海)

43 青梅の庭の清掃奉仕かな     つよし

44 ちやぐちやぐの馬剥き出しの尻揺らし 忠義(順・て・春)

45 近寄れば棘の痛さや赤き薔薇   ひろ子

46 夏の夜爪の形を褒められる    ちこ(愛・タ・遊・益・佳・鋼)

47 かうかうと烏さわぎてビアガーデン 遊介

48 叱られて叱られて梅雨入りかな  益太郎

49 勉強を蠅虎の飛び越せる     春休(タ)

50 アスパラの挙りて気炎膨らます  波子

51 短夜やシルクハットの男をり   てふこ(タ・忠・海)

52 深海の魚になりぬ蚊帳の中    遊介(土・波・鋼)

53 花石榴どこにあるのと見にゆけり タロー(愛)

54 直に風受けたく網戸開け放つ   ぐり

55 青嵐ちょうちん袖が膨らんで   ちこ(波・ぐ・鋼)

56 梅雨入りを前に消臭亜空間    順一

57 小煩き車掌よ黙れ走り梅雨    タロー(益)

58 梅雨晴間白糸の滝降り来たる   愛

59 獅子舞の尻尾持つ役夏祭     ひなこ(ち・佳)

60 切り分けしトマトや種の未だ青く 忠義(春)

61 辞職しし人の机の水中花     海音




【 奥寺ひろ子 選 】
○02 夏来るや  哀感と同時にあばら骨といいきったおかしみも感じる。
○09 初なりの  私も実感です。
○13 傾ける  子供のころを思い出します。
○18 まくなぎや  椅子の足をこすりつけたという捉え方がおもしろい。
○28 梅の実を  梅の実と朝市女との取り合わせが良い。

【 遠藤ちこ 選 】
○12 ビニール傘  雨が降っている時の夜店が並んでいるところは、東南アジアにいるような不思議な気持ちになります。夜店で雨がふっているところが良かったです。
○16 風死すや  かわいいイメージのマトリョーシカを胎の中をいったところが、風死すの息苦しさと妙に合っていて気になりました。
○36 入院子  一日中、壁か天井を動いているくもを目で追っているのが、入院中の子供の静かな一日を想像できました。早く退院できるといいですね。
○39 底蹴つて  するりとプールから上がるところがなんとも爽やかで、プールに行きたくなりました。
○59 獅子舞の  獅子舞の尻尾を持つ役は目立たないけれどすごく汗だくで頑張っている人のイメージで、いい人なんだろうな。と思いました。

【 滝ノ川愛 選 】
○12 ビニール傘  なるほど濡れたビニール傘を通すと別の世界が見えるのですね。タイやベトナムの裸電球に照らされた
夜店、雑踏、匂いまで感じられます。エキゾチック!やってみよう。
○14 滝近く  滝に近づくと、ドウドウという水音、ものすごい水しぶき。思わず手近にあった鞄の端を握り締めた。何でもいいのです、隣の人の服の端でもいいのです。
○21 袋には  去年は放射能汚染とやらで、いつものお茶は出荷停止となりました。でも今年は袋にこまごまと小さな字で、この新茶は安全です、安心してご賞味くださいと書いてある。有難い。おいしく入れてじっくり頂きましょうと。
○46 夏の夜  爪を褒められた、勿論男性に。憎いねー、ぐっときますね。一人胸にしまっておけず、句にしてしまった。「夏の夜」があっています。
○53 花石榴  昔は石榴の木は別にめずらしくありませんでしたが、昨今はあまり見かけなくなりました。どこどこどこにあるのと、「けり」が力強いですね。私の家の近くにも一本あります。

【 土田ひなこ 選 】
○14 瀧近く  なぜでしょうかね、私も同じ、と気がつきました。
○27 書架の森  とも違ふという終わり方が新鮮です。
○38 消しゴムが  消しゴムで汚れるのはイヤですね、羽蟻がとんでればなおのこと。
○39 底蹴つて  これってかっこ良くて、憧れるのです。
○52 深海の魚  蚊帳の中は異空間ですね。

