ハルヤスミ句会 第百五十八回

2013年12月

《 句会報 》

01 入院の妻のおしやべり小春かな    案山子(一・時・奥・タ)

02 少年の蕎麦掻溶く目血走らせ     忠義

03 耳を掻く犬のよろけて師走かな    ぐり(土・海・佳・ぐ・春)

04 ドーナツの砂糖こぼるる日向ぼこ   海音(一・時・佳・順)

05 波郷忌やニコライ堂へ駅をいづ    時人(土・山)

06 杉木立にすくと一本冬紅葉      山渓

07 西空に金星と月冬夕焼        ひろ子(タ)

08 前触もなく飛立てり浮寝鳥      タロー(案・奥)

09 彗星の砕けたる日の冬苺       佳子(一・タ・海・て・益・ぐ)

10 千年の孤独ありけり石蕗の花     益太郎

11 読み終ふる仰臥漫録虎杖笛      波子(タ・波・春)

12 しなやかに暮らす二人のレモンかな  一斗(忠)

13 川中に光る鱗や小六月        タロー(案・奥・て)

14 着ぶくれて手のひらに銭並べをり   春休(◎案・一・海・て・山・ぐ・波)

15 湯豆腐や身の丈ほどに暮らしをり   愛(時・奥)

16 経過良しお粥に柚子のみじんぎり   案山子

17 学童の廃品回収開戦日        つよし(◎山・案・て・益)

18 燃えゐても煉炭の穴たしかなり    忠義(一・土・波・順)

19 ポインセチアお望みならば夜どほし踊る 佳子(タ・ぐ)

20 芭蕉忌の日向に手紙ひらきけり    海音(佳)

21 漱石忌ぱかりと開ける猫の餌     時人(忠・益・春)

22 横丁を猫小走りに一葉忌       愛(時・土・ぐ)

23 聖樹とはわさと抱かれて運ばるる   てふこ

24 それぞれの膳におのおの牡丹鍋    一斗

25 先輩の訃報の届く霜柱        つよし

26 大股小股チカホに人や風邪心地 〔チカホ・・札幌の地下歩道〕 波子

27 「自分史の書き方」買うて襤褸市へ  タロー(時・忠・海・佳・春・順)

28 風まかせホップジャンプし銀杏散る  ひろ子

29 冬の靄月光垂るる如くなる      春休

30 飾り全て球形クリスマスツリー    てふこ

31 トナカイは苔もふもふとクリスマス  ぐり

32 胸の傷残したままや帰り花      益太郎

33 知らぬ間に爪伸び切るや十二月    ひろ子(山)

34 芭蕉忌に火傷の跡を残しけり     順一

35 天上に待ちくたびれて雪降らす    佳子

36 木枯にチラシの変形宇宙図に     順一

37 霜焼や雑巾掛けの修業僧       山渓(奥)

38 湯豆腐も世界遺産と胸を張る     益太郎(忠・順)

39 大きくてやけに軽くて聖樹かな    てふこ(益・佳・春)

40 冬林檎包丁ほどの狂気かな      順一

41 御祓いの御幣の音や隙間風      山渓(案)

42 海鳴りを聴ゐて長居の柚子湯かな   波子

43 天井に木目の悪魔風邪の床      一斗

44 チャイ用の硝子の器冬ぬくし     ひなこ

45 恋人もゐず妻もゐず落葉焚      海音(土・波)

46 父母の齢越ゆると姉は炭をつぐ    時人(て)

47 鳥一羽飛び翔ちあとは大枯野     ひなこ(波)

48 荒ぶ風散るな負けるな返り花     案山子

49 大理石の遺跡に冬の雨ほつほつ    ひなこ

50 泥葱のどさと届けり年用意      愛(海)

51 炬燵に顎置きて批判に耐へむとす   春休(忠・ぐ・波・順)

52 煤掃や隠れ煙草の灰の落ち      忠義(山・益)

53 持寄りの鍋パーテイへ畑野菜     つよし

54 歳晩の雷遠くやや近く        ぐり

 




