ハルヤスミ句会 第百六十五回

2014年7月

《 句会報 》

01 それぞれに緑に染まる初夏の旅    一斗(案)

02 梅雨晴れの空をたちまち海の色    案山子

03 腕時計ならべ螺子巻く梅雨籠り    タロー(順・海・佳・波)

04 梅干すやこれにて六月過ぎにけり   遊介(第)

05 ゆくりなく貝風鈴の鳴りにけり    波子(時・タ)

06 あじさいやこれが最初の一ページ   益太郎(一)

07 足あとに水たまりでき花菖蒲     第九

08 余り苗AKBの総選挙        益太郎

09 端居して文に相づち打ちながら    春休

10 早や散りて姫紫陽花の浅ましき    タロー(遊)

11 紫陽花や試す露店の万華鏡      時人(一・海)

12 人間は室外犬だと思ふ夏       順一(益)

13 家一つ一つあまさず驟雨かな     愛(第・忠・順)

14 明易やくにの夢見し昨日今日     第九

15 紫陽花のこらえきれずに傾げたり   ひろ子(遊)

16 仕事話聞くパセリまで喰ひつくし   忠義(一・奥・春)

17 夕立なか足の行き来を蕎麦屋より   愛(時・ぐ・春)

18 陶の皿湯引きの鱧の丸まりて     忠義(案・遊)

19 落ち易き蚊遣火走るべからずと    順一(忠)

20 笑はない金魚泣かない熱帯魚     佳子(順・益)

21 ぼたぼたと青柿落とす風吹けり    ひろ子

22 友連れて娘帰るや麦湯沸く      ぐり(愛・海)

23 ヴィーナスの誕生したる海開     一斗(第・奥・遊・順)

24 一人餉の皿に一丁冷豆腐       時人(案・奥)

25 出目金の目玉と目玉ぶつからず    海音(愛・益・ぐ・佳・春)

26 マジッすかと孫に言われしあっぱぱあ 遊介(愛・タ・ぐ)

27 噴水と子供の遊ぶ日和かな      案山子(奥)

28 灼くる日や軍靴足踏みしてをりぬ   佳子(時・タ・忠・益・波)

29 水すこし汗の味なる水遊び      春休

30 雑踏に鰭欲しき日のアロハシャツ   佳子(一・時・ぐ)

31 ぴつちりと網戸にからみゴーヤ蔓   ぐり

32 夏の蝶吸い付く地面アスファルト   ひろ子(タ)

33 晩鐘にレース編む手を休めをり    一斗(時・愛・海・ぐ・春)

34 西へ向く百合だけが無き花瓶かな   順一

35 孔明のごと三伏の空を見つ      海音

36 雲の峰ツリーハウスになる一樹    波子(佳)

37 拳ひらけば何も無し夕端居      海音(タ・忠・益・波)

38 切れ悪しき包丁に潰れ茗荷の子    忠義

39 たっぷりと火照る六尺昼寝の子    遊介(第)

40 炎天のいざ飛鳥丸見に行かむ     波子

41 刈り残す蛍袋もほまち畑       タロー(愛)

42 哀史いま世界遺産か麦の秋      益太郎(案)

43 すつと出てそつと引っ込む素足かな  愛(一・第・奥・順・佳・春)

44 踏切のバーゆつくりと大暑かな    第九(案・遊・波)

45 起し絵の料理をはこぶ女中かな    時人(海)

46 突き出されゆるり広がる心太     ぐり(波)

47 炎天にひとり耐えゐる鉄路かな    案山子

48 行く夏や映画終れば人をらず     春休(忠・佳) 




【 石黒案山子 選(案) 】
○01 それぞれに緑に染まる初夏の旅
○18 陶の皿湯引きの鱧の丸まりて
○24 一人餉の皿に一丁冷豆腐
○42 哀史いま世界遺産か麦の秋
○44 踏切のバーゆつくりと大暑かな

【 一斗 選(一) 】
○06 あじさいやこれが最初の一ページ   
○11 紫陽花や試す露店の万華鏡      
○16 仕事話聞くパセリまで喰ひつくし   
○30 雑踏に鰭欲しき日のアロハシャツ   
○43 すつと出てそつと引っ込む素足かな  

