ハルヤスミ句会 第百八十九回

2016年7月

《 句会報 》

01 緑陰や陶の小人の笑い顔       案山子(草)

02 蟷螂の赤子一匹石畳         ひろ子(え・賢)

03 空蝉を拾ひて船を待ちゐたる     海音(一・佳・春)

04 裾や袖より草いきれ入り来たる    春休(賢・さ・三)

05 初蛍見られて心だれさがす      賢人

06 黒鍵の光うしなふ羽蟻の夜      佳子(ル・草・一)

07 五月闇ゴッホのナイフしのばせて   ルカ(水・一・順・益)

08 書き直す遺言ひらひら夏の蝶     益太郎(え・春)

09 未だ暗し寝ぐせそのままバナナ食ひ  忠義

10 夏萩や懐紙につつむ細工菓子     水玉(賢・草・一・時・タ)

11 額の花明日あること知らずなり    愛

12 クランチの氷菓を食べて寝て仕舞ふ  順一

13 飲み始めたら終つてるラムネかな   さんきう

14 蜘蛛の囲を今日も崩して無風なり   えみこ(賢・益)

15 あめんぼう潜れないから浮いている  益太郎(草・愛)

16 甚平が甚平つれて風呂屋かな     時人(案・愛・順・佳)

17 乳歯二本抜けたる笑みや合歓の花   つよし(ル・時)

18 激すれば言葉詰まりぬ草いきれ    春休(水・案・奥)

19 白銀の気を放ちつつ花藻かな     案山子

20 Tシャツに男の乳首草田男忌     草太(さ・一・愛・忠・益)

21 互ひ無言メロンに種の限りなく    忠義(三)

22 石鹸も割れて二つや雲の峰      タロー(奥・海)

23 冷酒の缶を探して顎傷付く      順一

24 肌脱ぎの腰に丸まる浴衣かな     タロー(案)

25 旅先の七色飾る冷やし中華      賢人

26 又一羽カアと一声明け急ぐ      案山子(時・奥)

27 夏痩の少年にあふ神楽坂       海音(タ)

28 白玉や本降りなのに傘がない     タロー

29 さくらんぼザ・ピーナッツもザ・たっちも さんきう

30 母の声耳に残れる涼み台       みなと(海・佳)

31 遠雷や静まり返る森の闇       ひろ子(時・鋼)

32 麦わらの寄ってたかって薔薇剪定   えみこ

33 みんみんや真空パック開封す     佳子(ル・タ・忠・順・海)

34 冷夏得てダンベル体操やって見る   順一(愛)

35 咲き方に作法手順や立葵       益太郎(水・さ)

36 まひまひや浮き世の空気鎮もれる   みなと

37 人見失ふ炎天の交差点        春休(三・奥・愛・佳)

38 バス影を背伸び求むも夕立くる    つよし

39 父失せし実家広々竹夫人       忠義(え・鋼)

40 国芳の猫走り出す日雷        ルカ(水・草)

41 素麺を鍋にほどくもめんどくさ    さんきう(水・春)

42 夕蝉や私が消えるまで歩く      水玉(ル・タ・順・海)

43 水海月自由自在の乱舞かな      ひろ子

44 さつきまで蜥蜴でありし切れ端ぞ   佳子(三・え・案・益・春)

45 すててこの思わず正座投下時刻    草太(忠・鋼)

46 卒寿超え一人で居ます網戸です    つよし(え)

47 雨樋にほとりほとりと凌霄花     愛(三・賢・案・時)

48 タルトタタンこんがり炎昼行く集団  えみこ

49 盆前や母の好みしぼたんきやう    時人

50 たましひの出口はこちら生ビール   水玉(さ・忠・益)

51 ざぶざぶと渡り越へたや天の川    愛(さ)

52 迎火や煙に咽ぶ傘の中        時人(鋼)

53 蝉時雨赤子の声と勝負して      賢人(順)

