ハルヤスミ句会 第百四十八回

2013年2月

《 句会報 》

01 大袈裟にささくれ立ちぬ冬の松  遊介(第)

02 三陸はふたとせ経てど冬重く   第九(順)

03 木造りの校舎の甘き氷柱かな   一斗(タ・て)

04 寒木瓜と嘴持たぬ人間と     てふこ(益・ぐ・佳・波)

05 旨さうに盛られし寒の飯茶碗   ぐり(第・土)

06 家族葬それもいいねと榾くべる  愛(遊・海・益)

07 雪まつりつんつるてんの道歩む  ひなこ(奥・タ)

08 冬うらら人待つといふ温かさ   奈保(第・奥・土)

09 湯豆腐や人肌ほどの温かさ    一斗

10 待春の壁にはりつく蚊の二匹   つよし(波)

11 冬日陰青き花芽や堅きまま    遊介

12 しんしんと静まり返る霜夜かな  奈保(山)

13 節分やインフルエンザ隔離部屋  つよし(愛・益)

14 雪吊のすき間東京タワーかな   てふこ(愛)

15 初恋や白金懐炉の肌触り     益太郎(タ・山)

16 雪解けて草しどけなく土のうへ  春休(順)

17 三尺の根雪のポプラ並木かな   ひなこ

18 焼嗅しインターホンが二つある  佳子(タ・て・春)

19 寝違へて建国記念の日の朝    てふこ(忠・海)

20 溜め池に水白く落ち春霙     忠義

21 軽トラは新車なりけり焼芋屋   山渓(遊)

22 疲れゐて火棚に父の冬帽子    波子

23 山里に香り漂う梅の花      のりひろ(山)

24 冬深しホットミルクの膜のけて  奈保(奥・愛・土・タ・遊)

25 側溝に落ちゐる車余寒なほ    つよし(忠)

26 立春や水戸黄門の再放送     益太郎(愛・順・海)

27 後ろより鴉の声や鬼やらひ    海音(奥・佳・春)

28 バケツより薄氷はがし顔の前   ぐり

29 節分の家族団らん鬼は外     のりひろ

30 白梅の蕊に集まる日の光     ひろ子(山)

31 薄氷を割りたり耳の大きな子   海音(一・第・て・ぐ・佳・波・春)

32 立春の駅に真っ赤なベンチあり  第九(一)

33 戯れに「ねぐせ」「せんせい」春寒し 順一(益)

34 声聞ゆ八つ半刻の焼芋屋     山渓

35 春月やこの世へひらく猫の耳   佳子(一・て・ぐ)

36 針供養心の傷を避けて刺す    益太郎

37 冴返る爪にピンクの星飾     一斗(愛)

38 鶯の初鳴き近し山の声      のりひろ(順)

39 今年また同じ蕎麦屋や納税期   タロー(遊・海・鋼)

40 (蝋の旧字)梅の香に腰据うる四阿に    山渓

41 山頂に座るや東風が膝の間ひ   春休(忠)

42 薄氷や後(のち)の朝(あした)の置手紙 愛

43 守衛所へコード継ぐや雛飾    タロー(て・ぐ・鋼・春・春)

44 海越えの写真メールに梅一輪   愛

45 日向ぼこ翳す手の甲赤みさす   遊介(山)

46 想ひ出の鉱石ラジオや流氷来   波子

47 春寒しま白き波の固まりて    ひなこ

48 春障子引けば敷居にひつかかり  忠義(土・波・鋼)

49 コロちゃんの息絶えてをり朧月  ひろ子(鋼)

50 山鳥の山へ発ちたる御開帳    海音(ぐ・佳・鋼)

51 水たまり割つて自転車春祭    春休(土・佳)

52 バレンタインデー半透明の傘に入る 佳子(一・奥・忠・海・波)

53 春寒の電話合格不合格      ぐり(春)

54 剪定の枝纏めたり紙の紐     忠義

55 パソコンは行ったり来たり余寒猶 順一

56 15年この庭住みか沈丁花    ひろ子(第)

57 雑炊に必ず入る菜を恨む     順一(益)

58 鼻づまり三人官女の同じ顔    タロー(一・遊・忠・順)

59 雛祭り座せば追憶自づから    波子  




【 のりひろ 選(の) 】
(今回は選句お休みです)

【 一斗 選(一) 】
○31 薄氷を割りたり耳の大きな子   
○32 立春の駅に真っ赤なベンチあり
○35 春月やこの世へひらく猫の耳  
○52 バレンタインデー半透明の傘に入る
○58 鼻づまり三人官女の同じ顔

