ハルヤスミ句会 第百五十三回

2013年7月

《 句会報 》

01 短夜や熱してチーズ艶めくも     春休

02 漂泊の一歩夜店の灯の奥へ      佳子(一・ぐ)

03 浮世絵の雨は斜めに涼しかり     ひなこ(タ・遊・て・佳)

04 潮騒や鳩尾に汗したたらせ      忠義(時・春)

05 真裸や丑三つ時の水飲んで      てふこ(時・愛・忠・佳)

06 パンストの捩れを正す梅雨晴間    益太郎(愛・春)

07 はしり蚊にふるさと近くなりにけり  ひろ子(益・ぐ・鋼)

08 家中に風呂の音ひびき夏の月     春休(奥・遊・忠・ぐ)

09 択ぶ手の濡れも嬉しや鬼灯市     遊介(一)

10 二の腕のひらひら母は夏痩せて    ぐり(時・忠・海)

11 アフリカのリズムで進む田植ゑかな  一斗(奥・タ・順・益・波・鋼)

12 景品は艶めかし絵の団扇なり     遊介(て)

13 市立てり昨日あさがほ今日はほほづき タロー

14 蜜を吸ふ黒の揚羽に黄の揚羽     つよし

15 釣人の小魚ねだる白鷺かな      時人

16 片蔭の途切れるところ小走りに    ぐり(奥・愛・遊・て)

17 雨螢切崖に沿ひ上り往き       タロー(波)

18 梅雨明や打球の音のよく響く     山渓(愛・遊・鋼)

19 鳴き声の蝉に雀に鶯に        つよし

20 シャッターの音の連続極暑かな    順一

21 息すると汗の噴き出すホームかな   ぐり(愛・土・佳)

22 笹舟にゆだね形代流しかな      ひろ子(山)

23 猿山の話題翌日夏曇り        順一

24 髪赤き夏手袋の運転手        山渓

25 恋人のゐない二人や濃紫陽花     海音(タ・忠・益・佳・鋼)

26 浜茶屋や立て足座りして氷      ひなこ(山)

27 懐かしき人にばつたりあやめぐさ   時人(海)

28 膨れたる茄子は誇張で伝へられ    順一

29 水槽の底の濁りや遠花火       佳子(一・土・順・て・ぐ・春)

30 サンダルに砂の残りて夏座敷     一斗(奥・山)

31 濃きガスの一気に雪渓隠しけり    山渓(順)

32 打ち水の潜む虫らを追い出しぬ    ひろ子(一)

33 取り出せるCD熱し火取虫      春休

34 目を閉じて片足立ちや夏座敷     つよし(海)

35 好きな子の通りすぎゆく青簾     一斗(タ・海・山・ぐ)

36 いい加減な人になりさうこの溽暑   愛(時・土・波)

37 夏の月些細なことで喧嘩して     ひなこ(海)

38 連なりて押し合い登る夏の富士    愛(◎山)

39 父と子のクレバスに置く扇風機    佳子(一・益)

40 坊主刈りあにはからんや暑しとは   愛

41 臍出しのをみな礼やかソ−ダ−水   波子

42 よくもまあ出て来るものや蜘蛛の糸  時人(春)

43 ひとりごの実(げ)にも気になる金魚玉 波子

44 就職の氷河期といふ大暑かな     波子(鋼

45 海水浴辞書手放さぬ書生かな     忠義(順)

46 雪洞の途切れし径や螢狩       タロー

47 玉葱や仮面の下にまた仮面      益太郎(奥・順)

48 髪洗ふ独り身長くなりにけり     海音(忠・佳・波)

49 風鈴のやがて古びる音ならむ     てふこ

50 回天の水脈はたどれぬ蛍かな     益太郎

51 短夜の開けて鳴らざるオルゴール   海音(土)

52 髷結へぬをとこ身軽に夏巡業     忠義(て・波・春)

53 雷の少しブリキのやうな音      てふこ(時・土・タ・遊・益)




【 中村時人 選(時) 】
○04 潮騒や  潮騒の聞こえる処でみぞうちに汗を滴らせて何をしているのか、興味津々
○05 真裸や  汗でぬれた下着を脱ぎすて裸で飲む水の旨さよ“熱中症に注意!
○10 二の腕の  お母さんは随分と夏痩せしたのですね。“笑”下五の夏痩せがいいですね。
○36 いい加減な  もともといい加減な自分は、本当にどうにかなりそうこの蒸し暑さ良く見たら暑さの句ばかり取っていました。
○53 雷の  そうそう雷ってブリキを叩いた音に聞こえる時が有りますね。ブリキの蛙も鳴いたりして
他に気になった句
 06 パンストの捩れを正す梅雨晴間
 30 サンダルに砂の残りて夏座敷
 31 濃きガスの一気に雪渓隠しけり

