ハルヤスミ句会 第百九十一回

2016年9月

《 句会報 》

01 カルピスに馴らされし喉八月尽      さんきう(水)

02 ちらちらと勝手覗くや秋の蝶       時人(案)

03 ほめられて秋の風鈴鳴り通し       えみこ(第・順)

04 転がるがごと鰯雲吹かれゆく       春休

05 帰省子のコンサ−ト果つふるさと館    みなと

06 新涼や忘れ防止の一工夫         案山子(奥)

07 文鳥の餌を吹く朝や草の露        ぐり(時・佳)

08 海風のねばねばしさや秋暑し       ひろ子(水・時・三)

09 告発の舌のくれなゐ石榴の実       佳子(水・さ)

10 残暑なほ突っ切って行くパナマ船     みなと(草・忠)

11 名月や何処へも行かぬ事に決め      順一(第)

12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな       タロー(ル・時・第・愛・海・佳)

13 眠れどもなほ袖余る秋はじめ       水玉

14 小鳥来てこの樹を離れずに遊ぶ      春休(タ・順・ぐ)

15 絶対に届かぬ書棚昼の月         えみこ(忠・益)

16 野分だつ雲の間を月速し         案山子

17 藪抜けし風のにほふや秋祭        春休(第)

18 空蝉の来し方語る背の痛み        益太郎

19 海近き墓やたうらう枯れはじめ      時人(ル・ぐ・三)

20 見下ろしてこそ秋天の城下町       さんきう(え・案・奥・タ)

21 八朔や電話で済ますこと多し       愛

22 スーパーの秋の種選る誕生日       ひろ子

23 川浚へ終はり水澄む鶴見川        愛

24 下校児の見守りなれど残暑なる      つよし

25 放り上げ一顆の葡萄口で受け       愛

26 空蝉が鍵かけ戻る蝉の穴         益太郎

27 秋高をうかがふやうに池の鯉       忠義(順)

28 月仰ぐストッキングを二足干し      ぐり(え・草・愛・海・佳・三)

29 満月を望遠レンズで撮り直す       順一

30 幟立つ痛車百台秋うらら         水玉(三)

31 チャンチャンで終わるタンゴや野分去る  タロー(水・草・案・愛)

32 栗飯をよそふ時目が少し寄り       ぐり(案・春)

33 寝待月男不要な乳首もち         草太(忠)

34 大雨にめげぬ大根(だいこ)の芽の揃ふ   つよし

35 芒原いくらか磁気を帯びながら      佳子(さ・ル・タ・益・ぐ)

36 箔つけるだけの大臣八日蝉        益太郎

37 肩組めば敵などなくて野路の秋      忠義(愛)

38 着信光カンナの緋色滲み初む       えみこ(さ)

39 鎌切の小首かしげる墓石かな       時人

40 狐は「コン」狸は何ンと白秋忌      草太(え・海・益・春)

41 花の香の流れてきたる野分晴       海音(え・時)

42 旧町名ひしめく地図や秋灯下       さんきう(え・海)

43 長き夜のマトリョーシカの憂鬱かな    ルカ(益・ぐ)

44 雲まといしじまに浮かぶ今日の月     ひろ子

45 口笛のもう続かずよ草の花        海音(水・ル・草・佳・春)

46 暮れてなほ見入るテロップ初台風     みなと

47 月の道眼帯に耳ひつぱられ        佳子(時・奥・ぐ・春)

48 突き崩す護摩木の燠や獺祭忌       タロー(さ・順)

49 刈られ過ぎ荒地で伸びる秋櫻       順一

50 月天心忠次の反骨我に欲し        草太

51 骨冷えて菊大輪の愁嘆場         水玉(さ・奥)

52 酒は敵とは言い切れず衣被        案山子(愛・益)

53 紫苑咲く少年母の背丈越え        忠義(ル・順・海・春)

54 B級の梨はおまけや別の箱        つよし(奥)

55 無花果の裂けてだんだん怖くなる     ルカ(草・案・タ・忠・佳)

56 あとがきに父母のこと雁の声       海音(忠・三)

57 少年よ九月の国境越えてゆけ       ルカ(第・タ)  




【 水玉 選(水) 】
○01 カルピスに馴らされし喉八月尽
○08 海風のねばねばしさや秋暑し
○09 告発の舌のくれなゐ石榴の実
○31 チャンチャンで終わるタンゴや野分去る
○45 口笛のもう続かずよ草の花

