ハルヤスミ句会 第百六十四回

2014年6月

《 句会報 》

01 子燕の飛翔見あぐや雨の粒      時人(ぐ)

02 決められし定めを生きて毛虫這ふ   案山子(益)

03 弁慶の墓守られし松の芯       ひろ子(愛・て)

04 ネクタイを外す勇気や更衣      第九(案)

05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな     遊介(時・順・海・て・益・鋼・春・ぐ)

06 世すなはち弱肉強食夏の陣      案山子

07 犬柄のハンカチ配り転校す      ぐり(第・愛・遊・波)

08 入梅に光放つや白い花        ひろ子(第)

09 夏霧の深みに丙種合格の父      佳子(て・波)

10 ペディキュアの揺れる湯船や若葉風  一斗(時)

11 吊り橋に重量制限夏の蝶       益太郎(遊)

12 根無し後に開花の花あやめのますぐ  順一

13 雨降れば獣の匂ひ芒種かな      第九(一・波)

14 青嵐サンドイッチは屑こまかし    春休

15 灯の下に回すピザ生地梅雨寒し    海音

16 朝凪や居間からっぽの虚脱感     波子(順)

17 夏服の友と昼餉や白ワイン      時人(ぐ)

18 梅雨晴間大阪弁の母子くる      つよし(タ)

19 そちこちを虫に食はれて夏来る    愛(遊・佳)

20 開襟や父に似てきし己が顔      案山子

21 夏空や余白あまたの血圧帳      愛(一・タ)

22 部屋干しのタオルにぴしとてんとむし ぐり

23 早苗田や北アルプスはとの曇り    タロー

24 夏服や年齢不詳と言われけり     遊介(タ・益・波)

25 白き湯に首を浮かべて聖五月     一斗(第・佳)

26 散り積もる花アカシアや走り梅雨   タロー(遊)

27 悪阻はもからりと晴れて南瓜蒔く   波子(案)

28 著莪の花何かが欠けているような   益太郎(タ)

29 胡麻塩を煎りたる朝や梅雨の雷    時人(一・海)

30 髭の濃き坊城先生青嵐        海音(愛・順・春)

31 急降下蛾には厠の窓が有る      順一

32 漕ぎ出でて風のいよいよ梅雨寒に   春休

33 通勤はウォーキングにて天道虫    第九(海・鋼)

34 罫線の遊ぶ植田となりにけり     益太郎(案・奥)

35 オカリナは貝の形や明易し      海音(一・第・佳)

36 釜揚げに店主も客も玉の汗      遊介(奥・愛・鋼)

37 これしきの釘に梃子摺るサングラス  佳子(案・て・春)

38 夏大根日毎太るぞ抜きたまへ     つよし

39 甘藍の剥がされたくて丸くなり    一斗

40 ウエストのあたりの匂ふ竹夫人    てふこ(時・順・益・春)

41 万緑や携帯電話だけ持ちて      タロー(海・佳)

42 通学路蚯蚓のびたりちぢんだり    愛(タ)

43 悪漢に見えぬ手配書蚊遣り焚く    波子(奥・鋼・春)

44 吹かれきて踏まれてしまふ毛虫なり  つよし

45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー   てふこ(奥・愛・遊・海・佳・鋼・ぐ)

46 ともだちが増えて金魚の眠れざる   佳子(時・第・奥・波)

47 夕空と蛍袋と同じ色         てふこ

48 丸まれば背骨あらはや緑の夜     春休(一・ぐ)

49 玻璃越しの守宮やわらかさうな腹   ぐり(案・時・て)

50 松の芯手足伸び行く露天風呂     ひろ子(順)

51 炭酸水海の黒さを飲んで居る     順一(益)




【 荒岩のりひろ 選(荒) 】
(今回はお休みです。)

【 石黒案山子 選(案) 】
○04 ネクタイを外す勇気や更衣
○27 悪阻はもからりと晴れて南瓜蒔く
○34 罫線の遊ぶ植田となりにけり
○37 これしきの釘に梃子摺るサングラス
○49 玻璃越しの守宮やわらかさうな腹

