ハルヤスミ句会 第百九十六回

2017年2月

《 句会報 》

01 冬木立先ゆく人は右へ折れ       奈央(愛・益)

02 寒雷や嫁姑の火花散る         光太郎

03 窓走るビル間一閃の初富士       奈央(案)

04 雪中の足跡ひとつずつ孤独       益太郎(光・ち・奈・ル・奥)

05 梅の香に心引かれて男坂        時人

06 鬼やらひ部屋と心の大掃除       案山子(順)

07 節分やだぶつきがちの布袋       一斗(忠)

08 早春のけやけし欅続く道        ひろ子

09 フラガールの踵赤らみ冴返る      ぐり(光・愛・忠・鋼・春)

10 合流え急ぐ川音椿東風         ちあき(奈)

11 メキシコの人よりメール日脚伸ぶ    海音

12 日向ぼこひと時天の恵み受け      光太郎

13 フラガールとなりて建国記念の日    ぐり(光・三)

14 雪しまく被爆ドームの立ち姿      益太郎(三)

15 灰色のゴムに早春歌ひ出す       順一

16 受験票取り出して見るホームかな    ぐり(ル・奥・愛・海・佳・鋼・春)

17 しらうめやがくのくれなゐちらちらと  時人(草)

18 革靴のかかと傾き小夜時雨       奈央(佳)

19 貸店の札もあらたに地虫出づ      愛(時・忠・ぐ)

20 葱刻むわずかに狂う砂時計       益太郎(愛)

21 自選句の罪は深しや春浅し       順一

22 裸木の動脈のごと分かれけり      光太郎(ち・さ)

23 消毒は顔に足にと春の雪        順一(一)

24 目に向かひ小虫の飛ぶや春隣      案山子(タ)

25 またねとはなべてあやふや春の空    ちあき(奈・案・時・益)

26 水鳥の水掻いてゐるいや歩いてる    さんきう(一・益)

27 麗らかなひと日を以て春立ちぬ     案山子

28 春の雲吊られて白き紙の鳥       佳子(一・順)

29 老木に青き[木偏に若] や梅ふふむ        時人(ち)

30 踏切の脇に駅ある春初め        さんきう(草)

31 帰り道どこ曲がりても丁字の香     愛(一・時・奥)

32 横綱の豆撒一合桝かとも        一斗(案)

33 二羽の鳩そつと繕ふ古巣かな      ひろ子(光・順)

34 父失くしぽんかんの皮白くあり     忠義(草)

35 受験子の頼りなさそで抱いてやる    みなと

36 東京の遠目の山も笑ふらし       忠義(案)

37 握るたび鈴鳴る鋏あたたかし      ちあき(さ・タ・海)

38 ママの過去だまって聞ひてる西行忌   草太(益)

39 私にいくつの入り江はるのみづ     佳子(ち・タ)

40 多喜二の忌シリア少女のツイッター   ルカ(順・鋼・春)

41 くるぶしに触れ春の草まだ冷た     春休(愛・ぐ・佳・三)

42 甘酒にお焦げ匂ふや一の午       タロー

43 西高東低あすも底晴れ久女の忌     草太(奈)

44 寒餅をもて独立します明日から     つよし

45 歯磨きの泡の口許水温む        一斗(さ・奥・三)

46 薔薇の目の堅し手のひら占へば     佳子

47 サイファンの下球満ちくる雨水かな   草太(一・ぐ)

48 金盞花房総の空染めしかな       ひろ子(鋼)

49 盛塩に埃うっすら二月尽        愛(タ・忠)

50 背ナの子が眠ってしまふ梅日和     みなと(ル・奥・海)

51 本堂に絵踏を知らぬ我が足裏      さんきう(ぐ)

52 蝶生る七つの国の国境線        ルカ(草・順・海・益)

53 葛湯なめ郵便局へてくてくと      つよし(春)

54 春水に小魚光るや二度三度       春休

55 産土に幟小さき一の午         タロー(時)

56 永き日の海のにほひの石ひとつ     海音(ル・草・佳)

57 遠来の客に春雪募りけり        つよし(さ・タ・春)

58 お辞儀して子等の太鼓や一の午     タロー(さ・ぐ)