【 叶万里子 選(万) 】
(今回はお休みです。)

【 一斗 選(一) 】
○02 漂泊の一歩夜店の灯の奥へ
○09 択ぶ手の濡れも嬉しや鬼灯市
○29 水槽の底の濁りや遠花火
○32 打ち水の潜む虫らを追い出しぬ
○39 父と子のクレバスに置く扇風機

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○08 家中に  開け放された木造の家、金盥の音、そして、簾、外には、涼しげな夏の月を想像しました。
○11 アフリカの  リズムに乗って田植ゑもはかどりそうですね。
○16 片陰の  暑さにはかないません。様子が目に見えるようです。
○30 サンダルに  砂浜から戻ってきたのでしょうか。ある夏の一日が想像できます。子供の頃すんでいたところは、5分ぐらいで海辺だったのを思い出します。
○47 玉葱や  仮面と表現したところが、面白いとおもいました。

【 遠藤ちこ 選(ち) 】
(今回はお休みです。)

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○05 真裸や  おやおや丑三つ時に喉が渇いて目が覚めたら素っ裸だったと。いくらなんでも飲み過ぎですよ、あなた。
○06 パンストの  この経験、女性なら皆さんありますよね。ま〜気持ちの悪いこと。”直す”でなく”正す”の言葉が、「梅雨晴間」によく繋がります。
○16 片影の  この気持ちよく分かります。暑い中なにも走ることもないのですが、私も走ってしまいます。
○18 梅雨明や  何とも気持ちの良い句です。家の近くにも高校があります。梅雨が明け、湿気も取れてからっとしたせいでしょうか、打球のカーンという金属バットに当たる音が聞こえてくるようです。そして球児たちのイキイキとした姿までも目に浮かびます。
○21 息すると  呼吸をするだけで汗が“噴き出す”とは。この頃の暑さはまさにその通りですね。車内は冷房がきいていて涼しいのですが、ホームの暑いこと、汗が噴き出します。

【 土田ひなこ 選(土) 】
○21 息すると  風の無い日、混雑したホーム。
○29 水槽の  そろそろ水を換えなければ。
○36 いい加減な  この気持ち、わかります。
○51 短夜の  暑い夜ですね。
○53 雷の  ブリキの音に感じる感性が好き。

【 小林タロー 選(タ) 】
○03 浮世絵の  良い絵を見ると気持ちが涼やかになります。
○11 アフリカの  田植機に積んだCDでしょうか。早乙女とは無縁
○25 恋人の  濃紫陽花はつきすぎでしょうが、まあそんな感じ
○35 好きな子の  青簾がぴったり
○53 雷の  少しがいやな人もおられるでしょうが、少しが微妙で良いと思いまし
た。

【 森田遊介 選(遊) 】
○03 浮世絵の  広重も北斎も雨を描いた作品を残しています。暑い日に出掛けた浮世絵展で観た絵の感想を素直に纏めたと思います。体感する夏の一句だと思いました。
○08 家中に  漸く涼しくなった深夜を思いました。この夜は熱帯夜ではないでしょう。
○16 片陰の  実際私もそのようにして街を歩いています。実感同感します。
○18 梅雨明けや  カキィ〜ンと言う音がします。季語との取り合わせがよい句だと思います。
○53 雷の  先日も雷が鳴っていました。例えにあげたブリキがそのようだったかも・・と思わせるような句です。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○05 真裸や  眠れなかったのか、それとも?
○08 家中に  じっくりつからずに水の流す音とはしゃぐ声
○10 二の腕の  やせても二の腕だけは垂れ下がって。
○25 恋人の  ふたりが納得して今を満喫しているのが下五に出ている。
○48 髪洗ふ  髪を洗う瞬間は何かを思い出すいい機会。
 15 釣人の  かな止めなら下五を整えないと。
 21 息すると  まだ整理が出来そうな気がする。
 26 浜茶屋や  もしかして立て膝座りか。

