ハルヤスミ句会 第百六十回

2014年2月

《 句会報 》

01 大寒といふ一日を生き抜けり     第九(案・愛・海・鋼)

02 新雪をぷこりぷこりと踏みゆけり   てふこ(ぐ・春)

03 逆光に細目のそろふ初写真      一斗(遊・波)

04 ぐし縫いも覚えぬままに針祭     遊介

05 積雪にベランダの屋根崩落し     ひろ子

06 なんだらふ雪夜の速報テロップ    波子

07 どんがらと二階でこけて春隣     タロー(海)

08 雪を掻く人々順に腰伸ばし      第九(一・時・遊・忠・順・山・鋼・春)

09 無垢という欲望残る枯木立      益太郎(波)

10 大雪やシャベルかりたる異邦人    時人(案・遊・忠・山)

11 春泥に嘴入れ鴨やうれしさう     ぐり

12 雪掻きの眼鏡外せば小五生      ひろ子

13 アルバムの色あせてくる寒鴉     益太郎(第・佳)

14 火の色の時折白し梅の花       春休(時・タ・て・益)

15 携帯の鳴るを探せる霜夜かな     愛(忠)

16 厨房の小窓より入る風花よ      てふこ(奥)

17 急ぐ用あるらしく猫春隣       案山子(一・益・佳)

18 年代の電卓叩く納税期        つよし

19 雪凍り転んで打ちし膝頭       ひろ子

20 孵化は無理羽化はなお無理寒卵    益太郎(忠・順・波)

21 別館へ渡る廊下も納税期       タロー(て・佳)

22 山独活に話しかけたる林かな     時人(タ)

23 かく小さき眼鏡の螺子や寒戻り    春休(案・一・て・ぐ)

24 淡雪に昔を返せと言うてみる     愛(益)

25 血の味のしたる唾飲みまたも咳く   一斗

26 露天湯や富士の裾野の春の雪     山渓(愛)

27 うすごほり白紙は白き箱となる    佳子

28 淡雪の犬のまつ毛に留まりぬ     ぐり(海)

29 朧夜のランニングマシンと椅子と   佳子(海・て)

30 春寒や木の幹深く切れ込んで     遊介(第)

31 われ先に席をとる子や冴返る     つよし(忠・春)

32 雪だるま仕上げは首をきはやかに   てふこ(一・山)

33 蛇穴を出でて仇討五人斬り      佳子

34 春雪やお菓子はしっかり食べておく  順一

35 唇のあつさり割れて春吹雪      ぐり(タ・遊・益・波・春)

36 上座なる陰膳ふたつ海苔炙る     忠義(順・ぐ)

37 雪解や人出払ひて新聞屋       春休(て・佳)

38 悴まぬ両手に驚異の神秘見る     順一

39 堀端の店の庭さき梅三分       山渓(第・遊)

40 朝寝して明石海峡遥かなる      海音(タ・順)

41 雪が降る雪捨場なき吾が街に     タロー(奥・鋼)

42 冴返りチーズケーキを食べて居る   順一

43 同じ道歩いてをれば水温む      海音(第・奥)

44 家継ぎのすくつと立てり鰊舟     波子(時)

45 右手上げ立ち去る二月礼者かな    忠義(時・タ・波)

46 蝋梅の花登りけりあさなさな     案山子

47 軒先の雫ぽたりと猫柳        愛

48 前を行く小さき母や日脚伸ぶ     第九(愛・海)

49 うぐひす餅青き黄粉のしつくりと   時人

50 梅二輪かくも厳しき風の日に     案山子(奥・愛・山・鋼)

51 あらはなる煉瓦の継ぎ目春吹雪    忠義(ぐ)

52 咳き込まぬやうに小さき息をして   一斗(案・時・順・ぐ・春)

53 良く笑ふ隣の婆様春の灸       波子(案・一・第・愛・益・佳・鋼)

54 村の辻の防火用水薄氷        山渓

55 ジェット機の翼光れり建国日     海音(奥・山)

56 脳トレや入試問題新聞紙       つよし

 




【 石黒案山子 選(案) 】
○01 大寒といふ一日を生き抜けり
○10 大雪やシヤベルかりたる異邦人
○23 かく小さき眼鏡の螺子や寒戻り
○52 咳き込まぬやうに小さき息をして
○53 良く笑ふ隣の婆様春の灸