59 食べ飽きぬひとつにカレー亀の鳴く   忠義(ち・三)

60 恋猫の出入り自由な網番屋       みなと(光・時・鋼)

61 ボブ・ディラン聴きしことなし鳥雲に  海音

62 つややかに出でて朝寝の膝がしら    春休(奈・ル・案・忠)

63 またしても倒れしままの雛人形     ルカ(海・佳) 




【 森本光太郎 選(光) 】
○04 雪中の足跡ひとつずつ孤独
○09 フラガールの踵赤らみ冴返る
○13 フラガールとなりて建国記念の日
○33 二羽の鳩そつと繕ふ古巣かな
○60 恋猫の出入り自由な網番屋

【 ちあき 選(ち) 】
○04 雪中の足跡ひとつずつ孤独
○22 裸木の動脈のごと分かれけり
○29 老木に青きや梅ふふむ
○39 私にいくつの入り江はるのみづ
○59 食べ飽きぬひとつにカレー亀の鳴く

【 小中奈央 選(奈) 】
皆さんの句を読んで小さな春の訪れに気が付きました。
よろしくお願いいたします。
○04 雪中の足跡ひとつずつ孤独
○10 合流え急ぐ川音椿東風
○25 またねとはなべてあやふや春の空
○43 西高東低あすも底晴れ久女の忌
○62 つややかに出でて朝寝の膝がしら

【 さんきう 選(さ) 】
○22 裸木の動脈のごと分かれけり  静かな冬だから静脈ってわけではなく、むしろ動脈なんですよね。納得。
○37 握るたび鈴鳴る鋏あたたかし  鈴が付いているだけじゃなくて、ちゃんと鳴るのがいい。
○45 歯磨きの泡の口許水温む  洗面所で歯磨きしてる途中で奥さんに声をかけたり、この光景はデジャヴ感があるが、それを描写した句は初めて見たような…。
○57 遠来の客に春雪募りけり  「募る」が良かったけど、ありがちな書き方? 「遠来の」がもう少し具体的だったら良かった。
○58 お辞儀して子等の太鼓や一の午  子どものかわいさが伝わってくる。一の午のあたたかさ。

【 ルカ 選(ル) 】
○04 雪中の足跡ひとつずつ孤独  中、はいらないと思いますが着眼点がよい。
○16 受験票取り出して見るホームかな  受験生の心理が出ています。
○50 背ナの子が眠ってしまふ梅日和  うとうと。春ですね。
○56 永き日の海のにほひの石ひとつ  石からの海の匂い、実感があります。
○62 つややかに出でて朝寝の膝がしら  つややかがいいですね。

【 青野草太 選(草) 】
○17 しらうめやがくのくれなゐちらちらと
○30 踏切の脇に駅ある春初め
○34 父失くしぽんかんの皮白くあり
○52 蝶生る七つの国の国境線
○56 永き日の海のにほひの石ひとつ

【 石黒案山子 選(案) 】
○03 窓走るビル間一閃の初富士
○25 またねとはなべてあやふや春の空
○32 横綱の豆撒一合升かとも
○36 東京の遠目の山も笑ふらし
○62 つややかに出でて朝寝の膝がしら

【 一斗 選(一) 】
○23 消毒は顔に足にと春の雪        
○26 水鳥の水掻いてゐるいや歩いてる    
○28 春の雲吊られて白き紙の鳥       
○31 帰り道どこ曲がりても丁字の香     
○47 サイファンの下球満ちくる雨水かな  

【 中村時人 選(時) 】
○19 貸店の札もあらたに地虫出づ
○25 またねとはなべてあやふや春の空
○31 帰り道どこ曲がりても丁字の香
○55 産土に幟小さき一の午
○60 恋猫の出入り自由な網番屋
他に気になった句は
 01 冬木立先ゆく人は右へ折れ
 08 早春のけやけし欅続く道
 23 消毒は顔に足にと春の雪
 24 目に向かひ小虫の飛ぶや春隣

