ハルヤスミ句会 第百五十四回

2013年8月

《 句会報 》

01 草藪につんと顔出す夏薊     遊介(第)

02 切り岸に立つ人みゆる海開    海音

03 割る前の卵の中の涼しさよ    佳子(海・て・鋼・春)

04 列なして眼底検査炎暑の日    一斗(遊・順・ぐ)

05 炎昼にカレーの匂ひ古書の街   時人(第・奥・愛・タ・遊・忠・山・波)

06 豪雨去りあつという間に蝉時雨  ひろ子(時)

07 長袖を着込む冷房嫌ひかな    つよし

08 飛び乗るや顎の先よりしづる汗  愛(奥)

09 相違するポン酢に冷やし中華の乱 順一

10 書肆並ぶ街を巡るや夏帽子    時人(遊)

11 風死する頃の重たきペダルかな  春休(第)

12 絶好調と言うてみたしやこの暑さ 愛

13 四時半の目覚まし時計蝉の鳴く  ひろ子

14 アスターの盗まれゐたる鎌の跡  つよし(愛・忠)

15 思ひ切り叩く顔面「虫偏+韈のつくり」「虫偏+蒙」め     タロー

16 団扇借り返し汝と我夫婦     てふこ(佳・春)

17 雲海を抜けたる空の真青かな   時人(奥)

18 造影剤ごくり八月六日来る    佳子(一・奥・タ・遊・忠・順・て・益・波・鋼)

19 小学生男子犬と冷されぬ     ぐり(タ)

20 ほとほとと風を交はせる吾亦紅  波子(益)

21 青空へ足向けて死す百足かな   海音(愛・土・て)

22 夜濯の手のなかに崩れゆくもの  佳子(一・土・忠・益・ぐ)

23 玉虫の潰れて白き汁の出て    てふこ(タ)

24 観覧車消へて楕円の遠花火    一斗(第・タ)

25 夜蝉鳴く眠れぬ夜の赤子かな   ひろ子(順)

26 暁の街白茶けて溽暑かな     ぐり

27 ニッカーズ影絵の如し葉月かな  波子

28 信号の鳥声のみの終戦日     春休(一・土・海・益・佳)

29 検診に堪へ果てなし弟切草    忠義

30 帰省の子敬語自然に使いけり   第九(山・ぐ・鋼・春)

31 盆踊り行くか行かぬで葛藤す   順一

32 遮断機の下りる高さに花カンナ  ひなこ(一・時・愛・遊・ぐ・佳)

33 乱さるる周波数なり残暑かな   順一

34 かなかなや四人の夕餉淡々と   ぐり(佳・波)

35 雷鳴の轟く中の傘走り      愛

36 水飲んで晩夏の豚の鼻びしよびしよ てふこ

37 盆竈の帰りや顔の浅黒く     忠義

38 犬猫を猫犬を追ひ走馬燈     タロー(奥・土・順・益)

39 白壁のアラビア文字や秋に入る  一斗(時・海・山)

40 まだ咲かぬ萩のトンネル蚊の群れて タロー

41 兄妹に先に越さるる墓参り    つよし(第)

42 青林檎齧る横顔にきび面     遊介(鋼)

43 八月や流されくらげ腕ながき   春休(忠)

44 倶利伽羅の峠越ゆるや涼新た   ひなこ(山・波)

45 迎火や室外機より水あまた    忠義(愛・順・春)

46 鉄棒の向かうは海や秋燕     海音(時・て・佳)

47 ラベンダー抱きて乗り会ふ一輌車 波子(一)

48 パラグライダー花野を蹴って飛び上がる ひなこ(山)

49 天の川ビルの谷間へ流れ落つ   遊介(海)

50 旧盆の軽さうに行く電車かな   第九(時・土・海・て・波・鋼・春)

51 捩れなきことが恐ろし原爆忌   益太郎

52 空蝉に残る体温午前四時     益太郎(ぐ)

53 朝帰り光源氏のサングラス    益太郎




【 一斗 選(一) 】
○18 造影剤ごくり八月六日来る
○22 夜濯の手のなかに崩れゆくもの
○28 信号の鳥声のみの終戦日
○32 遮断機の下りる高さに花カンナ
○47 ラベンダー抱きて乗り会ふ一輌車

