ハルヤスミ句会 第百七十八回

2015年8月

《 句会報 》

01 [手偏+宛] ぎたての胡瓜づくしに茄子づくし   つよし(ル)

02 割り切れぬ思いのままに切るスイカ   ルカ(沙・案・順・益)

03 首切りの浅右衛門居る極暑かな     順一(タ)

04 誰がための強行採決毛虫焼く      益太郎(鋼)

05 空蝉のうちがはを嗅いでみやうか    佳子(時・益)

06 七十年癒える事無し原爆忌       みすず

07 登頂のつぎつぎ消ゆる夏の霧      ひろ子(春)

08 芋虫を怖し怖しと見て居たり      愛(ル・春)

09 夏座敷せせらぐ渓の風通す       案山子(奥)

10 八月の8メビウスの輪になる怖さ    草太

11 草田男忌けやき並木を青山へ      時人

12 新涼や象にまぢかく雀来て       春休(時・順・海・佳・鋼・忠)

13 短夜や旅居にあれば飴むいて      タロー(鋼)

14 戦前の映画を見てる終戦日       ルカ(奥・波・鋼)

15 尾道をすつぽり包む大花火       沙代子(時・奥・春)

16 絵と文字の残暑見舞ひのメールかな   時人

17 「火花」という打揚花火一発屋     益太郎

18 畑覆ふ藷のつるなり敗戦日       つよし(み・時・タ・益・忠)

19 犬の子の後ろを歩く初嵐        海音(草・春)

20 白シャツは地元柄シャツは観光     タロー(案)

21 高原に花の祝宴露涼し         ひろ子(波)

22 四五人の子どもと月を待ちゐたる    海音(草・奥)

23 花鉢に水を飲ませて秋立てり      みすず

24 九階のベランダに干す竹夫人      草太(時・タ・波・忠)

25 虹消えてもう一枚の蝉の翅       佳子(一)

26 はるばると母は夜の夢夏の草      和矢

27 ヒロシマの鐘ごおおんと桔梗咲く    沙代子(波・忠)

28 サイフォンの下球満ちくる夜の秋    草太(案・一)

29 廃校の庭を横切る秋の蛇        ルカ(順・海)

30 涼新た腸閉塞の母と居る        順一

31 夏の花壇罵声の少し混じりけり     和矢(タ)

32 校門にいま誰もゐず初嵐        海音

33 人に来てホバリングせし赤とんぼ    愛(沙)

34 夏草や動物園の入り口の        和矢(海)

35 新涼の欄間より猫落ちて来し      春休(草・佳)

36 やうやうに里はまぢかや立葵      タロー(奥)

37 飛びながらそのまま秋の蝶となる    佳子(沙・一・順・益・波・春・忠)

38 本命は奴に非ず茗荷の子        案山子(み)

39 あれそれの通じる集ひ心太       ひろ子(ル・案)

40 鶏頭を見上げ見上げてのぼらぬ蟻    春休

41 君眠る高野しみじみ法師蝉       みすず

42 油照水は命のよりどころ        案山子(み)

43 宿題はあと一頁法師蝉         忠義(海)

44 鳩が飛び夾竹桃が咲いて居る      順一(佳)

45 銀漢や最後の青き客車往く       忠義(み・草・一)

46 秋の蚊についてくるかと聞いてみる   益太郎(沙)

47 稲の花苗字のごとき駅ばかり      忠義

48 萩揺るやかの人少し物足りぬ      愛

49 蝋燭も猫もだれてる残暑かな      時人

50 リュウグウノツカイ漂ふ星月夜     沙代子(◎案・ル・一・海・益)

51 墓洗ふ碑銘に読める戦死せり      つよし(沙)

52 メランコリ−癒やすや白きけふの百合  波子(み)

53 花カンナ有らぬ事言ふ老いふたり    波子

54 大蜘蛛の宙に揺れをる門火かな     波子(佳)