【 一斗 選(一) 】
○13 雨降れば獣の匂ひ芒種かな
○21 夏空や余白あまたの血圧帳
○29 胡麻塩を煎りたる朝や梅雨の雷
○35 オカリナは貝の形や明易し
○48 丸まれば背骨あらはや緑の夜

【 中村時人 選(時) 】
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな
○10 ペティキュアの揺れる湯船や若葉風
○40 ウエストのあたりの匂ふ竹夫人
○46 ともだちがふえて金魚の眠れざる
○49 玻璃越しの守宮のやわらかさうな腹
 他に気になった句は
 11 吊り橋に重量制限夏の蝶
 13 雨降れば獣の匂ひ芒種かな
 21 夏空や余白あまたの血圧帳
 37 これしきの釘に梃子摺るサングラス

【 土曜第九 選(第) 】
○07 犬柄のハンカチ配り転校す  転校する女の子の淋しさが伝わってきます。
○08 入梅に光放つや白い花  鬱陶しさを吹き飛ばす鮮やか白なのでしょう。
○25 白き湯に首を浮かべて聖五月  岩手秋田県境の須川温泉のにごり湯が思い浮かびました。
○35 オカリナは貝の形や明易し  避暑地の爽やかな朝を想像しました。
○46 ともだちが増えて金魚の眠れざる  人間社会と重なり可笑しく感じます。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○34 罫線の遊ぶ植田となりにけり  飛行機の上から見るとまさにそうですね。
○36 釜揚げに店主も客も玉の汗  汗をかきかきつくるのも食べるのもたいへんですね。
○43 悪漢に見えぬ手配書蚊遣り焚く  蚊遣り焚くがいいですね。
○45 働かず遊ぶでもなくアッパーパー  何をしているのでしょう?
○46 ともだちが増えて金魚の眠れざる  やはり静かに眠りたいですね。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○03 弁慶の墓守られし松の芯  弁慶の墓は奥州、平泉の中尊寺の入口にあるという。主君義経を逃がすべく、自らは敵の矢を満身に受け死んでも尚倒れずの”弁慶の立ち往生”はあまりにも有名であるが、一途で清々しく力強い弁慶に「松の芯」の季語が良く合っています。
○07 犬柄のハンカチ配り転校す  その転校してゆく生徒は犬を飼っていたのでしょう。その生徒は勿論のこと他の生徒たちもその犬を可愛がっていたのでしょう。生徒は自分だけでなく飼い犬のことも憶えていてね、有難うと犬柄のハンカチを配って転校していった。作者は見送る側でしょうか。”犬柄の”がいいですね。ホロリとさせられます。
○30 髭の濃き坊城先生青嵐  私は直接お会いした事はないのですが、坊城俊樹先生なかなかの男前。現在57歳とあらば、まだまだ髭の剃り跡も青々と「青嵐」の季語が合っているのでは。
○36 釜揚げに店主も客も玉の汗  説明も何もいらない、分かりやすい句です。でも「玉の汗」の季語がその場の情景をよく表しています。暑いけれど美味しそう。店主も一生懸命。暑い時は熱いものがいいですね。
○45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー  何だか私の事を言われているようですが、好きな句です。「アッパーパー」は見た目の通りあまり上品ではないのですが、どこも締め付けず、風通しの良い事この上なし。老後はこれでゆきましょうか。

【 土田ひなこ 選(土) 】
(今回はお休みです。)

【 小林タロー 選(タ) 】
○18 梅雨晴間大阪弁の母子くる  せっかくの晴れ間なのに鬱陶しいのが来る、と思うのは江戸っ子だからでしょうかね。
○21 夏空や余白あまたの血圧帳  スカッとした夏空を見上げれば、朝晩血圧なぞ測っていられない。
○24 夏服や年齢不詳と言われけり  夏服はどうしても派手目、若目になりがちで、こういうこともおこります。「や」「けり」だって別に〜 という感じ。
○28 著莪の花何かが欠けているような  たしかにね、花弁も葉も一、二枚足りない感じです。
○42 通学路蚯蚓のびたりちぢんだり  学童の列も伸びたり縮んだり〜

