ハルヤスミ句会 第百七十六回

2015年6月

《 句会報 》

01 ドアノブの重き一日梅雨に入る    ルカ(沙・草・時・タ・佳・春)

02 五月雨や水色ふせん外れ落ち     春休(順)

03 枝離れ蝶になりたる花卯木      案山子

04 メモ用紙小さくたたみ梅雨の旅    ぐり(一・第・海)

05 駅頭や五月雨傘を華やかに      時人

06 蒲公英の絮にも知らんぷりをされ   第九(益)

07 引いてきた清水たゆたふ心太     案山子

08 打ち橋に農婦佇む風若葉       波子(時)

09 涼しげな八角ランタン吊り下がり   順一

10 ほころびをそのままにして更衣    ひろ子(沙・案・時・第・愛・タ)

11 花ユッカ音合せから始めやう     佳子(タ・ぐ・春)

12 衣更眩しき子等の膝小僧       遊介(時・奥・タ・海)

13 霧島の道の駅だけ躑躅咲く      タロー

14 麦茶には氷が四つ浮かび居り     順一

15 庭木にて爪研ぐ猫や梅雨晴間     時人(忠)

16 釣忍駅は都庁のおひざもと      忠義(案)

17 陸奥や逃げ水北へ北へゆき      タロー(忠)

18 缶ビール優先席のひじ掛けに     忠義(ル)

19 ひと駅を歩いてみやう夏至夕べ    第九(奥・佳)

20 花言葉悲しきものも業平忌      草太(沙・案・ぐ)

21 西瓜売り剥けし小鼻のさらに剥け   忠義(ぐ・春)

22 蟇山へ向かふ姿や山頭火       案山子

23 石段に坐り桑の実口に入れ      ぐり(順)

24 電線の巣立ち燕の並びかな      つよし

25 立ち話夏蝶の来て終わりたる     波子(第)

26 いつの間に雑草だらけ梅雨晴れ間   ひろ子

27 炎天の店先出されフルーツよ     つよし

28 六月の風を探しにゆく少年      ルカ

29 裏庭の一隅占めて小判草       つよし

30 昼寝して仮眠と成らぬ長さかな    順一

31 子供らの声は異国語夕薄暑      一斗(ル・草・第)

32 ひと騒ぎありてひつそり貸ボート   タロー(一)

33 蜂の巣の卵もろとも焼き落とす    一斗(海)

34 植田波端っこきっとくすぐったい   益太郎(春)

35 かすかなる塩素のにほひ造り滝    一斗(海・ぐ・鋼)

36 梅雨に入る机の隅の体温計      海音(草・一・忠・益)

37 手作りのくす玉割るや良寛忌     遊介

38 バナナ剥く朝のモーツァルトの中で  沙代子(ル・奥・佳)

39 丑三つにぎらり蝿取リボンかな    第九(愛・海)

40 売る人も買ふ人も遠花火見て     春休(ル・奥・ぐ)

41 父の日の少しくもれるナイフかな   海音(タ・忠・益)

42 子を背負ひ平和の願い五月雨     ひろ子(案・鋼)

43 一粒の雨に始まる海開        海音(沙・草・第)

44 あじさいの右目左目ホントの目    益太郎

45 倒れ寝る素足化粧も落とさずに    ぐり(一)

46 竹皮を脱ぐや白波五人衆       愛(佳)

47 虚をつかるサングラスして妻の母   草太(愛・益)

48 釣忍近くの人と目が合ひぬ      佳子

49 リサイクルショップに光る金魚玉   沙代子(順・海・益・佳)

50 梅雨晴や近間の旅を思ひ立つ     時人

51 歩道橋響かせ下りて来る浴衣     春休(案・時)

52 蚊を打ちて孫のハートをわしづかみ  愛(奥)

53 父に似し一言居士の氷菓売      波子(鋼)