【 えみこ 選(え) 】
○20 見下ろしてこそ秋天の城下町
○28 月仰ぐストッキングを二足干し
○40 狐は「コン」狸は何ンと白秋忌
○41 花の香の流れてきたる野分晴
○42 旧町名ひしめく地図や秋灯下

【 賢人 選(賢) 】
(今回はお休みです。)

【 乃愛 選(乃) 】
(今回はお休みです。)

【 さんきう 選(さ) 】
○09 告発の舌のくれなゐ石榴の実  これは良い。ザクロの実の不気味さが効いてる。上五中七の状況が謎っぽい(イマイチ意味不明)のが効果的。
○35 芒原いくらか磁気を帯びながら  磁気を感じたというセンスに○。「ながら」が俳句的でないかも…。(俳句的でない面白さがあるわけでもない)
○38 着信光カンナの緋色滲み初む  携帯の着信光だろうが、「滲み初む」のあたりが上手いと思った。
○48 突き崩す護摩木の燠や獺祭忌  おそらく、自分ではなく他の人が突き崩しているのだろう。題材に惹かれました。
○51 骨冷えて菊大輪の愁嘆場  これは材料が多過ぎの感じがしました。材料が多過ぎというより、材料個々のインパクトが強すぎるのかな?

【 ルカ 選(ル) 】
○12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな  虚子の句集、がよい。
○19 海近き墓やたうらう枯れはじめ  枯れ始める、の着眼点がいいです。
○35 芒原いくらか磁気を帯びながら  鷹女のひるがおの句を思い出しました。
○45 口笛のもう続かずよ草の花  素朴さが出ていて好感がもてます。
○53 紫苑咲く少年母の背丈越え  紫苑がいいです。「越え」より、「越ゆ」がいいかと。

【 青野草太 選(草) 】
○10 残暑なほ突っ切って行くパナマ船
○28 月仰ぐストッキングを二足干し
○31 チャンチャンで終わるタンゴや野分去る
○45 口笛のもう続かずよ草の花
○55 無花果の裂けてだんだん怖くなる

【 石黒案山子 選(案) 】
〇02 ちらちらと勝手覗くや秋の蝶
〇20 見下ろしてこそ秋天の城下町
〇31 チャンチャンで終わるタンゴや野分去る
〇32 栗飯をよそふ時目が少し寄り
〇55 無花果の裂けてだんだん怖くなる

【 一斗 選(一) 】
(今回はお休みです。)

【 中村時人 選(時) 】
○07 文鳥の餌を吹く朝や草の露
○08 海風のねばねばしさや秋暑し
○12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな
○41 花の香の流れてきたる野分晴
○47 月の道眼帯に耳ひつぱられ
 他に気になった句は
 50 月天心忠次の反骨我に欲し
 53 紫苑咲く少年母の背丈越え
 55 無花果の裂けてだんだん怖くなる
 以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
○03 ほめられて秋の風鈴鳴り通し  人間も一緒。褒められると頑張っちゃいます。
○11 名月や何処へも行かぬ事に決め  月と向かい合う一夜。美味しいお酒とともに。
○12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな  愛読書は常に身近にあります。
○17 藪抜けし風のにほふや秋祭  昔の田舎の収穫祭のイメージ。豊かな大地の恵みのにおいでしょうか。
○57 少年よ九月の国境越えてゆけ  九月には作物の実りの季節感とともに、子供が一段と成長する時期というイメージがあります。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○06 新涼や忘れ防止の一工夫  同感です。
○20 見下ろしてこそ秋天の城下町  その昔、殿様が見下ろした城下町がよみがえります。
○47 月の道眼帯に耳ひつぱられ  月の明るさが際立ちます。引力を面白くとらえています。
○51 骨冷えて菊大輪の愁嘆場   生あるものの終わりの悲しみ。
○54 B級の梨はおまけや別の箱  おまけは、嬉しいです。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな  秋の蠅って以外としつこいですね。虚子の句集が手元にあったので咄嗟に”えいっ”とやってしまったという事でしょうか。
〇28 月仰ぐストッキングを二足干し  分かる分かる、明日はくストッキングがない、今夜は雨が降らない様子、タオルでパンパンと水気を切ってと。
〇31 チャンチャンで終わるタンゴや野分去る  確かにタンゴの終わりは”チャンチャンッ”です。野分の季語を持ってきたのは見ている人の感想かな。
〇37 肩組めば敵などなくて野路の秋  ラガーでしょうか。そうそう勇気凛々、天下無敵でした。若いころは。”野路の秋”が爽やかで合ってます。
〇52 酒は敵とは言い切れず衣被  ”酒は敵”と言われるからには相当の呑んべと思われます。塩をちょっと付けて衣被で日本酒を一杯、いいですね〜。