【 土曜第九 選(第) 】
○01 大袈裟に  取り分け厳しい今年の冬の様子が感じられます。
○05 旨さうに  寒い時の炊きたてのご飯はご馳走です。
○08 冬うらら  寒い季節は人恋しくなります。
○31 薄氷を  いたずらっ子は体は小さくとも立派な耳をしていた記憶があります。
○56 15年  沈丁花とともに自分や家族の歴史を刻んで来たんでしょうね。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○07 雪まつり  つんつるてんの表現が雪まつりの楽しさもよく伝えています。
○08 冬うらら  冬の澄み切った青空の下、心待ちに約束の人を待っている様子が目に浮かびます。
○24 冬深し  熱々のミルク、膜をのけても底は見えませんが、暗さはなく明るさを感じます。
○27 後ろより  笑ってしまいました。
○52 バレンタイデー  発想がおもしろいですね。結果はどうだったのでしょう。

【 遠藤ちこ 選(ち) 】
(今回はお休みです)

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
今月は選句のみです。
○13 節分やインフルエンザ隔離部屋
○14 雪吊のすき間東京タワーかな
○24 冬深しホットミルクの膜のけて
○26 立春や水戸黄門の再放送
○37 冴返る爪にピンクの星飾

【 土田ひなこ 選(土) 】
○05 旨さうに  寒玉子など割り入れて、食べたら、さらに美味しいでしょうね。
○08 冬うらら  待ち合わせの場所で、会いたい人を待つのは楽しいことですね。
○24 冬深し  ミルクの膜はいつもできるものですが、寒いときは厚いと感じますよね。のけなければ。
○48 春障子  敷居にひっかかっても春なら。
○51 水たまり  春祭りを見に行くときの高揚感が感じられます。

【 小林タロー 選(タ) 】
○03 木造りの  まあそんな感じもするかなと。木造ではいけなかったのでしょうか?
○07 雪まつり  いやだなと思う人もいるでしょうが、溶けて凍った道を「つんつるてん」といったところが良いと思いました。
○15 初恋や  中学は冷暖房無しの吹きさらし校舎で、親が白金懐炉を買ってくれた。あの肌触りもベンジンの匂いも---初恋かな。
○18 焼臭し  二世帯同居 焼臭しもふたつ
○24 冬深し  ミルクの膜の厚さも冬ですね

【 森田遊介 選(遊) 】
○06 家族葬  話題は深刻だけれど暖かさを感じさせる一句です。同意しながら榾をくべる心情はどのようなのか?と想像させます。
○21 軽トラは  商売繁盛の焼き芋屋さん。「買いに走った人がへぇ〜新車なのぉ」と芋屋の親父を突いてみたり、焼き芋屋によるイメージから物語ができそうです。
○24 冬深し  日常のしぐさをうまく詠んだ句だと思います。
○39 今年また  確定申告申請の時期です。今年も同じ蕎麦屋と言う事は算出したら相当な申告額なのでしょうか?
○58 鼻づまり  そう言えば雛人形はみな美しい顔だちです。三人管女が鼻づまりではないけれど、美しい人もそうでない人でも鼻づまりの顔はみな同じ!面白い句です。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○19 寝違へて  寝違えて苦しい中での休日の朝。寓意に走らず仰々しいのが面白い。
○25 側溝に  JAFか誰かを呼びに行かれた後なのでしょうか。車も走らなければただの鉄。
○41 山頂に  達成感と春の訪れの自覚との二重奏。山も膝も笑っている?
○52 バレンタインデー  義理でも本命でも、バレンタインデーのチョコレートを渡すのは刹那の行動。高い傘よりコンビニ傘の相合傘が良く似合う。
○58 鼻づまり  その三人官女は全員親戚同士だったりして。

【 石川順一 選(順) 】
○02 三陸は  この句から重さを感じました。
○16 雪解けて  雪と言う事は未だ暦の上では冬。春の到来も少し感じる。
○26 立春や  今や時代劇の放送は少なくなった。
○38 鶯の  期待感が高まる句だと思いました。
○58 鼻づまり  滑稽感も俳句の眼目かと。

【 涼野海音 選(海) 】
○06 家族葬  家族との何気ない会話が俳句の中に生かされています。
○26 立春や  立春と水戸黄門の取り合わせは面白いですね。水戸黄門の旅立ちは春がふさわしく思えるので、やはり立春がぴったりかなと。
○39 今年また  そば屋にこだわりがあるのでしょう。忙しい納税期を蕎麦屋でこころの充電をして乗り切ろうとしているのかも。
○52 バレンタインデー  半透明の傘はコンビニなどで売っている安いビニール傘。今時のカップルかなと読みました。
○19 寝違へて  寝違えて起きたのが、建国記念日の朝という所が不思議と面白いですね。

