ハルヤスミ句会 第百五十一回

2013年5月

《 句会報 》

01 01 行く春や行く先告げぬ人ばかり   益太郎(第・愛・タ・ぐ・春)

02 iphoneの画面こなごな百千鳥    てふこ(海)

03 この家に三十五年柿若葉      ひろ子(第・遊・海・山)

04 かたつむり抓みかたつむりの傍に  佳子(海・ぐ・春)

05 風呂敷に収まらぬままたけのこ来  愛(土・海・ぐ・波・春)

06 桜坂ヒールで闊歩一人旅      第九

07 夏立つやサード長嶋栄誉賞     タロー(愛)

08 揺れ動く水の地球や初音聴く    波子(益)

09 青田風棚田千枚すべり来る     ひなこ(万・第・奥・波)

10 右奥歯腫れて卯の花腐たしかな   遊介(万・一・奥・波)

11 正論はいつも生意気燕の子     益太郎(鋼)

12 聖五月松井秀喜に栄誉賞      タロー

13 下の名を呼び合うてをり草苺    忠義(第・愛・遊・海)

14 はつ夏の鳥のかたちの城趾かな   ひなこ(一・て)

15 五感研ぐ参禅法話初音かな     波子(第)

16 遠足の土産話の空広し       一斗(土・タ・順・て・山・ぐ・佳)

17 苗木市実のなる株を選びけり    遊介(◎山・鋼)

18 畑土を銜えて三羽夏燕       つよし

19 花は葉に電話板チョコほど薄く   てふこ(万・佳)

20 またひとり見回している沈丁花   第九

21 神の木に集まつてゐる蝸牛     佳子(鋼)

22 蚊の飛行悠然と同高にくたらし   順一

23 来生は印度人とや椎匂ふ      遊介

   ダニ

24 蠅(虫偏+卑)蚊全部嫌いで夏は好き     愛(遊・忠・順・益・鋼)

25 一枚ずつレタス剥がすはなめくじり つよし

26 吹かれては初夏のネクタイ肩のうへ 春休(土・遊・ぐ)

27 竹の子や胸に抱へて毛だらけに   忠義

28 奥能登の旧家に燃ゆる躑躅かな   ひなこ(山)

29 地球儀の青む八十八夜かな     益太郎

30 糸遊に甘き匂ひのありさうな    てふこ(一・佳)

31 蛾が来たり母の司令に父殺す    順一

32 青梅や瀬戸大橋の遥かなる     海音(山)

33 谷津干潟アオサ澱みし五月かな   ひろ子(鋼)

34 日曜の蠅まつすぐに我に来る    ぐり(タ・忠・順・佳・春)

35 半ばにてバナナへし折る指細し   忠義

36 人妻と磯巾着をつつきけり     海音(忠・益・波)

37 気象庁今年も猛暑と朴の花     愛

38 アジア人ばかり集いて青き踏む   一斗

39 ラジコンのヘリ上がりゆく夏野かな 海音(土)

40 ふらここを飛びて地球に着地せり  一斗(愛・て)

41 一人居に慣れきつてゐる水中花   万里子

42 海鞘食めと物をいわせる投げキッス 波子

43 定食屋うるさし鉢に目高殖え    春休(土)

44 緑の夜一筆箋を切りはなす     佳子(万・て)

45 狛犬の足元すつと瑠璃蜥蜴     山渓

46 LPの陽水の曲柚子の花      ひろ子(万)

47 田植寒鴉は餌に急降下       つよし(順)

48 くつきりと山容映す植田かな    山渓

49 公園と園の間の若葉香       順一

50 近在に聞かぬ嫁取り水喧嘩     タロー

51 新しき秘湯の文字や青葉山     山渓(一・て・春)

52 緑陰にゐる全員や同級生      ぐり

53 合鍵を2つ作ってソーダ水     万里子(奥・タ・遊・忠・順・益・佳・波)

54 小声にて不渡りのことうすごろも  春休(益)

55 小満のみつちり重き鞄かな     ぐり(タ)

56 片肘で車窓眺むる五月雨      第九(奥・愛)

57 母の日の母に奢られアペリティフ  万里子(一・奥・忠)  




【 叶万里子 選(万) 】
○09 青田風  青田風の吹く様子が豊かに表現されていると思います。
○10 右奥歯  あのうじうじした痛みはまさに。
○19 花は葉に  電話板チョコほど薄く、という表現がいいです。
○44 緑の夜  緑夜と一筆箋の取り合わせが風流と感じました。
○46 LPの  柚子の花がいい。今はLPプレイヤーもないですよね。