【 小林タロー 選(タ) 】
○14 小鳥来てこの樹を離れずに遊ぶ  ぼやけた景になりがちの季語ですが、自分に引付けた良い句と思います。破調にせずに、この樹離れず遊びけり とかでは如何?
○20 見下ろしてこそ秋天の城下町  見下ろす が良かった。「こそ」は「ここ」では如何?
○35 芒原いくらか磁気を帯びながら  磁気を帯びるという把握がおおきくて良かったです。何となく天変地異、人心騒乱の予兆をおもわせ無気味
○55 無花果の裂けてだんだん怖くなる  恐くなるがおもしろいです。
○57 少年よ九月の国境越えてゆけ  スローガン、標語になるのを救っているのが「九月」。勢いのある俳句です。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○10 残暑なほ突っ切って行くパナマ船  パナマ籍の船はいろいろ運営上有利だそうで。良くも悪くも野望に満ちていて船速も速いのか。
○15 絶対に届かぬ書棚昼の月  絶対にとはいっても誰かに頼むか台を使うかによって手に届かせようとするだろう。薄い月でもしっかと見ようとする探求心。
○33 寝待月男不要な乳首もち  男に乳首が不要?いやいや、それはどうでしょう。それはさておき不要と思われる方なら寝待月に思うようなくだらなさが利いてます。
○55 無花果の裂けてだんだん怖くなる  内に秘めたところに花を持つ無花果。本性をむき出しにしてくる人間と重なっただろうか。作者が若い男性だったらもっと違った意味にも取れそうな。
○56 あとがきに父母のこと雁の声  句集を読まれたのか、最後に作者のもう一つの側面に触れて万感に愛でるべきことが増えていく。
 03 ほめられて秋の風鈴鳴り通し  上五とそれ以下がつながるかどうかちょっとわからなかった。でも目を引きました。
 18 空蝉の来し方語る背の痛み  空蝉に痛みはないでしょうがあんな裂け目があるんじゃないかというほどの痛みとは大変だ。
 20 見下ろしてこそ秋天の城下町  「こそ」っていう説得力が今一つ感じられない。秋の天は城の天守よりまだまだ高いでしょう。

【 石川順一 選(順) 】
○03 ほめられて秋の風鈴鳴り通し  季語は「秋の風鈴」。ほめられた感情を風鈴が代表する様な感じですね、飯田蛇笏の句も思い浮かびますが。
○14 小鳥来てこの樹を離れずに遊ぶ  季語は「小鳥来る」。遊ぶ小鳥。何か小林一茶の様な感じもしました。
○27 秋高をうかがふやうに池の鯉  季語は「秋高」。池の鯉も何か期待しているのかもしれません。
○48 突き崩す護摩木の燠や獺祭忌  季語は「獺祭忌」。何か正岡子規のイメージと内容が合って居る様な気がしました。
○53 紫苑咲く少年母の背丈越え  季語は「紫苑咲く」。少年の成長に俳句味がありました。
 以上5句選でした。他に採った句に
 38 着信光カンナの緋色滲み初む  季語は「カンナ」。
 が、ありました。

【 涼野海音 選(海) 】
○12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな  虚子の句集を、秋の蠅を払うのに使うとは、俳諧味がある。
○28 月仰ぐストッキングを二足干し  ストッキングを二足干すという俗を、「月仰ぐ」で、雅に転化。
○40 狐は「コン」狸は何ンと白秋忌  北原白秋といえば、童話。狐と狸が登場するこの句は、鳴き声だけで、二者と対話している点が、面白い。
○42 旧町名ひしめく地図や秋灯下  「旧町名がひしめく」という表現がユニーク。それほど旧町名が密集しているのである。
○53 紫苑咲く少年母の背丈越え  紫苑の高さが人間の背の高さを思わせる。だから、「少年母の背丈越え」が生きている

