ハルヤスミ句会 第百六十七回

2014年9月

《 句会報 》

01 秋めくや研ぎ澄まされる両の耳    はな(時)

02 八月に忌日ひとつを加えけり     益太郎(案・第・春)

03 秋草を折れば米粒ほどの花      ぐり(の・時・第・愛)

04 青白きガスの炎のごと踊る      一斗(案・奧・佳)

05 さかりにも女郎花の黄淋しさう    野乃花(の)

06 木道を日傘の妻が先に行く      タロー(は)

07 わが横に誰もをらざり遠花火     海音(は・奧・益)

08 老農の歩み静かに葛の花       第九

09 焼きそば焼く音が外まで水澄めり   春休

10 さうだとも君の世だともきりぎりす  案山子(忠・順・て・佳・波)

11 色の無き風に潮の香混じりをり    忠義(の)

12 やはらかき風吹き始む蓼の花     野乃花

13 天神の亀逃げだすや秋日和      ひろ子(波・春)

14 月明かり文字は雫のように消え    はな(一・タ)

15 ライブ果て月の宴の始まりぬ     ぐり(順)

16 九ちゃんの口笛届く秋高し      波子(益)

17 虫売の額のあたりの虫めくよ     てふこ

18 菊枕香りの中に目覚めけり      波子(は)

19 秋めきて散歩増え行く刑を科す    順一

20 こはごはと頭蓋をのせる菊枕     佳子(の・益)

21 きちきちや先の晴れた日いつだつけ  案山子(愛)

22 改札の先に広がる花野かな      海音(は・時・第・益・鋼)

23 吊革に拳ずらりと良夜なる      春休(海・ぐ・佳)

24 印必須新米予約注文書        つよし(時)

25 名月の質屋の赤きネオンかな     一斗(奧・鋼)

26 鼻唄もソプラノなりき秋彼岸     第九(忠・春)

27 十五夜の明かりを灯す和歌の浦    のりひろ

28 爽やかや血圧計の数字にも      つよし

29 溢蚊やシャッター半ば閉められて   忠義(一)

30 カステラの黄金色なる敬老日     海音(は・一・忠・佳・春)

31 冬瓜や白き果肉はややのやう     野乃花(の)

32 花札の月はまんまる太閤忌      愛(案・忠・て・波)

33 正座して拳小さし月の客       春休(案・時・タ・忠・て・ぐ)

34 乱れ萩分け入る先の秘密基地     益太郎(順・鋼)

35 箱庭の秋野にかかる太鼓橋      愛

36 里山に夕暮れ満ちるあきあかね    のりひろ(奧)

37 寝転びて流星つかむ童かな      タロー(順)

38 相撲観るは五時と決めたり夕用意   愛

39 情熱の花言葉もて死人花       時人

40 秋空を一直線に雲走る        ひろ子

41 巡航船島の別れに秋燕        のりひろ(奧)

42 何処にか果てはあるべし曼珠沙華   案山子(愛・順・波)

43 凶作や鉄階に虫の硬直        佳子

44 不知火や満船飾の日本丸       波子

45 虫の音が扉を開けずとも聞ける    順一

46 みつしりと人十六夜の会議室     てふこ(一・タ・ぐ・佳)

47 思い出を削除してゆく木の実落つ   はな

48 秋の蚊に神域なれども刺され過ぎ   順一(鋼)

49 ふみ入れば纏はる話曼珠沙華     時人(て)

50 割れ硝子残りしままや曼珠沙華    タロー(海)

51 藷畑の収穫見ずに逝かれたる     つよし(て)

52 蓑虫や軒なき家に住み馴れて     佳子(案・愛・海・益・ぐ)

53 湿原に鶴の親子や秋晴るる      ひろ子

54 雨あがり茸洗はれ赤々し       忠義

55 教科書に書き込み多し初紅葉     第九(奧・鋼・春)

56 彼岸花疎水ここより広くなり     時人(一・第・タ・海・ぐ)

57 蚯蚓鳴く真夜の三つ又交差点     ぐり(愛・タ)

58 青銅の肢体に長き月の影       一斗(第)

59 露草やふとピカソの「泣く女」    益太郎(海)

60 吾亦紅声なくひとを見そこなふ    てふこ(波)




【 橘野乃花 選(野) 】
(今回は選句お休みです。)

