ハルヤスミ句会 第十九回

2002年4月

《 句会報 》

01 婆さんの犬も婆さん初桜       夏実

02 花の雨車窓につうと線を書き     ふみ(や)

03 はらはらと ちるはさくらの 花ばかり 左腕

04 囀りに窓を開くや山迫る       むかご(つ・ふ・◎春)

05 粗砂の汐の寄せぎは桜貝       つよし

06 球根にまかれしテープ風信子     やすみ

07 春の汗流し熱海の丘にゐる      ふみ

08 胡蝶花活けて蕎麦屋の暗き厠かな   むかご(夏・ふ)

09 桐の枝にのぼらむ蔓の緑さす     つよし

10 やまみちは ゆけどもゆけども ふきのとう 左腕

11 ゆきやなぎ花びら風に持ちさられ   やすみ

12 春の風邪腕時計さへ重かりき     春休(つ)

13 春の夜のはづせばぬくき腕時計    春休

14 満月の下並びけりねぎぼうず     やすみ(む・春)

15 石垣の剥落みつけ溝浚        つよし

16 遠足の走る子を見るいぬふぐり    左腕

17 あるじなきしろつめ草のかんむりよ  やすみ(む)

18 若芝や犬の両耳裏返る        夏実(む・ふ・春)

19 雀の子とぶや足跡のこさずに     春休(夏・や)

20 竹秋の箱階段の艶光         むかご(◎夏・や)

21 三階の六年生に霾れり        夏実(つ)

22 行く春の熱海温泉野球団       ふみ(つ)



【 かたぎり夏実 選 】
◎20 竹秋の  表は麗かな春の陽射し。でも、手入れの行き届いた館の中はひんやりした空気が満ちている。
 08 胡蝶花活けて  古いけれどきちんと磨き込まれた蕎麦屋の、その奥の厠まで清々しい。
 19 雀の子  子雀の軽いこと軽いこと。身体も、そして気持ちも…。

【 鋼つよし 選 】
04 囀りに窓を開くや山迫る
12 春の風邪腕時計さへ重かりき
21 三階の六年生に霾れり
22 行く春の熱海温泉野球団
選句評
04 囀り 12 春の風邪 、素直でよいと思う。
21 三階の六年生と霾との取り合わせが抜群で今回の◎です。
22 行く春の・・・言葉の弾みがよい。
01 婆さんの・・・「犬も」では平板な感じなので「婆さんの犬や婆さん初桜」にされたら抑揚と間が出来ると思いますが。

【 松尾むかご 選 】
14 満月の・・・映画の中でこんな場面が出てきたらドキドキするほど美しいでしょうね
17 あるじなき・・・一読すると、子供の世界を切り取った句と取れるが、深く読むと怖さもある、
18 若芝や・・・生き生きとした、はじけてる、感じが読んで元気が出る句
その他
1 婆さんの・・・これも面白くて悲しくて好きな句
13 春の夜の・・・うーむ、いいのだ
22 行く春の・・・ミスターレデイとか、ヒモさん、とかあやしげなお兄さん達が、元気に汗流してそうで、面白いね
今回、みんな良くて、3句、に絞りきれませんでした、沢山出るとわくわくしますね。

【 中村ふみ 選 】
04 囀りに  あ〜、すがすしい。春の山の明るく楽しい気分全開ですね。
08 胡蝶花活けて  胡蝶花と暗い厠の取り合わせが大人っぽい。
18 若芝や  若芝に狂喜乱舞している犬の様子が浮かぶ。

【 小川やすみ 選 】
02 花の雨  雨で花が散ってしまう惜しさはあるけど雨のしずくのきれいさがあらわれてたから。
19 雀の子  足跡も残らないくらい小さくかわいらしい雀がいいね。
20 竹秋の  年数がたっていても木の階段はみがけばひかるんだよ。それがあらわれてるところがいいね。

【 小川春休 選 】
◎04 囀りに  ひさびさに◎をつけました。「開くや」の切字が良い。「山迫る」という大づかみな描写も力強くて良い。何より季語の「囀り」が見事なまでにはまっている。
○18 若芝や  躍動感溢れる、若々しい句ですね。犬も両耳が裏返っちゃうくらい喜んで走り回ってるのでしょう。こんなとこでお弁当が食べたい。
○14 満月の  すごくシンプルな句で、俳句としてとても安定してますね。満月の下の葱坊主かー。これまで見落としてましたが、確かに言われてみれば奇麗ですね。
o01 婆さんの  上五中七、とても好きです。私個人的にはこの下五も合っていると思うのですが、他にベターな季語があるかもしれません。
o05 粗砂の  上五中七、うまいですね。目に浮かぶようです。ただ、下五の季語が飛躍がなくて、このままだとせっかくの上五中七が単なる説明になってしまう気がします。下五にもっとイメージをふくらませるような季語を持ってきては?
o08 胡蝶花活けて  薄暗いけれど清潔な、老舗の蕎麦屋のたたずまいが伝わってきますね。
o16 遠足の  「遠足」と「いぬふぐり」が季重ねですが、それほど気にはなりません。なかなか良い雰囲気の句ですね。
o22 行く春の  おもしろい。おもしろいのだけれど、今回良い句が多くて3句選には入りませんでした。
02 花の雨  景としてはなかなか良いと思うのですが、下五が説明的な感じがします。中七下五で「車窓につうと花の雨」と言えば今の内容はすべて伝えられると思うのです。そうすれば、+αの上五次第でさらに良い句になりそうじゃないですか?
03 はらはらと  桜の散るのを描写する擬態語としては、「はらはら」はちょっと普通すぎる感じがします。もう一歩踏み込んで、自分なりの表現にしたいところですね。
06 球根に  こういうのを写生っていうんでしょうね。こういう姿勢でどんどん作っていけたらな、と思います。
07 春の汗  「汗」だけで夏の季語として用いることができるので、わざわざ「春の汗」というのにはちょっと違和感があります。「春」である必然性が弱いのかもしれません。
15 石垣の  「見る」という言葉は、俳句ではなるべく使わない方が良い言葉。というのは、「見たこと」「見えたもの」を句にするのが普通なのだから、わざわざ「見る」と言う必要がほとんどないせい。この句の「みつけ」も、言わなくても「見つけた」ということは伝わるのでは?


来月の投句は、5月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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