55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店      一斗(ル・草・タ・順・佳・鋼)

56 月涼し行灯並ぶ郭道          一斗

57 夕焼けや少年の日の森真黒       一斗  





【 小島みすず 選(み) 】
○18 畑覆ふ藷のつるなり敗戦日  母の芋蔓料理、モンペ姿が浮かんで来ます。
○38 本命は奴に非ず茗荷の子  色んな料理や薬味に役立つ茗荷、人にもたとえて言えそうな。
○42 油照水は命のよりどころ  ギラギラした夏日照り、そこにはやはり水が命です。
○45 銀漢や最後の青き客車往く  星雲の天の川に結びついて青き客車はすごく合っていて物語っています。
○52 メランコリ−癒やすや白きけふの百合  メランコリ−な気分の時に何とも清しい白百合がこの句を引き立てています。

【 中原和矢 選(和) 】
(今回は選句お休みです。)

【 石橋沙代子 選(沙) 】
○02 割り切れぬ思いのままに切るスイカ
○33 人に来てホバリングせし赤とんぼ
○37 飛びながらそのまま秋の蝶となる
○46 秋の蚊についてくるかと聞いてみる
○51 墓洗ふ碑銘に読める戦死せり

【 ルカ 選(ル) 】
○01 [手偏+宛]ぎたての胡瓜づくしに茄子づくし  夏真っ盛り、畑の恵みまるごと。
○08 芋虫を怖し怖しと見て居たり   一夜にして大きくなるこわさ。
○39 あれそれの通じる集ひ心太  同窓会の景でしょう。季語がよい。
○50 リュウグウノツカイ漂ふ星月夜  そんな夜の気分、わかります。
○55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店  いかにもありそう。

【 青野草太 選(草) 】
○19 犬の子の後ろを歩く初嵐
○22 四五人の子どもと月を待ちゐたる
○35 新涼の欄間より猫落ちて来し
○45 銀漢や最後の青き客車往く
○55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店

【 石黒案山子 選(案) 】
◎50 リュウグウノツカイ漂ふ星月夜  「漂ふ」が少し残念。お使いですから「迎へる」「来てゐる」、と言った方が俳句的かなーと、愚考しました。
○02 割り切れぬ思いのままに切るスイカ  「切る」がとても良く効いていると思いましたが、下五に異論があると存じます。俳句としては体言止めは常用と思いますが、調子は「スイカ切る」とした方が、僕は良いと感じますが、、、。
○20 白シャツは地元柄シャツは観光  なかなかおしゃれな俳句と勉強になりました。
○28 サイフォンの下球満ちくる夜の秋  八月にはいると、夜になって涼しさを感じます。僕も暑さにはめっきり弱くなりまして、このころの夜気にはほっといたします。そんな雰囲気が溢れるような感覚。夜に珈琲を淹れることから、その先のひとときの長さ、余裕みたいな感じがとても良いと思いました。
○39 あれそれの通じる集ひ心太  幼なじみか同級生の仲間か。気の置けない雰囲気を感じました。

【 一斗 選(一) 】
○25 虹消えてもう一枚の蝉の翅
○28 サイフォンの下球満ちくる夜の秋
○37 飛びながらそのまま秋の蝶となる
○45 銀漢や最後の青き客車往く
○50 リュウグウノツカイ漂ふ星月夜

【 中村時人 選(時) 】
○05 空蝉のうちがわを嗅いでみやうか
○12 新涼や象にまぢかく雀来て
○15 尾道をすつぽり包む大花火
○18 畑覆ふ藷のつるなり敗戦日
○24 九階のベランダに干す竹夫人
 他に気になった句は
 28 サイフォンの下球満ちくる夜の秋
 33 人に来てホバリングせし赤とんぼ
 39 あれそれの通じる集ひ心太
 44 鳩が飛び夾竹桃が咲いている
 54 大蜘蛛の宙に揺れをる門火かな
以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○09 夏座敷せせらぐ渓の風通す  心地よい涼しさが伝わってきます。
○14 戦前の映画を見てる終戦日  映画で知る戦前。
○15 尾道をすつぽり包む大花火  すっぽり包むにいろいろな想像ができます。
○22 四五人の子どもと月を待ちゐたる  幸せな場面ですね。
○36 やうやうに里はまぢかや立葵  季語の立葵が利いています。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
(今回は選句お休みです。)

