【 中原和矢 選(和) 】
○08
花冷や野外ライブのビラ配り
○25 風呂洗ふ春のジャージをたくし上げ
○31
新聞の見出しに離婚つくつくし
○36 炒飯のすつかり冷めし朧かな
○54 雨傘を束ねて捨てて昭和の日
【 さよ 選(さ) 】
○08 花冷や野外ライブのビラ配り
○10
春の夜の方程式は解けぬまま
○19 ふらここの足着く所ぬかるみて
○25 風呂洗ふ春のジャージをたくし上げ
○33
今生は君の隣のたんぽぽに
【 ルカ 選(ル) 】
○41
ペンギンの頭の光る万愚節 なんともキュートな句。春の日差しとユーモアがきらり。
○54
雨傘を束ねて捨てて昭和の日 古くなった傘。昭和の雨も歳月も、一緒に束ねている感じがしますね。
○21
もひとつの顔試しをり新社員 「怪物くん 」のような新社員、今日はどんな顔!?
○25
風呂洗ふ春のジャージをたくし上げ 学生か、はたまた一人暮らしの若者か、単身赴任のおとーさんか。春ののんびり休日の一コマ。
○28
止まる先しばらく迷ふ白き蝶 蝶でなくても、白くなくてもいいような気もしますが、紋白蝶だったら、ぴったりくる感じがします。
【 草太 選(草) 】
○01 春泥を吐きキャタピラー前進す
○10
春の夜の方程式は解けぬまま
○22 石けりの石のいろいろ春深し
○41 ペンギンの頭の光る万愚節
○54
雨傘を束ねて捨てて昭和の日
【 石黒案山子 選(案) 】
(今回は選句お休みです。)
【 一斗 選(一) 】
○06 日に透けて魚卵めきたる桜かな
○22
石けりの石のいろいろ春深し
○41 ペンギンの頭の光る万愚節
○50
逆上がりの少女白木蓮散りぬ
○54 雨傘を束ねて捨てて昭和の日
【 中村時人 選(時) 】
○04 風かすか霞める街の音かすか
○19
ふらここの足着く所ぬかるみて
○27 おおとほり外せば御忌の寺おはす
○50 逆上がりの少女白木蓮散りぬ
○53
春暑し走れば尻を打つリュック
気になった句は
01 春泥を吐きキャタピラー前進す
05
行く道のか細くなりぬおぼろ月
11 春の風ため息ひとつ乗せてゆく
12 川面うつ雨に見とれる花見舟
54
雨傘を束ねて捨てて昭和の日
【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○01
春泥を吐きキャタピラー前進す 動き始めた機械は力強いですね。
○12
川面打つ雨に見とれる花見舟 ちょうどいい花見の時機に雨が、、、、。
○19
ふらここの足着く所ぬかるみて 待ちきれない春の喜びが感じられます。
○46
青空へ一糸まとわぬ白木蓮 気高さと堂々とした様子が強調されています。
○53
春暑し走れば尻を打つリュック 待ち焦がれていた春ですが、日中は暑い日が多いですね。
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
(今回はお休みです。)
【 小林タロー 選(タ) 】
○05
行く道のか細くなりぬおぼろ月 月に誘われ奥まで来てしまったかな。「か細く」の「か」はいらないかな?
