ハルヤスミ句会 第百八十一回

2015年11月

《 句会報 》

01 秋雨の日暮れの静か缶ひろふ     和矢

02 きれい過ぎるバウムクーヘン穴惑   益太郎(タ)

03 腕一杯柿を抱へて来るなり      つよし(案)

04 菊まつり浮世絵ばかりみて帰る    タロー(忠)

05 星流る電波望遠鏡の影        一斗(沙・愛)

06 烏瓜崖より提がり父逝けり      忠義(海・春)

07 菊人形みな宝塚星組風        草太(タ)

08 神立や故障してゐるドライヤー    沙代子(タ・波)

09 女との議論勝てざり秋の天      和矢

10 晴れやすく曇りやすしよ冬紅葉    春休(益)

11 きのふけふ入つたり出たり穴惑    案山子

12 音もなくハイブリッド車冬の立つ   忠義(愛)

13 屑ながく鉛筆削る小春かな      春休(第・奥・愛・タ・忠・佳)

14 留守番の子の見上げゐる冬木の芽   海音(一・佳・春)

15 雲上に御光広がる秋の暮       ひろ子(第)

16 眠る山ごときの父を葬りたる     波子(案)

17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ   愛(◎案・沙・草・時・忠・海・益・佳・波・鋼)

18 冬支度今年は苗を枯らすまじ     つよし

19 大根引く土偶の尻の大いなる     愛(沙・案・時・第・タ)

20 芭蕉葉を解くやすなはち破れをる   タロー(案)

21 止められぬくしゃみ三回冬に入る   ひろ子

22 駅蕎麦を忙しくすするあごマスク   時人(一・奥・愛)

23 祈りつつ頭突き合うラガーマン    益太郎

24 病床の友如何ならん冬隣       案山子

25 冬薔薇や血を吸えば鉄棒の味     時人(草・波)

26 松ぼつくり拾う小春の園児かな    第九(海)

27 海鳴りは休むことなし星流る     一斗

28 給食は頼みの綱や夜学生       時人(奥・鋼)

29 木の実雨ダルメシアンに声掛けて   波子(海・佳)

30 妄想のざわざわ浮かぶ針供養     愛(一・奥・益・鋼)

31 あたふたと遅参を詫びる冬帽子    草太(沙・時)

32 杖をつく母が遅るる小春かな     第九(波)

33 身に入むや無音無風の有磯海     タロー(忠・鋼)

34 冬館線香の火を絶やさずに      忠義(鋼・春)

35 残菊の妖しき迄の色香かな      案山子(第)

36 焼き芋を売り歩きたる人笑ふ     和矢

37 秋の蝶あれもこれもと触れまはる   佳子(第・愛)

38 落葉降る鳩の嘴せはしなや      つよし(沙・一)

39 コンビニのおでんのごとき余生かな  益太郎(忠・波)

40 肩幅のやうなものありて冬瓜     佳子

41 にごりなき川に沿ひゆく七五三    海音(春)

42 水の向かうは案山子の村であるらしい 佳子

43 落葉散る音にかすかな胸騒ぎ     一斗(益)

44 正面に力士の手形煤払        海音(一・佳・春)

45 ロープウェイ風止みはるか雪の富士  ひろ子(草)

46 嶺に雪ミンク襟巻ちと無口      波子

47 割られるまで鶏になる気の寒卵    草太(益)

48 神主の留守をあづかる雪達磨     沙代子(草・時・海)

49 出番待つフラの踊り子帰り花     第九(草)

50 学生の大きなかばん時雨を駆け    春休(時)

51 薄氷に透ける魚影の無言劇      沙代子(奥)   





【 小島みすず 選(み) 】
(今回はお休みです。)

【 中原和矢 選(和) 】
(今回は選句お休みです。)

【 石橋沙代子 選(沙) 】
○05 星流る電波望遠鏡の影
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ
○19 大根引く土偶の尻の大いなる
○31 あたふたと遅参を詫びる冬帽子
○38 落葉降る鳩の嘴せはしなや

【 ルカ 選(ル) 】
(今回はお休みです。)