【 小林タロー 選 】
○25 虹を見る  恋人同士なら当たり前なので、これを機に恋が芽生える瞬間、その象徴としての虹でしょう。
○27 書架の森  迷いこんだ森で出会うものは何?同じものでもこちらが変わっているのか。白蛾の持つ不気味さがマッチしています。
○46 夏の夜  「25」とはちがい、これは軟派の手口でしょう。夏の夜は爪で、冬は手相で口説きます。
○49 勉強を  ハエトリグモとは! ジャンピングスパイダーですもの勉強を飛び越すでしょう。勉強になりました。
○51 短夜や  後朝の別れ、シルクハットの執事がそろそろですよ と言っています。

【 森田遊介 選 】
○01 鼻にしわ  実際に鼻に皺寄せて欠伸をしてみました。大きな欠伸でたっぷりとした口の開きでした。気持ちのよい季節を身体が感じる情景です。欠伸は季節なしに出るものですが、聖五月にぴったりと嵌まっています。
○19 兄よりも  節句の祝い席に兄弟が力比べをしたのでしょうか。客人の前で歯を食いしばり頑張る弟、自信たっぷり余裕顔の兄の顔が想像されます。どちらも粘り強い柏餅です。
○22 一族の  「一族の墓」と少々重い上五ながら下五から爽快な風景が見えます。
○41 剣道の  心太のように一気に突きたいところだが、それができない。面の中の顔のそんな表情が伺えます。
○46 夏の夜  とかく人は足とか手、耳の形を話題にします。その足は父親似だとか○○の叔父さん似だとか、耳は出世する形(?)だとかです。この一句の爪は手か足か判りませんが、裸足になる季節には足の爪だと想像しました。
 以上5句を選句しました。
 今回も読みごたえがありました。

【 小早川忠義 選 】
○07 風死して  様々な催し物も終わって、夏休みが始まって風も人の声も凪いでいる様子。
○22 一族の  田園風景の中には、一族の墓だけが寄り添って並んでいる場所もある。公園墓地とは全然違う厳かさがあります。
○28 梅の実を  一個乗せれば微妙に針が動き、きっかり売ってしっかり儲けようとしているのかと思えば、おまけだよと言って多めに乗せて針を確認する。
○39 底蹴つて  水の中だと周りが見えにくいから、つい自分がヒーローかヒロインのように思えてしまう。するりという言葉にそんなナルシシズムが見え隠れする。
○51 短夜や  シルクハットというだけで胡散臭さが十分伝わります。それに短夜が輪をかけて、もうこれはたまりません。
 09 初成りの  青臭いのだけどそれが生の確かさ。生の確かさを感じえた若かりし頃の記憶まで甦るかも。
 17 朝晩に  下五で標語化してしまったですね・・・。ロシア人だったらどうだったでしょうか。
 19 兄よりも  男の子の節句で嗜まれる柏餅だからこそ意外性が欲しいところです。
 26 若僧の  どんなシチュエーションなのかちょっと解りにくいですが、若い僧がどう滾っていくのか興味深いところ。
 34 畳むより  「好き」と言わずに干すのが好きなことを表現してみて欲しいところです。
 48 叱られて  迷った末に選ばなかったのは「て」の使い方がかな止めに繋がらない切断の力を感じたからです。

【 石川順一 選 】
○44 ちやぐちやぐの  「剥き出しの」に惹かれました。これは服を着て居ない馬と言う意味では無くてもっと原初的な驚きをそう表現したのだと思いました。
○36 入院子  「くもと遊べる」に興味を感じました。一日中それで退屈が紛らわされたのであれば、極めて貴重な体験であったかと思います。その事が素直に句にされて居るかと。
○31 我無くば  アラジンの魔法のランプとか、何か童話的な神話的な雰囲気がうまく俳句に結実して居るかと。
○27 書架の森  何か神秘的な独りの図書館などを想像しました。同じように見えて「違ふ」と敢えて断定的に主張する。個我が優っているがそれが気にならない俳句かと思いました。
○04 犬だって  ユーモラスな句だと思いました。恐らくあからさまないやいやをしたのでしょう。その犬の姿態を見て見たかった。