【 一斗 選(一) 】
○10 右奥歯腫れて卯の花腐たしかな
○14 はつ夏の鳥のかたちの城趾かな
○30 糸遊に甘き匂ひのありさうな
○51 新しき秘湯の文字や青葉山
○57 母の日の母に奢られアペリティフ

【 土曜第九 選(第) 】
○01 行く春や  夏にむけて皆自由で解放的になるのでしょう。
○03 この家に  秋には沢山実のなる大木なのでしょう。
○09 青田風  透き通る風が滑る様にふいている感じが伝わります。
○13 下の名を  孫に親しい友達ができたのでしょうか。
○15 五感研ぐ  張り詰めた静謐の空間を感じます。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○09 青田風  豪快で気持ちがよい句ですね。
○10 右奥歯  この時期どういうわけか私も口の中が腫れてしまいます。
○53 合鍵を  これですっきりでしょうが、この後まだまだ何かおこりそうですね。
○56 片肘で  旅にでたのでしょうか。ゆったりと雨の景色を眺めるのもいいですね。
○57 母の日の  お母さんの気持ちがよくわかります。一緒にお酒を楽しめる年令になられたのですね。

【 遠藤ちこ 選(ち) 】
(今回はお休みです。)

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○01 行く春や  本当にちょっと一言行き先を行ってくれたら良いのに、「ばかり」に多分お母さんの気持ちが表れています。春は特にそうなのだから、食事の仕度もあることだしもーと。
○07 夏立つや  松井の引退もありました。ここでダブル受賞おめでとうございます。”夏立つ”の季語がサード長嶋の爽やかだった雄姿と重なります。ご回復をお祈りします。
○13 下の名を よくありますね。いい年をした薄毛、白髪、皺皺の方々が”〜ちゃん”とか楽しげに呼び合っている光景、私もそうです。”草苺”がいいですね。さしておいしくもなかったのですが、皆で探し当てて食べたものです。何とも微笑ましい景です。
○40 ふらここを  これがなかなか難しいのです。ブランコを離れるタイミングがキーポイントです。早すぎるとドタバタの着地となります。両足を前方に突き出して、思いっきり遠くに着地するのです。地球という表現が大げさですきです。
○56 片肘で  四人掛けの電車か列車でしょう。この人はスマホとかをいじったりしていないのですね。「車窓眺むる」がちょっと分かりにくいのですが、車窓から五月雨を只じーっと見ているのでしょう、好きな景です。

【 土田ひなこ 選(土) 】
○05 風呂敷に  裏年なのに、こんなにたくさん、羨ましい。
○16 遠足の  空広いと感じられたところがステキ。
○26 吹かれては  涼しそうで、好きな景です。
○39 ラジコンの  こんな休日を過ごしてみたいです。
○43 定食屋  目高も煩いと思っているかな?

【 小林タロー 選(タ) 】
○01 行く春や  現実のことでしょうが、逝った人のことも想像させます。深読みを誘う句ですね。
○16 遠足の  「空広し」が素晴らしい。話す方も聞く方も楽しそうです。
○34 日曜の  日曜なんて誰が決めたんだ、「まっすぐに」にがいいですね。
○53 合鍵を  秘密の合鍵だけれど二人の仲はかなり親密、ということが気取らぬ「ソーダ水」で暗示されます。
○55 小満の  何が入っているのかな?小満の少し湿気を含んだ重さを感じさせます。

【 森田遊介 選(遊) 】
○03 この家に  中七の三十五年がこの句を物語性のあるものにしています。そして、爽やかな季語により想像する物語は悲劇でないのではと思います。
○13 下の名を  呼び合うている人達はどんな関係なのでしょうか?意味深な句です。しかし、この季語によりそれは本当に些細な事で、そのつまらない事に気が付いた事にニヤとしてしまう幸せ感が出ています。
○24 蠅ダニ蚊  夏の虫を全部否定して、最後はきっぱりと好き!と断言する。作者はどんなに夏がお好きなのではと思います。
○26 吹かれては  最近はクールビズなるものが社会に受け入れられています。初夏にネクタイ姿を見る事が少なくなりました。ネクタイが正しい位置(胸元真っ直ぐの位置)にないと、ちょっと悪っぽく見えて格好よく見えたものです。三国連太郎のイメージでしょうか。
○53 合鍵を  鍵を紛失しまい合鍵を作った。それも二つも。少々物忘れ激しい最近の自分をソーダ水で慰めているような情景を想像しました。ソーダ水は舌が真緑になってしまうあのペパーミント色なのでしょう。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○24 蠅(虫偏+卑) 蚊  ああ、そうですか、と受け答えしてその夏では何が好きなんだろう?と膝を突き合わせて問いつめてみたくなる。
○34 日曜の  この自意識とお気楽な蝿の落差。
○36 人妻と  ちょっと官能的な部分に惹かれた。
○53 合鍵を  1個だけじゃない。2個作るということはその鍵を渡す相手はそんなに浅い仲ではない。喫茶店の席で告白かプロポーズか。楽しい一句。
○57 母の日の  いくら感謝してるからといって悩みに悩んだ末にプレゼントを贈っても、経済的に優位なのは親。