54 やわやわと泳ぐ金魚の腹光る     遊介(沙・ル)

55 堰き止めて釣堀はにんげんのもの   佳子(愛)

56 金堂を消す夏霧や高野山       沙代子(鋼)

57 十薬の花のはびこる家の鬱      益太郎

58 ありんこの大き仕事を見てをりぬ   愛(草・一・順・鋼・春)

59 行く先のまだ定まらず遠花火     ルカ

60 ボガードと呼ばれし男水中り     草太(愛・忠) 





【 中原和矢 選(和) 】
(今回はお休みです。)

【 石橋沙代子 選(沙) 】
○01 ドアノブの重き一日梅雨に入る
○10 ほころびをそのままにして更衣
○20 花言葉悲しきものも業平忌
○43 一粒の雨に始まる海開
○54 やわやわと泳ぐ金魚の腹光る

【 ルカ 選(ル) 】
○18 缶ビール優先席のひじ掛けに  どんな方が飲んでいたのでしょう。。
○31 子供らの声は異国語夕薄暑  類想ありそうですが、季語がよく響いています。
○38 バナナ剥く朝のモーツアルトの中で  バナナとモーツアルト、ありそうでない組み合わせ。
○40 売る人も買ふ人も遠花火見て  一瞬の視線と音が、ドラマです。
○54 やわやわと泳ぐ金魚の腹光る  オノマトペと金魚のおなかの感触、いい味出してます。

【 青野草太 選(草) 】
○01 ドアノブの重き一日梅雨に入る
○31 子供らの声は異国語夕薄暑
○36 梅雨に入る机の隅の体温計
○43 一粒の雨に始まる海開
○58 ありんこの大き仕事を見てをりぬ

【 石黒案山子 選(案) 】
○10 ほころびをそのままにして更衣  気付いていてそのままというのはとっと頂けませんが、
○16 釣忍駅は都庁のおひざもと  釣忍はお江戸の工芸品とか聞いております。時代が変わってきておりますので、取り合わせに新鮮さを感じました。
○20 花言葉悲しきものも業平忌  「哀しい」の方がぴったり感があるとは存じましたが、業平忌が利いていると思います。
○42 子を背負ひ平和の願い五月雨  雨の中子供の将来の平和を祈る心持ちがよくわかります。「願ひ」ですね。
○51 歩道橋響かせ下りて来る浴衣  下駄の響きなんでしょうね。歩道橋と浴衣の取り合わせは面白いですね。

【 一斗 選(一) 】
○04 メモ用紙小さくたたみ梅雨の旅    
○32 ひと騒ぎありてひつそり貸ボート   
○36 梅雨に入る机の隅の体温計      
○45 倒れ寝る素足化粧も落とさずに    
○58 ありんこの大き仕事を見てをりぬ  

【 中村時人 選(時) 】
○01 ドアノブの重き一日梅雨に入る
○08 打ち橋に農婦佇む風若葉
○10 ほころびをそのままにして更衣
○12 衣更眩しき子等の膝小僧
○51 歩道橋響かせ下りて来る浴衣
 他に気になった句は
 07 引いてきた清水たゆたふ心太
 11 花ユッカ音合せから始めやう
 25 立ち話夏蝶の来て終わりたる
 29 裏庭の一隅占めて小判草
 47 虚をつかるサングラスして妻の母
 58 ありんこの大き仕事を見てをりぬ