【 森田遊介 選(遊) 】
○07 犬柄のハンカチ配り転校す  可愛らしい情景です。自分の好きな絵柄の物をクラスの皆に配って転校する子供。転校する子供の不安な気持ちと別れが悲しい心情が感じられます。
○11 吊り橋に重量制限夏の蝶  シニア世代の女子会が旅行に行ったのでしょうか?吊り橋を前にして何やら賑やかな話し声です。それにしても女子会一団の脇を軽やかに飛ぶあの蝶。「私たちも何十年前はあのように軽やかだったのに〜!」私もこの女子会の一人となったように鑑賞しました。
○19 そちこちを虫に食はれて夏来る  虫に刺された手足を見ながら、あぁ夏が来たんだと思った次第でしょう。現在の私の状態そのものズバリです。
○26 散り積もる花アカシアや走り梅雨  花アカシアは生花のまま地に落ちてしまいます。まだ枝で咲いていてもいいものをと残念に思います。地面に落ちたその白色と梅雨空の曇色とのコントラストが美しいです。
○45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー  アッパッパーを着る季節ですもの当然身体を動かしたくありません。季語が効いています。この季語でないと単なる○○な人でしょう。

【 小早川忠義 選(忠) 】
(今回はお休みです。)

【 石川順一 選(順) 】
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな  季語は「胡瓜」。将棋の世界はシヴィア、「待った」は嫌われる。胡瓜の青さが初々しさが目に入る。
○16 朝凪や居間からっぽの虚脱感  季語は「朝凪」。誰も居ない、何も無い。しかし「私」は居る。猛烈な虚脱感が句から感じられる。
○30 髭の濃き坊城先生青嵐  季語は「青嵐」。坊城俊樹先生の事でしょうか。季語の「青嵐」がユーモラスに感じられました。
○40 ウエストのあたりの匂ふ竹夫人  季語は「竹夫人」。「匂ふ」が趣深い。嗅覚は犬だけの特権では無い。「ウエストのあたりの」が妖艶。
○50 松の芯手足伸び行く露天風呂  季語は「松の芯」。これは「伸び行く」と季語の「松の芯」の類縁性が却って面白く感じられました。「露天風呂」で知ったリラックスの極意、これが素直に句に。
 以上5句選でした。予選句で採った句には
 09 夏霧の深みに丙種合格の父      季語は「夏嵐」
 14 青嵐サンドイッチは屑こまかし    季語は「青嵐」
 24 夏服や年齢不詳と言われけり     季語は「夏服」
 32 漕ぎ出でて風のいよいよ梅雨寒に   季語は「梅雨寒」
 44 吹かれきて踏まれてしまふ毛虫なり  季語は「毛虫」  がありました

【 涼野海音 選(海) 】
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな  路地かどこかで将棋をしているのでしょうか。「将棋」と「胡瓜」との関係を意図的に読み取りにくくしているのでしょうか。
○29 胡麻塩を煎りたる朝や梅雨の雷  何気ない日常が、「梅雨の雷」で何か急展開しそうな予感。
○33 通勤はウォーキングにて天道虫  歩いて通勤するのはもちろん人間でしょうが、「ウォーキングにて」で天道虫も歩いてるような印象を受けますね。
○41 万緑や携帯電話だけ持ちて  「万緑」と「携帯電話」だけしか描かれていないシンプルな句。どこに行こうとしているのか、何をしようとしているのか、すべて読者の想像に任されている句といってよいでしょう。
○45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー  楽観主義者なのでしょうか、「アッパッパー」という季語が面白い。