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○04 雪中の足跡ひとつずつ孤独  孤独の中にも足跡に温かさをかんじます。
○16 受験票取り出して見るホームかな  受験票を確かめて心を落ち着かせています。
○31 帰り道どこ曲がりても丁字の香  春の匂いにあふれています。
○45 歯磨きの泡の口許水温む  口許から春を感じます。
○50 背ナの子が眠ってしまふ梅日和   静かに漂う梅の香と背中の温かさに安心して眠りの中に。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇01 冬木立先ゆく人は右へ折れ       
〇09 フラガールの踵赤らみ冴返る      
〇16 受験票取り出して見るホームかな    
〇20 葱刻むわずかに狂う砂時計       
〇41 くるぶしに触れ春の草まだ冷た 

【 小林タロー 選(タ) 】
〇24 目に向かひ小虫の飛ぶや春隣  視覚で感じる春、ですね。
〇37 握るたび鈴鳴る鋏あたたかし  聴覚と触覚で感じる春、ですね
〇39 私にいくつの入り江はるのみづ  心で感じる春、ですね
〇49 盛塩に埃うっすら二月尽  春の埃っぽさの実感があります。
〇57 遠来の客に春雪募りけり  急くこともなし、ゆっくり酒でも酌み交わし、という自宅で親しき友を迎え歓待する風情。

【 小早川忠義 選(忠) 】
○07 節分やだぶつきがちの布袋  鬼も袋を持っているのでしたでしょうか。その中には大風か雷か、はたまたさらった火との身か。追儺に追われて形無しの鬼を象徴しているようで面白い。
○09 フラガールの踵赤らみ冴返る  恐らく暖かな空間の中で踊られているのでしょうが、足元の状況で寒さがまだ残っているのを感じるのは俳味ですね。
○19 貸店の札もあらたに地虫出づ  春はお別れの季節というべきか。店も移転なのか廃業なのか。寂しい中うごめく新しい何か。
○49 盛塩に埃うっすら二月尽  物々しい空気も過去のもの。そして日常へと戻っていく。
○62 つややかに出でて朝寝の膝がしら  艶っぽいというべきかいわざるべきかという微妙な雰囲気が漂うのが良いです。
 06 鬼やらひ部屋と心の大掃除  俳句で「大掃除」っていったらやっぱり年末になってしまうでしょうか。
 15 灰色のゴムに早春歌ひ出す  ゴム、だけではいささか乱暴のような。
 22 裸木の動脈のごと分かれけり  ひょっとしたらですが、体に浮かぶ血管に例えるなら動脈じゃなくて静脈では。
 24 目に向かひ小虫の飛ぶや春隣  この状況ではもう少し進んだ春の景では。
 27 麗らかなひと日を以て春立ちぬ  季重なりでしょう。残念。
 30 踏切の脇に駅ある春初め  その駅に何があるんでしょうね。
 47 サイファンの下球満ちくる雨水かな  あまみずがたまっているように思われます。
 50 背ナの子が眠ってしまふ梅日和     
 51 本堂に絵踏を知らぬ我が足裏  「や」で切った方がいいかも知れません。 
 57 遠来の客に春雪募りけり  今月の大雪は大変だったと思います。

【 石川順一 選(順) 】
○06 鬼やらひ部屋と心の大掃除  季語は「鬼やらひ」。心まで掃除される。サウンドマインド、サウンドボディーみたいな事も想起できました。
○28 春の雲吊られて白き紙の鳥  季語は「春の雲」。読み方によっては紙の鳥も、春の雲も吊られているようでユーモラスでした。
○33 二羽の鳩そつと繕ふ古巣かな  季語は「古巣」。庭の鳩の絆を感じました。いずれひな鳥が生まれるのでしょう。
○40 多喜二の忌シリア少女のツイッター  季語は「多喜二忌」。シリアと言えばアイシルなどが思い浮かびますが小林多喜二の忌日とマッチングして居る様な気がしました。
○52 蝶生る七つの国の国境線  季語は「蝶生る」。山梨県などでしょうか。長野県岐阜県などの内陸県を思えば、国立公園など蝶の生育が生き生きと感じられる句だと思いました。

