【 中原和矢 選(和) 】
(今回はお休みです。)
【 石橋沙代子 選(沙) 】
(今回はお休みです。)
【 ルカ 選(ル) 】
(今回はお休みです。)
【 青野草太 選(草) 】
○03 誘うても冬夕焼を母は見ず
○08
かいつぶり一羽潜れば一羽浮き
○12 猫抱いて縁に微睡む石蕗の花
○15 桟橋の先の青空冬帽子
○44
踏切の向かうに立てる雪女
以上です。
【 石黒案山子 選(案) 】
◎45
にきび消えにきび生まるる聖夜かな 取り合わせが絶妙ですね。
○04 大根焚大根ふたつとお揚げさん
○14
十二月八日のことを法話かな
○18 通学路銀杏紅葉の別世界
○35
裸木が指揮棒を降る(振る)ラッタッタ
よろしくお願いします。
本年はいろいろお世話様でした。
どうぞ、良いお年をお迎えくださいませ。
【 一斗 選(一) 】
○17 気まづさに聴こえぬふりす室の花
○26
パソコンの実行キーの寒き音
○30 片隅に機関車ありて枯葉降る
○40
日記果つバイクが家の前を過ぎ
○44 踏切の向かうに立てる雪女
【 中村時人 選(時) 】
(今回は選句お休みです。)
【 土曜第九 選(第) 】
○05
めくり癖つきし質屋の暖簾かな かつては質屋のお世話になって正月を迎えることも多かったのでしょうか。貧しいながら人情味溢れる下町情緒を感じます。
○10
皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独 勿論花自ら名乗った訳ではありませんが、誰かのせいにしないとやっていけない人生のもどかしさを感じます。
○15
桟橋の先の青空冬帽子 シンプルがゆえに青と白を基調にしたすっきりした情景が浮かびます。
○36
凍蝶や伏字のごとき恋をする なにやら謎めいた訳ありの恋の迫力を感じます。
○50
クリスマス鋪道に犬の爪が鳴り クリスマスなんだけど浮足立っていない静かな日常を感じます。
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○10 皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独
○14
十二月八日のことを法話かな
○19 真新しき墓石の並ぶ小春かな
○21 冬ざれや踏まれしままの犬の糞
○48
柚子湯してのぼせ顔なり親子猿
今年も楽しく参加させていただきありがとうございました。
皆様良いお年をお迎え下さい。
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
いよいよ2015年も終わりです、この一年もお世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。
選句のみです。
○10
皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独
○12 猫抱いて縁に微睡む石蕗の花
○21 冬ざれや踏まれしままの犬の糞
○24
煤逃げを逝きし昭和の原節子
○42 マフラーの二巻き半に拘りぬ
【 小林タロー 選(タ) 】
○03
誘うても冬夕焼を母は見ず 母は見ずと言い切ったところがよいが、見ず、が意思なのか出来ないのかがわかれば尚よかったと思う。
○32
極月や幹事無料の案内来て 季語の斡旋がよい。世相も自分の気持ちも表現できている。
○42
マフラーの二巻き半に拘りぬ 拘る、としたところに意思も諧謔味も感じられる。断定も良い。
○44
踏切の向かうに立てる雪女 雪女は雪深い山国のもの。そんなところにたまたま踏切があって向かう側に雪女がいた(と思えた)。奥深さと静けさが感じられるが、雪女が単なる比喩なら取らない。
○45
にきび消えにきび生まるる聖夜かな よみがえりか! いつの世も変わらぬ青春のシンボル、悩みだ。聖夜に合わせたところが良かった。
【 森田遊介 選(遊) 】
(今回はお休みです。)
【 小早川忠義 選(忠) 】
○20
外つ国の客もてなさん冬紅葉 見事な景観を過ぎた冬紅葉をもてなそうとする日本人の気概。