【 石川順一 選(順) 】
○11 アフリカの  季語は「田植ゑ」。「アフリカのリズム」に惹かれました。単にポンコツだったのか、独特のリズムがアフリカ的だったり土俗的だったのか、興味が湧きました。
○29 水槽の  季語は「花火」。視覚的に濁って居ると言う事と聴覚的に微かにしか聞こえ無いと比較するのはたやすいですが、「水槽の底の濁り」は視覚的なだけなのに対して、主役の季語の「花火」は視覚的にも聴覚的にも存在感があると言う事が重要だと思います。「花火」と言えば視覚的な美しさが若干優るかもしれませんが、やはり音もすごい。その事から視覚的なだけの「濁り」が「花火」の引き立て役に回って居ると思うのです。まかり間違っても「花火」とバランスを取って「濁り」にも音があるはずだとは取らないと思いますし、それでは訳の分からない話になって仕舞う。
○31 濃きガスの  季語は「雪渓」。これは分かり易いと言えば分かり易い情景ですが、「濃きガス」が何なのかはさすがに分からない。
○45 海水浴  季語は「海水浴」。これでは濡れて仕舞うではないかと思いました。しかし俳諧味はあると思いましたね。滑稽さよりはむしろ真剣味を感じました。
○47 玉葱や  季語は「玉葱」。玉葱とひっかけて仮面の下にまた仮面と言うのは面白いと思いました。何やら深刻そうな事を伝えようとしているとも、或いは実にたわいの無い事を言おうとしているともとれるなと思いました。

【 涼野海音 選(海) 】
○10 二の腕の  「ひらひら」というオノマトペが面白い。
○27 懐かしき  「懐かしき人」と「あやめぐさ」が醸し出す情緒に共感。
○34 目を閉じて  体操の一こまでしょうか。夏座敷の雰囲気にあっています。
○35 好きな子の  まるで初恋の人が通りすぎてゆくワンシーンのようです。
○37 夏の月  「些細なこと」って一体なんだろうか、具体的に言った方がよいか、そのままにして想像させる方がよいか・・・。

【 松本てふこ 選(て) 】
○03 浮世絵の  ゲリラ豪雨の対極をなすような雨の降り様を、まるで体験したかのように描いているおかしみ。下五の斡旋も粋。
○12 景品は  それほど嬉しくないのかな、という気持ちを匂わせていて楽しいです。もっと涼しい見た目のが俺は嬉しいよ、色っぽさなんてあんまり求めてないよと言わんばかりではないですか。
○16 片蔭の  熱い日差しから少しでも逃れたい、という気分をそのまま一句に込めたのか。息が止まりそうな午後の最も暑い時刻のありふれたワンシーンをさりげなくすくいとった句。
○29 水槽の  心の翳りを表すような水槽の底を見つめる作者。そして遠花火。意味深です。ドラマを感じる一句。
○52 髷結へぬ  まだ下の位で髷も結えず体格もしっかりしていない、自分なりの戦法を持たない力士が軽やかに立ち回る姿、と取ったのですがだったら何故「をとこ」としてるのでしょうか。ううーん、この点はいただけない。力士以外の呼び出しだったり行司だったりのことを詠んでいるとも取れなくもないですが、力士の姿を詠んだと仮定して前述のように読みました。下五がいきいきと響く一句。

【 足立山渓 選(山) 】
○22 笹舟に  「夏越の祓」の副題の「形代」。見たことも経験したこともないが、歳時記の記すように地域ごとに異なった祈願の儀式が想像できた。
○26 浜茶屋や  現代の子は、「じべたりあん」といってどこにでも腰を下ろしてしまう。「立て足座り」の措辞が素晴らしい。
○30 サンダルに  せっかく綺麗に掃除した座敷に、砂のついた足でどかどかと孫が入ってきた。孫を叱りつけた時は、こんな句は思いもよらなかった。単純明快。
○35 好きな子の  青春の初恋の思い出が懐かしい。
◎38 連なりて  世界遺産に登録され、混雑する富士登山の様子。テレビで見る光景そのまま。これぞ写生句。 