【 中村時人 選(時) 】
○06 豪雨去り  本当に日が射すと一斉に鳴き出します、逞しいですね。
○32 遮断機の  何でもない日常のひとコマを、旨く捉えていて、好きな句です。
○39 白壁の  白壁に描かれた、蔦の様なアラビア文字に秋を感じたのだろうか、、、
○46 鉄棒の  校庭の鉄棒の先に広がる海を燕が子供を連れて南方へ帰ってゆく良い景ですね。
○50 旧盆の  帰省で人が少なくなって、がらがらの電車、高速道路は大渋、滞御苦労さま。
 他に気になった句は
 29 検診に耐へ果てなし弟切草
 34 かなかなや四人の夕餉淡々と
 42 青林檎齧る横顔にきび面

【 叶万里子 選(万) 】
(今回はお休みです。)

【 土曜第九 選(第) 】
○01 草叢に  可愛らしさの中に強さも感じます
○05 炎昼に  確かに神田の通りにはカレーの匂いのイメージがあります
○11 風死する  大変さが伝わってきます
○24 観覧車  夏の夜空の大きさが感じられます
○41 兄妹に  一人残されたやるせなさが伝わってきます

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○05 炎昼に  暑さとカレーの匂いがぴったりあっていると思います。 
○08 飛び乗るや  冷房車に乗れたのでしょうか?
○17 雲海を  気持ちまで晴れ晴れしますね。
○18 造影剤  胸がしめつけられる思いです。
○38 犬猫を  実際にはあまりみかけませんが、面白いですね。

【 遠藤ちこ 選(ち) 】
(今回はお休みです。)

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇05 炎昼に  神保町でしょうか。おいしいカレーの店ありますね。炎天下で歩き疲れ、カレーの匂いに釣られます。
〇14 アスターの  何という事か、丹精込めて育てたアスターを事もあろうに鎌でばっさり切って持っていくとは。作者の溜息と悔しさが”鎌の跡”に現れています。
〇21 青空へ  この句から終戦の日の「耐えがたきを耐え」の昭和天皇のお言葉を思い浮かべるのは私だけでしょうか。あの日の空も青かった。
〇32 遮断機の  どういう訳か遮断機のそばによく赤や黄色のカンナが植えてあります。家の近くにもあります。丁度その高さにカンナの花が咲いている。実景ですね。
〇45 迎火や  迎火とエアコンの室外機、このミスマッチが新鮮。その室外機からたくさん水が出ている。暑い夕べなのですね。

【 土田ひなこ 選(土) 】
今月は選句のみですが、よろしくお願いいたします。
○21 青空へ足向けて死す百足かな
○22 夜濯の手のなかに崩れゆくもの
○28 信号の鳥声のみの終戦日
○38 犬猫を猫犬を追ひ走馬燈
○50 旧盆の軽さうに行く電車かな

【 小林タロー 選(タ) 】
○05 炎昼に  夏休みに好きな古書店街を歩いて、学生向けのカレーでも食べようかと
○18 造影剤  つきすぎかとも思われますが、そうではなくそのくらい重い気持ちがあるということでしょう。
○19 小学生男子 ペットも家族以上
○23 玉虫の 白い汁が出ても翅の玉虫色は健在だ!
○24 観覧車 観覧車は夜ライトアップするのが普通だけれども、消えてとあるからライトも消したのだろう。その向こうに遠く花火が見え始める。時間の経過がわかります。

【 森田遊介 選(遊) 】
○04 列なして  「列なして」で季語が持つ猛烈な暑い日が響きます。まして検査のための列ですから、もううんざりする一日を思います。
○05 炎昼に  スパイスの効いたカレーと古書の黴の匂いとが交り合うなんとも言い難い街を想像します。季語が一層その街の匂いを掻き立てます。
○10 書肆並ぶ  さぞかし読みたい本があるのでしょう。書店をはしごするパナマ帽の紳士を想像します。
○18 造影剤  現在では医療治療でX線は利用されるけれど、そうではない使い方をした八月六日。ごくりという音でその恐ろしさが充分に表現されていると思います。
○32 遮断機の  線路わきによく見られるカンナの花。何気なく毎日観ている光景ですが、作者の鋭い観察力が素直な一句となったと思います。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○05 炎昼に  確かにいくつかおいしいカレー屋が何件かあるあのあたり。懐かしい。
○14 アスターの  カンナでもダリアでもなく何でアスターなのかと立ち止まらせてくれる。
○18 造影剤  挑戦的な取り合わせ。体に対する不安感。拒む人もいるかもしれないが。
○22 夜濯の  二層式洗濯機でないと味わえないこの感覚。いや、盥と洗濯板か。破調の字間に崩れゆくものが見たくなる。
○43 八月や  その腕には毒針が仕込んでありそう。夏の終わりに気を抜いてはダメ。
 02 切り岸に  動詞が多すぎるので、なんとかスリムに出来ないか。
 08 飛び乗るや  これもスリムにしたりくっつけたりする必要がありそうな気がしてもやもやする。
 27 ニッカーズ  三段切れをなんとかすれば良くなりそう。現場で働く人でなくてタンタンのような少年を思い浮かべた。