【 一斗 選(一) 】
○08 雪を掻く人々順に腰伸ばし
○17 急ぐ用あるらしく猫春隣
○23 かく小さき眼鏡の螺子や寒戻り
○32 雪だるま仕上げは首をきはやかに
○53 良く笑ふ隣の婆様春の灸

【 遠藤ちこ 選(ち) 】
(今回はお休みです。)

【 中村時人 選(時) 】
○08 雪を掻く人々順に腰伸ばし
○14 火の色の時折白し梅の花
○44 家継のすくつと立てり鰊舟
○45 右手上げ立ち去る二月礼者かな
○52 咳きこまぬやうに小さき息をして
 他に
 04 ぐし縫いも覚えぬままに針祭
 13 アルバムの色あせてくる寒鴉
 18 年代の電卓叩く納税期
 28 淡雪の犬のまつ毛に留まりぬ
 35 唇のあつさり割れて春吹雪
 47 軒先の雫ぽたりと猫柳

【 土曜第九 選(第) 】
○13 アルバムの  家族、友人など沢山の思い出が詰まったアルバムも段々と古さが目立ってきて、生きてきた年月の長さを感じてしまいます。
○30 春寒や  立春を過ぎたとはいえ木々もまだじっと寒さに耐えているのでしょう。
○39 堀端の  日本の古都の春の風景が目に浮かびます。
○43 同じ道  単調な日々の繰り返しの中にも少しずつ春が近づいて来るのを感じます。
○53 良く笑ふ  今年も元気に春の灸ができる喜びに満ち溢れています。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○16 厨房の  細く開けた窓の隙間から温かい厨房に。 
○41 雪が降る  道路の隅に高く積み上げられた雪はなかなか溶けません。
○43 同じ道  雪道も踏まれれば踏まれるほどですね。
○50 梅二輪  我が家の裏庭の梅も二輪咲きました。
○55 ジェット機の  朝から自衛隊の飛行機が何台も何台も飛んでいました。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇01 大寒と  本当にそうですね。多分作者はお若くない方でしょう。今日一日を生き抜く。生きるという事への並々ならぬ決意が感じられます。若い人は”何とまあ大袈裟な”と思われるかも知れませんが。
〇26 露天湯や  実は同じ経験があるのです。その日も富士の裾野に雪が積もっていました。大浴場から走って露天湯に飛び込みました。近親感で取らせて頂きました。
〇48 前を行く  母上が小さいと言われているのでお若くないのでしょう。「前を行く」の上五が母上の元気な様子、そして「日脚伸ぶ」の季語がまだまだ大丈夫という、年をとられた母上に対する愛情が感じられます。歳をとると身長が縮むのを実感しています。  
〇50 梅二輪  梅はちゃんと春が来るのが分かっているのですね。でもよりによってこんな”厳しい風の日に”咲かなくてもいいのにという作者のやさしいつぶやきが聞こえてきます。
〇53 良く笑ふ  「良く笑う」のは女学生と相場は決まっているのにそれがお婆さんだという意外性。こういうお婆ちゃま好きだなあ。「春の灸」がのどやかで、良くあっています。

【 土田ひなこ 選(土) 】
(今月お休みです。)

【 小林タロー 選(タ) 】
○14 火の色の  炎が一定ではない状況がわかる、それもかなり強い火だ。春浅い茶室の景と読みたい。
○22 山独活に  田一枚植ゑて と同じ構造。話しかけたのは私と読んで頂きました。
○35 唇の  春の吹雪だ、異常気象だ、唇も割れようというもの。季語が合わないとも感じたが読み返すうちにあっていると----。
○40 朝寝して  明石海峡がぴったり、遥かという措辞もいい。
○45 右手上げ  手をあげて此の世の友は---の句を思い出させるが、二月礼者ならこの程度のくだけようもあるというものだろう。