【 川崎益太郎 選(益) 】
○07 はしり蚊に  はしり蚊という言葉を初めて見た。意味は出始めの蚊ということか。ふるさととの取り合せが郷愁を誘う。そういえば蚊という字は、虫に文(ふみ)と書く。
○11 アフリカの  一読、花田植えを連想。アフリカのリズムが上手い。
○25 恋人の  恋人のいない同士の二人とは、どういう関係の二人か。案外その二人が好き合っていたりして・・・。
○39 父と子の  クレバスという冷たく深い溝のような父と子の対立。そこへ誰が置いたか扇風機が一つ、とりなすように静かに回る。その後の展開は誰にも分からない。
○53 雷の  雷を、少し間の抜けたようなブリキの音と感じた作者。本当は怖い雷を茶化した表現が上手い。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○02 漂白の  夜店をひやかして歩くそぞろ歩きを漂白の一歩とはちょっと格好良すぎと思うけれど、そう考えるととあの夜店の賑やかな灯がたちまち虚ろに思えてくるから不思議。
○07 はしり蚊に  はしり蚊という言葉を初めて知りました。はしり蚊とはいえきっと丈夫そうな刺されたら大きく腫れてしまう蚊なのだろう。
○08 家中に  浴室の窓もどこもかしこも開け放っているのだろう。こじんまりとした一軒家、夏の月が大きく見えておおらかで気分がいい。
○29 水槽の  水槽の水は夏ほどすぐ濁ってしまう。家で遠花火のかすかなどーんという音を聞きながら水槽の底の濁りを見ている作者。寂しいとかではなく夏の夜の薄ぼんやりした所在なさが出ていて好きだ。
○35 好きな子の  いいですよね。マンション暮しなのであこがれます。簾越しに好きな子がチェックのサンドレスでプールバックなんか下げて歩いて行くのちょっとドキドキしながら見ているのかな。

【 水口佳子 選(佳) 】
○03 浮世絵の  東海道五十三次などでは確かに斜めに降っている。背景の青のぼかしも頭に浮かんできて、それは涼しさへとイメージがつながる。「〜かり」の用法については「かりけり」とすべき・・・と言われていますが、どうなんでしょう。
○05 真裸や  ただ真夜中に水を飲んでいると言っただけなのに〈丑三つ時〉が怪しげ。しかも〈丑三つ時の〉の〈の〉が効果的。 さらに〈真裸〉が謎。暑かったから・・・という答えではつまらない。
○21 息すると  ホームまで駆けてきたのに非情にも電車は行ってしまった・・・どっと噴き出す汗、この感覚わかる。
○25 恋人の  恋人がいない同士だからと言って、二人の関係が恋に発展するとは限らない。濃紫陽花はますます色を深めていくのに。決して派手でない濃紫陽花がなんだか微妙。
○48 髪洗ふ  この季語はやっぱり女性のものだなあとつくずく感じる。独り身になってからの時間が〈髪洗ふ〉という季語に詰まっているような。
ほかに気になる句
 35 好きな子の  こちら側からだけ見えている?
 51 短夜の  惹かれた句ですが中7、下5がやや常套的かと。
 53 雷の  比喩は面白いなあと。〈少し〉が要るかなあ。

【 喜多波子 選(波) 】
○11 アフリカのリズムで進む田植ゑかな
○17 雨螢切崖に沿ひ上り往き
○36 いい加減な人になりさうこの溽暑
○48 髪洗ふ独り身長くなりにけり
○52 髷結へぬをとこ身軽に夏巡業

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○07 はしり蚊に  句意がよくわかる。誰しもが体験したことがあるのでは。
○11 アフリカの  現代ではありうると思うし、アフリカのリズムが意外。
○18 梅雨明や  季語にマッチした大きな景色が良い。
○25 恋人の  濃紫陽花がつかず離れずで上五にあっている。
○44 就職の  時評ともいえる作品だが虚を突かれました。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです)