【 石川順一 選(順) 】
○04 列なして  季語は「炎暑」。「列なして」と言うのはもしかしたらむしろ見慣れた光景だったのかもしれません。作者にとって。でもここでは季語の「炎暑」と相俟って、普段の光景とは違った様相を呈しているかのごとくこの作者には感じられたのだと私は取りました。
○18 造影剤  季語は「八月六日」むしろ「原爆忌」の事でしょうか。これまた健康診断の風景でしょうか。「ごくり」に生々しさを感じました。個と全体のダイナミックな結合すら暗示されているようにも感じます。「造影剤」はむしろ隠れた主役で、後景に退いて居ると思います。
○25 夜蝉鳴く  季語は「蝉」「夜蝉」。これはむしろ夜蝉の方こそ赤子の為に眠れないのではないと考えた方が詩的だと思いました。素直に読むと逆の様ですが。
○38 犬猫を  季語は「走馬灯」。涼しげな走馬灯の色が思い浮かんできます。まさに「走馬灯」を見たままの描写でしょうね。売り場で見たとしても家庭で見たとしても公共の場で見たとしても面白いと思いました。
○45 迎火や  季語は「迎火」。最新のハイブリッドなどを思い出しました。電気を産出すると水しか排出しないのでクリーンなエネルギーなのです。そして「迎火」と言う季語と相俟って、神々しい雰囲気がこの句から醸し出されています。最新の技術と、神話的宗教的な雰囲気は案外マッチするのかもしれません。
 評からは漏れて仕舞いましたが、08、11、21、24、28、36、42、51などにも注目しました。

【 涼野海音 選(海) 】
○03 割る前の  まるで卵の中に入ったような心地になる句。
○28 信号の  信号の鳥声が静かな終戦日の町にひびいている。なるほど終戦の日の雰囲気が伝わります。
○39 白壁の  白壁にアラビア文字が書かれている。外国の街か、はたまた日本の街の落書きか。アラビア文字のエキゾチズムと秋が作者の中で結びついたのでしょう。
○49 天の川  いかにも都会の天の川。作者は仕事帰りに空を見上げたのでしょうか。
○50 旧盆の  短い編成の電車が、たくさんの客を乗せ「軽さうに」走っているのでしょうか。さっと詠まれていますが、何か本質的なものを把握しているように思えました。

【 松本てふこ 選(て) 】
○03 割る前の  季語が空想として描かれている点は評価が分かれるところだと思いますが、厭世的な心境もうっすらと匂わせて魅力的。「よ」の詠嘆も涼やかに響いていると思います。
○18 造影剤  少しつき過ぎかな、と最初は思ったのですが、「八月六日」の迫力がすごかったのと、現代を生きていることそのものが不安である、という矛盾をつきながら描いているのかと思うと取らざるを得ませんでした。今詠まなければ、という作者の強い意志も感じました。
○21 青空へ  青空と百足との対比が美しくて残酷。この残酷さが俳句ですね。
○46 鉄棒の  秋燕の斡旋はやや安直というか、決して正解ではないように思うのですが、水墨画のようにも解釈出来る景を完成させるという意味では正解なのかも。
○50 旧盆の  軽そう、という把握が不思議で、一気に引き込まれます。

【 足立山渓 選(山) 】
○05 炎昼に  昼時の古本街を覗き見ながら暑い最中に熱いものを食べるのが、健康の秘訣。
〇30 帰省の子  親はいつまでたっても、我が子は何もできない子供だと思っていても、「お盆休み」に帰ってきた息子が、上手く敬語を使うので、感心している親の心情がうかがえる。
〇39 白壁の  白壁の文字と季語とぴったり。壁に何が書いてあるのか想像が膨らむ。
〇44 倶利伽羅の  歴史に名高い、「倶利伽羅峠」と、季語の取り合わせが抜群。
〇48 パラグライダー  大きな景の一句。人間一度は空を飛びたいものです。羨ましい。

