ハルヤスミ句会 第百八十八回

2016年6月

《 句会報 》

01 明易の玄関に靴揃へたり        ぐり(草・一・タ・海)

02 やどかりに非ずよ中を覗けども     春休(タ)

03 ペダルコキコキ薫風の浜通り      さんきう(三)

04 絵手紙の野菜畑に夏立ちぬ       海音(賢・乃・第・鋼)

05 喰ひては寝喰ひては寝して燕の子    タロー(ぐ)

06 夏の朝食卓塩の蓋赤く         一斗(さ・ル・春)

07 黄金なる愛玉子(オーギョーチー) や夜の短か  ぐり(案)

08 母の忌や紫陽花育ち供えたり      ひろ子

09 十薬や気はしたたかに生きんとす    案山子(時・第・忠・鋼)

10 ほら蛍ほたるよ子の肩揺さぶりぬ    さんきう(益)

11 初夏のさみどり色に赤点々       乃愛(賢)

12 驟雨来て洗濯物は不動なり       順一(乃・ル・奥)

13 前を行く防弾チョッキ薄暑光      佳子(草・一・順・三・鋼・春)

14 蛍火やゆふづつ赤く杣山に       時人(第)

15 薄赤き苔の花咲く忠魂碑        タロー(一)

16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろぎぬ    愛(え・さ・案・時・順)

17 気に入りの母のお下がり衣更      ひろ子(乃)

18 海霧の沖に密航船かとも        一斗(佳)

19 村人の吹くオカリナも蛍狩       時人(愛・海)

20 吹く風にきらり新緑答えをり      乃愛(奥)

21 複線より単線が好きかたつむり     益太郎(ル・奥・海・鋼)

22 新樹の夜アンリ・ルソーの笛の音    ルカ(え・忠・順・三)

23 楽すればこころ重たし青葉風      えみこ

24 黒南風や米軍基地の門は閉じ      忠義(奥・益)

25 ほつとけば酢漿草覆ふ植木鉢      ひろ子

26 薫風や子ら繰り返す逆上がり      第九(え・ル・草・時・奥・愛)

27 一夏を乗り切る覚悟衣畳む       案山子

28 ミキサーに西瓜ちよと入れスムージー  愛

29 ラムネ飲むカランコロンと音たてて   賢人

30 ちょっとずつ遅れる頭脳走り梅雨    益太郎(時)

31 またひとつ友の訃報か青嵐       案山子(時)

32 外面に水弾かせるトマトかな      忠義(さ)

33 高濃度汚染水処理五月闇        さんきう

34 本閉ぢてまなこを閉ぢてさみだるる   春休(佳)

35 ホトホトでトホホな一日梅ゼリー    えみこ(忠)

36 竹皮を脱ぎたる夢二美術館       海音(え・順・三・春)

37 夏半ば濡縁に足はふりだし       タロー(ぐ)

38 をみなには引きたる力蛍の夜      一斗

39 棟梁の鑿を休めし朝ぐもり       みなと(賢・第・春)

40 去りぎはの声さみだれに隠さるる    春休(ル)

41 波風を立たすななどと夜光虫      忠義

42 帰りしな煮豚持たされ著莪の雨     ぐり(愛)

43 緑の夜ふいに駆け出すドガの馬     ルカ(草・タ)

44 カラー活け遺影の夫に増す笑顔     みなと

45 下駄履けば鼻緒冷たき五月闇      第九(案)

46 梅雨の空葬祭セールスまたまた来    つよし(草)

47 蟻の列大統領の靴の音         佳子(忠・海・ぐ)

48 風の香や路地裏にある珈琲屋      乃愛(賢)

49 夏の雨来訪者より早く来る       順一(乃・一)

50 箱庭の真ん中に置く一樹かな      海音(さ・タ・ぐ・佳)

51 足元をよぎる縞蛇納屋に入る      つよし(順)

52 串カツや暖簾の波に生ビール      賢人(乃・益)

53 端居してすぐに暇の義姉刀自      愛(え)

54 落ち癖の子燕二倍ポイントデー     えみこ(愛・益・佳・春)