【 松本てふこ 選(て) 】
○03 木造りの  木造り、と氷柱の甘さにちょっと因果関係を感じさせてしまうのは惜しい気もするのですが、初々しい取り合わせを評価したいので。
○18 焼嗅し  取り合わせのバカバカしさが印象的。
○31 薄氷を  「割りたり」に表現としてややこなれてない印象を受けましたが、耳の大きさに着目した感性の鋭さを評価したいと思います。
○35 春月や  また耳の句を取ってしまった… 耳の開く方向に着目するってちょっと新しいですね。開く瞬間を、たっぷり時間を取って描こうとする手つきを感じました。春月の存在感が効いてます。
○43 守衛所へ  内容はトリビアルですが、発見からそれに伴う感動までの時間の流れがほのかに感じられる句。どこか大きな施設でしょう、華やかに雛飾の電気コードが守衛所へとつながっていく淡いアイロニー。

【 足立山渓 選(山) 】
○12 しんしんと  12文字がじつに季語とぴったり。
○15 初恋や  季語の白金懐炉が半世紀前を懐かしく思い出させる。抜群な初恋と白金懐炉の取り合わせ。
○23 山里に  五体満足で、ウォーキングに熱中していた頃、馥郁とした梅の香に疲れを忘れたことが懐かしい。
○30 白梅の  よく観察されている。
○45 日向ぼこ  今年は特に寒いから、しもやけが出来たのだろうか。お大事に。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○04 寒木瓜と  人間に嘴がないのは当たり前であるが、寒木瓜と取り合わされると、何とも言えない味を感ずる。説明するのは難しいが惹かれた句。
○06 家族葬  近頃流行っている家族葬。その話をしながら榾をくべている。榾が遺骨にも見えて・・・。静かな時間が流れる。
○13 節分や  インフルエンザと隔離部屋の取り合わせ。節分の季語も何とも言えぬ味を出している。
○33 戯れに  少し景が見えづらいが、いろいろ想像できて面白い。不適切の官能的な匂いも感じられる。ねぐせ、せんせいで尻取りにもなっている。
○57 雑炊に  嫌いな野菜だが、これが入らないと雑炊にならない。作者の恨み節が聞こえる。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
今月は選句のみでお願い致します。
○04 寒木瓜と嘴持たぬ人間と
○31 薄氷を割りたり耳の大きな子
○35 春月やこの世にひらく猫の耳
○43 守衛所へコード継ぐや雛飾
○50 山鳥の山へ発ちたる御開帳

【 二川はなの 選(は) 】
(今回はお休みです)

【 水口佳子 選(佳) 】
○04 寒木瓜と  寒木瓜の真っ赤な花にメジロがやって来る。花から花へ蜜を求めて忙しそう。もし自分に嘴があったなら・・・という思いだろうか。寒木瓜と人間とを並べてあるだけだが、〈嘴持たぬ〉ことがとても不幸なことのように思えてきた。
○27 後ろより  〈鴉の声〉は豆をまいている人を揶揄しているのか、それとも加勢しているのか、うしろに声が聞こえるというのは、撒いている人側にいるようにも思えるが・・・それは逆に不吉なことのようにも、などと想像すると面白い。
○31 薄氷を  〈薄氷〉と〈耳の大きな子〉の間に関係性はないのだが、意味のないところが面白い。 〈割りたり〉の後の切れがよく効いていて耳の大きな子をクローズアップしている。
○50 山鳥の  山鳥が山へ発つのは常のことかもしれないが、それが〈御開帳〉の日の光景となると少し変わって眼に映る。 その日にしか見ることのできない秘仏の神々しさがあたりの空気を変えてしまうかのよう。「山に」ではなく〈山へ〉としたことで広がりが生れた。
○51 水たまり  それまでは静かだった水たまりの水が、自転車が通った瞬間に飛び散った様子を〈水たまり割って〉と表現したところがよい。春祭は農作のはじまるときに行う祭。飛び散る水たまりが、さあまた今年も始まるぞという意気込みのようでもある。
 ほかに気になる句
 10 待春の  こういう景ってよくあるなあと共感できましたが、〈待春〉が分かり過ぎのようにも。
 19 寝違へて  ちょっとした皮肉を感じ、くすっと笑えます。〈朝〉は要らないような。
 43 守衛所へ  雛飾りは守衛所の外に置いてあるんですね。
 48 春障子  〈敷居にひつかかり〉という意外な結末が面白いと思いました。