【 森田遊介 選(遊) 】
○03 逆光に  今年初めて撮った家族写真を見てなんやかやと感想を言っている。逆行は言い訳として一同細目の家族なのでしょう。ほのぼのとした団欒の景を思いました。
○08 雪を掻く  自分の家先だけ雪かきをするのは御法度。隣同士が出そろい一斉にするのが雪かきです。その風景から順番に腰を伸ばしている光景も見えてきます。
○10 大雪や  大雪にきっとびっくりされたでしょう。この異邦人は印度の方?「印度人もビックリ」と言うフレーズを思い出しました。
○35 唇の  「唇があっさり割れる」とは言わないけれど、よく判ります。季語が吹雪なら悲壮感さえ感じられますが、春でよかった。
○39 堀端の  三分咲きの梅の慎ましい事。この店の風情を感じました。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○08 雪を掻く  「順に」というのが良く見ている。何の順だったかまだ詠える余地がありそう。
○10 大雪や  あちらこちらいじりたくなるが、この句に「異邦人」は動かない。
○15 携帯の  着信より、どこになくしたか解らずに自ら電話して鳴っているのを探してい
るような様子。
○20 孵化は無理  食われるための使命だってあるから、そこまでネガティブに捉えないで。
○31 われ先に  寒い会場に誰もいない景も浮かんでくる。
 03 逆光に  逆光なら、顔が暗くなるんですよね?
 53 良く笑ふ  シチュエーションは好きなんだが、「婆様」って言葉を使いたくない。

【 石川順一 選(順) 】
○08 雪を掻く  季語は「雪掻き」。面白い風景だと思いました。何か妙な連帯感があるなと。季語の「雪掻き」が活きて居るかと。
○20 孵化は無理  季語は「寒卵」。ユーモラスな発想かと。「無理無理」と言う繰り返しに俳味があるかと。季語の「寒卵」の疎外ぶりが逆に文芸的かと。
○36 上座なる  季語は「海苔」。まさか戦地に臨んでいる人のための「陰膳」でも無いでしょうが、「上座」と言う言葉に身が引き締まる思いです。その為に「海苔炙る」と言う措辞が思う存分活かされたと思いました。
○40 朝寝して  季語は「朝寝」。これは多分に感覚的なものか、心理的なものと事実的なものが混ざり合っているのか。何れにしろ「明石海峡」と季語の「朝寝」が活きた結合をしていると思いました。
○52 咳き込まぬ  季語は「咳」。「小さき息をして」にむしろ因果に縛られない意志の発露があるかと。私なら「咳き込まぬように」ひたすら徒手空拳だと思うからです。むしろ咳に負けぬ強い意志が季語を活かしたかと。
他に注目した句に03 逆光に,12 雪掻きの,27 うすごほりがありました。

【 涼野海音 選(海) 】
○01 大寒と  「生き抜けり」に作者の実感と「これからも生きてゆくぞ」という決意が込められているように感じました。
○07 どんがらと  転倒の様子がユーモラスに描かれている一句。上五の「どんがら」と音から入っている所が良いですね。
○28 淡雪の  淡雪が「留まりぬ」といったところが何よりも手柄。
○29 朧夜の  即物的な一句。破調の効果はいかに。
○48 前を行く  「前を行く」母はまぼろしかも・・・。「日脚伸ぶ」はそんなことを考えさせられる季語。

【 松本てふこ 選(て) 】
○14 火の色の時折白し梅の花
○21 別館へ渡る廊下も納税期
○23 かく小さき眼鏡の螺子や寒戻り
○29 朧夜のランニングマシンと椅子と
○37 雪解や人出払ひて新聞屋

【 足立山渓 選(山) 】
○08 雪を掻く  「腰伸ばし」の措辞が雪掻きの重労働の様子が十分に伝えている。
○10 大雪や  今年の思わぬ大雪は、異邦人の手も借りて一日も早い雪掻を。身につまされる。
○32 雪だるま  詠まれたように雪だるまは目鼻も大事だが、やはり首がきちんと座って無いと・・・・。
○50 梅二輪  「かくも厳しき」この措辞に感服。
○55 ジェット機の  古の古事記による神武天皇の建国と現代のジェット機の組み合わせの妙。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○14 火の色の  火の色の中に白色を見た。虚子のぼうたんの句を連想。
○17 急ぐ用  猫も春になると季語になる。その準備に忙しい春隣。
○24 淡雪に  淡雪に責任はないが、淡雪を見ると青春の蹉跌を思う。
○35 唇の  唇が何を表すか? 空の唇が割れて大雪になったと読んで面白い。
○53 良く笑ふ  春の灸という珍しい季語と婆様というやさしい言葉の取り合わせ。良く笑うが効いている。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
今月は選句のみでお願い致します。
○02 新雪をぷこりぷこりと踏みゆけり
○23 かく小さき眼鏡の螺子や寒戻り
○36 上座なる陰膳ふたつ海苔炙る
○51 あらはなる煉瓦の継目春吹雪
○52 咳き込まぬように小さき息をして