55 蕾の多感知らざるままに水中花     草太(益)

56 飛行機雲薄暮に解けて夏燕       第九(賢・佳)

57 ぺたぺたと木匙で夏炉のラタトウイユ  草太

58 餃子食べトマトは添え物だと思ふ    順一

59 取りつく島なく大噴水のわき通る    草太(一・タ)

60 格別の折鶴として冷房裡        佳子(鋼)

61 逃げ出せる亀の行へや青田波      つよし(ぐ・三)

62 山里に夜の帳や恋蛍          時人(第)

63 虚も実も人の仕業や桜桃忌       益太郎(さ・案・愛・忠)

64 懐郷と言ふほろ苦さ新茶飲む      みなと

65 若冲の鶏の眼や晩夏光         ルカ(案・海)

66 箱釣に子供群がり活気わく       賢人 




【 えみこ 選(え) 】
○16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろぎぬ
○22 新樹の夜アンリ・ルソーの笛の音
○26 薫風や子ら繰り返す逆上がり
○36 竹皮を脱ぎたる夢二美術館
○53 端居してすぐに暇の義姉刀自

【 賢人 選(賢) 】
○04 絵手紙の野菜畑に夏立ちぬ
○11 初夏のさみどり色に赤点々
○39 棟梁の鑿を休めし朝ぐもり
○48 風の香や路地裏にある珈琲屋
○56 飛行機雲薄暮に解けて夏燕

【 乃愛 選(乃) 】
○04 絵手紙の野菜畑に夏立ちぬ
○12 驟雨来て洗濯物は不動なり
○17 気に入りの母のお下がり衣更
○49 夏の雨来訪者より早く来る
○52 串カツや暖簾の波に生ビール
の5句にひかれました。

【 さんきう 選(さ) 】
○04 絵手紙の野菜畑に夏立ちぬ  絵手紙の中で夏が始まったということではなく、絵手紙を見て「(私を含むこの世界が)夏になった」ということなんでしょうね。
○16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろぎぬ  五右衛門風呂という題材がよいので、このように割とシンプルに作るのが正解なんでしょう。
○32 外面に水弾かせるトマトかな  これは表現が難しいことにチャレンジしている姿勢を買いました。こういうゴツゴツした言い方、嫌いじゃないです。
○50 箱庭の真ん中に置く一樹かな  箱庭の句ではありがちの内容かもしれませんが、読んでみるとやっぱり気持ちがいい。
○63 虚も実も人の仕業や桜桃忌  言われてみれば確かに。季語のつけ方も上手いと思いました。というか、まず季語ありきで、その上での上五中七なのか…。

【 ルカ 選(ル) 】
○06 夏の朝食卓塩の蓋赤く  鮮やかな色がさらに眩しい夏の朝。
○12 驟雨来て洗濯物は不動なり  人間の慌てぶりにも動じず。   
○21 複線より単線が好きかたつむり  ゆっくり加減が、確かに単線。
○26 薫風や子ら繰り返す逆上がり  繰り返すたびに笑顔と風を感じます。
○40 去りぎはの声さみだれに隠さるる  巧い句です。

【 青野草太 選(草) 】
○01 明易の玄関に靴揃へたり
○13 前を行く防弾チョッキ薄暑光
○26 薫風や子ら繰り返す逆上がり
○43 緑の夜ふいに駆け出すドガの馬
○46 梅雨の空葬祭セールスまたまた来

【 石黒案山子 選(案) 】
○07 黄金なる愛玉子や夜の短か
○16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろぎぬ
○45 下駄履けば鼻緒冷たき五月闇
○63 虚も実も人の仕業や桜桃忌
○65 若冲の鶏の目や晩夏光

【 一斗 選(一) 】
○01 明易の玄関に靴揃へたり
○13 前を行く防弾チョッキ薄暑光  
○15 薄赤き苔の花咲く忠魂碑 
○49 夏の雨来訪者より早く来る 
○59 取りつく島なく大噴水のわき通る