【 石黒案山子 選(案) 】
◎14 着ぶくれて  生き生きとしている。眼前に在る様だ。
○08 前触も  作者はびっくりしたと思う。今まで寝ていた鳥が突然に飛び立つ。人間には解らない鳥の準備が。
○13 川中に  小春の小川の様子が生き生きと出ていて、こちらまで暖かくなるようです。ただ、一寸平凡か。
○17 学童の  戦時中は、何かと各家庭を巡って行くことがありました。それを思い起こさせるような。
○41 御祓いの  これも◎を付けたいです。隙間風との取り合わせが抜群ですね。
 50 泥葱の  この句も大変良いと思いました。「届けり」が問題。自動詞ならば「届く」。他動詞では面白くない。残念。

【 一斗 選(一) 】
○01 入院の妻のおしやべり小春かな
○04 ドーナツの砂糖こぼるる日向ぼこ
○09 彗星の砕けたる日の冬苺
○14 着ぶくれて手のひらに銭並べをり
○18 燃えゐても煉炭の穴たしかなり

【 中村時人 選(時) 】
○01 入院の  まどに小春日和の日が射して妻もおしゃべりにこの分だと退院もまじか、そんな景が見えて来る
○04 ドーナツの  日向ぼこにドーナツを食べた。何でも無い事だが、ほのぼのとした至福のひと時を感じる。
○15 湯豆腐や  今、卵も値上がりして豆腐や納豆が庶民の味方
○22 横丁を  自分も同じような句を詠んだ覚えがあります。(石段に猫の戯れ一葉忌)猫小走りにがいいですね。
○27 「自分史の  世田谷の襤褸市は行ってみたい場所のひとつです随分と賑やかだとか、自分史を書かれるのですか
 他に気になった句
 03 耳を描く  (て)で切れてるので(かな)は使わないと教わりました。
 08 前触れもなく飛立てり浮寝鳥
 11 詠み終ふ(へ?)る横臥漫録虎杖笛(虎落笛?)
 13 川中に光る鱗や小六月
 24 それぞれの  (ふつふつ?)とか

【 土曜第九 選(第) 】
(今回お休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○01 入院の  もうすぐ退院ですね。
○08 前触れも  ああ、いけない。よく眠りすぎてしまった。 
○13 川中に  生命の輝き。
○15 湯豆腐や  消費税値上げますます、、、。
○37 霜焼や  子供のころは、霜焼の手をよく見かけました。
 楽しく参加させて頂き有難うございました。来年も宜しくおねがいします。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
(今回選句お休みです。)

【 土田ひなこ 選(土) 】
選句のみですが、よろしくお願いいたします。
○03 耳を掻く犬のよろけて師走かな
○05 波郷忌やニコライ堂へ駅をいづ
○18 燃えゐても煉炭の穴たしかなり
○22 横丁を猫小走りに一葉忌
○45 恋人もゐず妻もゐず落葉焚

【 小林タロー 選(タ) 】
○01 入院の 「小春」が明るい入院生活?を想像させる。おしゃべりができる幸せ
○07 西空に 豪華な天文ショー、豪華すぎるかも 冬夕焼月と金星西の空 では如何?
○09 彗星の 砕けたる日や、と切りたい。冬苺は良いと思う。
○11 読み終ふる 虎落笛の音は何か決意とか、決断を迫るような音ですね
○19 ポインセチア 季語と中7下五の措辞がぴったり

【 森田遊介 選(遊) 】
(今回お休みです。)

【 小早川忠義 選(忠) 】
○12 しなやかに  二人の間にさわやかさは自覚していなくとも心と現に共にある。
○21 漱石忌  無邪気そうに見えてその猫は飼い主のことを観察しているかも。
○27 「自分史の  振り返ることと、目の前のお得を求める気持ち。
○38 湯豆腐も  和食の登録。私も驚きました。胸を張っていいんです。
○51 炬燵に顎  顔で笑って心で泣いて。来年も苦労は絶えないかな。

【 石川順一 選(順) 】
○04 ドーナツの  季語は「日向ぼこ」。日のきらめきに、「砂糖」は付き過ぎず、かといって、訳の分からないたとえでもない、程よい季語とのマッチングだと思いました。
○18 燃えゐても  季語は「煉炭」。「穴」に着目した。「燃え」と「穴」。「燃え」が穴を注目させ、その逆も然りである。相互に高めあい燃え盛る句魂。
○27 「自分史の  季語は「襤褸市」。本を買ったら、今度は世田谷襤褸市へ。ただそれだけの句だが、何故か含味豊かなような気がしました。
○38 湯豆腐も  季語は「湯豆腐」。遂に指定された日本の「和食」。それを誇りに我々は生きていく。
○48 荒ぶ風  季語は「返り花」。小林一茶の「やせ蛙負けるな一茶これにあり」や「やれ打つな蝿(はへ)が手をすり足をする」などを思い出しました。私も「負けるな」と思いました。