【 湯木ねね 選 】
(今回はお休みです)

【 涼野海音 選 】
○16 風死すや  こんな角度でマトリョーシカが詠まれるなんて思っても見ませんでした。
○29 ラムネ飲む  ごくごくラムネを飲む音が聞こえて来そう。喉仏の動きも見えてきました。
○38 消しゴムが  使い込まれた消しゴムはまっ黒なのでしょう。そんな消しゴムで字を消すと、ノートも汚れてしまう。たしかにこういう事もあるなぁと、うなづけます。
○51 短夜や  唐突感と不思議さが一句の中で共存しています。いったいこの男は誰でしょう。世界名作劇場の「あしながおじさん」を思い出しました。
○42 少しずつ  作者は来し方を思っているのでしょうか。そこはかとない感慨。

【 松本てふこ 選 】
○07 風死して  中七下五の表現はもう少し読みやすくならないかとも思うのですが、季語と喧嘩しすぎない景を選んできた、という印象。暑く風の無い日の乾いた空気が感じられたように思います。
○08 父匂ひ  上五が思わせぶりで面白い。父は死者なのでしょうか。昼寝していてふといないはずの父の匂いがしたというような、そんな切なさを感じ取りました。
○12 ビニール傘  素直すぎるほど素直な感慨やチープなビニール傘の質感が憎めない。東南アジアの国の夜のようですね。
○38 消しゴムが  モノクロ映画のような句。作者としてはキモであろう「汚す」という踏み込んだ言い方と「羽蟻の夜」がお互いのイメージを殺し合ってる印象もあるのですが、私はその危ういバランスが好きです。
○44 ちやぐちやぐの  チャグチャグ馬コは、新聞での写真ですとか中学時代に「馬に乗って歩かされた」という友人がいたくらいで見たことはないのですが、この句の力強いシンプルな描写に、チャグチャグ馬コってこういうものなのかなあ…と分かった気にさせられました。
 その他、気になった句。
 16 風死すや  面白いのですが、頭で作ってる感じが強すぎるのとなんでマトリョーシカで屋外の季語?というツッコミを入れたくなって取れず。確かにマトリョーシカのあの空間は風とは無縁そうな気がしますけど。
 17 朝晩に  日本人、が笑えます。沸かしちゃう俺って日本人だよなあってことですよね。日本人の定義を考えだすと笑ってばかりもいられないけれど、こういう瞬間って確かにある。ある文化に強くコミットしている自分を発見する瞬間。
 30 扇風機  特殊な顔、という言い方がちょっと狙いすぎている感じ。色々な想像が出来る言葉を使うのは確かに楽しいのですが、もう少しヒントが欲しいです。どういう特殊さを想像すればいいか迷ってしまう。
 41 剣道の  季語がオチのようになってしまう構成はつまらないように思います。心太を突くのとひっかけてるのかあ、そうかあ、で終わってしまう。
 61 辞職しし  基本的な文法が間違っている句、勿体ないです!

【 足立山渓 選 】
◎41 剣道の  中七の措辞と季語の取り合わせがすばらしい。禁じ手の突き、だが、心太は突かなければ食べられない。
○02 夏来るや  夏来るや、と切れ字を用いたことによって、浮き出たあばら骨の状態に納得。
○19 兄よりも  季語がぴったり。好きな食べ物は、兄の分だろうと関係ない。早い者勝ちだ。子供のころの八人兄弟の我が家のようだ。
○29 ラムネ飲む  首筋の皺は、老いの証拠ですね。
○35 鈴懸の  中七「花を一身に」のフレーズに感心。特に、「いっしん」でなく「ひとみ」で柔らか味を感じる。