【 中村時人 選(時) 】
○09 十薬や気はしたたかに生きんとす
○16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろきぬ
○26 薫風や子ら繰り返す逆上がり
○30 ちょっとずつ遅れる頭脳走り梅雨
○31 またひとつ友の訃報か青嵐
 気になった句は
 25 ほつとけば酢漿草覆ふ植木鉢
 56 飛行機雲薄暮に解けて夏燕

【 土曜第九 選(第) 】
○04 絵手紙の野菜畑に夏立ちぬ  手作りの尊さと季節感を大切にする心が伝わってきます。
○09 十薬や気はしたたかに生きんとす  気をしっかりと持って生きんとする凛とした姿勢を感じます。
○14 蛍火やゆふづつ赤く杣山に  蛍と明星の光のコントラストが素敵です。
○39 棟梁の鑿を休めし朝ぐもり  やがて始まる暑い一日が実感できます。
○62 山里に夜の帳や恋蛍  静かな闇に蛍の光が浮かぶ幻想的な光景が見えてきます。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○12 驟雨来て洗濯物は不動なり  ずぶぬれですね。
○20 吹く風にきらり新緑答えをり  新緑のかがやきをとらえています。
○21 複線より単線が好きかたつむり  ゆっくりのんびり活動できますね。
○26 薫風や子ら繰り返す逆上がり  覚えたての楽しさに心地良い風が背中を押します。
○24 黒南風や米軍基地の門は閉じ  重い課題が、沖縄の人々を今も苦しめています。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○19 村人の吹くオカリナも蛍狩  
○26 薫風や子ら繰り返す逆上がり  
○42 帰りしな煮豚持たされ著莪の雨  
○54 落ち癖の子燕二倍ポイントデー  
○63 虚も実も人の仕業や桜桃忌  
 以上です、
 よろしくお願いします。     

【 小林タロー 選(タ) 】
○01 明易の玄関に靴揃へたり  明易の玄関に と「の」「に」と説明的なので、明易や としたい。季語が効いている、と思います。
○02 やどかりに非ずよ中を覗けども  それではない、と言っているので半季語? 面白い景だと思いました。
○43 緑の夜ふいに駆け出すドガの馬  緑の夜が幻想を誘います。
○50 箱庭の真ん中に置く一樹かな  どれほどの大きさかは分かりませんが、一樹が現実感を与えます。
○59 取りつく島なく大噴水のわき通る  噴水というのは不思議です。空間芸術でもあり時間芸術でもあり、あったと思えばいきなりなくなる勝手気まま。大噴水ともなれば取りつく島がない、はよくわかります。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○09 十薬や気はしたたかに生きんとす  十薬くらいの強かさ。あまり表には出ようとしない程度に。
○22 新樹の夜アンリ・ルソーの笛の音  ルソーの絵の中の笛?笛が鳴っているような雰囲気を絵に感じた?謎を残す句だ。
○35 ホトホトでトホホな一日梅ゼリー  平仮名でも良いと思う。疲労困憊には甘酸っぱい梅ゼリーが良い。
○47 蟻の列大統領の靴の音  軍靴の音でないことを願いつつ。
○63 虚も実も人の仕業や桜桃忌  理が先に立つようでもあるが、桜桃忌ともなればそれもアリ。
 10 ほら蛍ほたるよ子の肩揺さぶりぬ  もしかしたら破調を改めさせられることもあるだろうが、この調べを良しとして表に出したとすればそれを良しとしないといけないのかもしれない。
 16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろぎぬ  主題は面白い。下五の切り方は推敲の余地があると思われる。
 30 ちょっとずつ遅れる頭脳走り梅雨  頭脳というのがもう少し具体的なら。