【 青野草太 選(草) 】
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ
○25 冬薔薇や血を吸えば鉄棒の味
○45 ロープウェイ風止みはるか雪の富士
○48 神主の留守をあづかる雪達磨
○49 出番待つフラの踊り子帰り花
 以上です。

【 石黒案山子 選(案) 】
◎17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ
○03 腕一杯柿を抱へて来るなり
○16 眠る山ごときの父を葬りたる
○19 大根引く土偶の尻の大いなる
○20 芭蕉葉を解くやすなはち破れをる

【 一斗 選(一) 】
○14 留守番の子の見上げゐる冬木の芽 
○22 駅蕎麦を忙しくすするあごマスク 
○30 妄想のざわざわ浮かぶ針供養  
○38 落葉降る鳩の嘴せはしなや  
○44 正面に力士の手形煤払  

【 中村時人 選(時) 】
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ
○19 大根引く土偶の尻の大いなる
○31 あたふたと遅参を詫びる冬帽子
○48 神主の留守をあづかる雪達磨
○50 学生の大きなかばん時雨を駆け、
 他に気になった句は
 03 腕一杯柿を抱へて来るなり
 14 留守番の子の見上げゐる冬木の芽
 21 止められぬくしゃみ三回冬に入る
 37 秋の蝶あれもこれもと触れまはる
 41 にごりなき川に沿ひゆく七五三

【 土曜第九 選(第) 】
○13 屑ながく鉛筆削る小春かな  ゆったりとした時間の流れが感じられます。
○15 雲上に御光広がる秋の暮  スケールの大きさが実感できます。
○19 大根引く土偶の尻の大いなる  女性の生命力の強さを連想しました。
○35 残菊の妖しき迄の色香かな  妙齢の女性の魅力に通ずるものを感じます。
○37 秋の蝶あれもこれもと触れまはる  この瞬間を一生懸命生きる姿でしょうか。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○13 屑ながく鉛筆削る小春かな  縁側で、肥後守を使ってゆったりと削っている景がうかびます。
○22 駅蕎麦を忙しくすするあごマスク  風邪でも休んでいられませんね。お大事に。
○28 給食は頼みの綱や夜学生  給食を食べて、もうひと頑張りですね。
○30 妄想のざわざわ浮かぶ針供養  何やら不穏な気配が。 
○51 薄氷に透ける魚影の無言劇  どんな劇と想像したのでしょうか。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
選句のみでおねがいします。
○05 星流る電波望遠鏡の影
○12 音もなくハイブリッド車冬の立つ
○13 屑ながく鉛筆削る小春かな
○22 駅蕎麦を忙しくすするあごマスク
○37 秋の蝶あれもこれもと触れまはる
 以上です、よろしくお願いします。

【 小林タロー 選(タ) 】
○02 きれい過ぎるバウムクーヘン穴惑  綺麗すぎるといったところに作者の鬱屈した心情が感じられ、穴惑の季語はまさのそれか。
○07 菊人形みな宝塚星組風  星組がどんなものかはしらないが、仕立て上げられたというような感じを抱かさせるところがいい。
○08 神立や故障してゐるドライヤー  やや付き過ぎの感があるが、ドライヤーには旅心を誘うものがある。神様も同じかな。神代の時代の角髪(みずら)ではドライヤーは使えそうもないが--。
○13 屑ながく鉛筆削る小春かな  うまい人がいました。小学校時代は肥後守でやったものです。小春日和にぴったりです。
○19 大根引く土偶の尻の大いなる  大根の収穫と土偶のお尻は何の関係もないが、さもありなん、ぴったりだと思わせる。国宝土偶の「縄文のビーナス」を見ればだれだって「豊穣」という言葉を思い浮かべるはずです。

【 森田遊介 選(遊) 】
(今回はお休みです。)