【 土曜第九 選(第) 】
○04 メモ用紙小さくたたみ梅雨の旅  うっとうしい季節における小さな楽しみのワクワク感があります。
○10 ほころびをそのままにして更衣  伸び伸びとした自由さが伝わってきます。
○25 立ち話夏蝶の来て終わりたる  日常の中にある優雅さがとてもいい感じです。
○31 子供らの声は異国語夕薄暑  一日の軽い疲れの中で異国にでもいるような錯覚に襲われたのでしょうか。
○43 一粒の雨に始まる海開  あいにくの天気ですが夏本番の訪れを感じます。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○12 衣更眩しき子等の膝小僧  若さがあふれていますね。
○19 ひと駅を歩いてみよう夏至夕べ  健康にも俳句づくりにもよさそうですね。
○38 バナナ剥く朝のモーツアルトの中で  ゆったりした朝の始まりですね。
○40 売る人も買ふ人も遠花火見て  花火の音を聞きながら、夏の夜のにぎやかさが伝わります。
○52 蚊を打ちて孫のハートをわしづかみ  かわいらしいお孫さんが目に浮かびます。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
今回は選句のみでお願いします。
○10 ほころびをそのままにして更衣
○39 丑三つにぎらり蝿取リボンかな
○47 虚をつかるサングラスして妻の母
○55 堰き止めて釣堀はにんげんのもの
○60 ボガードと呼ばれし男水中り

【 小林タロー 選(タ) 】
○01 ドアノブの重き一日梅雨に入る  梅雨入りの実感がある
○10 ほころびをそのままにして更衣  実感がある。
○11 花ユッカ音合せから始めやう  あの花の咲きようは一からしっかり始めようという感じ。
○12 衣更眩しき子等の膝小僧  着るものが変わって成長が実感されたのだろう。ころもがえなら「更
衣」、衣更なら「衣更う」とするのが普通と思うが如何?
○41 父の日の少しくもれるナイフかな  詠み人の立ち位置が不明で読みづらいが、父はいずれにしてもそう輝く存在ではないでしょう。そういう意味ではやや当り前、という気もしますが〜

【 森田遊介 選(遊) 】
(今回は選句お休みです。)

【 小早川忠義 選(忠) 】
○15 庭木にて爪研ぐ猫や梅雨晴間  猫にもストレスがたまるというのと、今日くらいは放っておいてやろうという視点。
○17 陸奥や逃げ水北へ北へゆき  あまりに観念的のように見えたが、作者が移動すればそうなるかと納得して。
○36 梅雨に入る机の隅の体温計  季節の変わり目は体調の変化に戸惑うもの。それでも仕事は休めないから。
○41 父の日の少しくもれるナイフかな  実用的ではない、年に一度くらい空気にさらされるナイフの抜き身。作者の息遣いが聞こえてくる。
○60 ボガードと呼ばれし男水中り  「ボギー」じゃなしに「ボガード」といってるところからこのキャラの男性があんまり歓迎されていないのがわかる。ちょっと可哀相だが痛 快。
 55 堰き止めて釣堀はにんげんのもの  釣堀って夏の季語なのですね。「釣堀はにんげんのもの」が説明的にならない
ような言い回しが欲しかった。
 56 金堂を消す夏霧や高野山  多分下五を掘り下げれば高野山は「詞書」で十分なんだと思う。
 59 行く先のまだ定まらず遠花火  いつ行くのか誰が行くのか言葉を組みかえればニュアンスがもう少し違って来そう。遠花火がいい。

【 石川順一 選(順) 】
○02 五月雨や水色ふせん外れ落ち  季語は「五月雨」。梅雨の雨に水色のふせんではつきすぎではとも思いましたが、この句では即き過ぎでは無くてむしろ詩的効果を醸し出していると思いました。
○23 石段に坐り桑の実口に入れ  季語は「桑の実」。「石段に座り」に郷愁を感じました。郷愁だけでは無くて「口に入れ」と言う具体的な動作、この動作の負荷が、句を魅力的なものに。
○35 かすかなる塩素のにほひ造り滝  季語は「造り滝」。人造の滝には人為的な秘密が。
○49 リサイクルショップに光る金魚玉  季語は「金魚玉」。金魚鉢を発見して句作したくなった。リサイクルショップに金魚と言う取り合わせの魅力。
○58 ありんこの大き仕事を見てをりぬ  季語は「蟻」。自分よりも大きい蝶の死骸でも運んで居たのでしょうか。壮大な蟻の世界。
以下取れませんでしたが注目した句に
 15 庭木にて爪研ぐ猫や梅雨晴間  季語は「梅雨晴間」。猫の生態観察から出た句。