【 水口佳子 選(佳) 】
○13 アルバムの  〈色あせてくる〉と〈寒鴉〉との取り合わせの妙。実際には色あせるまでには時間の経過があると思われるが、寒鴉が声を発した瞬間に、さーっと褪せて行ったような感覚にさせられる。
○17 急ぐ用  〈春隣〉がややつきすぎかとも思ったが、猫のそわそわした急ぎ足が、いかにも恋する季節へと向かっているようで。
○21 別館へ  〈別館〉〈廊下〉〈納税期〉の言葉のつなげ方が良かった。その時期の慌ただしさが伝わってくる。別館への廊下をきっと何度も行き来しているのではなかろうか。
○37 雪解や  〈雪解〉になるとすべてのものが活動的に。ニュースを届ける新聞屋さんが出払っているということは、人を取り巻くすべてのことが動き出したことを印象付ける。
○53 良く笑ふ  笑いは健康の源。春の灸をすえていっそう元気になった婆様の姿が見えそう。作者の暖かなまなざしを感じる。 
 ほかに好きな句
 14 火の色の  フレーズは良いなあと思いましたが、季語が合わないような。
 43 同じ道  〈道〉という言葉がいろいろな道を示唆しているようで、うなづける。
 55 ジェット機の  案外この季語にあっているような。

【 喜多波子 選(波) 】
○03 逆光に細目のそろふ初写真 
○09 無垢という欲望残る枯木立 
○20 孵化は無理羽化はなお無理寒卵 
○35 唇のあつさり割れて春吹雪  
○45 右手上げ立ち去る二月礼者かな  

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○01 大寒といふ  寒さが厳しい一日長く感じられたのでしょうか、そんな気分を感じました。
○08 雪を掻く  除雪をみなさん手分けしての作業が良くわかる。
○41 雪が降る  日頃降らない地方はなんの備えもないそんな感慨があふれたのでしょう。
○50 梅二輪  自然に対する驚きと、生命力を感じます。
○53 良く笑ふ  御老人が集まって灸を受けているようですね。

