【 小島みすず 選(み) 】
(今回はお休みです。)
【 中原和矢 選(和) 】
(今回はお休みです。)
【 石橋沙代子 選(沙) 】
○06 大股で横切つていく野分かな
○17 踏切をふふと過るや木犀香
○21
名月や一億人を束ねしか
○36 虫すだく電話の声の語尾ふるへ
○49 天頂の満月と目の合ひしかと
【 ルカ 選(ル) 】
○19 女郎花あたりは風を絶やさずに 物語を感じます
○21
名月や一億人を束ねしか つかみがきいています
○32 十月を幾度巻くぞよオルゴール 浪漫があります
○42
焼き栗の片割れもらふ誕生日 こちらは分かち合うちいさな幸せ
○50 秋晴の空の高さに背を伸ばす 詩情あり
【 青野草太 選(草) 】
(今回はお休みです。)
【 石黒案山子 選(案) 】
○01 川風や朱の抜けてきし彼岸花
○06 大股で横切つて行く野分かな
○31
湯屋の名はしろがねこがね櫨紅葉
○33 この庭を終の住みかにすがれ虫
○50 秋晴の空の高さに背を伸ばす
【 一斗 選(一) 】
○18 満月やミンチコロッケ噛りつく
○34
今朝秋の橋の途中に脱げし靴
○44 冷まじや百人一首に百の首
○46
曼珠沙華ところどころの記憶消ゆ
○47 天球儀ゆっくり回す神無月
【 中村時人 選(時) 】
○05 引越しの荷の隙間より拝む月
○18 満月やミンチコロッケ噛りつく
○29
この庭に絶えることなく杜鵑草
○36 虫すだく電話の声の語尾ふるへ
○50
秋晴の空の高さに背を伸ばす
他に気になった句は
01 川風の朱の抜けてきし彼岸花
03
泡立草風這ひ上がる空地かな
04 蟷螂の岬の風に振り向きぬ
22 しまなみの自転車街道敬老日
40
湧水の小流れとなり胡桃落つ
【 土曜第九 選(第) 】
(今回は選句お休みです。)
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○01 川風や朱の抜けてきし彼岸花 実景ですね。
○07
自家用はみなで稲架掛け天日干し 天日干しに家族の収穫の喜びがあふれていますね。
○34
今朝秋の橋の途中に脱げし靴 ちょっと立ち止まってと言われているような。
○35
秋深きトンネルの灯の蜜柑色 トンネルの中にも秋の深まりを感じます。
○50
秋晴の空の高さに背を伸ばす 秋晴れの気持ちよさが伝わってきます。
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
今月は選句のみでお願いします。
○01 川風や朱の抜けてきし彼岸花
○27
ちらと見て過ぎる婦人や花臭木
○42 焼き栗の片割れもらふ誕生日
○45 珈琲のおかわり欲すそぞろ寒
○46
曼珠沙華ところどころの記憶消ゆ
【 小林タロー 選(タ) 】
○04
蟷螂の岬の風に振り向きぬ 類想があるかもしれませんが、振り向くとしたところが良かった。
○06
大股で横切つていく野分かな 一読、自分が横切るように読んだが、野分が日本を横切るのですね。大きく、スピード感もあって良いと思いました。
○16
湯治場の坂道険し初紅葉 田甫は倅夫婦に任せ湯治場へ、山には早々に秋の訪れ、という感じ。
○34
今朝秋の橋の途中に脱げし靴 不思議な景だか、今朝秋ならありそうな
○50
秋晴の空の高さに背を伸ばす 秋晴や でいただきます。ふと、浮世をわすれ、天地の間に背を伸ばすという感じです。
【 森田遊介 選(遊) 】
(今回はお休みです。)
【 小早川忠義 選(忠) 】
○01 川風や朱の抜けてきし彼岸花 風が冷たくなってきて、冬が近付いてくる。
○04
蟷螂の岬の風に振り向きぬ 強くて冷たい風に蟷螂が振り向いたように見える刹那。
○13