【 石川順一 選(順) 】
○16 遠足の  「空広し」とは広大無辺で無窮な。しかし「土産話」と聞けば空とて他愛無いという感じも湧きあがって来る
○24 蠅(虫偏+卑) 蚊  こう言う偏見も言い様によってはすっきりとした佳句になるのだなと思いました。
○34 日曜の  句作者の軽い驚きが素直に句になっているかと。「蠅」と言う季語を使用した句には、他にも佳句が多くある様な気がこの句からしてきました。
○47 田植寒  鴉は猛禽類でしたろうか。結構珍しい場面に際会し、句のシャッターを切れたのではないかと。
○53 合鍵を  「ソーダ水」とはいろいろ思い出しそうな季語だと思いました。「合鍵」との取り合わせはそう言う点では付き過ぎない相思相愛かと。     
ほかに
 01 行く春や行く先告げぬ人ばかり   
 15 五感研ぐ参禅法話初音かな     
 25 一枚ずつレタス剥がすはなめくじり 
 38 アジア人ばかり集いて青き踏む 
 40 ふらここを飛びて地球に着地せり 
 41 一人居に慣れきつてゐる水中花   
などの句も佳句だと思いました。

【 涼野海音 選(海) 】
○02 iphoneの  画面が粉々!やってしまったという失望感の中、百千鳥の声を聞いたのでしょうか。
○03 この家に  この家に三十五年も住んでいる、そんな日常の積み重ねを柿若葉が見守ってきたようです。
○04 かたつむり  無技巧の技巧といえばいいでしょうか。自然な動作が的確に詠まれていることで余韻が生まれました。
○05 風呂敷に  「たけのこ来」という直接的把握が見事。まさにたけのこが届いた瞬間を捉えています。
○13 下の名を  「下の名を呼び合う」ということは幼なじみでしょうか。草苺がとても効いてますね。

【 松本てふこ 選(て) 】
○14 はつ夏の  類想あるんじゃないかな…と思わないでもないですが、古いものへ心を寄せる様をさわやかに詠んだな、と好印象を持ったので。
○16 遠足の  聞いているお父さんかお母さんはきっと普段あまり広い空を見ないんでしょうね。遠足を満喫した子供と、子供の話からひとときの開放感を得る作者と。
○40 ふらここを  ふらここが別の星のもののよう。ある程度の滞空時間がありますね。浮遊感のある句。面白いです。
○44 緑の夜  ぷつり、と切れるあの感じがよみがえります。緑の夜は一度使ってみたい季語なので勉強になりました。でも「子の皿に塩振る音もみどりの夜」という龍太の句のように、情緒を重視して詠んでいるなあという印象。違う使い方はないものかしら…とも。
○51 新しき  秘湯って「作られる」ものなんですか? という軽い皮肉が青葉山で中和されて、読後感として残るのはただただ気持ちのいい風景、という不思議な句。

【 足立山渓 選(山) 】
○03 この家に  住んでいることの長さ、と、若葉との取り合わせが素敵。
○16 遠足の  都会の子供でしょうか。遠足で行った、野原の美しさを楽しそうに両親に話している様子がうかがえる。
◎17 苗木市  蜜柑、柿、どんな苗木を選んでいるのでしょう。想像できて素晴らしい。
○28 奥能登の  旧家だから、広大なお屋敷でしょう。羨ましい。
○32 青梅や  段々畑の梅林。目をあげると瀬戸大橋が見える。のどかだ。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○08 揺れ動く
○24 蠅(虫偏+卑)
○36 人妻と
○53 合鍵を
○54 小声にて