【 小林タロー 選(タ) 】
○03 首切りの浅右衛門居る極暑かな  今年の猛暑は首筋、ふくらはぎに痛みを感じました。
○18 畑覆ふ藷のつるなり敗戦日  中七なり、と敗戦日にやや違和感ありですが、逼塞感がでていると思
います。
○24 九階のベランダに干す竹夫人  九階がなんとも中途半端で面白いです。
○31 夏の花壇罵声の少し混じりけり  上下入れ替えたいですが、そこらへんが俳句の個性とも。
○55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店  南瓜ばかりの店 がいいですね。

【 森田遊介 選(遊) 】
(今回はお休みです。)

【 小早川忠義 選(忠) 】
○12 新涼や象にまぢかく雀来て  暴れている象でなく物静かであることに夏の終りが響く。
○18 畑覆ふ藷のつるなり敗戦日  終戦日の人々の千々なる心の乱れ。
○24 九階のベランダに干す竹夫人  都会の夏。無機質なところが良い。あえて言うなら「干す」より違う言葉がいい。
○27 ヒロシマの鐘ごおおんと桔梗咲く  「かあん」じゃなくてごおんというのが既存のイメージ打破に一役買っている。
○37 飛びながらそのまま秋の蝶となる  季節の線引きは人の勝手。蝶は知らぬ存ぜぬで飛んでいく。
 05 空蝉のうちがはを嗅いでみやうか  一瞬「すてっちまおうか」を思い浮かべました。破調にする必然性が感じられなくて惜しい。
 10 八月の8メビウスの輪になる怖さ  その怖さが共感しうるシチュエーションに昇華できるかがポイントのような。
 15 尾道をすつぽり包む大花火  すっぽり包むくらいの花火なので「大」が余計だった。
 22 四五人の子どもと月を待ちゐたる  十四五本もありぬべしを思い浮かべる。四五人の必然性が月を待つのみじゃ弱い。
 30 涼新た腸閉塞の母と居る  合わない、か。
 32 校門にいま誰もゐず初嵐  秋の訪れは始業式より一足先。クラスメイトから少し浮いた存在として自らを感じる刹那。

【 石川順一 選(順) 】
○02 割り切れぬ思いのままに切るスイカ  季語は「スイカ」。心情を直裁に言いながら、むしろ具体的な心情は隠す。そのコントラストや矛盾のままに切られるスイカ。「スイカ」が骨董品に感じられるような句。
○12 新涼や象にまぢかく雀来て  季語は「新涼」。象と雀の大きさの違いに加えて初秋の「新涼」。色鳴き風や素風が、そして白秋が感じられる一句。
○29 廃校の庭を横切る秋の蛇  季語は「秋の蛇」。廃校には誰も居らぬ。この句では作者の自分すらが消えて「秋の蛇」のみがのさばって来る事が意識される事によって句の硬質性、物質性と言う強固さを手に入れた。
○37 飛びながらそのまま秋の蝶となる  季語は「秋の蝶」。「そのまま」が印象深い措辞。
○55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店  季語は「南瓜」。「無人駅」と言う上5の屹立。その緊張から一気に「南瓜ばかり」と言う季語を用いての弛みへと向かうコントラスト的表現ぶりが秀逸。