【 涼野海音 選(海) 】
○03 耳を掻く  犬の愛くるしい動作がよく描かれています。
○09 彗星の  「冬苺」という季語が良いかどうかという問題はありますが、「彗星の砕けたる日」を見逃さず詠んだところに、作者の力量を感じました。
○14 着ぶくれて  細部への着眼と表現の的確さが見事に調和した句。
○27 「自分史の  「自分史の書き方」を買って、自分史を書き始めるのではなく、「襤褸市へ」という下五の意外性が面白いですね。
○50 泥葱の  泥葱の「ど」、「どさ」の「ど」と、巧みに頭韻を使っています。

【 松本てふこ 選(て) 】
○09 彗星の  イメージのぶつかり合いが童話のよう。
○13 川中に  鱗のこまかなきらめきを小春日和が包み込む。
○14 着ぶくれて  小銭なのだろうな、と。着ぶくれという季語ってどうも豊かさから離れるイメージ。すこしシニカルな視線を感じます。
○17 学童の  漢字の多さや「学童」という響きのかたさで日常の中に紛れ込むきな臭さをあぶり出そうとする狙いがあるのだろうか。開戦日のあっせんが鮮やか。
○46 父母の齢  横顔を眺めているのだろうか。それなりに老いた(であろう)姉を見つめる弟か妹である作中主体もまたそれなりに老いている。先日放映された「NHK俳句」で若い世代にはなじみがなくなりつつあるものとして紹介された炭が、年齢を感じさせる小道具としていい風合いで機能している。

【 足立山渓 選(山) 】
○05 波郷忌や  波郷の法要のために駅を出て教会へ向かった作者の淋しげな様子が浮ぶ。
○14 着ぶくれて  朝市で見かける光景。ポケットから銭を出して、「おばさん、頼むよ」と手を出すと、値段分を貰っている朝市女。
◎17 学童の  戦争により弾薬不足から、お寺の鐘まで供出された時代。「廃品回収」の措辞と季語がぴったり。
○33 知らぬ間に  爪を切る間もないほどに忙しい12月。
○52 煤掃や  煤払いの最中に奥さんに隠れてちょっと一服。折角掃除したのに、たばこの灰を落してしまって、大慌ての様子が浮かぶ。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○09 彗星の  消えた彗星はどこに行ったのだろうか。冬苺との取り合わせが上手い。
○17 学童の  学童の廃品回収と開戦日を取り合わされると、戦後に子どもが廃品回収をしていた貧しい暮しを思い出す。平和の尊さを思う。
○21 漱石忌  漱石忌と猫、付き過ぎの感もあるが、時代の流れが見えて面白い。ぱかり、も上手い。
○39 大きくて  本当に聖樹は、大きさの割に軽い。言われて納得の句である。
○52 煤掃や  隠れ煙草が煤掃でばれた。喫煙者の肩身の狭さが見えてくる。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○09 彗星の  アイソン彗星がくだけてしまった。砕けるとどうなってしまうのだろう。同じ宇宙の星の地球で苺をつぶしながら思いを馳せて。
○14 着ぶくれて  着ぶくれていると財布から小銭を出すのも大変だ。おつりにならないように一枚一枚手のひらに並べる姿よく見かける。
○19 ポインセチア  クリスマスを過ぎるとなんだか身の置き所がなくなってしまうようなポイントセチア。だからこそ聖夜は夜通しでも。こうゆう女の人好きです。
○22 横丁を  一葉の住んでいた本郷には横丁がまだある。寒空の下猫も横丁から横丁へ。一葉も同じ風景を見ていたに違いない。
○51 炬燵に顎  何を言われているのか。耐へむとす、という大仰な言い回しにくすっとしてしまった。破調のがくがくした感じも耐へむとすに終結すると味がある気がする。