【 中村時人 選(時) 】
○05 ゆくりなく貝風鈴の鳴りにけり
○17 夕立なか足の行き来を蕎麦屋より
○28 灼くる日や軍靴足踏みしてをりぬ
○30 雑踏に鰭欲しき日のアロハシャツ
○33 晩鐘にレース編む手を休めをり
 他に気になった句は
 07 足あとに水たまりでき花菖蒲
 19 落ち易き蚊遣火走るべからずと
 22 友連れて娘帰るや麦湯湧く
 27 噴水と子供の遊ぶ日和かな
 41 刈残す蛍袋もほまち畑
以上を選句させていただました。

【 土曜第九 選(第) 】
○04 梅干すや  なんでも手作りだった時代の家庭の伝統のようなものを感じます。
○13 家一つ  村全体が雨に覆われて時間が止まってしまっているようです。
○23 ヴィーナスの  ヴィーナスの絵がパッと浮かびました。
○39 たっぷりと  丈だけでなく横にもでかい子が大の字で寝ている様子が浮かびます。
○43 すっと出て  綺麗で色っぽい脚を想像しました。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○16 仕事話聞くパセリまで喰ひつくし  延々とまだ続きそうですね。一音多く十八音なのも長話のせいですね。  
○23 ヴィーナスの誕生したる海開  きらきら輝く若い女性、まぶしいですね。
○24 一人餉の皿に一丁冷豆腐  暑くて動きたくない時には、もってこいですね。
○27 噴水と子供の遊ぶ日和かな  木陰でやすんでみているのは、大人でしょうか。
○43 すつと出てそつと引っ込む素足かな  どんな場面でしょうか。想像が膨らみますね。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇22 友連れて娘帰るや麦湯沸く  大学にでも行っているのでしょうか娘さんが夏休みで帰省した。友人を連れてきた。母親は嬉しくて、よくおいでになりましたと、後ろに娘たちの会話を台所で聞きながら麦茶を沸かしている。ほのぼのとした景が見えます。
〇25 出目金の目玉と目玉ぶつからず  そうなんです。心配です。先日テレビで深海に目の飛び出た平目がいるのを見ました。魚は目玉をぶつけて怪我とかしないのでしょうか。よく観察している素直な句ですね。
〇26 マジッすかと孫に言われしあっぱぱあ  「あっぱっぱ」の句は先月も取らせて頂きました。あっけらかんとして開放的で明るい語感が好きです。”マジっすか”は一応敬語。二人のほほえましい関係また会話が聞こえてきます。
〇33 晩鐘にレース編む手を休めをり  こういう事よくあります。根を詰めていた手をふっと休める瞬間。聞こえてきたのはお寺の鐘でしょうが、レースの季語にはヨーロッパ風の教会の晩鐘を思い起こさせられます。美しい句ですね。
〇41 刈り残す蛍袋もほまち畑  ほまち畑を手入れしている方の優しさを感じさせられます。ちいさな畑を丁寧に耕し作物を育てている。そういう方だからこそ、いつの間にか芽を出し、はなを咲かせた蛍袋を愛おしみ、刈り残したのでしょう。”蛍袋”がいいですね。

【 小林タロー 選(タ) 】
○05 ゆくりなく貝風鈴の鳴りにけり  軽いから微風でもなるのでしょう。
○26 マジッすかと孫に言われしあっぱぱあ  よくわからない世代の相違かな。
○28 灼くる日や軍靴足踏みしてをりぬ  こういう句を詠まざるを得ない取らざるを得ない世相が危ないですね。
○32 夏の蝶吸い付く地面アスファルト  地面が余分なような気もしますが、吸い付くに新味があるように思いました。
○37 拳ひらけば何も無し夕端居  あえてこうしたのだと思うが、夕端居は上のほうがリズムが良いと思う。

【 森田遊介 選(遊) 】
○10 早や散りて姫紫陽花の浅ましき  早くも散ってしまうのはなんと興ざめなことか、もっと花を楽しみたかった残念と思う心情を表現しています。
○15 紫陽花のこらえきれずに傾げたり  大輪に咲く紫陽花を観てさぞや重たかろうに。紫陽花は茎の割りには大きな花をつけますね。「こらえきれずに」に同感です。
○18 陶の皿湯引きの鱧の丸まりて  信楽でしょうか、備前でしょうか見事な皿に盛られた鱧料理。鱧がちんまりとした大きさであると想像しました。更にその陶の皿が如何に由緒のある皿であるかと想像してしまいます。
○23 ヴィーナスの誕生したる海開  男目線の海開き。生命感に満ちたヴィーナスの姿が眩しいです。
○44 踏切のバーゆっくりと大暑かな  如何にも暑い日を思います。無機質な踏切のバーでさえ暑さに喘いでいるようです。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○13 家一つ一つあまさず驟雨かな  かな止めで良いかどうかはさておき。
○19 落ち易き蚊遣火走るべからずと  自らが走ってはいけないと戒められたなら?
○28 灼くる日や軍靴足踏みしてをりぬ  その軍靴が前進を始めたら...。
○37 拳ひらけば何も無し夕端居  拳を握るだけで蚊は取れないけれど。
○48 行く夏や映画終れば人をらず  夏狂言の現代版。