【 木村はな 選(は) 】
○06 木道を日傘の妻が先に行く  モネの絵を見るようです。
○07 わが横に誰もをらざり遠花火  寂しさが伝わってきます。
○18 菊枕香りの中に目覚めけり  こちらにまで香りが伝わってきました。
○22 改札の先に広がる花野かな  安房直子さんの世界のようです。
○30 カステラの黄金色なる敬老日  黄金色がなんともほほえましくて。

【 荒岩のりひろ 選(の) 】
○03 秋草を折れば米粒ほどの花
○05 さかりにも女郎花の黄淋しさう
○11 色の無き風に潮の香混じりをり
○20 こはごはと頭蓋をのせる菊枕
○31 冬瓜や白き果肉はややのやう
の句をいただきました。
どうぞよろしくお願いします。
選句だけで失礼いたします。

【 石黒案山子 選(案) 】
○02 八月に忌日ひとつを加えけり
○04 青白きガスの炎のごと踊る
○32 花札の月はまんまる太閤記
○33 正座して拳小さし月の客
○52 蓑虫や軒なき家に住み馴れて

【 一斗 選(一) 】
○14 月明かり文字は雫のように消え
○29 溢蚊やシャッター半ば閉められて
○30 カステラの黄金色なる敬老日
○46 みつしりと人十六夜の会議室
○56 彼岸花疎水ここより広くなり

【 中村時人 選(時) 】
○01 秋めくや研ぎ澄まされる両の耳
○03 秋草を折れば米粒ほどの花
○22 改札の先に広がる花野かな
○24 印必須新米予約注文書
○33 正座して拳小さし月の客
 他に気になった句は
 02 八月に忌日ひとつを加えけり
 52 蓑虫や軒なき家に住み馴れて
以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
○02 八月に忌日ひとつを加えけり  淡々とした句ですが悲しさや切なさが伝わってきます。
○03 秋草を折れば米粒ほどの花  秋の草花の奥ゆかしさが感じられます。
○22 改札の先に広がる花野かな  ローカル線の駅の景が見えてきます。
○56 彼岸花疎水ここより広くなり  先人が植えたものでしょう。まちの成り立ちが見えてくるようです。
○58 青銅の肢体に長き月の影  冴えわたった秋の夜のミステリアスな感じがとてもいいと思いました。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○04 青白きガスの炎のごと踊る  ひとりひとりが個の世界にひたっているのでしょうか。 
○07 わが横に誰もをらざり遠花火  寂しいですね。
○25 名月の質屋の赤きネオンかな  ネオンは現実社会の赤色ですね。
○36 里山に夕暮れ満ちるあきあかね  日本の秋の景色ですね。
○41 巡航線島の別れに秋燕  また、会えますね。
○55 教科書に書き込み多し初紅葉  さあ、しっかり勉強しよう。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○03 秋草を折れば米粒ほどの花
○21 きちきちや先の晴れた日いつだっけ
○42 何処にか果てはあるべし曼珠沙華
○52 蓑虫や軒なき家に住み慣れて
○57 蚯蚓鳴く真夜の三つ叉交差点

【 小林タロー 選(タ) 】
○14 月明かり文字は雫のように消え
○33 正座して拳小さし月の客
○46 みつしりと人十六夜の会議室
○56 彼岸花疎水ここより広くなり
○57 蚯蚓鳴く真夜の三つ又交差点

【 森田遊介 選(遊) 】
(今回はお休みです。)

【 小早川忠義 選(忠) 】
○10 さうだとも君の世だともきりぎりす  人のことにも読めるしきりぎりすのこととも読めて良い。
○26 鼻唄もソプラノなりき秋彼岸  「も」が良いかどうか迷ったが、彼岸の時候の中で鼻歌に何か力を入れる事情が。
○30 カステラの黄金色なる敬老日  これは美味しそう。ホイップクリームを受け付けない老夫婦。
○32 花札の月はまんまる太閤忌  庶民的でも我が世の春を謳歌した太閤殿下。
○33 正座して拳小さし月の客  小さいながらも緊張して握られた拳。可愛い。
 09 焼きそば焼く音が外まで水澄めり  上五を整理してみるともう少しすっと入って行きそう。
 14 月明かり文字は雫のように消え  幻想的な感覚が惹かれる。 
 17 虫売の額のあたりの虫めくよ  「額」をどう読むかで切れなどが設けられそうな。
 48 秋の蚊に神域なれども刺され過ぎ  「過ぎ」はまさしく言い過ぎかも。