【 水口佳子 選(佳) 】
○03 耳を掻く  慌ただしく時間が過ぎていく師走。犬がよろけたくらいでは誰も立ち止まらない。よろけるという動作のおかしさとその後に感じるかすかな哀れ。
○04 ドーナツの  日向ぼこをしながらのまったりとした時間が〈砂糖こぼるる〉でより強調されている。
○20 芭蕉忌の  誰の忌日でも合いそうな気もするが、〈日向に〉と言われるとやっぱり芭蕉かなあという気がしてくる。
○27 「自分史の  自分史なんて書いたって自分以外の誰も喜ばないんです。頂いてもちょっと戸惑ってしまうもの。「自分史」が決してボロというわけではないだろうが、こんなふうに言葉が並んでいると、ちょっとおかしい。
○39 大きくて  意外と軽い聖樹。昔ほどバカ騒ぎはしなくなったものの、クリスマスに浮かれている人たちへのちょっとした皮肉とも。
 ほかに好きな句
 13 川中に  フレーズはとても素敵。季語がどうなんだろう。
 31 トナカイは  こんなクリスマスの句は見たことなかったなあと、視点に感心しました。
 47 鳥一羽  寒々とした景が見えて惹かれました。〈あとは〉がやや説明的かなあ。

【 喜多波子 選(波) 】
○14 着ぶくれて手のひらに銭並べをり   
○18 燃えゐても煉炭の穴たしかなり    
○45 恋人もゐず妻もゐず落葉焚 
○47 鳥一羽飛び翔ちあとは大枯野 
○51 炬燵に顎置きて批判に耐へむとす   
 お世話になりました。
どうぞ 良いお年を・・
来年も またよろしくお願い申し上げます