○18
春月の射的屋に打つコルク弾 ちょっとした浮かれ気分もコルク弾と言ったところで少し醒めかけた感じが出ていて良かったです。
○27
おおどほり外せば御忌の寺おはす 思わぬであい。切れが欲しいですね。
○30
桜草じやうずに嘘をつきにけり 綺麗な嘘でもあったようです。季語移りするようで、春しか駄目なんですね。
○53
春暑し走れば尻を打つリュック 夏では走る気もしないです。走れば → 走るや ではどうでしょうか。
【 森田遊介 選(遊) 】
(今回はお休みです。)
【 小早川忠義 選(忠) 】
○08
花冷や野外ライブのビラ配り 計画したまではいいが当日開催には厳しい寒さ。それでも情熱は冷めない。
○24
花人がいきなり入り草野球 多く人が出ている花見の時期だからありうるエピソード。
○41
ペンギンの頭の光る万愚節 決して禿頭ではないのに光っているところが騙しても良いという風習に響いている。
○50
逆上がりの少女白木蓮散りぬ 白木蓮の葉が茂る頃には逆上がりも難なくできるようになって鉄棒にも近寄らなくなるであろう少女の直向きさ。
○53
春暑し走れば尻を打つリュック 「リュック尻を打ち」で取ります。お弁当が重くてお尻を打つくらいに垂れ下がってきっとそれは重い。
10
春の夜の方程式は解けぬまま 上五の最後の「の」は取っていい。
12
川面うつ雨に見とれる花見舟 もしかしたら見とれているからこそ一句にしようとしているのだからこの動詞は要らないのでは。
26
連敗の野球スパイクあたたかし 履いているスパイクがあたたかいのか、陽気があたたかいのかがはっきりしない。
32
開店に風船配るピエロかな かな止めで一本に仕立てるには惜しい。中で切って開店のにぎやかさを際立たせたい。
39
春寒や自衛隊機の低飛行 「低飛行」っていうのだろうか。やはり「低空飛行」と丁寧に言いたい。
48
牛丼を食べて蜆汁を飲む 牛丼にせよ蜆汁にせよ、どちらをどう頂いたかが知りたいところ。
【 石川順一 選(順) 】
○01
春泥を吐きキャタピラー前進す 季語は「春泥」。勇ましい様な感じで春泥を吐く。
○21
もひとつの顔試しをり新社員 季語は「新社員」。「もひとつの顔」と言う反面。試されて居る事から来る反動か。
○31
新聞の見出しに離婚つくつくし 季語は「つくつくし」。ツクシンボウが子を象徴して居る様で、少し不気味です。
○43
いとゆふのとろとろ転生のとちゆう 季語は「いとゆふ」。陽炎と転生。もわもわと何かが生成されつつあるような。
○53
春暑し走れば尻を打つリュック 季語は「春暑し」。リュックが尻を打つ。それでも走る。春の暑さが主客同一化して居る様な句。
以上5句選でした。他に
09
桜咲くいち日人に会はざりし 季語は「桜咲く」。頑固さか唯の現象か。桜の花との対比
13
降るな雨ソメイヨシノが泣いている 季語は「ソメイヨシノ」。痛切な願い、天も泣いて居る。
18
春月の射的屋に打つコルク弾 季語は「春月」。屋台を巡り遊びを楽しむ。
28
止まる先しばらく迷ふ白き蝶 季語は「白き蝶」。蝶の逡巡。春ののどかな情景。
38
パンジーや眠れぬ夜のをはりけり 季語は「パンジー」。よかった。回復の象徴の様なパンジー
39
春寒や自衛隊機の低飛行 季語は「春寒」。轟音があったのか分からぬ。「春寒」との繋がりぶり。
46
青空へ一糸まとわぬ白木蓮 季語は「白木蓮」。清浄な白木蓮
【 涼野海音 選(海) 】
○04
風かすか霞める町の音かすか 「かすか」というリフレインが効いている。霞という季語が溶け込んでいる。
○08
花冷や野外ライブのビラ配り ビラの質感がいかにも「花冷」に合っている。
○10
春の夜の方程式は解けぬまま 解けないままの「方程式」を、さてこれからどうするか・・・。
○24
花人がいきなり入り草野球 「いきなり」という言葉の挟み方が巧み。花人から草野球までの飛躍が素晴らしい。
○36
炒飯のすつかり冷めし朧かな 一見、詠めそうで詠めない。「すつかり冷めし」で一旦切れているところがポイント。
【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)