【 小早川忠義 選(忠) 】
○04 菊まつり浮世絵ばかりみて帰る  菊で作られたものか備え付けられていた浮世絵なのか。突っ込んで訊きたくなる。
○13 屑ながく鉛筆削る小春かな  削り屑が長いだけ気も長い。
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ  家は傾いていないけれど初代の小言が今日も豪邸にこだまする。
○33 身に入むや無音無風の有磯海  荒れ出すのはこれから先。親不知を抱える海の静かな刹那。
○39 コンビニのおでんのごとき余生かな  「コンビニのおでんが好きで星きれい(神野紗希)」に比べたらなんとしょぼくれたことか。でもそれがいい。
 02 きれい過ぎるバウムクーヘン穴惑  多分季語と主題が合ってない。ちょっと勿体無いと思う。
 11 きのふけふ入つたり出たり穴惑  説明で終わっているような。
 21 止められぬくしゃみ三回冬に入る  季重なり。「冬に入る」を変えることになるか。
 26 松ぼつくり拾う小春の園児かな  これも季重なりである。
 36 焼き芋を売り歩きたる人笑ふ  「人」と詠むところにもう少し工夫の余地があると思う。
 48 神主の留守をあづかる雪達磨  雪達磨が擬人化されているから動詞をいじってみたい。

【 石川順一 選(順) 】
(今回はお休みです。)

【 涼野海音 選(海) 】
○06 烏瓜崖より提がり父逝けり  烏瓜の危うい状況を、父上の病状などと重ね合わせたのでしょうか。「提がり」は「下がり」の方が的確だと思いますが。
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ  先代と比べて二代目が世渡りが下手なのは、納得できますし、季語も面白いと思いました。ばったんこの構造や仕組みが二代目の危うさと通じると。
○26 松ぼつくり拾う小春の園児かな  園児が松ぼっくりと拾うのは、冬のあたたかなひと日が、やはりふさわしく思えました。(旧仮名遣いでは、「拾う」は「拾ふ」が正しいです)
○29 木の実雨ダルメシアンに声掛けて  木の実雨という季語には、なんとなく洋犬の方が似合いそう。そう思わせるのが、この句のツボなのでしょう。
○48 神主の留守をあづかる雪達磨  「留守をあづかる」という慣用句的な表現が、生きています。雪達磨を下五にもってきたところにも納得、どっしりと座っている感じが出ています。

【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)

【 川崎益太郎 選(益) 】
○10 晴れやすく曇りやすしよ冬紅葉  はっきりしてよ、冬紅葉が効いている。
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ  二代目は大体こんなもの、季語が効いている。
○30 妄想のざわざわ浮かぶ針供養  妄想の中身を妄想してしまう、上手い句。
○43 落葉散る音にかすかな胸騒ぎ  新鮮さはないが、俳句らしい句。
○47 割られるまで鶏になる気の寒卵  寒卵の句として斬新。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
(今回はお休みです。)

【 水口佳子 選(佳) 】
○13 屑ながく鉛筆削る小春かな  鉛筆削りを使うことも珍しくなった。しかも手回しの鉛筆削り。切れそうで切れない削り屑が長くつづいていく様子を見ながら昔を懐かしんでいるような。〈小春〉の季語がそう思わせる。厳しい季語を配すとそれはそれで違ったイメージに。 
○14 留守番の子の見上げをる冬木の芽  留守番の子というより鍵っ子の方を連想した。冬木でなく〈冬木の芽〉であることが良い。荒涼とした冬景色の中の小さな光をこの子は見ている。
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ  季語の〈ばつたんこ〉がよく効いている。あっちに傾きこっちに傾きしながら不器用に生きている二代目がちょっと可哀想。一代目があまりに世渡り上手だったために・・   
○29 木の実雨ダルメシアンに声掛けて  犬を連れているのは誰?声をかけたのは作者?別の人?と思いつつも・・・枯れ色の中にダルメシアンの白と黒が 鮮やか。 
○44 正面に力士の手形煤払  古い食堂とか居酒屋とか、いかにもありそうな景。句材の面白さ。

【 喜多波子 選(波) 】
○08 神立や故障してゐるドライヤー 
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ   
○25 冬薔薇や血を吸えば鉄棒の味  
○32 杖をつく母が遅るる小春かな     
○39 コンビニのおでんのごとき余生かな  