【 小川春休 選(春) 】
○04 潮騒や  みぞおちから汗が滴る場面としては、日差しの下、激しく体を動かした後に、座り込んでいる。そんな場面が想像されます。音と場面を想起させる上五が効いている。
○06 パンストの  「捩れを正す」とはなかなか出てこない表現ではないでしょうか。簡潔ですが、動きがしっかり見えます。そして季語、「梅雨晴間」が暑さと湿度を感じさせている。
○29 水槽の  屋内から遠くの花火を見やる。大抵こういう場合、花火がよく見えるように部屋の照明を暗くしたりしますね。そうしたときに、水槽の照明がいつもとは違う底の濁りの様子を照らし出した。実感、臨場感のある句。
○42 よくもまあ  こんな小さな蜘蛛の腹からよくぞこれだけの糸が、という驚きの句。口調が軽妙で良いですね。
○52 髷結へぬ  「髷結へぬ」というからには、行く行くは髷を結おうというこの「をとこ」、入門して間もない新弟子でしょうか。生き生きとした一場面のスナップ。
 03 浮世絵の  描写がクリアで、非常に巧みな句。
 09 択ぶ手の  「嬉し」を使った良い句もありますが、この句の場合、「嬉し」が一句の答えになってしまっている気がします。「択ぶ手のびつしより濡れて鬼灯市」などの方が生き生きと景が見えてくるのではないでしょうか(中七に推敲の余地がありますが…)。
 10 二の腕の  「ひらひら」から、力なく腕を振る、母の動作が見えてきますね。
 11 アフリカの  インパクトの強い句ではありますが、実際に想像してみると、アフリカのリズムでは速すぎて、田んぼに稲をしっかり植えられない気がするのですが…。やってみたら出来るもんなんですかねぇ…?
 12 景品は  「艶めかし」が「絵」につながる場合、連体形の「艶めかしき」とするべきです。すんなり読めて意味も通じる場合にはそこまで厳密に文法を正しくしなくても良いような気もしますが、この句の場合はちょっと無理矢理中七に収めた感じがします。
 13 市立てり  下五の「は」を削るだけで句のリズムが格段に良くなる気がします。
 15 釣人の  下五が「しらさぎかな」では字余り。白鷺と書いて「はくろ」と読ませる意図なのでしょうか。
 18 梅雨明や  気分の良い句ではありますが、中七下五の描写が固いように思います。「よく響く」とあれば「音」は不要という気もします。例えば「梅雨明や打球の音の遠くより」など。
 20 シャッターの  句の雰囲気はよく分かるのですが、「シャッターの音の」と「の」を二つも使われているのは、いかにももたもたした感じです。「シャッター音」と言ってしまえば六音分に収まります。
 22 笹舟に  そもそも形代流しというものはこういうもの、という範疇から出ていないように思います。
 23 猿山の  ちょっと一句としてまとまり切っていない印象。「夏曇り」という季語も少し苦しい。
 26 浜茶屋や  中七下五、とても生き生きとした、動きの見える描写です。
 27 懐かしき  多くは語っていませんが、思わぬ再会と、あやめぐさの色鮮やかさとが印象的な句です。
 31 濃きガスの  「ガス」とは、登山用語で、山にかかる霧のことをいう言葉。内容には勢いがあるのですが、皮肉にも句のリズムは中八で間延びしてしまっています。「濃きガスの一気に隠す○○○」などとしてかっちり五七五に収めたい。
 32 打ち水の  動詞が多く(厳密には「打ち水」は動詞ではないですが、動詞に近い要素を持った季語)、どうにもまとまりのない句という印象です。
 39 父と子の  クレバス(英語:crevasse)は、氷河や雪渓などに形成された深い割れ目とのこと。親子で登山をしているのでしょうか、夏でも暑さとはあまり縁の無さそうな場所、そして電力の準備が困難な場所でもあり、どうしてこんな場所に扇風機が登場するのかよく分かりませんでした。
 40 坊主刈り  坊主刈りにしたら涼しいだろうと思ってやってみたら意外にも暑かった、ということでしょうか。頭髪が日光の熱から頭を守ってくれていたのでしょう。
 41 臍出しの  「礼(いや)やか」は礼儀正しいさま、うやうやしいさまとのこと。知らなかった語彙です。
 44 就職の  バブル崩壊以降、就職が氷河期でなかった時期の方が珍しい気もしますね。これからそれが好転する要素も見当たらない。氷河期という言葉には「今は悪いけど何年かしたら終わるはず」というニュアンスも感じられますが、そんなニュアンスが暢気に感じられてしまうほど、情勢は厳しくなっている。句の評から話が逸れてしまいました。
 45 海水浴  束の間の海水浴でも辞書を手放さないというエピソード自体が、十分にリアリティを持ってその人物を描き出しているのに、下五の「書生かな」は言わずもがな。むしろ言わない方が読み手の想像の幅が広がる。
 49 風鈴の  「やがて古びる」のは当たり前ではないでしょうか。逆に、だんだん新しくなる、というのなら意外性もありますが。
 50 回天の  「回天」とは人間魚雷のこと。戦争で命を失った者と蛍とを重ね合わせる意図は分かりますが、蛍は海ではなく川辺のもの。回天とはミスマッチというか、川なのだから水脈が辿れないのも当然という気がします。つまり、イメージを重視するあまり、季語から景を想像すると矛盾が生じる句になっているように感じます。
 51 短夜の開けて鳴らざるオルゴール   
 53 雷の  雷鳴がブリキのような音であった、という発見だけで十分に一句は成立すると思うのですが、「少し」や「やうな」のせいで何だかぼんやりした句になっているような…(あえてぼんやりさせようというのが書き手の意図なのかも、という疑念も少しありますが)。個人的には、やはり雷の力強さ、勢いなども句の上に活かして、「雷がブリキの音を立てて落つ」のように一息に言い下したいですね。 

 


来月の投句は、8月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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