【 石川順一 選(順) 】
○13 前を行く防弾チョッキ薄暑光  季語は「薄暑」。換喩(提喩)ですね、「防弾チョッキ」=防弾チョッキを着た人。ユーモラスな感じがしました。
○16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろぎぬ  季語は「河鹿」。踏板式の風呂にたじろぐ河鹿。微妙に擬人化されている様な気味もあり、句味がありました。
○22 新樹の夜アンリ・ルソーの笛の音  季語は「新樹」。日曜画家だった人ですね。税関に勤めて居た。南国テイストに「新樹」と言う季語、俳諧味がありました。
○36 竹皮を脱ぎたる夢二美術館  季語は「竹皮を脱ぐ」。竹久夢二。心はすでに夢二気分の句ですね。
○51 足元をよぎる縞蛇納屋に入る  季語は「縞蛇」。納屋を住処にしているのでしょうか。主だけに存在感がありそうですね。
 他に注目した句に
 10 ほら蛍ほたるよ子の肩揺さぶりぬ
 26 薫風や子ら繰り返す逆上がり
 31 またひとつ友の訃報か青嵐
 59 取りつく島なく大噴水のわき通る
 62 山里に夜の帳や恋蛍
が、ありました。

【 涼野海音 選(海) 】
○01 明易の玄関に靴揃へたり  丁寧な描写を通して、生真面目な人物像までみえる。
○19 村人の吹くオカリナも蛍狩  ちょっと珍しい蛍狩。オカリナの音色に誘われて蛍がやってくるのか、来ないのか。
○21 複線より単線が好きかたつむり  ユニークな角度から、かたつむりを詠んでいる。単線だから田舎の方かな。
○47 蟻の列大統領の靴の音  蟻が、大統領の靴音を意識したかどうか、分からない。現代を詠む大切さを教えてくれる句。
○65 若冲の鶏の眼や晩夏光  若冲の鶏の眼に焦点を絞っているところがよい。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○10 ほら蛍ほたるよ子の肩揺さぶりぬ  やや説明っぽいが、蛍を見た感動が伝わってくる。
○24 黒南風や米軍基地の門は閉じ  黒南風と米軍基地の不気味な取り合わせ。
○52 串カツや暖簾の波に生ビール  分かり過ぎるが、おいしいリズムが伝わる。
○54 落ち癖の子燕二倍ポイントデー  子燕と二倍ポイントデーとの取り合わせが面白い。
○55 蕾の多感知らざるままに水中花  水中花は蕾を知らない寂しい花。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○05 喰ひては寝喰ひては寝して燕の子  幼い生き物は全て食べて寝ての繰り返しで大きくなっていく。燕の子の大きな口は生命力そのもの。 
○37 夏半ば濡縁に足はふりだし  気持ちのいい風景。夏半ばがまだまだこれからの暑さを思わせるのでなおさら。
○47 蟻の列大統領の靴の音  深読みしそうになるが、素直に大統領の靴音に焦点を当てたのがいい。
○50 箱庭の真ん中に置く一樹かな  その一樹から箱庭の世界が広がっていく。どんな木なのだろう。
○61 逃げ出せる亀の行へや青田波  青田に逃げてしまった亀は早々見つからないだろう。脱出に成功した亀がグイグイと青田の中を泳ぎ歩く様が、、。

【 水口佳子 選(佳) 】
○18 海霧の沖に密航船かとも  そういうふうに感じることにも、まったく違和感のない世の中である。<密航船かとも>と思う作者の戸惑い。  
○34 本閉ぢてまなこを閉ぢてさみだるる  読書に疲れて目を閉じた時にさみだれが降ってきたのではなく、その時初めて雨に気付いたのだろう。鬱陶しいという感じではなく、むしろ心地よさを作者は感じている。 
○50 箱庭の真ん中に置く一樹かな  〈真ん中〉〈一樹〉がいかにも「これは私です」と言わんばかりであるが、〈箱庭〉なので なんかかわいい。 
○54 落ち癖の子燕二倍ポイントデー  こんな燕の子がいるのかなあと思いつつ、面白い取り合わせ。スーパーマーケットの賑わいも見えてくるし、俗っぽいところがいい。 
○56 飛行機雲薄暮に解けて夏燕  飛行機雲が空と一体化、そこを飛び交う燕の勢い。動きのなくなった雲と俊敏な燕とがうまく描かれている。 

