【 中原和矢 選(和) 】
(今回はお休みです。)
【 石橋沙代子 選(沙) 】
○01 紫陽花の色ことごとく空の色
○14
そっぽ向き阿吽のふたりアマリリス
○16 犬よりも猫が好きです光秀忌
○17 蒸し出され天日に焦げる蚯蚓かな
○51
一本は死に化粧して夕牡丹
【 ルカ 選(ル) 】
(今回はお休みです。)
【 青野草太 選(草) 】
7月の選句です、
○01 紫陽花の色ことごとく空の色
○06
滝壺に途切るることのなき落下
○38 夕立や手暗がりなる仕事部屋
○53 カルピスの氷ことりと天花粉
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット
【 石黒案山子 選(案) 】
◎42
芋殻火や遅くなりしを詫びながら 何とも切なくなります。親近者を亡くし、お忙しい毎日をお過ごしの事と拝察できます。
○04
まいまいをじっと観る人鼻眼鏡 老人になろうとも、好奇心、学ぶ心は衰えません。ファーブルを再現。
○10
息吸うて草いきれとはこんな味 夏草の噎せるような草いきれ。それを「さらり」と表現されました。
○37
滴りにふるふるふると岩煙草 崖やいしずみの涼しいあたりに岩煙草は楚々とあります。滴りはいつもほぼ同じ処に落ちますが、岩煙草がそれを受けているのでしょう。「ふるふるふる」がとても生きていますね。
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット 広島のドームは鳥籠にも見えますね。
【 一斗 選(一) 】
○02 梅雨茸ぐわらんと夜が圧しかかる
○28
安住忌の風鈴高く吊りにけり
○46 夏蝶やケータイ切れてそれっきり
○53 カルピスの氷ことりと天花粉
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット
【 中村時人 選(時) 】
○04 まいまいをじっと観る人鼻眼鏡
○13
とんぼうの路上に着地せぬ気配
○16 犬よりも猫が好きです光秀忌
○52 こぼれむとするくずきり追うて口
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット
他に気になった句は
08 雲の峰灰色濃さを増して行く
12
腕を組む男ひとりや菖蒲園
02 梅雨茸ぐわらんと夜が圧しかかる
03 靴下の上から踵を蚊に刺され
【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○01
かもしだす紫陽花の色空に似し 言われてみればそうですね。微妙な変化がありますね。
※ 出句された句とかなり内容が違っています。紫陽花の句という点は共通していますが…。(世話役)
○09
白玉に蜜たつぷりや昼の恋 白玉と昼の恋の組み合わせが面白い。
○10
息吸うて草いきれとはこんな味 深く息を吸って確認した覚えがあります。
○11
自画像と違う自我像栗の花 栗の花の季語が効いています
○37
滴りにふるふるふると岩煙草 鎌倉の東慶寺でこの光景を見た記憶があります。
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○02
梅雨茸ぐわらんと夜が圧しかかる 「梅雨茸」と「夜が圧す」だけでも十分なのに「ぐわらん」です。”これでもか”と参りました。
○25
かなぶんぶん少年の日の宝箱 宝箱にはいろいろの宝を入れていましたね。「かなぶんぶん」もそのひとつ。生きていたのかしら。
○33
振り向かぬ夫を捨て置く朝雲 「朝雲」の季語に何やら不穏な気配を感じさせられます。
○34
明烏やけに騒ぐや麦湯沸く 突然ワット沸き上がる「麦湯」の季語が良くあっていると思います。
○52
こぼれむとするくずきりを追うて口 一瞬の出来事をとらえて、良く情景が見えます。体言止めですね。私も今度やってみます。
【 小林タロー 選(タ) 】
○19 化けて出るほどの憎しみ夏芝居
それも所詮は一夜の夏芝居、ということでしょう。
○30 朝凪や枕持ち上げればへにやと 朝から暑い、枕も昨夜の熱を持っている。
○42