【 松本てふこ 選(て) 】
○03 弁慶の墓守られし松の芯  ここでの「る」の使い方は尊敬の意、と取っていいのだろうか?? 切れが無くやや平板な構成ではあるが、「松の芯」が歴史上の人物の存在感を初々しく立ち上がらせていたところが良い。
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな  胡瓜の爽やかな存在感が良い。軽い内容の割に字面がちょっと堅苦しい印象なので、「まことに」とひらがなにしたい。
○09 夏霧の深みに丙種合格の父  破調の句を読むと定型を破った爽快感を感じることが多いが、この破調には爽快感は全く無く、重苦しさというか不思議な迫力がある。この父は既に死者だが、生前に言葉に出来なかった深い悔恨によって夏霧の中に魂のみが漂っているのかもしれない。
○37 これしきの釘に梃子摺るサングラス  一見柄が悪くて怖そうだけど本当はそうでもないんじゃ…という気持ちにさせる。サングラスの句として王道の視点。てこずる、とひらがな表記にしてはダメなのだろうか。
○49 玻璃越しの守宮やわらかさうな腹  やわらか→やはらか。硬いガラス越しに腹を見てやわらかそう、と思う対比が可笑しい。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○02 決められし定めを生きて毛虫這ふ  毛虫には毛虫の生き方(宿命)。人の生き方(人生)も同じである。言われて納得の句である。
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな  「へぼ将棋、王より飛車をかわいがり」が、ぴったりの句。
○24 夏服や年齢不詳と言われけり  クールビズとかで普段と違う服装になる夏。年齢不詳が面白い。
○40 ウエストのあたりの匂ふ竹夫人  官能的な句。竹夫人のウエストが匂う、が艶っぽい。
○51 炭酸水海の黒さを飲んで居る  炭酸水と海の黒さの取り合わせ、ソーダ水としないで炭酸水としたところが上手い。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○01 子燕の飛翔見あぐや雨の粒  巣立った子燕の飛び方はまだ少しぎこちないのだろう。気になって見上げていると雨粒は顔に落ちて来た。飛翔見あぐ が固い気もするがストレートに映像が浮んだ。
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな  縁台将棋でしょうか。胡瓜に味噌をつけてぽりっと食べながら次の一手を考え中、かな。
○17 夏服の友と昼餉や白ワイン  昼のワインは利きそうですね。友の夏服はきっと涼しげなサマードレス。
○45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー  なーんの役にもたっていなくてすみません、といいつつアッパッパーを着てごろごろしている感じ。いいです。
○48 丸まれば背骨あらはや緑の夜  この背骨をあらはにしている人は誰だろう、緑の夜で丸まる人への切ないような愛しさを感じる。

【 水口佳子 選(佳) 】
○19 そちこちを虫に食はれて夏来る  この季語にしては珍しい内容。なぜなら期待感とあわせて詠まれることの多い〈夏来る〉だから。そちこちを虫に食われる(例えば人間も、植物も、衣服等も)という情けない状態で迎える夏。一方でたくましく生きる虫の姿も見えてくる。
○25 白き湯に首を浮かべて聖五月  薬湯だろうか。透けていないので首だけが浮かんでいるように見える。体の外側も内側も綺麗になって行くような〈聖五月〉。
○35 オカリナは貝の形や明易し  オカリナは「小さなガチョウ」という意味らしい。今まで貝の形と感じたことはなかったが、その質感や音色すべてを思い浮かべると〈貝の形〉というのも頷ける。〈明易し〉によってオカリナの形が浮かび上がってくる。
○41 万緑や携帯電話だけ持ちて  万緑という広くて深いものの中に入ってゆく。携帯電話だけ持って・・・というのは解放されたいと思う気持ちと、でもどこかで誰かとつながっていたいという気持ちと・・・ ひとつの現代風景かとも。
○45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー  〈アッパッパー〉の感じだなあと、クスリと笑える句。
 ほかに好きな句
 14 青嵐サンドイッチは屑こまかし  〈屑こまかし〉はひとつの発見かとも思います。〈は〉がいいのか〈の〉がいいのか迷うところ。
 18 梅雨晴間大阪弁の母子くる  大阪弁の母子はどんなにか賑やかなことだろうと想像するだけでもおかしくなる。季語がこれでいいかどうか。
 34 罫線の遊ぶ植田となりにけり  早苗を罫線と見立てている句。風も感じられます。 

【 喜多波子 選(波) 】
○07 犬柄のハンカチ配り転校す
○09 夏霧の深みに丙種合格の父
○13 雨降れば獣の匂ひ芒種かな
○24 夏服や年齢不詳と言われけり
○46 ともだちが増えて金魚の眠れざる