勝角力背中丸めて小走りに いろんなものを授かってやんややんやの大喝采。敗者より気恥ずかしかったりして。
○43
鬼の子のくりくり覗く簑の端 その蓑から透けてお子さんの体まで見えているところまで読める。
○51
マスカラや瞳は秋に見開かれ 光がやさしくなったのか、恋が深まったか消えたかで新しい決意が出たのか。
03
泡立草風這ひ上がる空き地かな 「風這ひ上がる」がどこかで見たことのあるような。
10
日向より日陰へ秋のボートかな 秋でなくても良さそう。
18
満月やミンチコロッケ噛りつく 許されそうなのは「コロッケ」「メンチカツ」までかもしれない。熱かったり味が濃かったりもう少し字数を制限して違ったことを詠んだほうが
良さそう。
30 泣かされた本読み終へてふかし藷 「五分だけ泣いて洗濯栗の花」なんて句もあった。
35
秋深きトンネルの灯の蜜柑色 蜜柑に着目すればもっと良くなりそう。「秋深き」で片付けたくない。
47
天球儀ゆっくり回す神無月 上と下を入れ替えたらオチを付ける形でなくなるのでは。
48
病室の夜林檎の香剥けてゆく 香りが剥けていくという表現は受け入れられにくい。
【 石川順一 選(順) 】
(今回は選句お休みです。)
【 涼野海音 選(海) 】
○06
大股で横切つていく野分かな 大股というのが作者だけでなく、「野分」の擬人化にもなっているようで、注目しました。
○22
しまなみの自転車街道敬老日 高齢者の方もサイクリングを楽しんでいるのでしょう。
○35
秋深きトンネルの灯の蜜柑色 トンネルの灯に注目して、それを蜜柑色と把握したところがみごと。
○36
虫すだく電話の声の語尾ふるへ 「電話の声の語尾がふるえへ」に臨場感があって良いと思いました。
○47
天球儀ゆっくり回す神無月 天球儀という珍しいものに注目したところがいい。神無月も意味深長な取り合わせ。
【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)
【 川崎益太郎 選(益) 】
○18
満月やミンチコロッケ噛りつく 満月とコロッケの取り合わせ。きれい過ぎると壊したくなる。噛りつくが上手い。
○21
名月や一億人を束ねしか 今、はやりの1億という言葉。名月なら納得。
○24
バージンロード秋風を介添に 秋風は気持ちの良い風だが、裏でもう秋風が吹いている、という不安感も読める句。
○44
冷まじや百人一首に百の首 目のつけどころが斬新。季語が効いている。
○46
曼珠沙華ところどころの記憶消ゆ 曼珠沙華をよく見ると、切れ祈入れの花弁が、集まっている。それは記憶をなくした脳のように見える。目のつけどころが上手い。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○01
川風や朱の抜けてきし彼岸花 盛りのあのインパクトのある朱色が少しぼやけてきている河原のもの淋しい秋の景がよくわかる。
○10
日向より日陰へ秋のボートかな 秋といっても日ざしがまだまだ強い日も多い。デートでしょうか。上着を脱ぎつつ汗をふきつつ、日蔭へ移動。幸せな句。
○42
焼き栗の片割れもらふ誕生日 こんなささやかな誕生日プレゼント。かえって忘れられない。
○44
冷まじや百人一首に百の首 百人一首。何故か首より頭とか衣裳に目がいっていた。確かに百の首です。
○51
マスカラや瞳は秋に見開かれ 見開かれという言葉が、茫然とした放心状態に感じられて、何か不穏な空気感もある少し怖い句。そこにひかれた。
【 水口佳子 選(佳) 】
○05
引越しの荷の隙間より拝む月 まだ片付かない部屋の、カーテンもない窓から見える澄んだ夜空と月。あわただしい1日の終りの少しほっとした時間。「月」を最後に持ってきたことで、月の明るさが強調された。