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○01 行く春や  私の家族も行き先を告げぬ人ばかりなのです。困っていますが行く春やといわれると納得させられてしまいそうな、、。
○04 かたつむり  そうされてかたつむり同士は喜んでいるかわからないけれどついやってしまいたくなる気持ちよくわかる
○05 風呂敷に  風呂敷から筍の先は飛び出しているのでしょうか、筍を風呂敷で包むという送り主をあれこれ想像させる句。
○16 遠足の  晴天の遠足、くたくたになるまで遊んで大満足で帰って来たのだろう。空広しと感じた作者はとびきり聞き上手!
○26 吹かれては  かなり強いけれど心地いい風なのだろう。初夏のネクタイとは何色だろう。

【 水口佳子 選(佳) 】
○16 遠足の  楽しかった遠足の様子が〈空広し〉に表れている。夕飯の支度をする母親の後ろで話はとめどなく続くのだろう。
○19 花は葉に  携帯電話の薄さを板チョコの薄さといっているところ、その手軽さの比喩として面白い。どんどん進化していく携帯電話、桜の葉が陽を受けて光るように画面も次々に変わっていくようだ。
○30 糸遊に  そう言われてみればそんな気がしないでもない。陽炎でなく〈糸遊〉という言葉がいいと思う。
○34 日曜の  やっと寛ごうと思ったのに、蠅がやって来る。しかもまっすぐに。家にいる時間はきっと蠅の方が長くて、コイツ何だ・・・という感じなのかもしれない。哀しい。
○53 合鍵を  なんで2つなのか、そのへんをいろいろ想像すると面白い。
ほかに気になる句
 14 はつ夏の  城址が鳥の形であったという発見がいい。風を感じる句。
 36 人妻と  なんか良くないことをしているような・・・
 54 小声にて  不渡りとうすごろものミスマッチが面白い。

【 喜多波子 選(波) 】
○05 風呂敷に収まらぬままたけのこ来
○09 青田風棚田千枚すべり来る 
○10 右奥歯腫れて卯の花腐たしかな
○36 人妻と磯巾着をつつきけり  
○53 合鍵を2つ作ってソーダ水 
 採りたい句が沢山あって迷いました。

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○11 正論は  燕の子がいいです。
○17 苗木市  楽しそうな雰囲気がよく伝わる。
○21 神の木に  相当な蝸牛か大木との比が効いている。
○24 蠅(虫偏+卑) 蚊  若い女性を想像して面白い。
○33 谷津干潟  海辺の広い景色と五月の取り合わせが成功している。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです)