【 川崎益太郎 選(益) 】
○04
風かすか霞める町の音かすか かすか、のリフレインの妙。
○06 日に透けて魚卵めきたる桜かな 桜の芯は、目玉に見える。
○10
春の夜の方程式は解けぬまま 方程式は、やや食傷気味だが上手い。
○47 蕗の薹いつもの所いつも程 いつも程、が上手い。
○51
穴を出てすなはち蟻の穴普請 穴普請、が面白い。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○18 春月の射的屋に打つコルク弾
○24
花人がいきなり入り草野球
○41 ペンギンの頭の光る万愚節
○44 茫茫の蓬のなかや岬径
○53
春暑し走れば尻を打つリュック
【 水口佳子 選(佳) 】
○12 川面うつ雨に見とれる花見舟
○33 今生は君の隣のたんぽぽに
○41 ペンギンの頭の光る万愚節
○45 春月の近づいて来る母の郷
○54 雨傘を束ねて捨てて昭和の日
【 喜多波子 選(波) 】
○06 日に透けて魚卵めきたる桜かな
○18
春月の射的屋に打つコルク弾
○30 桜草じやうずに嘘をつきにけり
○35 潮の引く方へ磯巾着なびき
○54
雨傘を束ねて捨てて昭和の日
【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)
【 鋼つよし 選(鋼) 】
○09
桜咲くいち日人に会はざりし いろいろ想像できて対比がよい。
○19
ふらここの足着く所ぬかるみて 降りる段になりやっときづいたか。
○22
石けりの石のいろいろ春深し 石けりを楽しんでいるのだろうが、春深しがどんな感慨か。
○49
絵手紙にはみ出す程の辛夷かな 辛夷の句と絵手紙はきれいです。
○53
春暑し走れば尻を打つリュック 尻を打つリュックは誰しも経験あるところ。
【 小川春休 選(春) 】
○01
春泥を吐きキャタピラー前進す 耕運機のようなものだと思いますが、取り込んだ春泥を吐き出すようにして、力強く進んでゆく様子が見えてきます。
○06
日に透けて魚卵めきたる桜かな 魚卵にもいろいろありますが、いくらのような感じでしょうか。日に透ける花びらを下から見上げると、かなり赤みがかったように見える。その印象を「魚卵めきたる」と表現されたのでしょう。鮮度の高い表現だと思います。
○41
ペンギンの頭の光る万愚節 ほのぼのとばかばかしくて良いですね。ただ少し、下五で書き手自身が面白がり過ぎのような気もします。
○47
蕗の薹いつもの所いつも程 景自体は何の変哲も無い景でありますが、その落ち着いた口調に、そこで長年暮らす人の息遣いのようなものが自然と感じられる。じわじわと味が出てくるタイプの句です。
○54
雨傘を束ねて捨てて昭和の日 束ねて捨てられる傘、これは個人の持ち物ではなく、忘れ物などではないでしょうか。ビニール傘などが安く売られるようになったせいで、忘れた傘をそのまま捨ててしまうようなことも多くなったのでしょう。昭和と平成の生活者の意識の違いが垣間見える句です。
05
行く道のか細くなりぬおぼろ月 何か、桃源郷にでも迷い込みそうな。
07
つぎつぎと蕾開きし四月かな 言わんとすることは分かりますが、わざわざ言わなくても、元々四月はそういうものではありませんか。上五中七にあまり具体性がないので、一句が一般論の範疇に留まっています。
08
花冷や野外ライブのビラ配り あまり細々としたことは書かれていませんが、何だか客の入りの悪そうな野外ライブだな、という印象が伝わってきます。
10
春の夜の方程式は解けぬまま 雰囲気は分かりますが、「春の夜の方程式」とつなげることにも、「春の夜」という季語がこの句の中で働いているかについても、疑問が残ります。たとえば上五を「桜の夜」とするだけでも、印象はだいぶ変わってくる。
11
春の風ため息ひとつ乗せてゆく 雰囲気は分かりますが、雰囲気だけの句になっている気もします。
12
川面うつ雨に見とれる花見舟 一般的に俳句には、見えたものや聞こえたものを書きますので、「見る」「聞く」などという言葉を一句の中で使うと、その部分が無駄になってしまう場合が多い。この句の「見とれる」も、どちらかと言うと、不要という気がする。もっと雨の描写を丁寧にしていくことで、自然と雨に見入っていることが読み手に伝わるように書ければ、それが良いですね。