【 川崎益太郎 選 】
〇25 虹を見る  虹を見ると感激で涙が出そうになる。涙袋に斬新さを感じた。
〇33 旅の果て  なぜ黄色の薔薇か、分からなかったが、平和公園の薔薇には外国人の有名人の名がつけられている。マルコポーロもあるのだろう。旅の果てが、平和公園、何ともロマンチックである。
〇38 消しゴムが  本来きれいにするはずの消しゴムが、ノートを汚す、という発想に惹かれた。羽蟻との取り合わせが上手い。
〇46 夏の夜  爪の形をほめられた、それだけではないだろう。いろいろ想像させる官能的な句。
〇57 小煩い  日本の車内案内は確かにうるさい。同感の句。走り梅雨が効いている。

【 草野ぐり 選 】
○14 瀧近く  ものすごく繊細な気持ちの動きだ。瀧に何かを感じたのは勿論だがその奥の思わず鞄の端を強く持った作者の心の揺れにとても興味を持った。
○27 書架の森  書架の森とは図書館だろうか。昨日も今日も図書館に来た。そして見つけた蛾はきのうの白蛾とは違うのだ。言っているのはそれだけだが、どうしようもないような若さと孤独感を感じる。白蛾と作者の居る空間の温度がそこだけすっと低くなっている様な感じだ。
○38 消しゴムが  消しゴムって時に使えば使うほどノートを汚す事がある。その汚されたノートの端を羽蟻が歩いているのだろうか。
○39 底蹴つて  しなやかな女性を想像した。するりとプールを上がれる人は泳ぎの上手い人だ。プールサイドの思わす目と止めてしまった光景。
○55 青嵐  素直で分かりやすくぱっと景が浮ぶ。ちょうちん袖という言葉もどこか懐かしく、思い出のワンシーンなのかな。

【 二川はなの 選 】
(今回はお休みです)

【 水口佳子 選 】
○12 ビニール傘  懐かしいはずの〈夜店〉の灯が〈ビニール傘〉を通してみた時、少しよそよそしく見えたのかもしれない。ビニール傘に付いた水滴によって灯りは屈折し、異空間を作り出す。〈異国めく〉は納得できる比喩だと思った。孤独感が漂う。
○16 風死すや  人の胎の中で胎児は母の言葉を聞き、心音を聞き、音楽を聞き・・・とさまざまな音を聞き分けているが、マトリョーシカの胎から次から次に出てくる少女は何を聞いているのだろう。〈風死す〉の何とも言えぬムーっとした暑さ息苦しさがややつき過ぎのようにも思うが、無感情のマトリョーシカが並んでいく様子が思い浮かぶ。
○29 ラムネ飲む  〈ラムネ飲む〉と〈喉仏〉はよくある組み合わせと思いつつもそれが〈老いたる父〉であることに惹かれた。
○46 夏の夜  褒められたのが爪の形であるところがなぜだか〈夏の夜〉とよく合っているように思う。マニキュアもネイルアートも施されていないすずやかな爪を想像する。
○59 獅子舞の  小澤實の夏芝居の句をちょっと思い出した。汗だくになって〈獅子舞〉の尻尾を持っているのだろう。〈夏祭〉の明るさがいい。
 他に気になる句
 08 父匂ひ  〈父匂ひ〉〈虚像〉と何だか不思議な句なのですが、どのように解釈していいのか分かりませんでした。網戸を締めているのが父の虚像なのでしょうか。佳い句に化けそうな気がします。
 22 一族の  古い時代のものからいくつもの墓が並んでいるのだろう。夏木立が一族の歴史を見守っているかのよう。 
 52 深海の  気分はよく分かると思いつつ、〈深海の魚〉でなく〈深海魚〉としたら・・・と思ってしまいます。

【 喜多波子 選 】
○14 瀧近く  瀧風が有る所のようです。鞄を握る様子が見えます。
○29 ラムネ飲む  人の老いは、頸で解るかも知れません。老いた父の喉仏を悲しく見ています。
○41 剣道の  心太を今も作っています。剣道の突きと心太を突くを想像しました。リズムの良い句です。
○52 深海の  昔は・・誰もが一度は感じた郷愁かと思いました。
○55 青嵐  青嵐に膨らんだちょうちん袖!クスッと笑みが出る好きな句です。