【 喜多波子 選(波) 】
○04 寒木瓜と  リズムが良いので頂きました。
○10 待春の  春を待つのは、蚊も同じでしたか? 蚊の2匹・・が、上手いと思います。 
○31 薄氷を  薄氷を割る耳の大きな子・・良く見ていました。
○48 春障子  春障子がひっかかったのが面白くて頂きました。
○52 バレンタインデー  バレンタインデーと関係ない中7下5で想像が膨らみました。素敵な句です。

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○39 今年また  申告の時期いつもの蕎麦屋によるという日常が出ている。
○43 守衛所へ  コードつなぐやと読んだけれど継ぎ足したのかはっきりしたらなお良い句になると思う。
○48 春障子  春になっての感じが出ていると思う。
○49 コロちゃんの  朧月がよい。
○50 山鳥の  リズムがよく御開帳がどっしりと下五を締めている。
 そのほかの佳句
 15 初恋や白金懐炉の肌触り
 24 冬深しホットミルクの膜のけて
 37 冴返る爪にピンクの星飾
 44 海越えの写真メールに梅一輪
 51 水たまり割つて自転車春祭
 57 雑炊に必ず入る菜を恨む

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです)

【 小川春休 選(春) 】
○18 焼嗅し  どっち押したらいいんだ!と突っ込みたくなるところですが、淡々と句にされているところが可笑しい(古そうな方が故障したままとか、二世帯住宅とかいろいろに可能性は考えられますが)。「焼嗅し」という少し時代を感じさせる季語にもなかなか味があります。
○27 後ろより  「鬼やらひ」というと、内と外、視界で言うと前方に意識が集中しがち。そこへ後ろから鴉の声、意外性もあり、拡がりもあり、野趣もあり。
○31 薄氷を  この句の視点は傍観者の目。傍観者でないと見えない景や発見もありますね。「耳の大きな子」には、ちょっと野性味のある元気な子供が思われます。気になったのは上五、「うすらいを」ではなく「うすごおり」の方が響きもリズムも良くなるように思います(表記は作者のお好みで)。ちょっと波多野爽波の〈秋の水耳のうしろを掻きながら〉を思い出しました。
○43 守衛所へ  守衛所の近くに、雛飾りを飾ったのでしょう。コードは雛飾りのぼんぼりのための電気でしょうか。意外性のあるところに、季節感と生活感を発見されていると思います。
○53 春寒の  入学試験の結果発表、それを見に行った家族からの連絡を待っているのでしょう。ちょうど発表の時期というだけでなく、電話を待つ間の緊張感も、「春寒」という季語から体感的に伝わってきます。
 02 三陸は  重みのある句です。中七の「ど」、下五の「冬重く」が力強い。
 03 木造りの  実際に舐めてみたら甘かったのでしょうか。そうであれば、具体的な動き(舐める動作や人の姿)が見える句にした方が、句に臨場感が出そうです。
 04 寒木瓜と  不思議な読後感の句ですね。「持たぬ」という否定が逆に、嘴を持つものの存在を暗示している。
 08 冬うらら  「冬うらら」と「人待つ」だけで、心情的なあたたかさは読み取れるというもの。もっと季語の働きを活かしてほしいところです。
 09 湯豆腐や  私の個人的な食の好みなのかも知れませんが、湯豆腐はやはり、はふはふ言いながら熱々のものを食べて、寒い夜にあったまりたいです。「人肌ほどの温かさ」では美味しそうに感じません。
 10 待春の  面白い句ですが、冬の終わり頃の寒い時期の蚊だから、という理屈が見え隠れするのが残念。かといって別の季語にすると句意そのものが根本的に変わってくる。寒の頃の蚊自体が、かなり扱いにくい句材なのだと思います。
 11 冬日陰  まだ芽が硬いということの原因が、冬で日陰だから、と読めてしまう。原因・結果を句に盛り込むと、面白い句にはなりにくいです。
 12 しんしんと  俳句が奥行きを持つにはやはり、季語の持つふくらみを活かす必要があります。「しんしんと静まり返る」という描写は、「霜夜」という季語の持つふくらみに元々含まれている内容のため、季語について説明しただけのような句になってしまっています。
 14 雪吊の  シンプルながらとても具体的な句で好感を持ちました。
 19 寝違へて  ほんのりした可笑しみのようなものはありますが、建国記念日という日はどう読んで良いものかちょっとつかみ切れないような印象です。あと、寝違えといえば朝起きた時。「朝」は蛇足でしょう。