苧殻火や遅くなりしを詫びながら 演歌にありそうな
○53
カルピスの氷ことりと天花粉 オンザロックの句は見たことがあります。天花粉が良かったです。
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット ドームの影を思い起させます。
【 森田遊介 選(遊) 】
(今回は選句お休みです。)
【 小早川忠義 選(忠) 】
(今回はお休みです。)
【 石川順一 選(順) 】
○10
息吸うて草いきれとはこんな味 季語は「草いきれ」。発想が面白いと思いました。
○15
長病みのニーチェを読むや蟻地獄 季語は「蟻地獄」。俳句にニーチェとは。
○25
かなぶんぶん少年の日の宝箱 季語は「かなぶん」。少年の日の想い出。
○39
ボランテアへお礼のビール箱積みに 季語は「ビール」。御褒美が有った
○42
苧殻火や遅くなりしを詫びながら 季語は「苧殻火」。何か事情があった。
以上5句選でした。他に
54
原爆の日の鳥籠のシルエット 季語は「原爆の日」。こんな俳句も面白いと思いました。
【 涼野海音 選(海) 】
○25
かなぶんぶん少年の日の宝箱 かなぶんをみて、少年の日を回想していると読みました。かなぶんがまぶしいです。
○42
苧殻火や遅くなりしを詫びながら 「詫びながら」という止め方に、臨場感が出ていると思いました。
○46
夏蝶やケータイ切れてそれっきり 携帯が切れて会話が途切れてしまった。その様子を夏蝶が見守っているようです。
○47
青嵐志士の墓標の連なりて 青嵐に志士の志の高さを感じました。
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット 原爆の日という重みのある季語と、「鳥籠のシルエット」というさりげない表現とを取り合わせたところが見事。
【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)
【 川崎益太郎 選(益) 】
○10
息吸うて草いきれとはこんな味 息吸うて、が気になったが、草いきれに味、が上手い。
○25
かなぶんぶん少年の日の宝箱 分かり過ぎるが、郷愁感をいただいた。
○27
一つ葉の群れを成したる孤独かな 群れの孤独はよく見るが、季語が効いている。
○50
白壁に蛾のだまし絵のやうにをり だまし絵、が上手い。
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット 原爆ドームは鳥籠に見える。言われて納得の句。平和の鳥籠であってほしい。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
すみません。今回は選句のみでよろしくお願い致します。
○09
白玉に蜜たつぷりや昼の恋
○12 腕を組む男ひとりや菖蒲園
○28 安住忌の風鈴高く吊りにけり
○41
夏掛にくるまれしまま小児棟
○54 原爆の日の鳥籠のシルエット
【 水口佳子 選(佳) 】
○10
息吸うて草いきれとはこんな味 「草いきれ」を嗅覚だけでなく味覚として捉えたところが良かった。さりげなく言っているけど一つの発見かもしれない。
○25
かなぶんぶん少年の日の宝箱 少年期には変なものを収集するものだ。つるつるした石ころとか、ビールの王冠とか・・・かなぶんの死骸もその一つだったのだろう。土の中に埋めたりしているのかもしれない。無邪気で少し残酷な少年の姿を思う。
○30
朝凪や枕持ち上げればへにやと こんなことも俳句になるのかと感心した。内容は馬鹿馬鹿しいけど「朝凪」の季語がぴったり。
○41
夏掛けにくるまれしまま小児棟 急に具合の悪くなった子を慌てて病院に連れて来たのだとわかる。親の不安や緊迫感が短い言葉の中に読みとれる。
○52
こぼれむとするくずきりを追うて口 「こぼれむとする」という少々古臭い言い回し、中7までの平仮名表記が、くずきりの弾力を表すような・・。景が見えてきてくすっとしてしまう1句。
【 喜多波子 選(波) 】
○02 梅雨茸ぐわらんと夜が圧しかかる
○09
白玉に蜜たつぷりや昼の恋