【 三泊みなと(喜多波子 改め) 選(三) 】
○03 ペダルコキコキ薫風の浜通り
○13 前を行く防弾チョッキ薄暑光
○22 新樹の夜アンリ・ルソーの笛の音
○36 竹皮を脱ぎたる夢二美術館
○61 逃げ出せる亀の行へや青田波

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○04 絵手紙の野菜畑に夏立ちぬ  上五の措辞が下五と響きあっている。
○09 十薬や気はしたたかに生きんとす  気持ちだけは、十薬にあっている。
○13 前を行く防弾チョッキ薄暑光  いろいろな情景を読み手に与えてくれる。
○21 複線より単線が好きかたつむり  すっきりとした気持ちよく鑑賞できる。
○60 格別の折鶴として冷房裡  格別に思いがこめられている。
 そのほか良い句。
 63 虚も実も人の仕業や桜桃忌
 55 蕾の多感知らざるままに水中花
 54 落ち癖の子燕二倍ポイントデー
 17 気に入りの母のお下がり衣更
 12 驟雨来て洗濯物は不動なり
 05 喰ひては寝喰ひては寝して燕の子
 03 ペダルコキコキ薫風の浜通り

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○06 夏の朝食卓塩の蓋赤く  爽波に野分とソースの壜の取り合わせの句がありましたが、この句の取り合わせもなかなか。夏の朝の明るい日差しの中に、食卓塩の蓋の赤がいよいよ鮮やかに見えてきます。
○13 前を行く防弾チョッキ薄暑光  日常の中に紛れ込んだ不穏な存在に、少しぎょっとさせられます。
○36 竹皮を脱ぎたる夢二美術館  美術館も、あまり綺麗すぎても味がない。その点、この句のような美術館であれば、旅の途中に立ち寄ってみたくなりますね。
○39 棟梁の鑿を休めし朝ぐもり  朝曇であっても仕事が出来ない訳ではありませんが、気分が乗らないと鑿を振るわない棟梁なんでしょうか。なかなかの頑固者、職人気質の棟梁のようです。
○54 落ち癖の子燕二倍ポイントデー  二倍ポイントデーなどという言葉が俳句に詠み込まれ、描写として機能するとは驚きました。すくすく育つ燕の子と、二倍ポイントデーで賑わうスーパーと。面白い景です。
 01 明易の玄関に靴揃へたり  すがすがしく気分の良い景。家から家族を送り出す側の人の行動のように感じました。
 04 絵手紙の野菜畑に夏立ちぬ  これは、絵手紙を書いた人と受け取った人との間で、季節の進み方に差異があるように感じます。例えば、絵手紙を書いた人は南国に住んでいて、早々と夏の作物を育てている。それを季節を先取りするかのように、受け取った人が感じる訳です。
 05 喰ひては寝喰ひては寝して燕の子  意味は分かりますが、具体的な景の描写ではなく、観念で対象を捉えているように感じる。そういう作り方で句を作ると、そもそも燕の子とはそういうもの、という範疇からなかなか出られないと思います。
 07 黄金なる愛玉子(オーギョーチー)や夜の短か  食べたことのない料理だったので調べてみましたが、綺麗なだけでなくどこか儚い印象も受ける愛玉子。どことなく艶っぽさも感じる句です。採りたかった句。
 08 母の忌や紫陽花育ち供えたり  気持ちは分かりますが、一句に盛り込む内容が多すぎるように感じます。「紫陽花が育った」ことと「紫陽花を供えた」こと、両方を一句に盛り込むといかにもごちゃごちゃしてしまう。これをいずれかに絞った上で、紫陽花のディテールなどを描写した方が良いのではないかと思います。
 09 十薬や気はしたたかに生きんとす  わざわざ「気は」と言っている所が少々複雑。気はしたたかでも身体は繊細だったのでしょうか。
 10 ほら蛍ほたるよ子の肩揺さぶりぬ  ふいに蛍を見つけて、寝入っていた子供を揺さぶって起こしたのでしょうか。セリフを活かした句を作りたかったのでしょうが、こういう句こそリズムを大切にしたいので、中八は避けたい。セリフは上五だけにしておいて(もしくは「子の」を削るとか)、きっちり五七五にしてはいかがでしょうか。