54 七夕や東京行きの夜行バス      海音(奥・鋼)

55 サキソホン買ひたる兄の帰省かな   みなと(ル・タ・忠・海・佳・春)

56 アバンアプレ卒業しての生身魂    草太

57 又兵衛の女の顎や晩夏光       ルカ  




【 水玉 選(水) 】
○07 五月闇ゴッホのナイフしのばせて
○18 激すれば言葉詰まりぬ草いきれ
○35 咲き方に作法手順や立葵
○40 国芳の猫走り出す日雷
○41 素麺を鍋にほどくもめんどくさ
よろしくお願いいたします。

【 えみこ 選(え) 】
○02 蟷螂の赤子一匹石畳  石畳の硬さ、蟷螂の赤子の柔らかさ、元気で育てよとの思いが伝わる。
○08 書き直す遺言ひらひら夏の蝶  そういうこともある遺言、ひらひらよりひらりでいいかとも。結構何度も書き直していそう、この遺言。
○39 父失せし実家広々竹夫人  父は死んだのか、行方知れずかわからないけれど、残された竹夫人が寂しそうで、そうでもなさそうで。           
○44 さつきまで蜥蜴でありし切れ端ぞ  切れ端といいきったおもしろさ、ぞで締めたのも大仰でおかしい。
○46 卒寿超え一人で居ます網戸です  居ます、網戸です、の言い方が丁寧で 、なんだかわからないけれどその淋しささえも超えた飄々ぽさがいい。 

【 賢人 選(賢) 】
○02 蟷螂の赤子一匹石畳
○04 裾や袖より草いきれ入り来たる
○10 夏萩や懐紙につつむ細工菓子
○14 蜘蛛の囲を今日も崩して無風なり
○47 雨樋にほとりほとりと凌霄花
が気に入りました。

【 乃愛 選(乃) 】
(今回はお休みです。)

【 さんきう 選(さ) 】
○04 裾や袖より草いきれ入り来たる  テーマはいいと思うんですが、語順や言い方はこれでいいのでしょうか。
○20 Tシャツに男の乳首草田男忌  「草」「田」の字が効いてる。下品な句になっていないのがヨイ。
○35 咲き方に作法手順や立葵  なるほど、立葵についてこんな意見が…。立葵の品の良さを感じさせて◎。
○50 たましひの出口はこちら生ビール  くーっ。五句選だと、このテの謎句を採らされてしまう。「ゲップのこと?」とか考えないようにしよう。
○51 ざぶざぶと渡り越へたや天の川  天の川のイメージは決して「ざぶざぶ」ではないと思うが、当然ながら、そう言い切ったのがよい。

【 ルカ 選(ル) 】
○06 黒鍵の光うしなふ羽蟻の夜  羽蟻の音が生きてます。
○17 乳歯二本抜けたる笑みや合歓の花  取り合わせがよいです。
○33 みんみんや真空パック開封す  蝉の声も真空パックしたい。
○42 夕蝉や私が消えるまで歩く  この余韻、なかなか出会えません。
○55 サキソホン買ひたる兄の帰省かな  サキソフォンがよい。

【 青野草太 選(草) 】
○01 緑陰や陶の小人の笑い顔
○06 黒鍵の光うしなふ羽蟻の夜
○10 夏萩や懐紙につつむ細工菓子
○15 あめんぼう潜れないから浮いている
○40 国芳の猫走り出す日雷

【 石黒案山子 選(案) 】
○16 甚平が甚平つれて風呂屋かな  今日はお仕事お休み。大好きなお父さんと一緒に銭湯へ。嬉しげなお子様の笑顔が見えます。
○18 激すれば言葉詰まりぬ草いきれ  「草いきれ」が絶妙に効いていると思いました。
○24 肌脱ぎの腰に丸まる浴衣かな  縁台に座っている姿が浮かんで参りますが、缶ビールを手に持って何かしゃべって居るんでしょうか?生き生きとした情景。
○44 さつきまで蜥蜴でありし切れ端ぞ  こういった俳句にはよく出会いますが、このお句は誠にリアル。
○47 雨樋にほとりほとりと凌霄花  丈夫な花で沢山の花を付け、次々咲いて散ってゆきます。「ほとりほとり」が優しく響いています。