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ  ばつたんこの季語を選ばれたのがよい。
○28 給食は頼みの綱や夜学生  綱の夜学生にエール
○30 妄想のざわざわ浮かぶ針供養  妄想は近頃よく見かける語彙だが針供養との取り合わせが良い。
○33 身に入むや無音無風の有磯海  写真や絵画で見る風景が思い出される。
○34 冬館線香の火を絶やさずに  葬儀の景色とは読まずにある冬館とみるとひとつの詩になるのでは。
 以上お願いします。

【 小川春休 選(春) 】
○06 烏瓜崖より提がり父逝けり  烏瓜の色、そしてその位置の危うさ。父の臨終をより一層際立たせています。個人的には、上五と下五が逆の方がより印象鮮明な句になるような気もしますが、句意というか句の方向性が微妙に変わってくるので、原句のままの方が良いような気も…。上五中七下五それぞれの末に配された「り」が、切迫感のあるリズムを生んでいます。
○14 留守番の子の見上げゐる冬木の芽  留守番と言うからには、この子は家にいる訳です。窓から、冬木の芽を見上げている。寒さの中に出て来た芽と、留守番の子の境遇とが、どこか重なるような気配を感じる。その淡い気配の出し方が、抑制が効いている。
○34 冬館線香の火を絶やさずに  通夜の景でしょうか。かなり深更の時間帯ということが分かります。館の広さが、さみしさをより深くするような…。
○41 にごりなき川に沿ひゆく七五三  上五中七、いかにも七五三らしい句材というのではなく、自然の描写であるところに好感を持ちました。辺りの景や神社まで、想像が広がります。
○44 正面に力士の手形煤払  これは、何でもないようですが「正面に」という書き出しが非常に良く効いている。その部屋の雰囲気を、大雑把ながら非常に良く伝えている。季題も動きのある場面を上手く現出させていると思います。
 02 きれい過ぎるバウムクーヘン穴惑  上五中七、非常に印象的でしたが、この季題と合っているかどうか。バウムクーヘンの真ん中にも「穴」はありますし、蛇がとぐろを巻いている姿との類似もないことはないですが、ちょっと遠すぎるというか、響き合っていない印象です。
 03 腕一杯柿を抱へて来るなり  籠のような物に入れた籠を運んでいる。恐らく収穫したばかりのものでしょう。喜びが素直に感じられる句です。
 04 菊まつり浮世絵ばかりみて帰る  菊まつりと言うからには菊がメインだったのでしょうが、思わぬところで眼福、たくさんの浮世絵をみることが出来たと。報告俳句になりそうなところを、ウイットのおかげでそこから一歩脱しているように感じました。
 05 星流る電波望遠鏡の影  秋の澄んだ夜空を流れる星、それだけで目も心も奪われます。それなのに、この句の作者は星ではなく電波望遠鏡の影の方を気にしている。ちょっと不自然な感じがします。それと、地面に落ちた影なのか、星空の下で電波望遠鏡の姿が暗く見えるのを影と言っているのか、そこもよく分からない。
 07 菊人形みな宝塚星組風  単に宝塚というだけでなく、星組風というところが面白いようにも感じましたが、組ごとに個性が異なるのでしょうか。私自身が宝塚にあまり詳しくないため、そこのところがよく読み切れませんでした。
 11 きのふけふ入つたり出たり穴惑  何かまだ、冬眠前にすべきことがあるのか、せわしない様子の蛇が目に浮かびます。
 16 眠る山ごときの父を葬りたる  比喩として用いると季題は弱くなります。それに、「山」に「ごとき」が直結するのはまだしも、「ごときの父」という言い方は日本語として不自然で、素直に書けば「眠る山のごとき父」となるはずです。季題のイメージ喚起力ということで言えば、例えば「眠る山無口なる父葬りたる」などと書いても、「眠る山」と父のイメージは相互に作用して、父の存在の大きさなどが読み取れると思います。「ごとき」を使ってしまうとその喚起力が全く活かされません。
 17 世渡りの下手な二代目ばつたんこ   人物の捉え方にユーモアを感じる句です。
 19 大根引く土偶の尻の大いなる  母なる女性の特徴を強調した土偶のフォルムは独特。大根を引く後ろ姿に、土偶の印象を感じたか。なかなか説得力のある句です。