【 石川順一 選(順) 】
○10 さうだとも君の世だともきりぎりす  季語は「きりぎりす」。きりぎりすをからかって居る様な自分に言い聞かせて居る様な変な感じを受けました。
○15 ライブ果て月の宴の始まりぬ  季語は「月の宴」。ライブの後の月見。洒落て居ると思いました。
○34 乱れ萩分け入る先の秘密基地  季語は「乱れ萩」。秘密基地は少年少女の夢の象徴だと思います。萩の花が咲き乱れて居る。
○37 寝転びて流星つかむ童かな  季語は「流星」。流れ星に願いその願いが叶った。大願成就を暗示する句。
○42 何処にか果てはあるべし曼珠沙華  季語は「曼珠沙華」。果ては象徴的な果て。それを曼珠沙華が体現して居る。
 他に注目した句に
 18 菊枕香りの中に目覚めけり    季語は「菊枕」
 23 吊革に拳ずらりと良夜なる    季語は「良夜」
 26 鼻唄もソプラノなりき秋彼岸   季語は「秋彼岸」
 46 みつしりと人十六夜の会議室   季語は「十六夜」
 54 雨あがり茸洗はれ赤々し     季語は「茸」
 60 吾亦紅声なくひとを見そこなふ  季語は「吾亦紅」
がありました

【 涼野海音 選(海) 】
○23 吊革に拳ずらりと良夜なる  「吊革に拳」という情景はよく詠まれておりますが、「良夜」がなかなかムードがあっていいですね。
○50 割れ硝子残りしままや曼珠沙華  野道に残ったままの「割れ硝子」の哀れさが出てますね。
○52 蓑虫や軒なき家に住み馴れて  蓑虫の家といえば「蓑」、作者の家は「軒なき家」、このかすかなひびき合いがよいと思いました。
○56 彼岸花疎水ここより広くなり  琵琶湖疎水でしょうか。彼岸花が景に色どりを添えています。
○59 露草やふとピカソの「泣く女」  露草から涙を連想し、ピカソの「泣く女」にまで想像が及んだのでしょう。

【 松本てふこ 選(て) 】
○10 さうだとも君の世だともきりぎりす  上五の思い切った出だしが鮮烈。昔話における蟻との対比でどうも傲慢なイメージがついているきりぎりすですが、この句では作者がその姿を肯定してあげたくなるほど痛切な中に誇り高さを忘れない様子で声をあげているのでしょう。インパクトとある種の共鳴が生まれているところが新鮮でいただきました。
○32 花札の月はまんまる太閤忌  マンガのような立身出世を成し遂げた男の忌日なので、華やかでどこかに危うさのあるもの(ギャンブルのイメージもありますし)を取り合わせたかったのでしょうか。大いに共感します。いつか月は欠けると思うと、秀吉死後の豊臣家の綻びと滅亡にも思いを馳せてしまいますよね。今月一番好きな句でした。私も太閤忌で作ってみようと思います。
○33 正座して拳小さし月の客  膝の上に拳を握って少し緊張した様子で座っているのでしょうね。その拳が小さいということはまだ幼いのかな。そういったいじらしい姿をいとおしむ心を「月の客」という季語を選ぶことによって季語に語らせていて巧み。作者の優しさも伺えます。(この季語を見ると思い出す人がいるのですが、私の作者予想は合っているかしら…)
○49 ふみ入れば纏はる話曼珠沙華  ちょっと詳しく聞かせてよ、と軽い気持ちで言ったのが運の尽き、ということなのでしょうか。曼珠沙華の斡旋がおどろおどろしくて、でも花弁とイメージを軽くぶつけてるところがいいなと思いました。私だったら中七を「話ややこし」とかにすると思います。中七をさらっと流して下五の語感を目立たせたいのと、中七も下五も体言止めだとちょっとブツ切れ感があるので…。
○51 藷畑の収穫見ずに逝かれたる  藷畑の素朴さが哀れを誘います。少し一本調子すぎるかな?とも思ったのですが、この不器用にも見える詠みぶりが内容とよく合っているので、これが正解かと。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○07 わが横に誰もをらざり遠花火  分かり過ぎる感もあるが、心情がひしひしと伝わる。
○16 九ちゃんの口笛届く秋高し  あの事故から30年。今も九ちゃんは歌ってる。 
○20 こはごはと頭蓋をのせる菊枕  こはごは・頭蓋・菊枕、の取り合わせが面白い。
○22 改札の先に広がる花野かな  きれいな景が見える。多分無人駅。
○52 蓑虫や軒なき家に住み馴れて  蓑虫は軒下にと思っていたが、軒のないマンションでも住めば都か。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○23 吊革に拳ずらりと良夜なる
○33 正座して拳小さし月の客
○46 みつしりと人十六夜の会議室
○52 蓑虫や軒なき家に住み慣れて
○56 青銅の肢体に長き月の影