14
春宵や頭端駅にロケ写真 「頭端駅」の意味が分からず調べてみたところ、行き止まりの駅、とのこと。終着点の小さな駅に、いつぞやのロケ写真が飾られている。意地悪い言い方をすれば、ロケ地になったこと以外に目立つところのない駅なのでしょう。なかなか味のあるところに目をつけられたなと思いますが、季語がそれほど効いていないように感じます。
17
桜貝埋めて墓標を立てもして 桜貝に墓を作ってやったのだとしたら、変わった人だな、という印象。ペットなどを埋葬するのに、一緒に桜貝も埋めてやったのだとしたら、句の中にきちんとそう書かないと伝わらない。書くべきこと、書かなくても良いことの取捨選択が整理されていないと思います。
19
ふらここの足着く所ぬかるみて ぶらんこの下の足を着く所は周りより少し掘れてしまうので、そこに雨水が溜まったりしてぬかるむ。
20
お湿りや花弁で描く轍かな 「や」「かな」と切れが二つあり、まとまりのない句になっています。
22
石けりの石のいろいろ春深し 石蹴りとは、一つの石を蹴りながら目的地まで歩いていく遊びのことだと思っていたのですが、「石のいろいろ」というのが良く分かりません。ちょっと漠然としているように思います。
24
花人がいきなり入り草野球 中七の勢いがこの句の魅力なのですが、「入り」が少々曖昧かなとも感じました。具体的には打席に入ったか守備に入ったかなのでしょうが、細かいことを言おうとするとせっかくの勢いが無くなってしまう恐れもあるので、このままの方が良いような気もしています。
25
風呂洗ふ春のジャージをたくし上げ 冬の間は水が冷たくて辛かった風呂掃除も、春になると辛くなくなってくる。こういう所からも季節の移り変わりを実感として感じます。しかし、「春のジャージ」という言い方は少し苦しいかな、とも感じます。
27
おおどほり外せば御忌の寺おはす 飄々とした内容の句で好感を持ちましたが、「おはす」は寺に対して使う言葉でしょうか。基本は人に対して使うもので、例外的に仏像や山にも使われる用例を見たことがありますが、寺に対して使われるのは少し違和感があります。
31
新聞の見出しに離婚つくつくし 新聞に離婚記事の見出しが出るということは、大物芸能人かトップアスリートか。当事者にとっては一大事でも、一市民にとってはニュースの一つに過ぎない。そういう感じが季語の「つくつくし」からも感じ取れる。
33
今生は君の隣のたんぽぽに 俳句には事実しか詠み込んではならないという訳ではないですが、「今生」だとたんぽぽが俳句を詠んでいることになり、ちょっと違和感があります。たんぽぽの後に「のような人」という言葉が隠れている比喩と読むことも出来なくはないですが…。ここは「今生」ではなく「来世」や「前世」の方が良いのではないかとも思いました。
38
パンジーや眠れぬ夜のをはりけり これも「や」「けり」と切れが二つになっています。切れが二つだと百パーセント駄目、という訳ではありませんが、やはりまとまりがない印象の句になっているようです。
44
茫茫の蓬のなかや岬径 単なる道ではなくて岬径というところが良いですね。海風を感じる。中七は「蓬をゆける」などとしても良さそうです。
46
青空へ一糸まとわぬ白木蓮 確かに、白木蓮は何かを脱ぎ捨てたような咲きっぷりをしてますね。
49
絵手紙にはみ出す程の辛夷かな 字数が限られる俳句では、助詞一文字でも大きく印象が変わることもありますが、この句の場合、上五の「に」は素直に「を」とした方が、一句のまとまりも良くなるように感じます。
51
穴を出てすなはち蟻の穴普請 穴を出たかと思ったらすぐ穴の修繕に取り掛かるという。面白い場面を切り取られています。
52
電柱の鴉は見送るやしゃぼん玉 中七が思い切った字余りになっていますが、字余りにしなくてはならないほどの内容とは思えませんでした。
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