【 涼野海音 選(海) 】
○04 メモ用紙小さくたたみ梅雨の旅  メモ用紙に湿り気があることが、「梅雨の旅」から想像できました。
○12 衣更眩しき子等の膝小僧  「眩しき」が「子等」にかかっているのか、「膝小僧」にかかっているのか、少し気になりましたが、「衣更」の雰囲気は充分に伝わりました。
○33 蜂の巣の卵もろとも焼き落とす  何とも生々しいリアリルさがある句。
○39 丑三つにぎらり蝿取リボンかな  「丑三つ」という時間の限定が生きている。
○49 リサイクルショップに光る金魚玉  リサイクルショップという現代的な場所に注目したところが、面白い。

【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)

【 川崎益太郎 選(益) 】
○06 蒲公英の絮にも知らんぷりをされ  やや説明的であるが、作者の心境が読める。
○36 梅雨に入る机の隅の体温計  取り合わせが上手い。
○41 父の日の少しくもれるナイフかな  少しくもれるナイフ、が意味深
○47 虚をつかるサングラスして妻の母  サングラスの句として斬新。
○49 リサイクルショップに光る金魚玉  リサイクルショップには金魚玉が良く似合う。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○11 花ユッカ音合せから始めやう  花ユッカの花言葉は「勇壮」だそうだ。これからオーケストラの音合わせがはじまる。緊張感とわくわく感。花ユッカがとてもあっている。
○20 花言葉悲しきものも業平忌  恋多き業平は一体いくつの悲恋を経験したのだろうか。悲恋こそが恋の醍醐味なのかもしれないが。
○21 西瓜売り剥けし小鼻のさらに剥け  痛そうだ。鼻のみに焦点があたりさらに小鼻に。きっとランニングにビーサンだろう。イメージがふくらむ。
○35 かすかなる塩素のにほひ造り滝  衛生上、塩素が入っているのだろう。この現実感の中で見ている造り瀧。
○40 売る人も買ふ人も遠花火見て  切れのないだらだらの感じがこの句は心地よい。みな一瞬無口になってしまう、夏の夜の蒸し暑い空気感も感じるようだ。

【 水口佳子 選(佳) 】
○01 ドアノブの重き一日梅雨に入る  「ドアノブの重き一日」は実際にそうなのか、心象的なものなのか。梅雨に入ったのかと思うと、余計に憂鬱でもある。その意味ではツキスギかもしれないがモノに語らせたのが良かった。
○19 ひと駅を歩いてみやう夏至夕べ  なかなか暮れない夏至だからこそこういう気分にもなる。フレーズはありがちかとも思ったが季語が良いと思う。 
○38 バナナ剥く朝のモーツァルトの中で  バナナというありふれた食べ物とモーツァルトとの取り合わせがミスマッチで面白い。しかも朝のモーツァルトとはなんと気取った・・・ 
○46 竹皮を脱ぐや白波五人衆  白波五人衆が片肌を脱いで見栄を切る場面。すっくと立った竹も見栄を切っているのかも。 
○49 リサイクルショップに光る金魚玉  かつてはこの金魚玉の中に金魚が買われていたのだろう。今はリサイクルショップで光るだけ。金魚玉の物語がさまざまに想像できる。 

【 喜多波子 選(波) 】
(今回は選句お休みです。)