【 一斗 選(一) 】
○03 空蝉を拾ひて船を待ちゐたる 
○06 黒鍵の光うしなふ羽蟻の夜
○07 五月闇ゴッホのナイフしのばせ
○10 夏萩や懐紙につつむ細工菓子  
○20 Tシャツに男の乳首草田男忌

【 中村時人 選(時) 】
○10 夏萩や懐紙につつむ細工菓子
○17 乳歯二本抜けたる笑みや合歓の花
○26 また一羽カアと一声明急ぐ
○31 遠雷や静まり返る森の闇
○47 雨樋にほとりほとりと凌霄花
他に気になった句は
 09 未だ暗し寝ぐせのままにバナナ食ひ
 14 蜘蛛の囲を今日も崩して無風なり
 31 麦わらの寄ってたかって薔薇剪定
 45 すててこの思わず正座投下時刻
 37 人見失ふ炎天の交差点

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○18 激すれば言葉詰まりぬ草いきれ  俳句を詠んで怒りを鎮めたいですね。
○22 石鹸も割れて二つや雲の峰  暑い夏ですね。
○26 又一羽カアと一声明け急ぐ  去年は朝4時半に毎朝起こされました。
○37 人見失ふ炎天の交差点  まぶしさと暑さにくらくらしてしまう交差点。
○54 七夕や東京行きの夜行バス  固い決心か、毎年の楽しみか、想像が広がります。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○15 あめんぼう潜れないから浮いている  な〜るほど、そう言われてみればそうですね。
○16 甚平が甚平つれて風呂屋かな  一方の甚平はお父さんかな、おじいちゃんかな。これからのお風呂屋さんでの光景が目に浮かびます。楽しい句ですね。
○20 Tシャツに男の乳首草田男忌  これは相当に身体を鍛えた男性ですね。Tシャツの下の男性美が透けてみえるようです。若い時の草田男かな。
○34 冷夏得てダンベル体操やって見る  少し遅いようですが、今からでもやって下さい。そしてピッタリのTシャツをね。
○37 人見失ふ炎天の交差点  炎天下では頭もくらくらし、視力も定かではなくなります。そこが良く分かります。

【 小林タロー 選(タ) 】
○10 夏萩や懐紙につつむ細工菓子  こういう俳句にあうとほっとします。予定調和的ではあるけれども景もわかるし、なにより句がすっきりしています。
○27 夏痩の少年にあふ神楽坂  そうですか、だから何?という人と、「神楽坂」からイメージが膨らむ人との二通りでしょう。私は後者で(隣駅が生まれ故郷)さまざまのことおもいだします。夏痩せも効いています。
○33 みんみんや真空パック開封す  真空パック開封する内と真夏のみんみんの外 との取合せ。ぴったりくるという感じもないけれども、こんなことのあるような。
○42 夕蝉や私が消えるまで歩く  心象と夕蝉が付きすぎの感じが強いけれども、どこか引かれる。
○55 サキソホン買ひたる兄の帰省かな  昔の兄とは変わってしまった兄、がサキソホンに表れていて、かな止めの感慨も響きます。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○20 Tシャツに男の乳首草田男忌  何故と思わせる取り合わせ。その男はキリストに似たやせっぽちだったとか。
○33 みんみんや真空パック開封す  長く保存されていたであろうものを世に出すことが蝉の一生に響く。
○45 すててこの思わず正座投下時刻  不謹慎かとも思われるが、地元の人の作だろうか。挑戦的な内容。
○50 たましひの出口はこちら生ビール  魂まで抜けちゃうほど美味い。
○55 サキソホン買ひたる兄の帰省かな  帰省先にまで持って帰る凝りようが都会に染まり切っていない素朴さを思う。