【 石川順一 選(順) 】
○03 腕時計ならべ螺子巻く梅雨籠り  季語は「梅雨籠り」。どんな腕時計だったのだろうと、ヴィジュアル面を想像して楽しく読めました。
○13 家一つ一つあまさず驟雨かな  季語は「驟雨」。空共通の思いをあらたにしました。通り雨の強烈な印象ですね。季語もよく働いて居ると思いました。
○20 笑はない金魚泣かない熱帯魚  季語は「金魚」。面白い見立てだと思いました。童話の世界を意識したのでしょうか。季語の「金魚」の擬人化に成功して居ると思います。
○23 ヴィーナスの誕生したる海開  季語は「海開」。「ヴィーナス」とは誰なのか。恐らく類的なもの、想像上の「ヴィーナス」であって、人間ではないと私は思って居るのです。空想のよく効いた句だと思います。季語の「海開」の働きが従属的に見えても、句全体としては成功して居るかと。
○43 すつと出てそつと引っ込む素足かな  季語は「素足」。「跣足」ですね。「すっと」や「そっと」出たり、引っ込む足。季語の「素足」がうまく活かされた句
 他に注目した句に
 07 足あとに水たまりでき花菖蒲   季語は「花菖蒲」
 29 水すこし汗の味なる水遊び    季語は「水遊び」
 33 晩鐘にレース編む手を休めをり  季語は「レース」
 38 切れ悪しき包丁に潰れ茗荷の子  季語は「茗荷の子」
 47 炎天にひとり耐えゐる鉄路かな  季語は「炎天」
がありました。

【 涼野海音 選(海) 】
○03 腕時計ならべ螺子巻く梅雨籠り  螺子巻きが必要な腕時計といえば、古風な印象を受けました。そのレトロさが「梅雨籠り」と合っているのかなと。
○11 紫陽花や試す露店の万華鏡  紫陽花の花の淡さと万華鏡の輝きが良いですね。
○22 友連れて娘帰るや麦湯沸く  日常生活の一こまを鮮やかに切り取っております。
○33 晩鐘にレース編む手を休めをり  レースに差す夕日まで見えてきた一句。
○45 起し絵の料理をはこぶ女中かな  「起し絵」という珍しい季語を詠んでいますが、「料理」が具体的に分かった方が良いかも。

【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)

【 川崎益太郎 選(益) 】
○12 人間は室外犬だと思ふ夏  夏は室内に居るより外が好き。室外犬が面白い。
○20 笑はない金魚泣かない熱帯魚  金魚と熱帯魚の違いはそこにあったのか。どちらが幸せか。
○25 出目金の目玉と目玉ぶつからず  大きく出っ張っててもぶつかることはない。それがどうしたと言われてもねえ。なぜか惹かれた句。
○28 灼くる日や軍靴足踏みしてをりぬ  まさに今、軍靴が足踏みをして、命令を待っている。季語が効いている。
○37 拳ひらけば何も無し夕端居  何も無し、をどう解するか。過不足無き人生の幸せを感じた。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○17 夕立なか足の行き来を蕎麦屋より  たまたま食事をしている途中に夕立がきたのだろう。足の行き来に焦点があってるのがいい。濡れていない自分の小さな優越感も見えて面白い。
○25 出目金の目玉と目玉ぶつからず  確かに。こんなこと思ってもみなかった。これから出目金を見るとこの句を思い出しそう。
○26 マジッすかと孫に言われしあつぱぱあ  仲良しのお孫さんですね。お孫さんもわざとあえて言ってる感じ。「マジだわよ」と言い返したのでは。
○30 雑踏に鰭欲しき日のアロハシャツ  鰭さえあればこの蒸し暑い雑踏もすいすいと。アロハシャツから突き出した鰭を想像すると楽しい。アロハシャツを見るとこの句も思い出しそう。
○33 晩鐘にレース編む手を休めたり  余りにも集中していて晩鐘に、え、もうそんな時間という驚きが見える。優雅な趣味の時間と読んでもいいがプロの仕事と読みたい。