【 小川春休 選(春) 】
○02 新雪を  「ぷこりぷこり」というオノマトペが肝ですね。まだ誰の足跡も付いていない、きれいな新雪を目にして、めらめらと「雪踏みたい欲」が湧いてくる。「ぷこりぷこり」という響きが新雪独特の軽い感触を思わせ、同時に気持ちの弾みもよく伝わってきます。
○08 雪を掻く  しんどいなぁ、腰が痛いなぁなどと心中で思いながら、それぞれの人が、それぞれに雪掻きをしている。その中の誰か一人が腰を伸ばす動作をしたところ、それを目にした人が思い出したように我も我もと腰を伸ばしたのでしょう。それが順々に腰を伸ばしたように見えた、と。穏やかながら、活き活きとよく景の見えてくる句です。
○31 われ先に  見晴らしの良い窓側の席などを目掛けて、我先にと席を取る子供たち。当然、けたたましい声も挙げていたでしょう。冴返る中、子供たちの賑やかな甲高い声が響きます。
○35 唇の  乾燥していると、ぱっと唇が割れてしまうことがありますが、「あつさり割れて」とは上手い表現だなと思います。唇の痛みと春の吹雪の寒さとが、皮膚感覚として感じられる句です。
○52 咳き込まぬ  咳が出る前に、自分でも咳が出そうだな、と分かる時があります。そうした時は息を整えて咳をおさえようとしたりしますね。そういう時の動作や気分がよく出ている句です。
 01 大寒と  実感としてはよく分かります。
 03 逆光に  これは、誰にとって逆光かという点が曖昧。カメラに対して逆光だと、人物たちにとっては背後からの日差しで顔が暗くなる(そしてこれでは顔がよく見えない)。人物の真正面からの日差しでカメラにとっての逆光とも読める。
 06 なんだらふ  雪の夜というと、人通りも少なくなり、いつも以上に静かです。そんな中、速報の警告音がテレビから聞こえると、少し不安な感じがしますね。
 07 どんがらと  〈狩の宿階下激しき口喧嘩〉(辻桃子)という句が思い浮かびましたが、この句もなかなか味がある。ずっこけてますが活動的になってくる時期の気分ですね。
 12 雪掻きの  いわゆる普通の視力矯正用の眼鏡か、それとも雪焼け防止のゴーグルか。いずれにせよ、眼鏡を外さないと小学五年生と分からない、という状況がよく分かりません。眼鏡をかけていても体格などを見れば小学生は小学生に見えると思いますが…。
 16 厨房の  風花はそれなりに寒い時のものですが、換気のためか厨房の小窓が開けてある。そんな小窓から入ってきた風花とは何とも珍しい。厨房に入った途端、すぐに溶けてしまったのでしょうね。
 17 急ぐ用  猫にとっては恋のシーズンも間近。どこか行くあてがあるのかもしれませんね。
 18 年代の  昨今のスマートフォンなどの精密機器と違って、電卓などは作りも比較的単純なのか、古い物も壊れずに現役として活躍してますね。どっかりと何とも頼もしい電卓。
 19 雪凍り  意味はよく分かるのですが、凍ったから転んだ、という説明のようにも感じます。上五の言い回しのせいもあって、特にそういう印象が強いです。
 22 山独活に  確かに、山独活の日々伸びてくる様子は、話しかけたくなる気持ちになるのも分かる気がします。ただ、下五の「林かな」というまとめ方はちょっと大雑把に過ぎるのではないでしょうか。
 25 血の味の  大丈夫でしょうか。一読、子規を思いましたが、病状としてはかなり良くないのではないでしょうか。お大事に。
 26 露天湯や  何とも気分の良い、贅沢な景です。私もこんな露天湯に入ってみたい。
 27 うすごほり  よくチラシなどを折り畳んで、箱を作っているのを目にしますが、この句の箱もそのようなものでしょうか。まだ寒さの残る朝、外からの日の入る食卓の上の白い箱が見えてきます。
 28 淡雪の  淡雪はひとひらがふんわりと大きいのでしたっけ。犬の睫毛に留まった淡雪のひとひらも、溶けるまでにたっぷり時間がかかるのですね。
 29 朧夜の  文字通りに読むと、現実にはありふれているのにどこか不思議な感じのする取り合わせとも読めますが、朧夜という季語の艶な感じもあってか、「そこにいるべき人、もしくはいてほしい人がいない景」という読みも浮かんできます。
 33 蛇穴を  仇討ちというものは、仇を討つ場面ばかりがクローズアップされて派手なもののようにも見えますが、その実、仇がどこに潜んでいるのか地道に捜索を続ける、まさしく虎視眈々という言葉がぴったりの根気を要する事業だったようです。蛇と仇討ちということで、そんな仇討ちの裏事情のようなものを思い出したりしました。
 36 上座なる  陰膳という習慣も、私自身はあまり縁がないのですが、この句では二つ、二人分用意されています。下五の「海苔炙る」から生活感も伝わり、私のような者にも陰膳のある景が実感をもって見えてきました。
 40 朝寝して  明石海峡からの波音が日によって聞こえたり聞こえなかったりするような場所でしょう。朝寝の眠りを覚ますかのように、いつもよりも高い波音が明石海峡から届く。ゆったりとして大きな句ですね。
 42 冴返り  温かい時期にはそれほど感じませんが、寒い時期に食べるとチーズケーキは思った以上に冷たい時がありますね。そんなことを思い出させてくれる句です。
 46 蝋梅の  「あさなさな」とは「毎朝。朝ごとに」という意味。「登りけり」がすんなりと読めなかったのですが、蝋梅が日に日に花を高く掲げているというような意味でしょうか。
 47 軒先の  雨の雫とも雪解けの雫とも書かれていませんが、「雫ぽたりと」には寒の間にはない、春らしい気分が窺われます。
 48 前を行く  前から小さかったのか、それとも以前より小さくなったように感じているのか。それでも「小さき母」が健在で、しゃんとして前を行ってくれるのは嬉しいことですね。
 50 梅二輪  まだ梅の咲き揃わない時期、厳しく冷たい風の中、枝先にぽつりぽつりと咲き始めた梅が見えてきます。
 55 ジェット機の  良い句のようにも思うのですが、どうも季語が合っているような合っていないような、少し判断の難しい句でした。何か建国記念日の式典ということであればすんなり読めるのですが(でもそれだと却って面白くない気もする…)。

 


来月の投句は、3月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

back
back.
top
top.