【 水口佳子 選(佳) 】
○04 青白きガスの炎のごと踊る  比喩が絶妙。踊の世界に入り込んですでに放心状態となった踊り手たち、踊り続けて彼の世まで行ってしまいそうな・・・そんな青白さである。
○10 さうだとも君の世だともきりぎりす  アリとキリギリスのお話。童話の上ではコツコツと働く蟻が最後に報われるのであるが、現代社会ではそうはいかない。諦めのような口語が生きている。ブラックユーモア。
○23 吊革に拳ずらりと良夜なる  通勤電車であろうか。こんなにいい月が出ているのに仕事に疲れ果てて吊革にぶら下がっている手。良夜の静けさとはまた違う車内のしずけさが感じられる。「良夜なる」の連体止めが余韻を生む。
○30 カステラの黄金色なる敬老日  「黄金色」に祝福の気持ちが。カステラも今ではポピュラーになったが昔は高級品だったなあと、ちょっと懐かしさも。「敬老日」は「敬老の日」とすべきだとも言われているが・・・
○46 みつしりと人十六夜の会議室  「みつしりと」はこの場合、言葉としては嘘っぽい。エレベーターならまだしも会議室なのだから。でも切迫した空気が感じられる。句またがりの表現も生きていると思う。
ほかに好きな句
 02 八月に  広島の土砂災害のことですね。
 14 月明かり  表現が詩的。
 33 正座して  拳に着目したところがいいなあと。
 56 彼岸花  こういう景はよく目にするので共感できます。

【 喜多波子 選(波) 】
○10 さうだとも君の世だともきりぎりす
○13 天神の亀逃げだすや秋日和
○32 花札の月はまんまる太閤忌
○42 何処にか果てはあるべし曼珠沙華
○60 吾亦紅声なくひとを見そこなふ

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○22 改札の先に広がる花野かな  電車を降りるなり風景が目に入る感じでしょうか。
○25 名月の質屋の赤きネオンかな  名月と質屋の開きの大きさがよいと思う。
○34 乱れ萩分け入る先の秘密基地  秘密基地が意外でよい。
○48 秋の蚊に神域なれども刺され過ぎ  人間が作った神域は蚊は存じません。
○55 教科書に書き込み多し初紅葉  どなたかの展示してある教科書と読みました。