○13
勝角力背中丸めて小走りに 勝力士は帰るとき背中をぱちんぱちん叩かれていますよね。そうそう小走りに去っていきます。見たままだけどよく見ていたからこそ。
○19
女郎花あたりは風を絶やさずに 秋草には風がよく似合うと思う。吾亦紅でも芒でもいいようなものの、字面から受ける印象から女郎花を元気づけている風・・・ともとれる。
○34
今朝秋の橋の途中に脱げし靴 「橋」はそれだけで物語がありそうな言葉。途中で脱げた靴は夏への未練とも。
○35
秋深きトンネルの灯の蜜柑色 トンネルの灯の色はいつも同じなのかもしれないが蜜柑の色づく季節だからこそ出てきた「蜜柑色」という言葉。オレンジ色ではない蜜柑色、この限定が良かった。
【 喜多波子 選(波) 】
○07 自家用はみなで稲架掛け天日干し
○17 踏切をふふと過るや木犀香
○20
劇場に拍手ひびける良夜かな
○30 泣かされた本読み終へてふかし藷
○47 天球儀ゆっくり回す神無月
【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)
【 鋼つよし 選(鋼) 】
(今回はお休みです。)
【 小川春休 選(春) 】
○09
秋の蛇眼閉づれば何もかも 爬虫類ならではの、独特な眼を持つ蛇。人間とは別種の思慮深さを感じます。蛇は眼を閉じませんので、眼を閉じるのは人間の方。秋の蛇が思い起こさせる記憶に、想像が広がります。
○10
日向より日陰へ秋のボートかな あっさりとした書きぶりながら、景、雰囲気ともにじわじわと感じられる句です。ボートに乗るぐらいですから、そんなに悪天候ではなく、好天だったのでしょうが、日陰に入ると少しは肌寒さなども感じたでしょうか。
○42
焼き栗の片割れもらふ誕生日 「焼き栗の片割れ」ということは、二人で分けっこして食べた訳ですね。ささやかながら、嬉しい誕生日です。「焼き栗」から想像が広がりますし、「片割れ」というところに着目したところも良いですね。
○46
曼珠沙華ところどころの記憶消ゆ 記憶が消えていることに何故気付くか。それは残った記憶の欠片から、そこに何かの記憶があったことだけを思い出すからです(欠片も残さず綺麗さっぱり消えてしまえば、記憶が消えたこと自体にも気づきません)。その記憶の欠片と曼珠沙華とが、脳裏でリンクする部分があったのでしょう。視覚を活かした面白い把握です。個人的には、下五を「記憶消え」と言い流した方が良いように思います。上五・下五の末がどちらもエ音になり、句全体の響きも良くなります。
○49
天頂の満月と目の合ひしかと 大きな月、それも月の表面の斑までくっきり見えるほど、よく見える月だったのでしょう。予想以上の月の鮮明さが伝わってきます。
02
自他ともに許すわがまま曼珠沙華 曼珠沙華と合わされることで、「わがまま」に振る舞う自由気ままさよりも、どこか寂しさの方がウエイトが重いような、微妙な味わいの句になっていますね。
04
蟷螂の岬の風に振り向きぬ 蟷螂が風に振り向く所までなら比較的目にする部類の句だったかもしれませんが、「岬」のおかげで、海の広がりや風の匂いまでも感じる句になりました。
07
自家用はみなで稲架掛け天日干し 「稲架掛け」というものは当然「天日干し」にするためのものなので、下五は言わずもがなでしょう。家族で食べる分をみなで稲架掛けした、その作業中の印象的な一場面一場面を、もっと丁寧に句に仕立てて欲しいところです。
08
切って良し絞ってなお良しレモンかな 下五を「かな」で受ける句の形としては、上五中七がぶつ切りになっている感じがして落ち着きません。
11