【 川崎益太郎 選(益) 】
〇18 造影剤  バリュウムを飲まされるときの感じと八月六日との取り合わせ。ごくりも効いている。
〇20 ほとほとと  ほとほととが、いろんな意味に取れ、いろんな情景が想像できて上手い。吾亦紅も効いている。
〇22 夜濯の  何が崩れるのかは言っていないが、いろんなことが想像できる句。
〇28 信号の  信号機の鳥声が無機質に響くのみの終戦日。目の付け所が良い。
〇38 犬猫の  犬が猫を追い、猫が犬を追うという走馬灯の説明とも言えるが、面白い句。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○04 列なして  眼底検査を列なして受けなくてはいけない暑苦しさ。ぎらぎらの炎暑。暑い、、。
○22 夜濯の  崩れゆくものとは、、。繊細なレースや絹の下着でしょうか。これは女性にしかわからない感覚。
○30 帰省の子  しみじみと子の成長を感じるひとこま。けりに感慨深さが。
○32 遮断機の  花カンナの鮮やかさと無機質な遮断機。下りる高さというちょっとたどたどしい言い方が味わいに生っている気がする。
○52 空蝉に  朝帰りでしょうか。空蝉を見つけて思わず触れたら未だ暖かい。側には透明の羽化したての蝉がいたのかも。

【 水口佳子 選(佳) 】
○16 団扇借り  長年夫婦をやっていると借りるとか貸すとか、そういう感覚は薄れていって、こういう少しよそよそしい感覚が、初々しく感じられる。あらためて相手がいるということを日常のなんでもない行為の中で感じているのだろう。
○28 信号の  横断歩道の信号が青に変わる瞬間、信号から鳥の声が聞こえる。炎天下の横断歩道を渡る人もなく・・・でもそれが〈終戦日〉と言われると見えなくとも大勢の人が渡っているような気がしないでもない。
○32 遮断機の  そういえば線路際によく見かける花だなあと納得。遮断機の下りる高さというのも納得。列車が通るたびに揺れるカンナの花びらが見えるよう。
○34 かなかなや  四人で囲む食卓ならば少しは賑やかなのではないかなあと思うのだが、大した会話もなく淡々と食べているというところに今時の家族の有り様など垣間見える。〈かなかな〉が効果的。かなかな、四人、淡々、の言葉のつながりもいい。
○46 鉄棒の  外へ外へと広がりのある句。〈や〉の切れ字も効果的。

【 喜多波子 選(波) 】
○05 炎昼にカレーの匂ひ古書の街 
○18 造影剤ごくり八月六日来る 
○34 かなかなや四人の夕餉淡々と
○44 倶利伽羅の峠越ゆるや涼新た
○50 旧盆の軽さうに行く電車かな

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○03 割る前の  うまいことを言ったと思う。微笑を誘う。
○18 造影剤  八月六日来るの来るが作者ならではの措辞と思う。
○30 帰省の子  自然な感じに周りが驚いている様子が良い。
○42 青林檎  青と青い少年と連想するところあるが良い句と思う。
○50 旧盆の  軽々と行く発見が良い。
 選のほかの佳句
04 列なして 05 炎昼に 25 夜蝉鳴く
32 遮断機の 34 かなかなや 39 白壁の
46 鉄棒の

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです)