【 石川順一 選(順) 】
○07 五月闇ゴッホのナイフしのばせて  季語は「五月闇」。ゴッホのナイフと言う表現が印象深い。しのばせてと言う動作にも無駄がありません。
○16 甚平が甚平つれて風呂屋かな  季語は「甚平」。ユーモラスな着るもの繋がり。印象的でした。
○33 みんみんや真空パック開封す  季語は「みんみん」。開放するするときのドキドキ感が間接的に伝わって来ました。
○42 夕蝉や私が消えるまで歩く  季語は「夕蝉」。私が消えるまでと言う措辞が印象的ですね。自我の消失と蝉しぐれ、合って居ます。
○53 蝉時雨赤子の声と勝負して  季語は「蝉時雨」。対抗拮抗して居ますね。俳諧味がありました。
以上5句選でした。他にこんな句もとりました
 21 互ひ無言メロンに種の限りなく  季語は「メロン」。

【 涼野海音 選(海) 】
○22 石鹸も割れて二つや雲の峰  「石鹸も」の「も」にやや理屈が感じられるが、「雲の峰」まで飛躍したところに共感。
○30 母の声耳に残れる涼み台  遠くに行った母上の声が今も耳に残っている。日本人が共有している「なつかしさ」を具現化した句である。
○33 みんみんや真空パック開封す  みんみんという季語から想像すると、冷たいものを真空パックにしていたのだろう。真空パックを開封したときに、遠くからみんみんの声が聞こえてきたのだろう。
○42 夕蝉や私が消えるまで歩く  私という存在が消えるまで歩くことは、現実的には不可能だが、自意識や内面の問題であれば、可能であろう。蝉の声を聞いているうちに、このように達観したのだろうか。
○55 サキソホン買ひたる兄の帰省かな  兄自身が使うサキソホンなのか、それとも弟や妹のために買って帰ったのか、「兄」でなければ、この堂々とした帰省の雰囲気は出なかっただろう。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○07 五月闇ゴッホのナイフしのばせて  「ゴッポのナイフ」が、不気味。
○14 蜘蛛の囲を今日も崩して無風なり  きれいなものを見ると壊したくなる。
○20 Tシャツに男の乳首草田男忌  「男の乳首」が、面白い。
○44 さつきまで蜥蜴でありし切れ端ぞ  「切れ端」が、上手い。
○50 たましひの出口はこちら生ビール  「たましひの出口」が、面白い。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
(今月はお休みです。)

【 水口佳子 選(佳) 】
〇03 空蝉を拾ひて船を待ちゐたる 船を待っている間の手持ち無沙汰、例えば海鳥を見ていてもいいし、夏雲を見ていてもいいわけだが、空蝉を拾うという小さな動作に実感がある。
○16 甚兵衛が甚兵衛つれて風呂屋かな 親子、それも幼子と父。いまどき風呂屋なんて言うのかなあ。その言葉があったかくていいなあと。
○30 母の声耳に残れる涼み台 母の声は実際今聞こえているのか、あるいは遠い日の母を思い出しているのかも。〈耳に残れる〉がそう思わせる。
〇37 人見失ふ炎天の交差点 〈人見失ふ〉というのは、だれか特定の人を指すわけでなく、自分以外の人ということだろう。炎天の交差点でふっと孤独感に襲われたのかも。〈人〉という漠然とした表現がいい。
〇55 サキソホン買ひたる兄の帰省かな いいなあ。兄は音楽の道に?それとも単なる趣味?サキソホンも一緒に帰省したのだろう。そんな兄をまぶしく迎える弟。