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○35 かすかなる塩素のにほひ造り滝  あるあるこんな経験という句
○42 子を背負ひ平和の願い五月雨  子を背負ひがよいと思う。
○53 父に似し一言居士の氷菓売  氷菓売りにしてなにを語るか興味有り
○56 金堂を消す夏霧や高野山  景色の大きさと、夏霧がよい。
○58 ありんこの大き仕事を見てをりぬ  見惚れる感じが伝わる。
 33 蜂の巣の卵もろとも焼き落とす、43 一粒の雨に始まる海開、55 堰き止めて釣堀はにんげんのもの も選句に入れたい句でした。

【 小川春休 選(春) 】
○01 ドアノブの重き一日梅雨に入る  ドアノブの重みと、いよいよ梅雨に入るという感じ。その響き合いは実感としてとても良く理解できます。しかし、ドアノブの重みを感じたのが一瞬のことではなく、「一日」であることから、すこし印象に鮮明さを欠いているようにも感じました。これを一瞬のこととして、より印象的に描写できれば、さらに良い句になりそうです。
○11 花ユッカ音合せから始めやう  ぱっと思い浮かんだのは高校の吹奏楽部。ユッカの花も、いかにも高校の正門や外周に咲いていそうな花です。セリフを句に詠み込みながら、場面や登場人物をありありと想像させているところなど、よく出来た句と思いました。
○21 西瓜売り剥けし小鼻のさらに剥け  内容はもちろん、中七下五の言い回しの小気味良さが、西瓜売りの売り口上をも想像させます。なかなかに巧みな句です。
○34 植田波端っこきっとくすぐったい  視覚的に感じるくすぐったさというのは確かにあります。くすぐりに弱い人なんかは、くすぐる真似をするだけでもうくすぐったかったりしますね。それと似たような感じで、植田に起こる波の端のざわめくような感じに、くすぐったさを感じている訳です。面白い感覚だと思います。
○58 ありんこの大き仕事を見てをりぬ  無為な時間、蟻の行き来を観察しているうちに、一心に仕事に取り組む蟻を見つける。それを「大き仕事」と感じるのも、自分がいつのまにか蟻の視点になっていたからかも知れません。
 03 枝離れ蝶になりたる花卯木  荒木田守武の〈落花枝にかへると見れば胡蝶哉〉の逆の発想ですね。
 04 メモ用紙小さくたたみ梅雨の旅  あまり長期の旅ではない、目当ては一つか二つくらいの短い旅、荷物も身軽にたたんだメモ用紙を携えて。そんな様子がしっかり見えてくる句です。
 07 引いてきた清水たゆたふ心太  先日俳句甲子園予選にて、一句全体のコーディネイトという話をしたのですが、「たゆたふ」という文語・旧かな表記に対して「引いてきた」という口語的なくだけた表現は不似合いです。文語と口語のどちらが良いという話ではなく、一句の中に混在すると、句がまとまりのない印象になるという話です。
 12 衣更眩しき子等の膝小僧  中七下五の内容が、季語から想像される範疇にとどまっています。こうなってしまうと、季語が読み手の想像を広げる働きもしてくれませんし、一句全体が季語の説明をしただけのようになってしまいます。
 13 霧島の道の駅だけ躑躅咲く  普通に自生している訳ではないのでしょうか。ちょっと不思議というか、意外な景です。
 14 麦茶には氷が四つ浮かび居り  暑い日にはキンキンに冷やした麦茶!という気分はよく分かりますが、下五の口ぶりが締まりがないというか、意図がよく分からない。もっときりっとした口調の句の方が、いかにも冷えた麦茶らしい印象が強まるのではないでしょうか。どのような内容を読むかだけでなく、どのような口調の句に仕上げるか、という点にも気を配って欲しいところです。
 15 庭木にて爪研ぐ猫や梅雨晴間  少々の雨なら猫は出かけるそうなのですが、猫も出かけられないほどの雨が続いていたか、久々の晴れ間に庭でくつろぐ様子が微笑ましいです。
 17 陸奥や逃げ水北へ北へゆき  どことなく、奥の細道の芭蕉翁の面影を感じるような句です。