【 小川春休 選(春) 】
○03 割る前の  これは恐らくゆで卵ではなく生卵、これから割ろうとして手に取った瞬間の印象でしょう。「前の」という辺りが少々言葉使いに固さを感じますが、その感覚、発想に惹かれます。
○16 団扇借り  はて、我が家の団扇に誰のものとか決めていただろうか…(子供のだけは一応決まってるかな…?)。どこかぎこちないこの夫婦、まだ結婚してから日が浅いのかもしれない。実感のある初々しさが好ましい。
○30 帰省の子  実家を出て、一人暮らしをする間に、様々な面で成長する子供。接客などのアルバイトをしていれば敬語もだんだん身に付いてくる。「自然に」に実感がある。上五は「帰省子の」の方がすんなり読める気もしますが、いかがでしょう。
○45 迎火や  この夏は冷房無しでは生活できない有り様でしたが、故人を迎えるのに、冷房で室内を涼しくしているのかもしれません。室外機から流れ出た水に迎火が映る様子も思われて、どこか不思議な実感のある句です。
○50 旧盆の  通勤・通学の客が少ないから、などと理屈で読んでしまっては面白くない。この「軽さう」にどこかこの世ならざる存在感を読み取ると、俄然面白くなる句。
 02 切り岸に  遠近感のある、すっきりとした景が心地良いです。
 04 列なして  屋外で眼底検査なんてしないと思うのですが、どうなんでしょう。この時期の医療機関は冷房も効いて涼しいと思うのですが(病院内で熱中症になったのでは洒落になりませんから…)。この句における季語の働きが、私にはよく読み取れませんでした。
 05 炎昼に  カレーと古書店というのは、街の表情をありありと想像させてくれる組み合わせですね。
 07 長袖を  冷房嫌いが長袖を着込むのは当然というか理屈なのではないでしょうか。「長袖を着込みたまひぬ生身魂」などであればまた違ってくると思いますが…。
 08 飛び乗るや  「しづる」とは、木の枝などに積もった雪が滑り落ちること。この句の、何かに飛び乗るというダイナミックな動きに対しても、汗の動きの描写としても、そぐわない表現という気がします。
 12 絶好調と  気持ちはよく分かります。
 14 アスターの  丹精込めて育てていたのにがっかりしますね…。ただ、同じ盗むにしても鎌でざっくりとは乱暴な。これでは盗んだ花もすぐに萎れてしまうでしょうに…。
 18 造影剤  これは広島の原爆による影響を身体に受けつつある、もしくは影響が出るのではないかと不安を感じている人の心情を詠んだ句ではないでしょうか。被爆から数十年経ってから、原因不明の不調に陥ることもある、放射線の影響というのは非常に恐ろしい。そのことを毎年八月六日が来ると思い出す。
 19 小学生  六六五という、足せば一応十七音になる破調の句ですが、ここは単純に上五を一音字余りにして、中七は六ではなく七にしておいた方が良かったのではないでしょうか。六六五ではどうもすんなり入ってきません。
 20 ほとほとと  上五のオノマトペが独特。私はここが今一つ読み切れなかったのですが、印象に残る句です。
 23 玉虫の  「て」を二つ用いた言い流す形の句に仕立てられていますが、この句の内容にはそれがベストではないような気がしています。言い流すのではなく、もっと玉虫や白き汁の存在感を活かした句にしたいところ。
 25 夜蝉鳴く  「夜蝉」と「夜」の重複がもたついて感じられます。内容も、原因・結果になっているようです。
 26 暁の街  上五中七の描写はなかなか独特で存在感がありますが、下五のせいで「暑いからこうなった」という理が感じられます。「溽暑」のようにストレートに暑さを示すものではなく、同じ夏の季語で、もっと想像を拡げてくれる季語があるのではないかと思います。
 32 遮断機の  遮断機の下りる高さとはやや低いような。まだ育ちきっていないカンナなのかもしれませんね。
 33 乱さるる  「なり」「かな」と切れ字が二つ用いられており、まとまりのない印象です。下五に「かな」を用いず、五文字まるまる季語であるような語に置き換えることはできないものでしょうか。
 34 かなかなや  かなかなが鳴いている時間帯の夕餉とは、けっこう早いのではないかと思います。「淡々と」していることから、年配の方を含む四人の夕餉ではないかと想像します。
 35 雷鳴の  「中の」というつなぎ方が散文的なのが残念。こういう所を省略して、雷と傘それぞれの存在感を強調するような作りの句にされた方が、より印象的な句になるのではないかと思います。
 39 白壁の  白壁と言われると、私が最初に思い浮かぶのは倉敷などの日本家屋や蔵、しかしこの句の景はそうではなく、地中海沿岸のイスラム圏などが想像されます。行ったことはないですが、そんな土地で向かえる秋とはなかなか味がありますね。
 40 まだ咲かぬ  萩の枝の下を通れるようになっているのを「萩のトンネル」と称するのは、少々安易な見立てという気がします。見立てにしてしまわず、「まだ咲かぬ萩の葉ごもり蚊の群れて」などとしっかり描写すべきと思います。
 41 兄妹に  「先に越さるる」ではなく「先を越さるる」ではないでしょうか。
 44 倶利伽羅の  歴史のある地名であり、耳で聞く地名の響きも軽やかで、いかにも涼新たという気分が伝わります。
 47 ラベンダー  「一輌車」と場面が限定されることで、ラベンダーの香りがより強く感じられるような。
 48 パラグライダー  動きもあり、景も鮮明な句ですが、下五を「飛び立てり」とした方が響きもさらに歯切れ良くなるように思います。
 49 天の川  見立ての句ではありますが、なかなかにダイナミックで面白い句。
 51 捩れなき  恐らく衆議院と参議院のことを言っているのだと思います。句意には同感ですが、内容が散文的なのではないでしょうか。何か想像力を働かせるきっかけになるような、手触りのようなものが欲しいところです。
 52 空蝉に  どうも実際に触ったというよりは、源氏物語以来の比喩としての「空蝉」を詠んだという感じですね。

 


来月の投句は、9月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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