【 涼野海音 選(海) 】
○12 新涼や象にまぢかく雀来て  動物園の景でしょう。雀が象の近くに飛んで来た、おそらくまた飛び立ってしまうのでしょう。そこがいかにも「新涼」。
○29 廃校の庭を横切る秋の蛇  廃校の庭の寂しさに「秋の蛇」が合っていると思いました。
○34 夏草や動物園の入り口の  動物園の入口の夏草が、まるで入場者を見守っているかのようです。おそらくほとんどの人が、動物見たさに、早く中に入ってしまい、夏草には気づかないはず。
○43 宿題はあと一頁法師蝉  夏休みの宿題の途中でしょうか。「あと一頁」に「やっと終わる」という思いが、込められていますね。
○50 リュウグウノツカイ漂ふ星月夜  リュウグウノツカイというのは、大きな深海魚。星月夜に漂っているというところに、幻想的な雰囲気が出ています。

【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)

【 川崎益太郎 選(益) 】
○02 割り切れぬ思いのままに切るスイカ  まるごとのスイカを等分に切るのは難しい。割り切れぬ気持ちを持っておれば、なおさらであろう。
○05 空蝉のうちがはを嗅いでみやうか  空蝉に匂いがあると作者。視点が面白い。
○18 畑覆ふ藷のつるなり敗戦日  藷でなく、つるを食べた戦中戦後、敗戦日。
○37 飛びながらそのまま秋の蝶となる  夏蝶が飛んでいる。今日は立秋、そのまま秋の蝶となる。面白い捉え方。
○50 リュウグウノツカイ漂ふ星月夜  幻想的なきれいな句。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
(今回はお休みです。)

【 水口佳子 選(佳) 】
○12 新涼や象にまぢかく雀来て  暑い日には象の肌も灼けていそうだし、雀も敬遠しそう。象にまぢかく寄って来る雀たちがいかにも秋・・・と言った感じ。大きいものに寄って来る小さな生き物、この対比もいいと思う。
○35 新涼の欄間より猫落ちて来し 〈猫落ちて来し〉の捉え方におかしみがあっていただいた。いかにも気ままに生きている猫の感じ。欄間は猫のお気に入りの場所だったのかも。
○44 鳩が飛び夾竹桃が咲いて居る 〈鳩〉と〈夾竹桃〉と言えばどうしてもヒロシマへとイメージが広がる。淡々とした表現の良さ。余韻がある。
○54 大蜘蛛の宙にゆれをる門火かな あの世から蜘蛛の糸を伝って霊が下りて来るかのよう。大蜘蛛なのでそう思わされるのかも。不思議な空気感。 
○55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店 店と言ってもきっと青空市のようなたたずまいなのだろう。大きさも形も不揃いの南瓜。少しさびれた町、しかし実直な生活が見えて来る。

【 喜多波子 選(波) 】
○14 戦前の映画を見てる終戦日
○21 高原に花の祝宴露涼し
○24 九階のベランダに干す竹夫人
○27 ヒロシマの鐘ごおおんと桔梗咲く
○37 飛びながらそのまま秋の蝶となる 

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○04 誰がための強行採決毛虫焼く  17文字で社会的な句をものにするのは大変ですが毛虫焼くがなかなか良い。
○12 新涼や象にまぢかく雀来て  新涼とあっている。
○13 短夜や旅居にあれば飴むいて  家にしあれば何でもあるのだろうが、平和な句。
○14 戦前の映画を見てる終戦日  戦前の映画とは興味がひかれる。
○55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店  こんな地方もあるんだろうなと。
 選に入れたかった句
 07 登頂のつぎつぎ消ゆる夏の霧
 17 「火花」という打揚花火一発屋
 02 割り切れぬ思いのままに切るスイカ  等分に割り切れないのか、気持ちがわりきれないのか分かりにくい気がします。