【 涼野海音 選(海) 】
○16 受験票取り出して見るホームかな  受験生の描写が的確。
○37 握るたび鈴鳴る鋏あたたかし  鈴の音を通してあたたかさが伝わる。
○50 背ナの子が眠ってしまふ梅日和  子どもが眠ってしまうのが、いかにも梅日和。
○52 蝶生る七つの国の国境線  「七つの国の国境線」から、色々と想像をふくらませることができます。
○63 またしても倒れしままの雛人形  「またしても」ということは、毎年倒れているのでしょう。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○01 冬木立先ゆく人は右へ折れ  先ゆく人は、死者。右に黄泉の国がある。
○25 またねとはなべてあやふや春の空  またねは、何にでも使える便利のいい言葉。
○26 水鳥の水掻いてゐるいや歩いてる  水鳥は、足を見せない方がいい。
○38 ママの過去だまって聞ひてる西行忌  ママは、母? バーのママ? どちらも考えられる。西行忌が上手い。
○52 蝶生る七つの国の国境線  トランプが何と言おうと、蝶は生まれるのです。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○19 貸店の札もあらたに地虫出づ  だいぶ売れず貸し札も色あせたのであろう。貸し手も気持ちを新たに。地虫出づのさりげなさが効いている。 
○41 くるぶしに触れ春の草まだ冷た  くるぶしに草が触れるということはくるぶしの出る春の装い。だが触れた春草の冷たさにハッと。早春の繊細な感覚。
○47 サイファンの下球満ちくる雨水かな  サイフォンで丁寧に淹れた珈琲。下球というのですね。満ちくるものが珈琲だったり、春だったりと、楽しい。
○51 本堂に絵踏を知らぬ我が足裏  どれくらいの人に踏まれたのか、変色しかすかに足型も付いて踏み絵。どんな気持ちで踏んだのかと。
○58 お辞儀して子等の太鼓や一の午  子供達の緊張した様子が目に浮かぶ。一の午がいい。

【 水口佳子 選(佳) 】
○16 受験票取り出して見るホームかな 受験票をちゃんと持ってきたかどうか、番号は何番だったか、何度確認しても不安なものである。〈ホーム〉という場所は「旅立ち」ということを暗に示している。
○18 革靴のかかと傾き小夜時雨 かかとが傾いた革靴と聞くと外回りの仕事をしている人かなあとも思う。或いはその靴が履きやすくてそればかり履いているのか、それしかないのか。時雨に少し濡れてしまった靴を眺めて愛おしく思っているのかもしれない。フレーズはありがちだが季語が効いていると思う。
○41 くるぶしに触れ春の草まだ冷た 〈冷た〉と言ったところに実感がある。句の終わりにこの言葉を措いたことでより印象的に。
○56 永き日の海のにほひの石ひとつ ちょっとまとまりすぎているようにも思ったが。情緒的なフレーズに対して〈永き日〉という季語が甘すぎず、景に広がりを与えた。 
○63 またしても倒れしままの雛人形 立派な雛人形ではなく、手捻りとか和紙で作ったような素朴な雛人形のイメージ。何度も倒れるので倒れたままにしてあるのかも。ちょっと情けないお雛様をほほえましく思った。

【 三泊みなと 選(三) 】
○13 フラガールとなりて建国記念の日  
○14 雪しまく被爆ドームの立ち姿   
○41 くるぶしに触れ春の草まだ冷た   
○45 歯磨きの泡の口許水温む 
○59 食べ飽きぬひとつにカレー亀の鳴く 