 20 溜め池に  繊細な感じを句にするとき、よほど言葉の運びに気をつけないと、句がくだくだしくなってしまい、思うようにすんなりと一句になってくれません(私自身も課題に感じていることでもありますが…)。この句も、落ちている途中の水が白いのか、落ちたときの水が白いのか今一つはっきりしませんし、「溜め池」というディテールも効果的でないように感じます(単なる池や湖で十分ではないでしょうか)。季語も、霙が溶けた水ということなのか、霙と水は無関係なのか(無関係ならもっと離した季語の方が良いのではという気も…)、曖昧に感じます。
 21 軽トラは  どうでも良いところを堂々と句にしているところに面白味のある句ですが、「なりけり」と言うよりも、軽トラがやって来る場面として句にしたいところです。こうした移動・動きを句に導入することで、作中主体と対象との位置が肉付けされていきます。
 24 冬深し  歳時記によって差異はあると思いますが、「ホットミルク」のようなホットドリンクの類は冬の季語と言えるでしょう。師・小澤實の〈わかれがたしよホットレモネード飲めど〉も、「ホットレモネード」を冬の季語として扱った例です。そうして一句を見たときに、上五の「冬深し」は季重ねであり、蛇足という印象を持ちます。推敲するとすれば、ホットミルクのみで一句とするか、取り合わせで転じるか。思案のしどころですね。
 25 側溝に  何だかしょんぼりしてしまう句ですが、「余寒」がさびしすぎるようにも感じます。春先の寒さと華やかさの双方を感じさせてくれるような、味のある季語がもっと他にあるのではないでしょうか。
 26 立春や  何だか非常におめでたい句です。「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」という漢詩も少し思い出させます。出演者が亡くなられても、再放送は本放送と同じ。時の流れを感じさせます。
 28 バケツより  バケツから薄氷を「はがす」という把握。そこは良いのですが、それを顔の前に持っていったところは平凡。はがすところだけで一句にまとめられた方が、臨場感のある活き活きとした句になるのではないでしょうか。
 32 立春の  シンプルな内容の句ですが、個人的には、「立春の駅の真っ赤なベンチかな」とした方がシンプルさがもっと引き立つのではないかと感じます。
 35 春月や  「春月」というのもとても大きな、広がりのある季語。重ねて「この世」という言葉を用いる必要はあまりない(両方使うと「春月」があまり活きてこない)ように感じました。字数足りませんが、「春月へひらく猫の耳」というような内容だったら良いと思うのですが。
 39 今年また  申告の時期ぐらいにしか来ることのない税務署近辺。申告の済んだ後、昨年と同じ蕎麦屋へ。しみじみとした感慨のある句ですね。
 42 薄氷や  薄氷に置手紙とは…。さみしい後朝です。
 44 海越えの  句に盛り込んだ要素が多すぎて、ごちゃごちゃした句になってしまっています。
 48 春障子  かすかなおかしみがありますが、狙いが見えてしまっている感じもなきにしもあらずです。
 49 コロちゃんの  何ともせつない句ですが、詠みぶりから、苦しむことなく、ふっと眠るように息を引き取った様子が浮かんできます。最期が安らかであったならば、それはせめてもの救いですね。「朧月」が優しくて良いです。
 50 山鳥の  朝、御開帳へと人々が集まってくると、境内に下りてきていた山鳥たちがまた山へと飛び立つ。そんな景がくっきりと見えてきます。しっかりした句です。
 52 バレンタインデー  あまり上等でないビニールの傘でしょうか。一人で入るのか二人で入るのかでその気分は大きく変わってきますが、この句の雰囲気だとどちらかと言うと一人のような。恋愛とは無縁のような、そんな雰囲気もかすかに感じられます。
 54 剪定の  しっかり見て、句にしようという意気込みは感じます。ここからです。もっと深く踏み込んで見ていきましょう。
 56 15年  ネット上などで横書きの俳句を目にすることも多くなりましたが、「15」という数字の表記には抵抗がある。やはり漢数字で表記してほしいところです。「15年」と「十五年」とでは、感じる時間の重み、色合いもまた違ってくるような気もします。
 57 雑炊に  一読、そんなに嫌なら入れずに作れば良いだけのことと思ったのですが、この句の作中主体は「食べるの専門」なのかもしれませんね。春、新しいことを始めるのには良い季節。これは料理を始める良いきっかけかもしれませんよ。

 


来月の投句は、3月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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