芋虫の蔓で休憩中を眺め どうも五七五に全部詰め込もうとしているような印象です。「眺め」までわざわざ言わず、芋虫の様子をもっと踏み込んで描写してほしいところです。
13
勝角力背中丸めて小走りに 番付で言うとまだまだ下の方、という印象の力士ですね。
14
吊橋を渡り羚羊振り向きぬ 吊橋を渡って、それから振り向く。時間にすると結構な長さのある動きで、句としても少し間延びしている印象です。例えば「吊橋の先に羚羊振り向きぬ」などとすれば、振り向いた瞬間だけに内容が絞られます。
15
四世代揃い最後の運動会 なぜ最後なのでしょうか。来年も四世代揃って運動会できないものでしょうか。その辺りの経緯が分からない者には今一つ読み切れない句です。
16
湯治場の坂道険し初紅葉 一応まとまってはいるのですが、少し素っ気ない印象です。「坂道険し」と感じるに至った経緯や、そこで疲れたとか一休みしたとか、書き手の姿や動きを句の中に活かすことで、実感として坂道の険しさを読み手に伝える方法もあろうかと思います。
18
満月やミンチコロッケ噛りつく いかにも月見といった料理も良いですが、ミンチコロッケもなかなか良いですね。「噛りつく」の気取らない感じも良い。
21
名月や一億人を束ねしか 「や」で大きく切れているので、名月が一億人を束ねた、という読みが成立するかは微妙なところ。書き手がそう読ませたいのであれば、上五で切るべきではないでしょう。
27
ちらと見て過ぎる婦人や花臭木 目立つ句ではありませんが、確かに臭木の花ってこういう感じですよね。人物と景との両方が見えてきます。こなれた句です。
30
泣かされた本読み終へてふかし藷 人間味のある、表情豊かな人物が目に浮かぶ句ですが、気になる点があります。この書きようだと、「読み終へ」たのが今だとすれば、「泣かされた」のはいつのことなのか、という所が非常に曖昧です。「泣かされた」のはついさっき、とも読めるし、何年も前、子供の頃に読んで「泣かされた」とも読める。ついさっき泣いたパターンであれば、「泣きながら本読み終へて」などとすれば、ほぼ同時進行ということが分かるように詠めます。だいぶ前に泣かされたパターンであれば、もうちょっと言い方に別の工夫が必要かと思います。再考してみてください。
32
十月を幾度巻くぞよオルゴール 「十月」という季語が、どれだけ効いているか。この句の内容であれば、シンプルに「この秋を」などとした方が、すっと入って来やすい句になるのではないかと思います。
34
今朝秋の橋の途中に脱げし靴 何でしょう、何か不思議な句ですね。物語の始まりの場面のような、気になる句です。
36
虫すだく電話の声の語尾ふるへ 雰囲気は良いと思うのですが、上五の季語も聴覚、中七下五も聴覚のことと重なっているので、少しうるさく感じてしまいます。もっと中七下五を引き立てる季語があるのではないかと思います。
39
むつかしき其の日暮しや後の月 気楽そうに見えても、性分に合わない人にはその日暮らしも難しいもの。私も合わなそうです。
45
珈琲のおかわり欲すそぞろ寒 寒いから暖かい飲み物を欲する、というのでは、単なる原因・結果だと思います。
50
秋晴の空の高さに背を伸ばす 気分の良い句ではあるのですが、「空の高さ」という部分は、元々「秋晴」という季題に含まれている内容ではないでしょうか。
51
マスカラや瞳は秋に見開かれ 印象的な句ではありますが、「秋」では季語が大きすぎて、少し漠然としてしまっているようにも感じます。秋の季語で二音で収まるものと言えば、月、萩、荻、露、などが思い浮かびますが、これらの季語の方が句に具体性が生まれ、しっかりすると思います。
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