【 小川春休 選(春) 】
○07 登頂のつぎつぎ消ゆる夏の霧  山頂から見渡せば、日差しに次々と霧が消されて行く。スケールの大きな景です。
○08 芋虫を怖し怖しと見て居たり  俳句において「見る」「聞く」は省略可能な場合が多い、という話を「14 戦前の」の句でもしていますが、この句では「見て居たり」が積極的な働きをして、一句の重要なポイントになっています。怖いなら見なければ良いのに、と分かっていても、怖いからこそ見てしまう。目を離すことができず、見続けてしまう。その時間はとても長く感じられることでしょう。その、継続的な状態が、「見て居たり」という表現から読み取れる訳です。
○15 尾道をすつぽり包む大花火  尾道での花火大会を、尾道から少し離れた所から見る。海に面しており、平地が少なく背後にはすぐ山がある尾道。それほど大きな町ではありません。そんな尾道の全景が目に浮かんでくるような句です。
○19 犬の子の後ろを歩く初嵐  まだ走り回ったりできるほど大きくなっていない、小さな子犬。強い秋風が来ると、押されたり立ち止まったり、それでもよたよた歩いて行く。それを見守る気持ちのあたたかさが自然と伝わってくるところがとても良い。
○37 飛びながらそのまま秋の蝶となる  〈秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる〉という和歌も思い出されますが、秋の訪れは、書き手の認識の中で起こっているのです。ふっと、秋が来たと感じる瞬間、目の前の夏蝶がそのまま秋の蝶に様変わり。そういう認識の面白さの句ですが、「飛びながら」の躍動感、瞬間性もしっかり効いています。
 04 誰がための強行採決毛虫焼く  国会では与党にも野党にももっと内容のある、噛み合った議論をしてほしいですね。「毛虫焼く」に苦い思いが窺われます。
 05 空蝉のうちがはを嗅いでみやうか  空蝉の内側を嗅ぐ、という発想自体に意外性があり、ビビッドなものなので、その点だけで一句にしてほしかったところです。「嗅いでみやうか」まで言ってしまうと、書き手の饒舌と感じられてしまい、もったいない気がします。しかし、「嗅いでみやうか」と言わずに五七五にすると余計な要素を盛り込んでしまいそうな気もするので、なかなか難しそうです。
 09 夏座敷せせらぐ渓の風通す  気分の良いことは確かに分かりますが、夏座敷も風通しも季語、イメージの近いものが揃い過ぎているように感じます。
 10 八月の8メビウスの輪になる怖さ  五七五には収まっていませんが、上五の字余りとして読めばすんなりと読めます。ただし、内容の方は、「八月」で太平洋戦争のことを暗示しているのだと思いますが、「怖さ」がちょっと唐突なようにも感じます。字余りで文字を多く使っている割に、「になる」という叙述は間延びしている印象もあります。より練られた句になる途中経過の句のように感じました。
 13 短夜や旅居にあれば飴むいて  我が家であれば、いろいろと時間を潰すものが揃っていますが、旅先のこと。何となく飴でも舐めようか、と。寝付けない短夜の一場面が臨場感をもって見えてきます。採りたかった句です。
 14 戦前の映画を見てる終戦日  俳句において「見る」「聞く」は省略可能な場合が多いですが、この句の「を見てる」という部分も省略しても良いのではないかと思います(省略が可能かどうかは、「見る」「聞く」などが句の中で積極的な働きをしているかどうか等から判断すべきでしょう)。どんな場所で、何人ぐらいで、どんな映画を見ているか。「を見てる」より、もっと押さえるべき点があるはずです。季語もツキスギのように感じます。
 17 「火花」という打揚花火一発屋  実際の、現物の花火ではなく、たとえとしての花火ですので、季題としての力は弱い。
 20 白シャツは地元柄シャツは観光  何度か口に出して読み上げてみましたが、「白シャツは地元」と「柄シャツは観光」が入れ替わった方が読み易く、すんなり頭に入ってくるように感じます。特に下五該当部分、「は観光」より「ツは地元」の方がリズムに乗りやすい。