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○09 フラガールの踵赤らみ冴返る  冴返るが良い
○16 受験票取り出して見るホームかな  良い句だが「出して見る」が気になる。
○40 多喜二の忌シリア少女のツイッター  良い句です。
○48 金盞花房総の空染めしかな  明るい壮大な句
○60 恋猫の出入り自由な網番屋  網番屋がよい。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○09 フラガールの踵赤らみ冴返る  「フラガール」というだけで、そのいでたちまで見える。踵に焦点を絞ったのも良い。踊っている方はそのうち身体があったまってくるかもしれませんが、見ている側からすると、赤らんでいる踵はまだ寒々しく感じますね。
○16 受験票取り出して見るホームかな  些細な行動を描写しているだけですが、そこから心情が見えてくる。受験だけでも不安なのに、あまり行ったことのない場所へ電車で移動するのではないでしょうか。電車を待つちょっとした時間に、忘れ物がないか、確認する様子がけなげです。
○40 多喜二の忌シリア少女のツイッター  時事俳句としては珍しく成功している部類ではないでしょうか。かつての多喜二の死は新聞などの媒体で伝達されたのでしょうが、今はSNSで世界中に伝達される。上五は「多喜二忌や」と切った方が印象が強いように思います。
○53 葛湯なめ郵便局へてくてくと  飲むのではなく舐めるというところが独特で、実感があります。「てくてくと」の気楽なそぞろ歩きの感じも良いですね。
○57 遠来の客に春雪募りけり  この雪の中、よくぞはるばる来てくれた、という感慨が率直に詠まれている。形がきちっと決まっているのも気持ち良いです。
 01 冬木立先ゆく人は右へ折れ  雰囲気のある句ではありますが、順序を入れ替えて「先をゆく人右へ折れ冬木立」とした方が、先行する人が曲がった後に誰も見えなくなり、冬木立の中に一人きりになる感じがよく出るのではないかと思います。
 02 寒雷や嫁姑の火花散る  中七下五の表現は、慣用句的表現で、具体性が乏しい。どんなことを言ったとか、どんな表情をしたとか、どんな行動を取ったか、そういう具体的な描写から、この嫁姑の対立が、年中行事のようなものなのか、それとも本当に殺意を感じさせるようなものなのか、読み手に伝わるのです。
 03 窓走るビル間一閃の初富士  新幹線の車窓でしょうか。句またがりのせいでスピード感、リズムが損なわれているのが残念です。
 04 雪中の足跡ひとつずつ孤独  個人的な好みかも知れませんが、「孤独」よりも「遠く」や「離れ」などの方が、景も具体的に見えてくるように思います。
 05 梅の香に心引かれて男坂  意味はよく分かるのですが、俳句に詠み込んでいるものの多くはそもそも「心引かれて」いるから詠んでいる訳で、わざわざ「心引かれて」というのは蛇足のようにも感じます。
 12 日向ぼこひと時天の恵み受け  これでは「日向ぼこ」という季語の説明に過ぎないです。俳句は季語の説明をするものではなくて、季語を活かしながら季語プラスアルファの景を書くものです。
 13 フラガールとなりて建国記念の日  この季語でどのように句が広がるのか、よく分かりませんでした。ミスマッチということでしょうか。
 14 雪しまく被爆ドームの立ち姿  原爆ドームの描写として、「立ち姿」はあまり効果的ではないような。原爆ドーム周辺で雪が積もったりすることは稀なので、何とか句にしたい所ですね。雪と原爆ドームの位置関係というか、遠近感というか、もっと奥行きのある句に仕立てられると良いのですが。
 17 しらうめやがくのくれなゐちらちらと  一応出来ている句だとは思いますが、全てひらがな表記にされているのは、あまり成功していないように感じます。「がく(萼)」だけ漢字にするだけでも印象はだいぶ変わる。
 18 革靴のかかと傾き小夜時雨  上五中七、描写としては印象的なのですが、季語があまり働いていないように思います。この靴、脱いでいるのか履いているのか、季語から分かる情報が「雨が降っている」ぐらいしかないので、よく分からないのです。季語からもっと状況が分かれば、かなり良い句になりそうな気もします。
 22 裸木の動脈のごと分かれけり  動脈は体中に酸素などを含んだ血液を運ぶため細かく細かく分かれ、静脈は先ほどの役目を終えた血液を心臓に戻すため太くなっている、と生物の授業でならったような気がします。とすると、この裸木は細かく細かく枝分かれした姿だったのでしょうね。