○29
集中や腹の懐炉に手を当てて 最後の模擬試験あたりだろうか。大試験はまだ先。
○40
日記果つバイクが家の前を過ぎ 最後の日記くらいかっこつけて書きたいが集中がそれた。
○42
マフラーの二巻き半に拘りぬ たとえ短くても巻き切らないと気持ちが悪い。
○48
柚子湯してのぼせ顔なり親子猿 オチがついているが主題は良かったと思う。
【 石川順一 選(順) 】
○06
ゆく船や昂る人と都鳥 季語は「都鳥」。鳥に昂ぶったか、元々昂ぶって居たか、興味ある所です。
○12
猫抱いて縁に微睡む石蕗の花 季語は「石蕗の花」。猫に癒され、花にも癒された。
○25
暇もなく蒲団干すひとありにけり 季語は「蒲団」。暇は作るもの、物を頼む時は忙しい人に頼めと言います。
○36
凍蝶や伏字のごとき恋をする 季語は「凍蝶」。怪しげな恋では無くて、意味ありげな恋。
○46
鶏になる明日を信じる寒卵 季語は「寒卵」。信じる心が鶏にも。
【 涼野海音 選(海) 】
○03
誘うても冬夕焼を母は見ず 「誘うても」に感情の屈折が出ています。「冬夕焼」というのは、普通の夕焼より、寂しい感じがします。
○20
外つ国の客もてなさん冬紅葉 日本庭園かどこかに、外国人の観光客を案内しているのでしょうか。
○23
冬麗ら水琴窟のぽんと鳴り 「冬麗ら」を音にしたら、この句のような感じでしょうか。
○26
パソコンの実行キーの寒き音 無機質なパソコンの打けん音を「寒き音」と捉えたことに共感。
○30
片隅に機関車ありて枯葉降る 具体的にどこの片隅か、分かれば良かったのですが、機関車と「枯葉」は響きあうと思いました。
【 松本てふこ 選(て) 】
(今回はお休みです。)
【 川崎益太郎 選(益) 】
○10
皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独 季語が問題だけど、孤独が上手い。
○24
煤逃げを往きし昭和の原節子 煤逃げと原節子の取り合わせが面白い。
○35
裸木が指揮棒を降るラッタッタ 風に揺れる裸木を指揮棒と見た。ラッタッタが面白い。
○44
踏切の向かうに立てる雪女 踏切の向こうに○○○、はよく見る句だが、雪女に意外性。
○45
にきび消えにきび生まるる聖夜かな 取っても取ってもできるにきび。若さが羨ましい。取り合わせの妙。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○08
かいつぶり一羽潜れば一羽浮き ひょっとしたら類句がありそうだがリズム感にひかれた。
○10
皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独 皇帝ダリアが孤独なのではなくそう感じてしまう作者の胸の内に何かどうしようもない気持ちがあるように感じた。
○44
踏切の向かうに立てる雪女 山中ではなく踏切がある町中だ。遮断機が下りている向こうの雪女。これは相当こわいです。
○45
にきび消えにきび生まるる聖夜かな 聖夜とにきび。離れていそうでこれは思春期の子には切実は問題だろう。これを句にするとは。うなりました。
○50
クリスマス鋪道に犬の爪が鳴り 石畳を大型犬が歩いている、異国の風景のようだ。
【 水口佳子 選(佳) 】
○08
かいつぶり一羽潜れば一羽浮き すれ違いしながら必死に獲物を追うかいつぶりの生き方にちょっと哀れもある。言われてみれば鴨のように寄り添っているのを見かけないなあと、改めて思った次第。
○10
皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独 ダリアは夏に咲くものだが皇帝ダリアは冬のさなかにしかもひときわ高く花を付ける。確かに孤独な花。自分から名乗ったわけではないのだが。
○19
真新しき墓石の並ぶ小春かな 新しくできた墓苑なのかも知れない。小春日和の暖かい日差しが墓苑を包んでいて眠り心地良さそう。
○29
集中や腹の懐炉に手を当てて 〈集中や〉と大仰に言いながら、腹筋でなく懐炉に手を当てたというところが可笑しい。
○50