【 川崎益太郎 選(益) 】
○15 絶対に届かぬ書棚昼の月  書棚の最上段の本は、月のように手に取れない。
○35 芒原いくらか磁気を帯びながら  なぜか芒原に惹かれる。それは磁気のせいかも知れない。
○40 狐は「コン」狸は何ンと白秋忌  季語が絶妙。
○43 長き夜のマトリョーシカの憂鬱かな  ロシアの憂鬱は、深くて、長い。
○52 酒は敵とは言い切れず衣被  秋のつまみに衣被はぴったり。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○14 小鳥来てこの樹を離れずに遊ぶ  他にいくらでも樹はあってもこの樹がお気に入りなのだろう。
○19 海近き墓やたうらう枯れはじめ  秋の海風を感じる墓所。じっと動かない蟷螂。すっかり秋だ。
○35 芒原いくらか磁気を帯びながら  不思議な句。わからないのだがなぜか惹かれる。磁気を帯びる芒原ならしばらく佇んでいたい。
○43 長き夜のマトリョーシカの憂鬱かな  次々に出てくる相似形のマトリョーシカの憂鬱は作者の憂鬱でもあるのだろう。長き夜が一層長く感じられる。
○47 月の道眼帯に耳ひつぱられ  最近、眼帯の人をあまり見ない気がする。眼帯の紐に引っ張られて少し折れた耳で月の道を急いでいるのかな。

【 水口佳子 選(佳) 】
○07 文鳥の餌を吹く朝や草の露  餌の殻だけ吹いて飛ばす・・こんなことが句になるんだと感心。餌から足元の草の露に移る視線もごく自然でいいと思う。
○12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな  虚子の句に「秋の蠅うてば減りたる淋しさよ」というのがある。虚子の句に相反して、作者にとって秋の蠅は鬱陶しいものなのだろう。虚子への皮肉ともとれる。
○28 月仰ぐストッキングを二足干し  月を仰ぐ風流とストッキングを干すという俗っぽさ。季語の力というか、うまく詩に仕立てた。
○45 口笛のもう続かずよ草の花  草の花の咲く道を草の名前を言いながら歩いているのか。口笛を吹いていたことさえ忘れてしまったかのように。
○55 無花果の裂けてだんだん怖くなる  イチジクは禁断の果実という説もあるが、いろいろに想像を広げて読むことの可能な句。

【 三泊みなと(喜多波子 改め) 選(三) 】
○08 海風のねばねばしさや秋暑し
○19 海近き墓やたうらう枯れはじめ
○28 月仰ぐストッキングを二足干し
○30 幟立つ痛車百台秋うらら
○56 あとがきに父母のこと雁の声 

【 鋼つよし 選(鋼) 】
(今回は選句お休みです。)