 18 缶ビール優先席のひじ掛けに  優先席だからと言って、何の障害もない元気そのものの人が座っていても問題ない訳で(譲るべき相手が乗車してきたらすぐ譲ればOK)、そこに缶ビールがあったからと言っても、ふうん、としか思いません。走行中の車内にはとても立っていられないような年配の方や妊婦が優先席で缶ビールをぐいぐい飲んでいたら驚きますが…。「優先席」という言葉に語らせようとするのは、ちょっと難しいように感じました。
 22 蟇山へ向かふ姿や山頭火  でっぷりとした蟇蛙とその向かう先にある大きな山、そこに面影として浮かんでくる山頭火。大らかな印象の句です。
 27 炎天の店先出されフルーツよ  フルーツという言い方をすると果物全般のような印象を受けますが、実際は西瓜などでしょうね。炎天の店先に傷みやすい白桃などを置いていたら、売り物にならなくなってしまいます。
 31 子供らの声は異国語夕薄暑  この「子供らの声」、実際に異国語であったとも、日本語だが何を言ってるか分からないので異国語のように聞こえたとも読める。この辺りはきっちり読めばどちらか分かるように表現すべきではないかと思います。
 33 蜂の巣の卵もろとも焼き落とす  一応出来ている句ですが、「卵もろとも」と言ってしまうと少し把握・表現が大雑把になってしまう。一句の中で、大きな物から詠み始めて、そこから小さい物へと焦点を絞っていく。そうすることで発見の驚きを活かし、一句の鮮度を上げていく訳です。例えばこの句であれば、「焼き落としたる蜂の巣や卵燃え」などとする案が考えられます。
 38 バナナ剥く朝のモーツァルトの中で  バナナだけの軽い朝食といった所でしょうか。形に囚われず、のびのびとしていながらもどこか品があるところなど、モーツァルトの音楽に通じるところがありますね。面白い句です。
 41 父の日の少しくもれるナイフかな  完全に曇って古びているナイフ、という訳ではなく、少し曇っているというところに微妙な味があります。そこが父親像とも重なる。
 43 一粒の雨に始まる海開  海開きは梅雨が明けきらない時期にしますので、季語の持っている晴れやかなイメージとは裏腹に、実際には曇り空の海開きということも多いのでしょうね。この句はそういう景を実感を持って想像させてくれます。採りたかった句です。
 47 虚をつかるサングラスして妻の母  個人的には、妻の母がサングラスをかけていたからと言って、別に虚を突かれることもないので、今一つこの句もしっくり来ませんでした。日常生活の中で、サングラスはもう別に珍しいものでもないと思います。
 52 蚊を打ちて孫のハートをわしづかみ  中七下五の内容は、捉え方があまり具体的ではありません。その瞬間に、孫がどんな表情をしたか、どんなことを言ったか、そういう描写から、孫の心情が読み取れる句が理想ではないかと思います。
 54 やわやわと泳ぐ金魚の腹光る  金魚の腹の印象が目に浮かんでくる句ですが、「やわやわと」が「泳ぐ」に掛かっているとも「腹」に掛かっているとも読めるところが気になります。そう考えてくると、この句の主眼である金魚の腹を描写するのに、果たして「泳ぐ」が必要かという点まで気になってきます。ぜひ再考してみてください。
 55 堰き止めて釣堀はにんげんのもの  改まって「釣堀はにんげんのもの」と言われると、はっとさせられるものがありますが、釣堀で「堰き止めて」は当たり前のような気もします。
 59 行く先のまだ定まらず遠花火   三鬼の〈暗く暑く大群衆と花火待つ〉の影響か、私は花火というと群集の姿をセットで想像してしまいます。様々な人が、様々な所から集まって同じ花火を見上げ、ちりぢりに散らばってゆく。その中に一人、行く先の定まらぬ私がいる。群集の中での孤独を感じさせる句です。
 

 


来月の投句は、7月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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