クリスマス舗道に犬の爪が鳴り クリスマスと舗道に犬の爪が鳴ったこととの間に関係性はないのだが、舗道の硬さ、冷たさ、家々の暖かい灯など見えてきていろいろに想像できる。好きな句。
【 喜多波子 選(波) 】
○10 皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独
○19
真新しき墓石の並ぶ小春かな
○33 ありたけの冬薔薇入れよ耶蘇の葬
○36
凍蝶や伏字のごとき恋をする
○51
書き継いで書きついで年逝きにけり
愈々今年最後になりましたね
1年間本当に有難う御座いました。
また来年もどうぞ宜しくお願いします。
【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)
【 鋼つよし 選(鋼) 】
○34 優佳良織のマフラーを買う北の街 言葉の響きがよい。
○41
牡蠣すするポアロの脳細胞曇る 下五のひねりが良い。
○42 マフラーの二巻き半に拘りぬ 目に浮かんでくる。
○43
寒鴉銜へし実落つ池の上 作者の位置が良い。
○48 柚子湯してのぼせ顔なり親子猿 滑稽味がある。
気になった句
30
片隅に機関車ありて枯葉降る
38 露天湯に昔男や白粉婆
36 凍蝶や伏字のごとき恋をする
【 小川春休 選(春) 】
○29
集中や腹の懐炉に手を当てて 「集中や」という切り出し方に意表を突かれる。腹の懐炉に手を当てている姿は少しユーモラスでもありますが、そこは集中していればこそ、他人がどう見るかなど全く気にしていない訳です。大事な試験か何かでしょうかね。
○30
片隅に機関車ありて枯葉降る 今は使われていない機関車が飾られているような場所でしょうか。さらにそれが目立つところに堂々とではなく「片隅に」であるところから、その有り様がよく見えてくる。景の奥行きもそこから生まれているように感じました。
○42
マフラーの二巻き半に拘りぬ どう巻いても良いはずのマフラーですが、そういう所にも人の性格が表れる。良く言えば几帳面、悪く言えば少々神経質な御仁の様子が見えてくる句です。
○44
踏切の向かうに立てる雪女 妻子を捨てて、安定した生活を捨てて、雪女を選んでしまう男。そうした愚かさを理性でコントロールするのか、それとも呑まれてしまうのか――。その境界線が、この句では「踏切」になっている。そういう内面の心理と具体的な景とのイメージの重層性が面白い句です。
○47
準確定申告御用納めとし 亡くなった個人事業主の代わりに、相続人などが確定申告を行う「準確定申告」。現実的な内容ですが、その人が亡くなった一年が過ぎ去ろうとしている。その実感が確かにある。ちなみに「納税期」という季語もあるが、この「準確定申告」はそれとは関係なく、亡くなってから4か月以内に申告しなくてはなりません。
03
誘うても冬夕焼を母は見ず どんな理由があったのか、夏や秋の夕焼けと比べるとすぐに消えてしまう冬夕焼。母の年代などは書かれていませんが、かなり高齢という印象です。書かれていない背景がいろいろとありそうな、想像を誘う句です。採りたかった句。
04
大根焚大根ふたつとお揚げさん ほっとさせてくれる一品、という趣の句ですね。
06
ゆく船や昂る人と都鳥 この語順だと、「昂る」が人と都鳥の両方にかかるのか、人だけにかかるのか分かりにくいのが難点です。人だけなのであれば、切る位置を変えて「ゆく船に昂る人や都鳥」などとした方が良いでしょう。
08
かいつぶり一羽潜れば一羽浮き のんびりした印象の句ですが、この二羽の対比によって、時間的・空間的な広がりが出ていると思います。
10
皇帝ダリアなどと名乗ったから孤独 晩秋から初冬にかけての時期に咲く皇帝ダリアですが、確かにこの時期らしからぬ姿の花で、孤独を感じさせます。ただし、「名乗った」に違和感がある。「皇帝ダリアなどと名付けられて孤独」ならすんなり入ってきますが、違和感のある言い方の方が力がある場合もあり、一概にはどちらが良いと判断が付きません。
11
北風や錯乱坊主の居る如く 「うる星やつら」ですね。なつかしい。
13