【 鋼つよし 選(鋼) 】
(今回選句お休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○03 耳を掻く  特に変わったところのない、ちょっとユーモラスな犬の様子と対比されるように、慌しい世の中でばたばたと日々を送っている自分に気づかされる。そういう自然な感慨が下五の「師走かな」から感じられます。
○11 読み終ふる  時間帯は明示されていませんが、句の雰囲気からは、一日の仕事を終えた、かなり夜も更けた頃という印象を受けました。季語は「虎杖笛(いたどりぶえ?)」となっていますが「虎落笛(もがりぶえ)」の間違いでしょうね。虎落笛の響きが、自然と子規の身の上を想像させてくれます。書名は『』で囲んだ方が良いかもです。
○21 漱石忌  漱石と猫とはツキモノのような感じもしないでもないですが、「ぱかりと開ける猫の餌」は軽妙でなかなか良いと思いました。「開ける」より「開けて」の方が、句に動きというか流れが出来て良いような気もします。
○27 「自分史の  自分史を書く、というイメージ。それなりに御年配で、それなりに振り返るべき経歴を持った人物なのでしょう(書き残すべきことがない人生と自分で思っている人は「自分史の書き方」なんて買わないでしょうから…)。この句の人物、襤褸市へ行くというところが何だか飄々とした感じで好感が持てますね。季語が生きていて、味のある句です。
○39 大きくて  下五へのつなぎ方に少し無理を感じますが、そこに却ってナンセンスな味わいが出ている。ちゃんとした木ではなく作り物の聖樹なのでしょうが、さりげなく現代の句になっているところも面白い。
 01 入院の  どんな病気でどれだけの入院期間なのかは分かりませんが、早く元気で退院してほしいという夫の心情が「小春」という季語を選ばせたのでしょう。意外性や驚きのある句ではありませんが、じんわりと心に沁みます。
 04 ドーナツの  ドーナツにまぶしてある砂糖は、料理に使う砂糖などより目が細かい気がします。その細かい砂糖の粒がこぼれる様子が、明るい日差しとともに見えてきます。
 05 波郷忌や  ニコライ堂は東京都千代田区神田駿河台にある正教会の大聖堂とのこと。波郷には〈ニコライの鐘の愉しき落葉かな〉などの句もあり、ゆかりのある場所なのでしょう。落ち着いた佇まいの句。
 08 前触も  前触れもなく飛び立ったということは寝ていない、「浮寝鳥」ではなく単なる水鳥でしょう。季語は厳密に使いたいですね。
 09 彗星の  彗星と冬苺との取り合わせに独特の感触のある句でとても惹かれましたが、「日の」というつなぎ方に少々疑問が残ります。そこはすぱっと切っても良かったのでは?
 15 湯豆腐や  気持ちはよく分かりますが、何だかしんみりしてきますね。
 16 経過良し  香りと彩りが何とも嬉しいですね。
 18 燃えゐても  煉炭の穴は中へと酸素を取り込む通気口の役目をしているのだと思いますが、燃えている時は穴の中が火の色になって、燃えていない時の単なる黒い穴よりも目立ちます。「燃えゐても……たしかなり」というのは何を言わんとしているのか意味がよく分かりませんでした。
 19 ポインセチア  「お望みならば夜どほし踊る」とは様々に想像を拡げさせてくれるフレーズですが、浮ついているようだけどどこか人任せで空虚、そんな屈折を孕んだイメージが浮かんできます。そういうイメージとポインセチアとがよく重なっています。
 23 聖樹とは  「39 大きくて」と近いモチーフのようですが、残念ながら、あちらの方が実感のある句になっているようです。
 24 それぞれの  旅館などの膳によくある、小さな青い燃料に着火して温める鍋でしょうか。これはこれで悪くありませんが、この作者、大きな鍋をわいわいつつく方がお好みのような雰囲気もどことなく感じられます。
 25 先輩の  早朝に届いた訃報、句の印象から、この先輩、まだ結構若いのではないかという気も。
 31 トナカイは  「苔もふもふと」とはどういうことでしょう。顔でもこすりつけているのか、それとも食べているのか。「もふもふと」だけでは何をしているのかよく分かりません。
 34 芭蕉忌に  雰囲気は良いと思うのですが、上五の「に」のつながり方がよく読み取れませんでした。
 38 湯豆腐も  面白いですけど、これは俳句と言うより川柳なのではありませんか。
 41 御祓いの  御幣の音以外はほとんど物音のない、静寂を感じます。そして神社などの古い建物って隙間風が多いんですよね…。臨場感のある句です。
 42 海鳴りを  見る・聞く・感じるなどの語は、わざわざ言わなくても良い場合が多いです。句の中に詠まれている物事のかなりの部分は「見た」ものですが、わざわざ「見た」と言わなくても見ていることは分かります。この句の「聴ゐて」もわざわざ言わなくても良く、「海鳴り」とだけ言えば読者には「聞こえた」ものと分かると思います(ちなみに、いわゆる旧かなにおいて、「聴ゐて」は文法的に誤り。「聴いて」が正しい)。
 44 チャイ用の  あのゆるいくびれのあるコップみたいな器、あれはチャイ専用なのでしょうか。言われてみると心のなごむ、あたたかみのあるフォルムです(そういえば祖父があんなので熱燗飲んでた気もする…)。
 46 父母の齢  助詞があまり多いと句がくだくだしくなります、この句の場合は特に「は」が気になりました(私の個人的な好みの部分もあり、誰にでも通用する話ではないと思いますが…)。中七下五、細部をいろいろと手直しして「越えたりと姉炭ついで」としたいところです。
 47 鳥一羽  意味や意図はよく分かります。しかし「あとは」という表現はいかにも説明的でもたもたした印象です。こういう部分を歯切れ良く詠み、印象を鮮明にするために、切れや切れ字というものがあるのだと思います。
 48 荒ぶ風  一茶を思い出させる口調ですね。
 49 大理石の  上五と下五を字余りにされていますが、字余りであることによるメリットも感じられず、ただ単に収まり切らなかったという印象です。「冬の雨ほつほつ大理石遺跡」とすれば五七五に収まります。
 50 泥葱の  泥が付いたままの野菜、というモチーフはとてもよく見るものです。これをどう肉付けするかが問題ですが、この句は季語も場面がよく想像されるもので、「どさと届けり」から葱の大量さや泥の重みなども想像されて、比較的成功しているのではないかと思いました。
 53 持寄りの  カタカナの言葉を詠み込むこと自体は悪いことでも珍しいことでもありませんが、「鍋パーテイ」はちょっと疑問を感じますし、必要以上に軽薄な印象です。「パーティ」と言わずとも、「持寄りの鍋」と言うだけで、そういう集まりであることは分かります。もっと詠むべきポイントが他にあるのではないでしょうか。
 54 歳晩の  歳晩の雷とは珍しいですね。面白くなりそうな句材ですが、「遠くやや近く」では表面的な説明に過ぎないように感じました。もう少し踏み込んでほしいところ。

 


来月の投句は、1月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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