 21 高原に花の祝宴露涼し  高原の花の中で何かの祝いの宴をしたのでしょうか。それともたくさんの花が咲き乱れる様を比喩として祝宴と表現したのでしょうか。高原の花と露とどちらに比重があるのかも分かりにくいですし、今一つ読み切れませんでした。
 23 花鉢に水を飲ませて秋立てり  これからまだまだ残暑は続くが、どうやら峠は越えたよ、と。花鉢を慈しむ心情が「飲ませて」に表れている。これも採りたかった句。
 25 虹消えてもう一枚の蝉の翅  最初の一枚は既に見つけていた。虹が消えた後に、もう一枚の蝉の翅を見つけたということでしょうか。不思議な読後感。
 28 サイフォンの下球満ちくる夜の秋  これは何ともおいしそう。
 29 廃校の庭を横切る秋の蛇  動詞の活用の話を少し。この句では「横切る」と連体形にしてあり、この形では秋の蛇そのものがクローズアップされます。これを「横切り」と連用形にすると、秋の蛇の動きの方が強調される。どちらが正しいとかいう話ではなく、動詞の活用だけで句の持つ意味が変わってくる。蛇の存在感を出したいのか、蛇のスピード感を出したいのか、よく考えて用いたい。
 30 涼新た腸閉塞の母と居る  季語のイメージから想像すると、少しは病状も安定されたところでしょうか。
 34 夏草や動物園の入り口の  雨も降り、暑さと日差しもあった今年の夏は、草がよく伸びました。動物園の入口の草取りも追いつかなかったか。
 39 あれそれの通じる集ひ心太  家族ではないが、長い付き合いで気心の知れた仲間同士。心太を食べているのも、行き付けの店でしょうね。良い雰囲気の句です。
 42 油照水は命のよりどころ  ごもっとも。ごもっともなのですが、それ以上何も言葉が出て来ない句です。俳句というよりことわざとか慣用句に近いです。
 43 宿題はあと一頁法師蝉  たくさんあった宿題がやっと終わる、という感慨に、夏休みの終わりが近いことへの感慨も見え隠れしています。
 44 鳩が飛び夾竹桃が咲いて居る  場所は示されていませんが、私には広島の街の景が目に浮かびました。
 47 稲の花苗字のごとき駅ばかり  中七下五、今一つよく分かりません。田中駅とか鈴木駅とか佐々木駅とかでしょうか。ただし、そういう駅名かと想像してみても、それがどういう場所なのか、特にイメージが湧いてきません。稲の花からは農村をイメージしますが…。イメージを喚起してくれるような駅名だったのなら、句の中にそのまま駅名を詠み込んだ方が効果的かも知れません。
 48 萩揺るやかの人少し物足りぬ  不可解なところのあるところですが、なぜか納得させられる。萩の揺らぎが、ふっと心の揺らぎを引き起こす。
 49 蝋燭も猫もだれてる残暑かな  内容は面白いと思うのですが、言葉づかいが気になります。「○○してる」という崩した言い方に「かな」はそぐわないのではないかと思います。
 50 リュウグウノツカイ漂ふ星月夜  「漂ふ」という言葉は、海の波間にも、空にも使える。リュウグウノツカイという魚の独特の存在感も相俟って、何やら夜の海と夜空との境が曖昧となってゆくような感じのする句です。
 53 花カンナ有らぬ事言ふ老いふたり  老いても茶目っ気を失わない、そんな二人と花カンナが合っているように感じます。涼しい時間帯の、井戸端会議か。
 55 無人駅抜けて南瓜ばかりの店  内容は面白いがこういう句はきっちり五七五に収めたい。南瓜を「かぼちゃ」と読めば全体では十七音ですがちょっと不自然な句またがり。「なんきん」と読めば下五が字余りになってしまう。どちらもテンポは良くない。無人駅を抜けると店、その動き・移動を活き活きと読ませるには、テンポの良さが大事。 

 


来月の投句は、9月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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