○19 化けて出るほどの憎しみ夏芝居
○21 鎌倉や寺も仏も梅雨篭
○30
朝凪や枕持ち上げればへにやと
【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)
【 鋼つよし 選(鋼) 】
○10
息吸うて草いきれとはこんな味 こんな味がよい措辞です。
○18
飛ぶこともできずに蟻の餌食なり 食われるものをうまく省略されたと思う。
○33
振り向かぬ夫を捨て置く朝曇 捨て置くときっぱりを買いました。
○51
一本は死に化粧して夕牡丹 死に化粧とはどんなものかイメージできませんが怪談を連想しました。
○54
原爆の日の鳥籠のシルエット 重い季題での俳句は大変ですが、よいと思いました。
そのほかよいと思う句
52
こぼれむとするくずきりを追うて口
43 ついてゆく人なかりけり道をしへ
41 夏掛にくるまれしまま小児棟
09
白玉に蜜たつぷりや昼の恋
【 小川春休 選(春) 】
○24
素麺の束解く間も逢いたき日 動作から、主婦っぽい印象を持ちます(別に若い男が素麺の束をほどいても良いのですが…)。生活感の中で、ふっと湧き上がる感情。束をほどかれてばらばらになった素麺、素麺を煮るために沸き立った湯。こうした景も、何か湧き上がる感情の動きとつながっているような。
○37
滴りにふるふるふると岩煙草 葉はそれなりにしっかりしていますが、茎はひょろっとしている岩煙草。確かに滴りが落ちてきたらこんな感じで揺れるんだろうな、と臨場感を持って想像されました。単純なようですが、オノマトペの「ふるふるふる」が岩煙草の様子にぴったりで良いですね。
○42
苧殻火や遅くなりしを詫びながら いろいろな準備などで手間を取られて、予定していたよりも苧殻火を焚く時間が少々遅れたのでしょう。その時に、故人に詫びながら焚くという景が、亡くなっても故人の存在がその家族の中に生きていることを端的に見せてくれています。
○43
ついてゆく人なかりけり道をしへ 追いかけると、逃げるように飛んでゆくことから「道をしへ」と呼ばれる斑猫。見れば、誰に追われるでもなくふらふらと飛んで行っている。何とはなしに、少し斑猫のさみしさを感じる景です。そんな斑猫を一人見送る、この句の詠み手も、何とはなしに、少しさみしいですね。
○47
青嵐志士の墓標の連なりて 一人の志士ではなく、数多くの志士の墓標が連なっている。幕末の、激動の時代を思い起こさせてくれます。青嵐から、周囲の自然までも見えてくる。
01
紫陽花の色ことごとく空の色 非常に綺麗な句ではあるのですが、景が出来すぎという印象も持ちました。「ことごとく」と、沢山の紫陽花の色が揃って全て空の色であると描写されているのですが、これだとちょっと揃いすぎじゃないか、と感じてしまうのです。これが「ことごとく」ではなく「それぞれに」とかですと、一つ一つの花には濃淡はありながら全体としては空の色である、というような感じにもなろうかと思います。この五文字分が、句の奥行きを左右するポイントですので、他にもいろいろ考えてみてください。
02
梅雨茸ぐわらんと夜が圧しかかる 非常に気になる句だったのですが、「ぐわらんと」が今一つ実感として理解できません。梅雨時の厚い雲の下では、夕暮れ時からはやばやと暗く、じとじとと重苦しい感じで夜が訪れます。「ぐわらんと」というオノマトペからは受ける印象は、こうした梅雨時の夜の感じとそぐわない気がします。
04
まいまいをじっと観る人鼻眼鏡 蕪村の句に〈春雨やものがたりゆく蓑と傘〉というのがありまして、これは蓑と傘がしゃべっているというのではなく(それだと妖怪ですね)、「蓑(を着ている人)」と「傘(を差している人)」という意味で用いられています。この句もそれに倣って、「まいまいをじつと観てをり鼻眼鏡」などとした方が、飄逸味も一段と深まろうかと思いますが、いかがでしょう。
05
七月やああ一秒の影の伸び 印象に残る句ではあったのですが、「一秒」が何の一秒のことか漠然としているように感じました。それと、「七月や」と言われて想像するような七月の日中の強い日差しの下では、「影」は「伸び」ず、濃くくっきりした短い影が落ちるのではないかとも思います。例えば朝早くから走っている人の影だとか、夕焼け時分の建物の影だとか、もう少し句の中で読み進む手がかりがないと成立しないと思います。