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○32 栗飯をよそふ時目が少し寄り  自分の茶碗に栗が何個入っているか、栗ご飯を食べる時にはこれは大問題です。家族内で格差があると、紛争が勃発しかねない。よって栗ご飯をよそう人は、注意と集中を要するのです。個人的な好みを言えば、「目が少し寄る栗飯をよそふ時」とした方が景が鮮明になるように思います。
○40 狐は「コン」狸は何ンと白秋忌  「ポンポコポン」ですかね。童話的な内容、語り口の調子の良さ、忌日の季語の持つ雰囲気が活かされていて、楽しい句です。
○45 口笛のもう続かずよ草の花  私も口笛を吹くのが結構好きですが、長時間吹くのは案外疲れるものです。秋の散歩に気分良く口笛を吹いていたが、少し疲れて止めてしまった。その後の静けさもまた心地良い。
○47 月の道眼帯に耳ひつぱられ  中七下五の描写の臨場感が素晴らしい。ただ、だからこそ気になったのは、「月の道」の「道」があまり効果的でないように感じる点。月の季語は名月・月の出・月白・月明などなどいろいろあります。さらに言えば、上五「や」で切った方が対比がより鮮明になるようにも感じます。
○53 紫苑咲く少年母の背丈越え  田中裕明の〈紫苑咲く子は真直に寝ねられず〉を少し思い出しましたが、裕明句よりは成長した少年の印象。紫苑の花が、少年の佇まいまでも想像させてくれる句です。
 01 カルピスに馴らされし喉八月尽  好むと好まざるとに関わらず、夏になったらカルピスを飲む他ない環境にあるのでしょうか。個人的には、暑い時期にはもっとさっぱりしたものが飲みたいと思いつつ…。
 03 ほめられて秋の風鈴鳴り通し  句の作りとしては、富安風生の〈よろこべばしきりに落つる木の実かな〉と近いものを感じる。本来は直接の繋がりがないはずの心情と景とが、句の中でシンクロしている。
 08 海風のねばねばしさや秋暑し  書こうとしている景は十分分かるのですが、上五中七の内容と下五の季語とが内容が近すぎる。ツキスギとまでは言いませんが、秋暑の頃の海辺を思わせる他の季語にされた方が、より印象鮮明な句になるのではないかと思います。
 10 残暑なほ突っ切って行くパナマ船  暑さが立秋過ぎてもなお残っているから「残暑」な訳で、「なほ」は蛇足に感じます。別の季語の方が良い句になりそうな感じもします。
 12 秋の蠅払ふに虚子の句集かな  蕪村の〈鍋敷に山家集あり冬ごもり〉を思い出します。蕪村句はろくに鍋敷きすらない貧しい冬籠りと、それでも西行を慕う気持ちとが見られる味のある句。こちらの句では物が無い訳ではないですが、常に手近な場所に虚子句集があった。それを無意識に手にとって秋の蠅を払った。その無造作な感じ、生活感に好感を持ちます。採りたかった句です。
 15 絶対に届かぬ書棚昼の月  はしごなどがなければ絶対に届きそうにない高い書架、ありますね。ただ、この季語との取り合わせは少し疑問。
 18 空蝉の来し方語る背の痛み  空蝉が語ったらかなりびっくりしそうですが、そういうことではないのかな? 語っているのは人間で、背の痛みと空蝉の背中の穴とがリンクしているということでしょうか。意図的にそうされているのかもしれませんが、その辺りがかなり曖昧な印象の句です。
 20 見下ろしてこそ秋天の城下町  大掴みではありますが、率直な心情がそのまま句になっているところに好感を持ちました。巨視的な句も微視的な句も、どちらも大事。
 21 八朔や電話で済ますこと多し  非常に説明っぽいというか、散文的な印象の句になっています。言い回しをもう少し工夫して、「八朔やあらかた電話にて済ませ」などとすれば、忙しそうな感じなども出てくるのではないかと思います。
 22 スーパーの秋の種選る誕生日  誕生日の記念に何か種を買って植えよう、という気持ちは分かりますが、出来れば、漠然と「秋の種」ではなく何の花・植物の種か分かる方が実感が出るように思います。
 23 川浚へ終はり水澄む鶴見川  ○○したから○○になった、という原因結果の句になってしまっているようです。
 26 空蝉が鍵かけ戻る蝉の穴  実際の空蝉ではなく比喩としての空蝉ということでしょうか。
 31 チャンチャンで終わるタンゴや野分去る  作者が詠みたかった景はよく分かるのですが、それを鮮明に現出させるには、もっと言い回しなどをメリハリのあるものにする必要があると思います。
 33 寝待月男不要な乳首もち  身ほとりの物を、要・不要だけで判別するのはちょっとさみしい感じですね。ただ、無駄毛やほくろなどなど、人体の中でも不要なものは他にもたくさんある訳で、ことさら乳首だけを採り上げるのは、作者にとって男の乳首が気になる存在であることの裏返しであるようにも感じたりします。
 34 大雨にめげぬ大根(だいこ)の芽の揃ふ  「めげぬ」だと連体形で「大根の芽」につながっているように読めるので、頭から終りまで一句がずるずるとつながりメリハリがない。「めげず」とすればここで軽く切れますので、それを避けられます。
 35 芒原いくらか磁気を帯びながら  芒原と磁気との取り合わせは面白いのですが、「いくらか」「ながら」辺りの言葉が効果的に機能しておらず、せっかくの取り合わせがぼんやりしてしまっている。そこら辺をぼやかしたのも作者の意図なのかも知れませんが…。
 42 旧町名ひしめく地図や秋灯下  詠もうとしている景もよく分かる、雰囲気のある句ではあるのですが、季語が雰囲気に合いすぎていて意外性がないように感じます。
 44 雲まといしじまに浮かぶ今日の月  それなりに長年俳句に携わってきて思うのは、静寂とか静けさを詠み込んだ句は非常に多いですが、その大部分が、言わずとも通じる・伝わる内容である、ということです。この句も、雲をまとった月が静寂の中にあるのは言わずもがなではないでしょうか。
 54 B級の梨はおまけや別の箱  一箱おまけで付いてくるということは、良い梨を結構大量に買ったのかも(贈答用?)、などと想像しました。
 56 あとがきに父母のこと雁の声  しみじみと、さみしさ、あたたかさを感じる句です。

 


来月の投句は、10月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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