 24 目に向かひ小虫の飛ぶや春隣  遠くからは見えないような小虫に、向かって来られて初めて気付く。まだまだ寒い時期ですが、虫たちは活動を始めています。
 25 またねとはなべてあやふや春の空  雰囲気は良いと思うのですが、「またね」と言われた側なのか言う側なのか、その辺りを読む手がかりが全くないので、句そのものがあやふやになっている気がします。季語も読みの手助けにはなっていないですし。もうちょっと状況を推測できるような、そんな取っ掛かりがあると読み手の想像も広がる楽しい句になると思います。
 26 水鳥の水掻いてゐるいや歩いてる  字余りの句が全て駄目とは思いませんが、ほとんどの字余りの句に「きちんと推敲すれば字余りが解消でき、その方が句の出来も格段に良くなる」という印象を持っています。この句も同様。どうせ字余りにするのなら、最後まできちんと「歩いてゐる」としなくては、文語的口調と口語的口調が特に必然性もなく入り混じるのは格好が良くない。
 27 麗らかなひと日を以て春立ちぬ  堂々とした詠みぶりですが、さすがにこの季重ねは辛い。上五だけを何か意外な事柄に入れ替えると面白い句になるかもしれません。
 30 踏切の脇に駅ある春初め  駅のすぐ近くに踏切があるのはよく見る景で、ごく普通。ごく普通の内容が実感のあるものになるかどうかは季語
 31 帰り道どこ曲がりても丁字の香  「昼蛙どの畦のどこ曲がろうか」という石川桂郎の句を思い出しますが、桂郎の句は昼の田園風景、こちらの句は夕方の住宅街が見えてきますね。
 34 父失くしぽんかんの皮白くあり  このぽんかんの皮は食べ終わった後の内側が見えているということでしょうか。ちょっと状況が分かりにくい。「白くあり」と色のことに五音も使うより、色は二音か三音にしておいてもっと状況が分かるように描写してほしい。
 38 ママの過去だまって聞ひてる西行忌  内容は悪くないのですが、中七の字余りがもったいない。仮名遣いも、「だまって」の「っ」は現代かな遣いなのに、「聞ひてる」が歴史的かな遣いっぽい感じなのも統一感がない。なお、「聞ひてる」の「ひ」は誤りです。
 42 甘酒にお焦げ匂ふや一の午  これは文句なしにおいしそう。採りたかった句です。
 46 薔薇の目の堅し手のひら占へば  最後の「占へば」がよく分からない。手相占いということでしょうか。
 47 サイファンの下球満ちくる雨水かな  雨水というのは二十四節気の一つで、時候の季語。こういう時候の季語を使う難しさは、伝えられる情報がほぼ「時期」だけということ。時間帯、天候、屋内・屋外、周囲の自然環境、などなど、他の季語を使えば伝えられる様々な情報が、時候の季語では伝わらない。この句も、上五中七の内容は良いのに、季語の選択で損をしているように感じます。
 48 金盞花房総の空染めしかな  景が大きくて良いと思います。
 49 盛塩に埃うっすら二月尽  忙しくしている間に、日にちは過ぎ、盛り塩にうっすら埃も積もり…。生きてくって大変ですね。これも採りたかった句。
 50 背ナの子が眠ってしまふ梅日和  雰囲気の良い句なのですが、○○日和という季語はどれも好天ですので、少し理が見える嫌いがあります。上五の「が」も少しうるさいので、「背ナの子の眠つてしまふ梅の花」などとすっきりとされてはいかがでしょうか。
 56 永き日の海のにほひの石ひとつ  どこかの海辺で拾ってきた石なのでしょう、今もかすかに海の匂いを放っている。ロマンのある句です。ロマンというより浪漫と漢字で書きたい感じですね。
 59 食べ飽きぬひとつにカレー亀の鳴く  「ひとつに」ということで、他にもそういう食べ物があることを想像させるのですが、この句においてその想像は必要でないような気もします。もっと単純に、「食べ飽きぬカレーライスや亀の鳴く」とした方が、ちょっと馬鹿馬鹿しいような面白さが出るように思います。
 61 ボブ・ディラン聴きしことなし鳥雲に  ノーベル賞受賞して、皆が話題にしているボブ・ディランを、これまで自分は聴いたことがない――その孤独な感慨が、帰って行く鳥たちに増幅させられる訳です。いやいやそうは言っても、いざ聴いてみたら、テレビやラジオや映画などいろんな所で耳にしてるものですよ、ボブ・ディランって、と突っ込みたくなるというか励ましたくなる所です。
 63 またしても倒れしままの雛人形  これは何段飾りとかいう立派な雛人形ではなく、子供が手に取って遊んだりしても良いような、ぬいぐるみ的な雛人形ではないでしょうか。遊んだ後、ほったらかしにされている、生活感のある景ですね。

 

 


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