06
滝壺に途切るることのなき落下 私も大体年に一度、滝に吟行に行きます。好きな季題です。この句では滝壺とそこへ落ちる滝とだけを描写しています。「途切るることのなき」がポイントですが、「落下」は敢えて言わずとも当然のことという気もします。季題にそもそも含まれている、言わずとも当然という部分はとにかく省略して、滝をもっと踏み込んで捉えてみてください。
08
雲の峰灰色濃さを増して行く シンプルながら、丁寧に雲の峰を描写されている句。ただ、こういうシンプルな句は、「雲の峰灰色濃さを増しにけり」と文語的に言い切った方が句の力が断然増すような気がします。
09
白玉に蜜たつぷりや昼の恋 享楽的な恋の句です。若者というより、中年以降という感じもしますね。
15
長病みのニーチェを読むや蟻地獄 長病みで自らの身体は十分な状態ではない訳ですが、そういう状態だからこそ、ニーチェの力強さに心を捉われたのかも知れません。
16
犬よりも猫が好きです光秀忌 明智光秀という人も、芝居やドラマなどでは苛烈な信長とは性格的に合わない、清廉潔白の士のように描かれることもありますが、文献などから浮かび上がる人物像は必ずしもそうでもなかったりして、信長・秀吉・家康などと比べると、イメージのはっきりしない人ではあります。そういう点も含めて、どう読んで、どこを面白がれば良いのかよく分からない句でした。
18
飛ぶこともできずに蟻の餌食なり 蝉か蝶か、まだ息はあるが弱っている所を、蟻に狙われてしまっている。一つ気にかかったのは、「餌食なり」という表現が説明的かつ曖昧なこと。蟻の巣へと引かれているのか、それともその場で蟻に食われているのか。そしてその蟻の数は。こういう所が「餌食なり」ではよく分からないのです。そういう部分を下五でしっかり詠むことが出来れば、さらに力のある句になると思います。
19
化けて出るほどの憎しみ夏芝居 上五中七の内容を、下五で種明かししてしまっているようで、もったいない。ここは簡単に種明かししてしまわずに、もっと離れた季語を持ってきた方が、「憎しみ」が謎のまま残って、より印象に残る、気味の悪い句になるのではないかと思います。
22
虫刺され昨日ひとおつ今日みつつ 庭仕事や畑仕事をする人なのか、それともたまたま二日続けて刺されただけなのか。
25
かなぶんぶん少年の日の宝箱 ノスタルジーの句ですが、個人的には、宝箱に生き物は入れないような気もします。他の物につぶされてもいけませんし。それとも、この宝箱は実際の物というより、イメージとしての宝箱、ということでしょうか。
26
雪渓に弄ばるる声熱し 雪渓に弄ばれるとは、雪で思ったように行動できない、ということでしょうか。思わずヒートアップして声も熱くなったのでしょう。
28
安住忌の風鈴高く吊りにけり 俳人・安住敦の命日は七月八日。故人の温和な作風の句と相俟って、風情のある句となっています。
31
白南風や遺書の要点定まりぬ さまざまな気がかりが、取捨選択され整理されて、いくつかの大事なことに集約されていく。そうしたさっぱりとした心持ちが季語からも窺われます。
44
一縄以て苗朝顔の導とす そんなに変わった景ではありませんが、「一縄以て」とかしこまった言い回しで一句に仕立てた所が面白いですね。
45
ぼうふりに十円玉の効くといふ 墓の花立など雨水が溜まる所に十円玉を入れておくと、ぼうふらの発生を抑える効果があるのだとか。事実としては面白いのですが、俳句として面白いかというと、ふーん、で終わってしまうような気もします。
48
腕組みて五六歩退がる那智の瀧 大きな瀧の全容を見ようとして下がったのでしょう。よく分かる句です。
53
カルピスの氷ことりと天花粉 これはきっとすっかり天花粉を打ち終わって、涼しげになった場面でしょうね。よく冷えたカルピスでクールダウンして、汗もすーっと引いていきそう。
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