【 小川春休 選(春) 】
○01 行く春や  別れには生別・死別さまざまありますが、「行く先告げぬ人ばかり」自分は見送るばかりということ。この時期ならではの感慨という感じもします。
○04 かたつむり  動きが見え、景が見え、自然と心情に共感できる。良く出来た句です。
○05 風呂敷に  たけのこが風呂敷に収まらないというだけでも、その大きさなどが想像されて面白いですが、「たけのこ来」という下五の唐突な感じも面白い。意図的に人の姿を消した描写で、一瞬たけのこが自分で歩いてきたかのように錯覚させます。
○34 日曜の  曜日に従って生活する、都市居住者の句ですね。オフの日の、素の自分に向かって真っ直ぐ蠅が飛んでくる。はっとする一瞬です。どことなく西東三鬼に通じる味わいの句。
○51 新しき  本来、看板など出していないからこその「秘湯」な訳ですが、そんなことも言っていられない、観光客を引っ張ってこなくてはならない状況なのでしょう。青葉の中の真新しい「秘湯」の文字が眩しくも少し可笑しい。
 02 iphoneの  私も四年近くiPhone使ってますが、せいぜい細かいキズがつくぐらいでヒビ一つ入ったことはありません。「画面こなごな」ってよっぽどですよ。「百千鳥」という季語、何となく場面を想像させますが、ちょっと漠然としている気もします。もっと景がはっきりとよく見える季語があるのではないでしょうか。
 03 この家に  この柿の木も三十五年という時間を共に過ごしてきたのでしょうか。そう思うと、今年も元気に若葉をつけてくれたこと、嬉しいですね。
 08 揺れ動く  初音という季語は、「聴く」という言葉が付くと、「自分が聴いたのだ」という意味が強くなってしまい、音の要素と聴く人という要素が存在することになります。そういう意味では「初音かな」の方が純粋に音の要素の占める割合が高く、初音そのものが印象的に響きます。例えばこの句であれば、「揺れ動く水の地球に初音かな」とした方が、単純なようで深い、大きな句になるのではないでしょうか。
 10 右奥歯  不思議と、夏に向かうこの時期、歯が痛くなることが多いような気がします。自分の体も、自然の一部ということでしょうか。
 11 正論は  「生意気」というからには、子供、後輩や部下など、目下の人からの意見だと思いますが、だとすると「燕の子」という季語はツキスギの感ありです。
 13 下の名を  上五中七、読む人それぞれに景が浮かびますが、呼び合っているのが、自分(と誰か)のこととも人(他人と他人)のこととも読める点が少し弱いように感じます。中七の叙述で自他の別がはっきりするようにできないものでしょうか。
 14 はつ夏の  上から見たかたちが鳥に似ているのでしょうか。左右に翼を拡げ、首のように伸びた先に矢倉がある、そんな城趾でしょうか。周りの新緑も見えてきますね。
 16 遠足の  中七から下五にかけての飛躍が、句を一気に広々としたものにしています。どんな場所に遠足で行ったかも何となく見えてきますね。採りたかった句です。
 17 苗木市  「選びけり」とすっきり表現されるのも良いですが、どれが実のなる株かと悩んでいる様子もまた句になりそうですね。こちらのパターンでも詠んでみられてはいかがでしょう。
 21 神の木に  穏やかながら、実直な良い句と思います。
 23 来生は  突拍子もないような句ですが、「椎匂ふ」がおぼろげながら実感をもたらしてくれているようです。
 24 蠅(虫偏+卑) 蚊  こういう言い切りは、女性っぽいなぁ。男性の私からすると、こういうぶれない自分を持っている女性の意思の強さ、羨ましく感じますね。
 25 一枚ずつ  なめくじがレタスを食べて、一枚ずつ剥がしているという句でしょうか。それでは一句に盛り込まれた動き・時間が長すぎて、間延びした印象です。
 28 奥能登の  躑躅が花開く様子を描写するのに「燃ゆる」はパターンなのではないかと思います。
 31 蛾が来たり  この助詞の使い方だと、「蛾が、母の司令で、父を殺す」とも読めてしまいます。書き手の意図はそうではないのでしょうが、もっとすっきりと書けるのではないでしょうか。
 35 半ばにて  描写しようとした景は分かるのですが、バナナに対して「へし折る」は少し大げさかなぁ、という印象です。「へし折る」と「指細し」で見所が二つ(動きか細さか)に別れているようにも思えます。
 36 人妻と  〈人妻ぞいそぎんちやくに指入れて〉(小澤實『瞬間』)という先行句があります。
 37 気象庁  中七の字余りも苦しいですが、一句の内容が報告のようになっていると思います。テレビや新聞などの情報を詠み込むのはなかなか難しい。
 39 ラジコンの  ああ、自分も遮るもののない夏の野で、ラジコンヘリを思いっきり飛ばしてみたいです。「上がりゆく」で夏野の広がりが徐々に見えてくるところが良いですね。
 40 ふらここを  不思議なもので、生まれつき運動神経の良い子は、特に練習するでもなく、このように軽やかにぶらんこから降ります。私はそういう子を羨望の眼差しで見ている側でしたが、「地球に」と大きく出たところ、面白いと思います。
 44 緑の夜  一筆箋というもの、自分が書くときにはこの短さに何を書こうかと悩みますが、ずばりと本質を突くような必要事項のみの一筆箋の手紙をもらうことがありますね。「切りはなす」ところに緊張感があり、緑とも響き合っているようです。
 46 LPの  最近のクリアな音の音楽とは違う趣がLPにはありますね。艶のある陽水の声音が、柚子の花に合いますね。
 49 公園と  公園と園とが区別されているということは、公園が大きなもの、園が個人の邸宅のもの、といったところでしょうか。さて若葉の香はどちらから流れてきたのでしょう。
 53 合鍵を  はて、同棲や結婚であれば合鍵は一つ作れば十分のような気がしますが、二つということは三人でルームシェア? ちょっと複雑な事情も垣間見えますが、そんなに深刻な感じではないのは、「ソーダ水」のおかげ。個人的には、漢数字を使った方が良いと思います。
 55 小満の  「満」という字と「みつちり」とがイメージ的に重なる気がします。もっと良い季語があるのではないでしょうか。
 57 母の日の  何となく、母の日ぐらい母に奢ってあげた方が良い気もしますが、気前の良い母なのか(それとも最近の若者の経済的不安定さが句の背景に秘められているのか、というのは深読みかもしれませんが)、ちょっと屈折を孕んだウィットの句ですね。 

 


来月の投句は、6月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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