南京虫時計コートに見え隠れ 南京虫がコートにいるのはまだ分かるとして、時計にいるのはよく分かりません。
15
桟橋の先の青空冬帽子 あまり多くのことを語っていないような句ですが、季題の「冬帽子」から、周りに人も物も無い、すっきりとした景が見えてきます。
16
冬ざるるラブホの裏に鳩群れて ラブホという現代的な景を描いた割には、毒気もウィットも感じられない、おとなしい句になっている気がします。季題が無難すぎるのではないでしょうか。
17
気まづさに聴こえぬふりす室の花 「室の花」という季題があまり働いていないように感じます。聴こえぬふりをしているのが気まずいからだとわざわざ言っているのも、説明しすぎのように感じる。具体的にどんな話(離婚話、遺産話、悪口など)と明示した方が良いようにも感じました。
18
通学路銀杏紅葉の別世界 このように詠みたくなる気持ちは分かりますが、銀杏を描写することで、読み手に「別世界のようだ」と感じさせるのが、俳句の目指すところではないかと思います。
19
真新しき墓石の並ぶ小春かな 新しい霊園か何かでしょうか。まだ表面のつやつやとした墓石の並ぶ様子は、日中であれば気分の良い景でもありますね。
20
外つ国の客もてなさん冬紅葉 私の思い描いたのは紅葉の季節の宮島、厳島神社。年々外国人観光客も増えているように感じます。
22
足早に冬の嵐を逝きにけり 早世ということでしょうか。冬は思わぬ訃報が届く季節です。
24
煤逃げを往きし昭和の原節子 原節子が煤逃げをしていたとも読めなくはないですが、そうではなく。煤逃げで訪れた先で、昭和の名女優・原節子の訃報を耳にした、というところでしょう。上五、「煤逃げを」と無理につなげず、「煤逃げや」と切ってしまった方がすんなり収まりそうな気もしますし、「昭和の」も必要かなぁという気がします。
27
賀状書く写真は必ず入れながら 「賀状書く」という季題の持つイメージとして、まず第一に手で書いている姿を想像します。それに対して「写真を入れる」という描写は、パソコンなどで作業する姿を想像する。厳密に言うと、「書く」と言って良いのか、「作る」と言うべきではないか、という気がする。その辺りが今一つすっきりしていない印象を持ちました。
32
極月や幹事無料の案内来て 大抵こういう案内を送ってきてくれるのは、以前利用したことのある店。店のソツのないDMですが、どこか世知辛さも感じる句ですね。
33
ありたけの冬薔薇入れよ耶蘇の葬 夏目漱石の〈ある程の菊投げ入れよ棺の中〉を下敷きにした句ですね。
34
優佳良織のマフラーを買う北の街 優佳良織(ゆうからおり)は旭川市の染織作家・木内綾氏が創作した染織工芸品とのこと。句としては、ちょっと報告っぽい印象です。
36
凍蝶や伏字のごとき恋をする 秘する恋の句ですが、どこか悲壮感があるのは季題の働きでしょうか。
37
逝きさうな翁に注意忘年会 まあ、確かに注意が必要ですが、常識の範疇といった感じです。
39
ハンドルを右へ初冬の急カーヴ よく「季語が動く」などという言い方をしますが、この句の「初冬」は、他の季語でもそれなりに句が成立してしまう。そして「初冬」とさほど優劣がないように感じます。別の視点から見ると、「ハンドルを右へ」という描写が、特にこれという想像も呼び起こさない平板なものになっているところにも原因がある。この部分にもっと季語と響き合うような要素があれば、「季語が動かない」句になるのではないかと思います。
41
牡蠣すするポアロの脳細胞曇る 面白い句ですが、「曇る」が個人的にはしっくり来なかった。せっかくの名探偵も脳細胞が曇ってしまっては…。「冴える」とか、牡蠣をすすった瞬間に脳細胞に閃きが生まれる、というような句であれば面白いのに、というのが個人的な感想です。
49
街師走右往左往のマイナンバー 俳句で何らかの描写をする際に、「右往左往」のような成語はあまり効果的ではありません。こうした成語は観念的で、具体的にどういう場面なのか、見えてこないからです。
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