【 水口佳子 選(佳) 】
○03 腕時計ならべ螺子巻く梅雨籠り  いまどきの腕時計はねじを巻かなくてもいいものだと思うが、もしか
したら少し古いもの、大切にしまってあった思い出の腕時計なのか。(あるいはコレ
クション?)〈梅雨籠り〉でやや答えが出てしまった感はあるが、一つ一つの腕時計
との語らいを楽しんでいるかのよう。 
○25 出目金の目玉と目玉ぶつからず  〈目玉と目玉〉は出目金同士、と捉えた。全くその通り。
○36 雲の峰ツリーハウスになる一樹  結構立派な樹なのだろう。ツリーハウスになることも許してくれそうな、でんとした樹。背景として雲の峰を据えたことによって、夢とか冒険とか心の昂りを感じる。
○43 すつと出てそつと引っ込む素足かな  出るべきではない場面にうっかり出てしまった素足。〈すつと〉〈そつと〉の使い方が的確で、おかしみのある句。
○48 行く夏や映画終れば人をらず  この夏の出来事がまるで映画の中のことであったかのように。〈人おらず〉は映画の終わった後の館内、 しかし自分がこの夏に関わった人たち、とも取れて寂寞とした心情がうかがわれる。
ほかに好きな句
 01 それぞれに緑に染まる初夏の旅  上五中七が素敵。緑と初夏は重なるかしら。
 07 足あとに水たまりでき花菖蒲  こういうことってあるなあと見逃さず句にしてあるところがいいと。足あとに水たまりができる、足あとが水たまりになる、どういう表現がいいのだろう。
 16 仕事話聞くパセリまで喰ひつくし  〈仕事話〉と言うのが妙に俗っぽくていいなあと。

【 喜多波子 選(波) 】
○03 腕時計ならべ螺子巻く梅雨籠り  
○28 灼くる日や軍靴足踏みしてをりぬ   
○37 拳ひらけば何も無し夕端居 
○44 踏切のバーゆつくりと大暑かな    
○46 突き出されゆるり広がる心太 