【 三泊みなと(喜多波子 改め) 選(三) 】
○04 裾や袖より草いきれ入り来たる
○21 互ひ無言メロンに種の限りなく
○37 人見失ふ炎天の交差点
○44 さつきまで蜥蜴でありし切れ端ぞ 
○47 雨樋にほとりほとりと凌霄花

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○31 遠雷や静まり返る森の闇  雷の怖さが森の闇で増すようです。
○39 父失せし実家広々竹夫人  実感があふれている。
○45 すててこの思わず正座投下時刻  すててこを描いてよい句ですが、投下時刻を上五にしたらと思います。
○52 迎火や煙に咽ぶ傘の中  傘の中が意味ありそうで、写生の句。
○54 七夕や東京行きの夜行バス  季語との離れ具合が良い。
以上 お願いします。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○03 空蝉を拾ひて船を待ちゐたる  予定より遅れているのか、船を待つ間の所在無い感じが、何気なく空蝉を拾うという動作にありありと表れている。具体的な動きを描きながら、景や気分までも臨場感を持って感じさせる、奥行きを備えた句と思う。
○08 書き直す遺言ひらひら夏の蝶  遺言を書くぐらいですから、それなりの年配なのだろうと思いますが、一旦書いた遺言を書き直している。長く生きてきていても、どこかふわふわとしている、そんな気分が伝わってきます。独特なシチュエーションですが、季語の働きで実感を感じさせます。
○41 素麺を鍋にほどくもめんどくさ  暑さで食欲も湧かないし、ちゃちゃっと素麺で済ますか、ということもありますが、この句はそれすらもめんどくさい。夏ばてというのか、非常にけだるい感じが伝わってくる。
○44 さつきまで蜥蜴でありし切れ端ぞ  蜥蜴と言えばしっぽが切れるのはパターンではある。この句の面白みは、切れたしっぽは既に蜥蜴ではない、と断じている理知の働きと、勢いのある言い回しの力によるもの。個人的には、下五を「切れつ端」とするのもありかと。
○55 サキソホン買ひたる兄の帰省かな  家族のメンバーの人格や家族の関係というものも、その中にいると中々気付かないが、少しずつ少しずつ変わってゆく。この句では、変わったということを実感する印象的なタイミングを捉えている。これまでの家族のメンバーとしての兄ではなく、独立した自分の世界を持ち始めた兄。そういう変化をサキソホンが上手く暗示している。
 02 蟷螂の赤子一匹石畳  生まれたばかりの蟷螂を「蟷螂の赤子」と言ったところと、石畳との対比だけでその存在感を出している所が中々良いと思います。
 05 初蛍見られて心だれさがす  中七下五の内容が、人のことを言っているのか蛍のことを言っているのかよく分からない。「心」などという曖昧な言葉を使うより、まずは景、状況が分かるように具体的に描写する必要があると思います。
 06 黒鍵の光うしなふ羽蟻の夜  取り合わせは良いと思うのですが、夜、暗くなって黒鍵の光が失われるのは理屈というか当然という気もするので、「黒鍵の光ひそかや羽蟻の夜」などの方が良いのではないでしょうか。
 09 未だ暗し寝ぐせそのままバナナ食ひ  どうもごちゃごちゃしている印象です。まだ暗い未明であること、寝癖のままの頭であること、どちらかに焦点を絞ることは出来ないものでしょうか。もしくは、「バナナ」を季語として使うよりも、「明易」などの季語を使った方がまとまるような気もします。
 10 夏萩や懐紙につつむ細工菓子  すっきりと一句に仕立てられています。夏萩が瑞々しく涼しげに感じられる。
 12 クランチの氷菓を食べて寝て仕舞ふ  動詞が多いと句がまとまらないというのもありますが、ただの報告になってしまっているように感じます。
 13 飲み始めたら終つてるラムネかな  飲み始めたらすぐに飲み終わったということでしょうか?