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな  句も楽しいし胡瓜の青さが引き立っている。
○33 通勤はウォーキングにて天道虫  句のリズムが良く天道虫も効果を発揮している。
○36 釜揚げに店主も客も玉の汗  実感がよく句になっている。
○43 悪漢に見えぬ手配書蚊遣り焚く  手配書を句にされたのは初見ですね。
○45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー  ユーモアを感じます。
 選に入れたき句
*46 ともだちが増えて金魚の眠れざる  観察しての句と思います。

【 小川春休 選(春) 】
○05 飛車とられ誠に青き胡瓜かな  縁側か窓辺に近い一角、庭か畑の胡瓜の見える場所で将棋を指している。何でもないひとこまのスケッチとして、なかなか活き活きと書けている句と思います。飛車を取られて劣勢ですが、まだまだ挽回する意欲は喪っていないようです。
○30 髭の濃き坊城先生青嵐  知っている人は知っている坊城俊樹先生。ちょっと無精髭っぽい感じでワイルドですよね。青嵐が人柄を想像させてくれるところが面白い。
○37 これしきの釘に梃子摺るサングラス  想像するに、結構お年を召された方なのではないでしょうか。「これしき」なんていう用語からも、想像が肉付けされていきます。まだまだおしゃれで、若いつもり。そんな人物像が実感を持って見えてきます。
○40 ウエストのあたりの匂ふ竹夫人  竹夫人は女性を連想させるところから、セクシーさをほのめかすような作例が多い季語でもあります。この句の良さは、「ウエストのあたり」という具体的な表現で、「ほのめかす」程度のセクシーさを突き抜けた、実感もありながらどこか滑稽でもある存在感を出しているところだと思います。
○43 悪漢に見えぬ手配書蚊遣り焚く  蚊遣りの煙も、煙で落ちる蚊も、どこかはかない。それと共鳴するように、この悪漢に見えぬ犯人の身の上に、ほんの一瞬ですが思いを馳せる様子が窺われます。根っから悪い人でなくても、環境が悪かったり、芯がしっかりしていないと、成り行きで犯罪者へ堕ちてゆくこともあるよなぁ、と…。
 02 決められし定めを生きて毛虫這ふ  毛をなびかせながら這って進む毛虫を寓意として詠みたくなる気持ちは分からなくもないですが、ちょっと坊さんの説教のようでもあります。
 03 弁慶の  誰が何を守っているのか、句意が不明瞭です。「し」で過去のことのようになっているのも、では現在はどうなっているのか、景が見えにくくなる原因になっているようです。
 04 ネクタイを外す勇気や更衣  クールビズも導入されて大分年月が経ちましたが、夏でもネクタイを締めるのが当たり前だった世代には、今でも勇気がいることなのかも知れませんね。
 06 世すなはち弱肉強食夏の陣  「夏の陣」とは大阪夏の陣のことでしょうか。俳句というより、講談の一節のようです。
 07 犬柄のハンカチ配り転校す  可愛いけれど、いや可愛いからこそせつなさのある句ですね。多分女の子だと思いますが、犬柄のハンカチを配っているところを見ると、犬好きであるという以上に、小学校の低学年ぐらいなのかなぁ、というところまで想像させられます(高学年ぐらいになると、自分が好きな柄よりも、もっと無難なのを選びそうなんですよね…)。
 09 夏霧の深みに丙種合格の父  重みのある句なのですが、ちょっと句またがりを多用しすぎなのではないかと思います。
 11 吊り橋に重量制限夏の蝶  吊り橋に重量制限があるのは当たり前という気がします。その重量制限の具体的なトン数でも書かれていれば、読み手にも驚きが伝わるかもしれません。
 12 根無し後に開花の花あやめのますぐ  内容がごたごたしていてまとまりのない印象です。切れやメリハリが欲しい。
 13 雨降れば獣の匂ひ芒種かな  「匂ひ」を名詞と読むと、下五が「かな」止めなのにさらに句の途中で切れてしまうので、ここは動詞「匂ふ」の連用形として読むべきなのでしょう。ただ、それだと読み手によって必要以上に読みが分かれてしまうのも確か。それを回避するために、「雨降れば芒種の獣匂ひ立ち」などとするのも一案。