 15 薄赤き苔の花咲く忠魂碑  派手さはありませんが、「薄赤き」という所にリアリティ、臨場感がある句です。
 16 遠河鹿五右衛門風呂にたぢろぎぬ  ユーモラスな句ではありますが、私自身は子供の頃に祖父・祖母の家が五右衛門風呂で、面白がって入浴したものです。「たぢろ」ぐということは、私よりだいぶ若い世代かも…とジェネレーション・ギャップを感じました。
 17 気に入りの母のお下がり衣更  一句が衣更という季語の説明になってしまっているようです。
 21 複線より単線が好きかたつむり  気分はとてもよく分かります。ちょっと「分かりすぎる」所があるような気も…。
 23 楽すればこころ重たし青葉風  仕事の手順などが固定化してくると、こういう気分になることがままあります。ただ、効率良く出来るところは効率化した方が良いんですよね…。青葉風で少しは気が晴れてくれると良いのですが。
 25 ほつとけば酢漿草覆ふ植木鉢  かたばみの花はけっこう好きなのですが、植木鉢にはびこられては困る。鉢の主の困った顔が目に浮かぶ。
 30 ちょっとずつ遅れる頭脳走り梅雨  四月、五月とやってきて走り梅雨の時期。ふと一息ついて今年度を振り返ったりする時期です。思ったより片付いていない雑事に呆然とする一瞬、とてもよく分かります。
 37 夏半ば濡縁に足はふりだし  中七下五の内容が、それだけで十分夏らしいので、季語があまり活きてきません。もっと具体性のある季語に代えた方が、中七下五の内容も活きてくるかもしれません。
 38 をみなには引きたる力蛍の夜  「秘めたる力」なら分かりますが、「引きたる力」というのがよく分からなかった…。一体どういうことなのでしょうか。綱引きでもしたのでしょうか。
 41 波風を立たすななどと夜光虫  上五中七の内容に対して季語があまり活きていないように感じます。
 45 下駄履けば鼻緒冷たき五月闇  触感として下駄の鼻緒の冷たさが感じられる。いかにも梅雨時といった風情です。ただ、下駄の鼻緒が冷たい、とだけ言えば、「履けば」とわざわざ言わずとも、履いた時のことだと読み取れるのではないかとも感じました。
 48 風の香や路地裏にある珈琲屋  雰囲気は良いですが、少しインパクトが弱いようにも感じます。これしかない!という季語がもっと他にあるのではないでしょうか。
 50 箱庭の真ん中に置く一樹かな  「人」ではなく「樹」を置くというところに、静かさと確かさを感じる句です。採りたかった句。
 56 飛行機雲薄暮に解けて夏燕  上五中七だけで景が成立してしまっていて、「夏燕」が出て来ない方がすっきりするような…。この句に関しては、あまり具体的な季語ではなく、時候や行事の季語などの方が奥行きのある句になるのではないかと思います。
 57 ぺたぺたと木匙で夏炉のラタトウイユ  「で」「の」という助詞の流れが散文的に感じます。中八になってしまっているのも気になる。
 60 格別の折鶴として冷房裡  オバマ大統領が折ったという折鶴を詠まれた句ですが、「格別」というところに非常に含みがある。
 61 逃げ出せる亀の行へや青田波  なかなかに余韻のある句です。季語も良い。
 63 虚も実も人の仕業や桜桃忌  ごもっとも、という他ないですね。
 65 若冲の鶏の眼や晩夏光  若冲の絵の鮮明さと晩夏光の対比、句としては出来ていると思いますが、句会の句はやはり当季の句であってほしい。梅雨の最中に晩夏の句は少し気が早いように感じました。
 66 箱釣に子供群がり活気わく  そもそも箱釣とはそういうもの、という範疇から出ていない句だと思います。その上「活気わく」まで言ってしまっては、一句が季語の説明である上に、一句の答えを言ってしまっている。季語は季語として、季語だけで伝えられるものがあるので、それ以外の部分を詠み込んでいかなくては、その人の句になりません。
。  

 


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