 14 蜘蛛の囲を今日も崩して無風なり  「今日も」と書くからには句の中に昨日以前のことも盛り込まれてしまう訳ですが、その結果、今現在の景の描写としては鮮度が著しく落ちているように感じます。現在の景、現在の動きだけに絞って一句にした方が鮮度の高い句になるのではないかと思います。
 15 あめんぼう潜れないから浮いている  生活排水などのせいで水がきれいでないと、あめんぼは浮くことができず、沈んで死んでしまうそうです。この句の言っているとおり、「潜れないから浮いている」訳です。
 16 甚平が甚平つれて風呂屋かな  今でもこういう景があることに少し驚かされます。たぶん父と子、それも子の方はまだ幼い子供ではなかろうかと思います。
 19 白銀の気を放ちつつ花藻かな  独特の緊迫感を感じさせる内容の句ですが、「つつ」が緩い印象です。
 20 Tシャツに男の乳首草田男忌  一読、強く印象に残る句ではあるのですが、上五中七の内容と草田男忌との取り合わせに強い違和感を感じます。写真で目にしたことのある草田男の姿は、スーツか着物がほとんど。Tシャツ一枚のカジュアルな感じと、草田男のイメージとが合わないように思います。
 24 肌脱ぎの腰に丸まる浴衣かな  しっかりと出来ている句と思います。
 25 旅先の七色飾る冷やし中華  この下五の字余りは落ち着かない。「七色の冷し中華や旅の空」などで良いのではないかと思います。
 26 又一羽カアと一声明け急ぐ  「明け急ぐ」は明易の傍題。使ったことはないですが中々良い季語ですね。「一羽」「一声」と対象を絞ることによって、景(というより音か)がクリアに感じられます。
 28 白玉や本降りなのに傘がない  取り合わせとしては面白いのですが、中七がゆるい。「なのに」と口語調にする必要性をあまり感じません。
 32 麦わらの寄ってたかって薔薇剪定  「麦わらの」というのは麦藁帽子のことと読んで良いのでしょうか。それはともかく、中七が慣用句そのまま、下五は字余り、句全体としてもメリハリが無く散文的になってしまっている。
 35 咲き方に作法手順や立葵  ちょっと理が勝ちすぎている嫌いもありますが、知的な面白さのある句です。
 36 まひまひや浮き世の空気鎮もれる  個人的には、共感できない感覚。「浮世の空気」が鎮まるのは、一年の中で言えばたとえば寒中などではありませんか。この暑い時期に「まひまひ」なども飛んでいては、とても空気が鎮もっているようには感じないと思うのですが…。
 39 父失せし実家広々竹夫人  人が一人いなくなるということはこんなにも寂しいものなんだなぁ、という感慨自体は珍しいものではないかも知れませんが、そこに「竹夫人」という物を持ってきて、生活感だけでなく、どこか飄々としたユーモアさえ感じさせている。
 43 水海月自由自在の乱舞かな  水海月の動きの描写として、「自由自在」も「乱舞」も平凡な印象です。
 46 卒寿超え一人で居ます網戸です  この句は、爽波の〈老人よどこも網戸にしてひとり〉を言い方を変えただけではありませんか。
 47 雨樋にほとりほとりと凌霄花  「ほとりほとり」という独特な擬音語が凌霄の質感や静けさを感じさせる。採りたかった句です。
 48 タルトタタンこんがり炎昼行く集団  タルトタタンを焼いている景と、炎昼を集団が行く景とが結び付かない。炎昼でも行列が出来るケーキのお店でしょうか。
 50 たましひの出口はこちら生ビール  暑いときにぐーっと生ビールを飲んだとき、魂が抜けそうになる感じ、そういう雰囲気は何となく分かるのですが、「出口」と「こちら」がよく分かりませんでした。
 52 迎火や煙に咽ぶ傘の中  雨が降っているので傘の中で迎火を焚いたということでしょうか。

 


来月の投句は、8月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

back
back.
top
top.