【 小川春休 選(春) 】
○02 八月に忌日ひとつを加えけり  この八月に故人となられた俳人のことを詠まれているのでしょうか。抑制の効いた詠みぶりが余韻を感じさせます。ちなみに今年の八月は、山上樹実雄氏が八月六日に死去、松崎鉄之介氏が八月二十二日に死去されています。
○13 天神の亀逃げだすや秋日和  逃げ出すと言っても亀ですからゆったりのったりと。それを見ている視点ものんびりしたもの。秋日和という単純な季語だからこそ良いのだという気もしますが、もっと良い季語があるかもなぁ、という気も少し。
○26 鼻唄もソプラノなりき秋彼岸  かなり歌の上手な女性、何の気なく出た鼻唄も、高音で音程も確かなソプラノであった、と。季語も相俟って、ありありと人物、景が想像される句です。
○30 カステラの黄金色なる敬老日  句の作りとしては素朴な部類だと思いますが、カステラは敬われる側の御老人の好物なのかなぁ、などと自然に想像されます(今はそうでもありませんが、昔はカステラって御馳走でしたよね)。敬老の日はけっこう難しい季語ですが、素直に詠まれていて好感を持ちました。
○55 教科書に書き込み多し初紅葉  四月から始まった学年ももうすぐ半分が過ぎようとしています。まっさらだった教科書にもたくさんの書き込みが…。句の裏側にたっぷりとした時間を感じさせる句です。季語も良いと思います。
 03 秋草を折れば米粒ほどの花  秋草の花が米粒ほどである、という表現は、花の形や色までよく見えてくるものですが、「折れば」というタイミングに限定される必要性がよく分かりません。折る前から花は目に入っていたはずです。例えば「折るや」と切るとか、もっと因果関係の濃くない表現にしたいところです。
 07 わが横に誰もをらざり遠花火  ことさらに「わが」というからには、自分以外の周囲の観衆は複数人で連れ立っている人が多いことが窺えます。ふっと気づかされる孤独。
 10 さうだとも君の世だともきりぎりす  童話「アリとキリギリス」を下敷きにした句、鬱陶しいぐらいに賑やかなキリギリスへのアリの言葉という印象の句です。読み手は当然、キリギリスの全盛期がもうすぐ終わることも知っている訳で、少しほろ苦い読後感もあります。
 11 色の無き風に潮の香混じりをり  シンプルな仕立てですが、「色の無き風や潮の香混じりては」「色の無き風に混じりて潮(うしほ)の香」などという句形も考えられます。
 15 ライブ果て月の宴の始まりぬ  月の宴という雅やかな世界とライブの熱気と。かなり趣は異なりますが、それが一句の中でつながる所が面白い。
 16 九ちゃんの口笛届く秋高し  坂本九の「上を向いて歩こう」でしょうか。いかにも「秋高し」といった感じですね。
 17 虫売の額のあたりの虫めくよ  「額」は「ぬか」と読ませるのでしょう。ただし、「虫めく」は具体的にどういうことか分かりにくく、ちょっと荒っぽい描写と感じました。カフカの『変身』を少し思い出したりも。
 18 菊枕香りの中に目覚めけり  菊枕とはこういうもの、という範疇を出ていません。一句が季語の説明になってしまっているようです。
 20 こはごはと頭蓋をのせる菊枕  普段使っている枕と比べて菊枕の華奢なこと。「頭」ではなく「頭蓋」と表現することで、頭だってそんなに丈夫なものではないことを思い起こさせる。感覚の鋭い、体感的な句です。
 21 きちきちや先の晴れた日いつだつけ  …本当に。この句のとおり、晴天らしい晴天を見ることの少ない初秋でした。
 22 改札の先に広がる花野かな  言外に旅であるということが伝わる。簡潔な表現、率直な内容の句ながら、旅中ならではの気持ちの弾みもどことなく感じられる。採りたかった句です。
 24 印必須新米予約注文書  面白い所に目を付けられていると思います。全部漢字という所も目を引きます。
 29 溢蚊やシャッター半ば閉められて  中七下五の描写が今一つ具体性を欠いているようです。一枚のシャッターが途中まで下ろされている景とも、商店街の半分ぐらいの店舗がシャッターが閉められている景とも読める。もっと違う表現の仕方があるのではないかと思います。
 31 冬瓜や白き果肉はややのやう  考えてみたこともありませんでしたが、言われてみれば確かにそうですね。
 32 花札の月はまんまる太閤忌  派手好きの太閤さんの人柄に響く所のある句ですね。個人的には、中七は「月まんまるや」と関西弁っぽい切れを入れたいところです。
 38 相撲観るは五時と決めたり夕用意  エッセイ的な面白さはありますが、俳句としては説明的な内容と感じます。
 43 凶作や鉄階に虫の硬直  響きの固い熟語の多用、句またがりと独特の雰囲気のある句ですが、句またがりにせずにすんなり「鉄階に硬直の虫○○○○○」と詠んでも十分存在感はあるのではないかと思います。
 48 秋の蚊に神域なれども刺され過ぎ  神域が殺生禁止だったため蚊にたくさん刺された、ということでしょうか。句にするには理屈っぽい内容と思います。
 50 割れ硝子残りしままや曼珠沙華  書かれていることはよく分かりますが、今一つ描写の鮮度が足りないように思います。この句の描写では、割れガラスがどのような状態だったのかが、読み手に見えて来ないのです。たとえば〈秋草の中や見事に甕割れて〉という波多野爽波の句の「見事な割れ様」のように、景の肝となるポイントをつかんでほしいところです。
 51 藷畑の収穫見ずに逝かれたる  「収穫」という言葉は俳句に使う言葉としてはちょっと硬い気もしますが、心情はとてもよく伝わります。
 54 雨あがり茸洗はれ赤々し  語順・言い回しが散文的で、せっかくの茸の鮮明な赤さが、読み手には鮮明に感じられません。一例として、「赤々や雨に洗はれこの茸」などと切れを入れるとか、工夫が欲しいところです。
 58 青銅の肢体に長き月の影  身体に落ちた長い月の影は、青銅の像の、伸ばした腕の影でしょうか。景がよく見えます。
 60 吾亦紅声なくひとを見そこなふ  「見そこなふ」とは見失うと言うような意味で使われているのでしょうか。言い回しというか語順というか、もう少しすっきりしないと、意味がよく分かりません。

 


来月の投句は、10月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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