 21 止められぬくしゃみ三回冬に入る  季重ねです。それも、あまり良くない季重ねです。上五中七だけでもう寒くなっているか風邪を引いているかということが読み取れるのに、「冬に入る」と続けられても、まあ当然かな、としか感想が出て来ません。
 22 駅蕎麦を忙しくすするあごマスク  マスクを外す時間も惜しんで、あごにマスクをずらした状態。「忙しく」が一句の答えのようになっている点が少し惜しい。「忙しく」と言わずに、中七で動作を描写することで忙しさ、慌しさを出せれば、もう少し臨場感が増すのではないかと思います。
 24 病床の友如何ならん冬隣  しばらく連絡を取り合っていないのか、これから冬へ向かって行く時期、友のことが気にかかります。
 25 冬薔薇や血を吸えば鉄棒の味  言いたいことは分かりますが、要素が多く、ごちゃごちゃした印象です。吸うことか、鉄棒の味がしたことか、どちらかにポイントを絞った方が良いのではないかと思います。
 27 海鳴りは休むことなし星流る  姿勢の正しい、すっきりとした句に仕上がっていると思います。
 28 給食は頼みの綱や夜学生  なかなかに切実ですね。苦学生という感じです。
 30 妄想のざわざわ浮かぶ針供養  ちょっと面白いですが、供養にはならなそうな感じもしますね。実際は得てしてそんなものかも知れませんが。
 32 杖をつく母が遅るる小春かな  しっかりと出来た句だと思います。
 36 焼き芋を売り歩きたる人笑ふ  何で笑っているのか唐突でよく分からないですし、そもそも「焼き芋を売りながら歩いている人」というのを私は見たことがありません。軽トラックなどに乗って移動して、お客さんが来たら停車して売る、というのが普通ではないでしょか。歩きながら売っていたら、運べる量もたかが知れてますし、せっかくの焼き芋がすぐ冷めてしまうと思うのですが…。
 37 秋の蝶あれもこれもと触れまはる  「触れまはる」は辞書的な意味では「大勢の人に告げて歩く」。秋の蝶が飛び回る様を、辞書的な意味と重ね合わせて表現されている句ですね。
 38 落葉降る鳩の嘴せはしなや  通常、すでに地に落ちている葉のことを「落葉」と言います。その落葉が「降る」というのはよく分からない。「馬から落馬した」的な冗語でしょうか。俳句を作る上ではもう少し言葉を吟味して使いたいところです。
39 コンビニのおでんのごとき余生かな  
 40 肩幅のやうなものありて冬瓜  「肩幅のやうなもの」という言い方はいかにも不自然です。「肩幅ほど」と言う方が簡潔かつ正確だと思います。簡潔かつ正確な言い方が俳句において常に効果的か、という点はまた別の問題ですが。
 42 水の向かうは案山子の村であるらしい  「案山子の村」という把握は、独特のものだと思います。人間の気配がなく、畑ごとに存在感のある案山子が立っている…。少し異様さを感じる景が見えてきます。しかし、もったいないのは、「であるらしい」とぼかすことで、せっかくの把握が鋭さを失っていること。こういう把握は言い切ってこそ活きるものと思います。
 43 落葉散る音にかすかな胸騒ぎ  これもまた、既に地に落ちている「落葉」が、そこからさらに「散る」。
 45 ロープウェイ風止みはるか雪の富士  一句にまとめるには少し要素が多すぎるように感じます。師の辻桃子がよく、「詰め込みすぎの句は、二句・三句に分ければ、それぞれに良い句になります」と句会の席で言っていましたが、この句も何句かに分けた方が良さそうだと思いました。
 46 嶺に雪ミンク襟巻ちと無口  そこまで気になるものではありませんがこの句も季重ね。中七下五はなかなか面白いのですが、上五があまり効いていないように感じます。
 51 薄氷に透ける魚影の無言劇  薄氷は春の季題、早春の季題です。今の時期の句会に投句するには、少し気が早いのではないかと思います。

 


来月の投句は、12月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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