【 鋼つよし 選 】
○13 傾ける度に  夏の光を感じて明るい良い句。
○27 書架の森  きのふの白蛾とも違ふという措辞が良い。
○46 夏の夜  爪の形、夏の夜に合っていそう。
○52 深海の  蚊帳と深海なかなかの取り合わせと思う。
○55 青嵐  景を想像するに笑がある。
 選以外でよいと思う句
 10 じっくりと漫画を読む日五月闇
 12 ビニール傘越しの夜店の異国めく 
 22 一族の墓見えてゐる夏木立
 26 若僧の徐々に滾るや実梅打つ
 59 獅子舞の尻尾持つ役夏祭

【 中村阿昼 選 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選 】
○12 ビニール傘  「異国めく」に飛躍があり、これまで目にしたことのある夜店の句とは別種の趣きを打ち出しています。個人的には、中七の最後を「や」で切りたいように思います。
○16 風死すや  「腹」ではなく「胎」という漢字を選ばれたところに、しっかりとした作者の意図を感じます。四国で胎蔵界という名の地下道を歩いた記憶などが、私の頭の中でマトリョーシカと結びつきました。
○38 消しゴムが  ノートの白と、汚れのグレーと。繊細な感覚が、景をクリアに見せてくれる句です。個人的には、「消しゴムにノートが汚れ」ぐらいの方がすんなり読める気もしますが、元の形の硬質な印象も良いですね。
○44 ちやぐちやぐの  チャグチャグ馬コですね。飾り立てられた馬に「剥き出しの尻」を見出した点、確かな目を感じます。
○60 切り分けし  「種の未だ青く」ということは、今年の初物だったのかもしれないですね。しっかり景が見えますし、トマトを食べられることを喜ぶ気持ちが一句に満ちているのも良い。
 01 鼻にしわ  面白い景を描写されていますが、季語が合っているかどうか。ちょっと判断の難しいところ。
 02 夏来るや  「薄着」が言いすぎになっている。夏が来たから薄着になって肋骨が透けた、と全て説明がついてしまうと、読む面白みが残りません。季語を含めて再度推敲してみてください。
 03 のりたまを  非常に健康的で、おいしそうです。
 05 脇腹の  田植をがんばりすぎて筋肉痛にでもなったのでしょうか?
 06 ちらばれる  金環日蝕の観察でしょうか。だとしたら「輪」ではなく「環」と書きたいところですね。「ちらばれる」は紙の穴を通った日差しが地にたくさん映っているのでしょうが、ちょっと分かりにくいかもしれません。「地に映す日蝕の環の涼しかり」などとシンプルに作られても良いのではないでしょうか。
 08 父匂ひ  父の匂いと虚像のどちらかだけで良いのではないでしょうか。父=虚像と読むべきなのか、判然としません。その辺りを曖昧にしているのも、作者の意図なのかもしれませんが…。
 09 初成りの  字余りが絶対に良くない訳ではありませんが、この句の場合は不用意な印象を受けます。中七最後の「の」を削るだけでも良いし、「胡瓜の確かなるにほひ」と語順を変えても良い。自分の句を、何度か声に出して確かめてみてください。
 10 じっくりと  五月雨に降り込められたから、という理がのぞく点が気になりました。
 11 網戸越し  上五中七の雰囲気で、「裏小路」のような場所であることは十分に伝わります。もう少し下五で飛躍したり、句に奥行きを持たせたいところです。
 15 パレードの  気分の良い句で、きちんと出来ていると思います。
 18 まくなぎや  「こすりつけ」だと、意図的に擦り付けたように読めてしまい、何のためにそんなことをしたのかよく分からない。「引きずりて」ぐらいであれば、意図的にではなくそうなった感じになるかと思いますが、いかがでしょうか。
 19 兄よりも  何だかせつないですね…。しかし、強さよりも必要なものがあることを、この兄弟も成長するにつれて知ることでしょう。
 20 撫子の  「枯れ」自体は冬の季語、この撫子、枯れたのではなく、花が朽ちたのではありませんか? 撫子と額の花の対比は良いと思いました。