【 鋼つよし 選(鋼) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○16 仕事話聞くパセリまで喰ひつくし  オムライスなどの洋食メニューでは、パセリが添えられていることがよくあります。食事の最後に食べると、あの独特の苦みが口をさっぱりさせてくれるので、私は結構好きです。それはさておき、これから取り掛かる仕事への意欲を感じさせる、健康的な句だと思いました。
○17 夕立なか足の行き来を蕎麦屋より  「足の行き来」から、そう広くない窓から見える外の景も、店内の雰囲気も想像されます。個人的な好みかも知れませんが、蕎麦屋の店内はあまり日が入り過ぎて明るいのは駄目で、この句のような感じが好ましいですね。ただ上五、「なか」が少し説明っぽいので、シンプルに「夕立や」などで良いのではないかとも。
○25 出目金の目玉と目玉ぶつからず  すれ違う二匹の出目金。ゆったりとしたスピードで、ぶつかりそうでぶつからない。出目金の動きやボリューム感のある姿が目に浮かびます。
○33 晩鐘にレース編む手を休めをり  さりげない詠みぶりながら、晩鐘が鳴るまでレース編みに集中していた、この句に描かれた瞬間よりも少し前の状況までも想像される、たっぷりとした時間的な奥行きのある句です。
○43 すつと出てそつと引っ込む素足かな  これという意味のある行動ではありませんが、素足の感触の心地よさのもたらす気持ちの弾みが、こういう行動をさせたのでしょう。いかにも涼しげ。
 01 それぞれに緑に染まる初夏の旅  あえて具体的なことは詠まず、抽象的にされているのだと思いますが、「それぞれ」が何(もしくは誰)のこととも分かりませんし、雰囲気だけの句になってしまっているようにも感じます。
 02 梅雨晴れの空をたちまち海の色  梅雨晴れよりも梅雨明けの方がぴったり来るような気もしますが、よく分かる句です。中七の「を」の使われ方がちょっと不自然な感じなので、「空やたちまち」などと切るか、「空たちまちに」などとするのも良いかも知れません。ご一考を。
 03 腕時計ならべ螺子巻く梅雨籠り  梅雨の時期に、愛蔵の腕時計たちのメンテナンスをする。なかなか良い趣味ですね。ただ、上五中七で屋内にいることは読み取れるので、「籠り」は重複感があります。「五月雨(さつきあめ)」などの方が良いのではないでしょうか。
 04 梅干すやこれにて六月過ぎにけり  季重ねはまあ良いとしても、「や・けり」なのも気になりますし、中七の無造作な字余りも気になります。せめて、「梅干して青水無月の過ぎにけり」などとするべきではないかと思います。
 07 足あとに水たまりでき花菖蒲  大きな足跡が出来るのも、そこに水たまりが出来るのも、花菖蒲の咲くような湿った地なればこそ。景がよく見えます。
 08 余り苗AKBの総選挙  テレビでたまにやっていますね、AKBの総選挙。田園風景の片隅にもその映像が届いているのは、ちょっとシュールなというか、ナンセンスな面白味を感じさせる景です。
 12 人間は室外犬だと思ふ夏  よくこの暑いのに外をうろちょろしとるな、と。この作者は猫派なのかも知れませんね。
 19 落ち易き蚊遣火走るべからずと  よく分かる。よく分かる句なのですが、原因・結果というか、理屈が表に出過ぎのように感じます。
 21 ぼたぼたと青柿落とす風吹けり  私がよく目にする青柿はまだ小さく、ぎゅっと凝縮したような感じで枝に付いています。それを落とすぐらいですから、かなり強い風だったのでしょうか。
 23 ヴィーナスの誕生したる海開  ボッティチェリの絵画を思い出しますね。
 24 一人餉の皿に一丁冷豆腐  冷奴と、あとは枝豆でもあれば十分、という気分になるときもありますよね、こうも暑くては。よく分かります。
 26 マジッすかと孫に言われしあっぱぱあ  面白い句ですが、いろいろと気になるところが。個人差もありますが、「マジッすか」という言葉、あまり身内には使わない言葉ですね(「○○ッすか」は一応敬語なのでちょっとよそよそしい。身内には「マジでぇ?」などと言う)。孫から見れば、たまにしか会わない祖父母は、身内という認識ではないのかも知れませんね。あと、「あっぱぱあ」という言い方は初めて見ましたが、これはよく使われる言い方なのでしょうか。
 27 噴水と子供の遊ぶ日和かな  この句、「水遊び」という季語一言だけで言いおおせてしまうのではないでしょうか。噴水で遊ぶ時、良い天気の日中であることは当然なので、「日和かな」という下五は全く効果的ではないと思います。季語が想像させる様々なイメージを活かして、奥行きのある句にしてほしいです。
 30 雑踏に鰭欲しき日のアロハシャツ  「鰭欲しき日」という表現が面白く、目を引きますが、「雑踏に」というつなぎ方にちょっと引っかかります。
 37 拳ひらけば何も無し夕端居      
 38 切れ悪しき包丁に潰れ茗荷の子  具体的に書かれてはいるのですが、上五の「切れ悪しき」が答えになってしまっているようです。句の上では答えを出さず、「包丁に切れず潰れて茗荷の子」などとしておいて、読者に「もっと良い包丁使えよ〜、いやそれとも切る人が下手なのかも…」などと想像させた方が良いと思います。
 40 炎天のいざ飛鳥丸見に行かむ  飛鳥丸とは大きな船でしょうか、いかにも威勢が良く、気分の良い句ですね。上五は「炎天や」と切った方が良いような気もします。
 42 哀史いま世界遺産か麦の秋  このたび世界遺産に登録が決まった富岡製糸場のことかと思います。麦の秋という懐かしい季語が、昔のことを思い起こさせます。
 44 踏切のバーゆつくりと大暑かな  気分は非常によく分かる句です。一つ気になったのですが、このバー、ゆっくり上がったのでしょうか、下がったのでしょうか。
 45 起し絵の料理をはこぶ女中かな  こういう季語を使うときには、句全体の雰囲気も大事にしたい。そういう目で見ると、「料理」という括り方は雑な印象で、句の雰囲気を損なっています。具体的な料理名でも良いし、「御膳」でも良いのではないかとも思いました。
 46 突き出されゆるり広がる心太  よく見ているし、よく分かる句なのですが、「ゆるり」が言い過ぎではないかという気がします。「突き出され広がりゆける心太」などとシンプルに詠んだ方が、動きというか広がりも感じる句になりそうです。
 

 


来月の投句は、8月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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