 15 灯の下に回すピザ生地梅雨寒し  あまり日当たりの良くない厨房なのでしょうか。季語がよく効いていて、自分でこねたことはないのに、何だかひんやりとしたピザ生地の感触が想像されてきます。
 16 朝凪や居間からっぽの虚脱感  「虚脱感」が言いすぎで、一句の答えを自分で言ってしまっている。季語や描写の力で、「虚脱感」と言わずに虚脱感を感じさせたいところです。
 18 梅雨晴間大阪弁の母子くる  大阪に住んでいたら「大阪弁の母子」など珍しくもない訳で、これは大阪以外のどこか。降り続く梅雨の、ほんの一時の晴れ間のように珍しい存在として、ちょっと暑苦しい大阪弁の母子がやってくる。その偶然のユーモラスさ。
 21 夏空や余白あまたの血圧帳  「余白あまたの血圧帳」をどう読んで良いのかよく分かりません。記録すべきところをさぼった結果「余白あまた」になることもあるでしょうし、まだこれから記録すべき日数がたくさんある場合も「余白あまた」でしょう。そもそも記録すべき欄のことを「余白」と呼んで良いのかも判然としない。記入欄の外の、何も書かない欄が「余白」なのではないかという気もする。もっと率直に伝わる表現があるのではないでしょうか。
 22 部屋干しのタオルにぴしとてんとむし  「ぴしと」とは勢い良く飛びついたということでしょうか。部屋干しなのに、どうやって入り込んだのでしょう。
 24 夏服や年齢不詳と言われけり  「や」「けり」にするほどの内容かと言うと、ちょっと疑問。上五を「アロハシャツ」や「紺浴衣」などと五音の季語に置き換えた方が、姿もより具体的になって、句も活き活きしてくることと思う。
 27 悪阻はもからりと晴れて南瓜蒔く  「はも」は詠嘆の意を表す連語(は+も)でしょうか。この上五だけでも分かりにくいですし、中七下五と合わせて一句として読んでも、今一つよく分からない句です。
 28 著莪の花何かが欠けているような  著莪の花そのものが、何かが欠けているようだとも、それを眺める自分を振り返って、何かが欠けているような、とも読めて、惹かれるところのある句です。
 33 通勤はウォーキングにて天道虫  私も片道三十分のウォーキング通勤をしていますが、あんまり時間に余裕がないので、天道虫などに目を留める余裕がないことに気づかされました。今度からちょっと余裕を持ちたいものです。
 35 オカリナは貝の形や明易し  オカリナが貝の形だとは、言われるまで考えたこともありませんでした。きっと、明易の、朝の日差しに照らされたオカリナを見て、貝との類似がふっと脳裏に浮かんだのでしょう。
 38 夏大根日毎太るぞ抜きたまへ  畑の主に対しての忠告なのでしょうが、忠告者に比べると畑の主の方が「まあそのうち、気が向いたときに抜けば良いよ」とどっしり構えているようです。二人の対比が面白い。
 41 万緑や携帯電話だけ持ちて  いざという時に連絡さえ取れれば何とかなる、という気分なのでしょうか。万緑という自然の真っ只中でも電波でつながっている。
 44 吹かれきて踏まれてしまふ毛虫なり  よりすんなり詠むなら、「吹かれきて毛虫踏まれてしまひけり」とでもするべきでしょうか。
 45 働かず遊ぶでもなくアッパッパー  働くのはもちろん、遊ぶのにも気力が要りますよね。気力の抜けた感じ、目に浮かぶようです。
 46 ともだちが増えて金魚の眠れざる  元々飼っていた金魚の鉢に、新しい仲間が増えたのでしょう。いつもより遅くまで活発に動き回っている金魚たちと、それを眺める飼い主と。静かながら生活感も感じさせる。
 47 夕空と蛍袋と同じ色  凝った言い回しにはするまい、という書き手の意思を感じなくもないのですが、ちょっと単純かなぁ、という印象を受けます。上五と下五を入れ替えて、「同じ色蛍袋と夕空と」としてはいかがでしょうか。もっと良い形もあるかも知れません。

 


来月の投句は、7月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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