 21 袋には  さて、何の袋でしょう。新茶の茶葉が入っている袋でしょうか? もしそうであれば、「新茶の袋」と率直に言う方が良いと思います。
 22 一族の  田舎の、田畑からすぐ近くにあるような墓が見えてきます。ただ、「見えてゐる」が少々ゆるいようにも感じました。
 23 風こばむ  「こばむ」が描写としてあまり正確でない気がするのと、「大所帯」と擬人的に表したところが気になりました。
 25 虹を見る  上五、「見る」が必要かどうか…。「虹かかり眼に涙袋かな」でも、当然その「眼」が虹を見ていることは読み取れるし、句の印象も安らかなものになると思います。
 27 書架の森  句に盛り込まれた要素が多く、少々けれんみのある句と感じました。もう少し見所がすっきりした方が余韻のある句になりそうだと思いますが。
 33 旅の果て  「マルコポーロ」という名前の薔薇のことですよね? 「マルコポーロは黄の薔薇に」というのがよく意味が分かりませんでした。
 34 畳むより  報告というか、作者の感想ですね。白シャツを干す場面を描写することによって、その心地よさを読み手にも感じさせたり、作者の白シャツを干すことへの愛着を感じさせたりするのが、俳句を書く・読むということではないでしょうか。
 36 入院子  「一日かな」とまとめることで、これほんとかな、と感じました。蜘蛛は一日中遊んではくれないでしょう。そんなに長時間人間と遊んだら、蜘蛛は弱るか死ぬかしてしまいます。一日などという長い時間でなくて良いのです、入院中の子供と蜘蛛との触れ合いがかけがえの無いものであれば、一瞬でも良いではないですか。そのかけがえの無い一瞬を、もっと深く描いてほしい。
 40 日傘たたみ  「身ぬち」は「(「みのうち」の変化した語)からだの中。からだの内部。体内」。少し比喩が分かりにくいかと。
 41 剣道の  「突く」という共通点を掛けたのでしょうが、どういう景を描いているのかよく分かりません。剣道を観戦しながらところてんを食べている人がいたのでしょうか。
 42 少しずつ  「少しずつ」ということはだんだん白髪の光が増していっているということでしょうか。
 45 近寄れば  確かに薔薇の棘は鋭いですが、近寄っただけで痛くはならないと思います。
 46 夏の夜  上五、ぶつっと言い切ってしまわずに「夏の夜の」と「爪」につなげたいところです。その日その時の特別さも強まると思いますし、「の」が一句のリズムを作ってくれます。
 47 かうかうと  少し不穏なビアガーデン、面白いですね。
 48 叱られて  「梅雨入り」は「つゆいり」もしくは「ついり」と読みます。下五の字足らずがどうにも落ち着きません。
 52 深海の  独特の雰囲気のある句。少し気になったのは、「魚」を「さかな」と読むと少しくだけた言い方という印象を受ける点。「うを」がフォーマル(?)な言い方という印象を持っているのですが、私だけですかね…? 皆さんにご意見おうかがいしたいところです。
 54 直に風  風を受けたいという作者の希望よりも、実際に受けた風の心地良さの方をぜひ句にしてほしいです。
 55 青嵐  青嵐が吹いたから袖が膨らんだ、という理があらわなのがもったいない。青嵐のように風そのものの季語ではなくても、風を感じさせる夏の季語を考えてみてはいかがでしょうか。
 57 小煩き  「小煩き」と「黙れ」、両方とも必要でしょうか。どちらかが一方で、例えば「黙れ」とあれば「小煩き」は推測できる。描写すべきものに対して言葉を多く用いると、句がもたもたしてしまいます。
 58 梅雨晴間  それほど二つの季語がぶつかり合っているようには感じませんが、季重ねでなくてはならない必然性も感じません。
 59 獅子舞の  夏祭の一場面を軽妙に描かれていると思います。
 61 辞職しし  文法的には上五は「辞職せし」が正しいのではないでしょうか。サ変動詞+過去の助動詞「き」なので。 


来月の投句は、7月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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