ハルヤスミ句会 第二十回

2002年5月

《 句会報 》

01 永き日のショーウィンドウに眠る猫  阿昼(夏・む・や)

02 別々の帰り道にも朧月        やすみ

03 病葉のぽったりと落つ鯉の上     ふみ(阿・春)

04 相槌や蟻の流れの只中で       夏実(ふ)

05 熱気球新樹の森に浮かびでて     つよし(春)

06 蟻道を五匹掛かりの毛虫かな     夏実(や)

07 草花に勝手な名付け風薫る      むかご(ふ)

08 鯉幟見上げる口や前歯欠け      やすみ(つ)

09 杉山のところどころや桐の花     つよし

10 しりとりの最後に摘んで姫女苑    阿昼

11 薫風や泣きながら子の立ち上がる   夏実

12 花どきは過ぎて実なり水芭蕉     つよし

13 風薫る日の沈みたる森からも     春休

14 病室の父のお膳に豆の飯       むかご(つ)

15 畳まれて顔ばかりなる鯉幟      春休
                   (◎夏・む・ふ・◎阿・や)
16 電線に燕四羽の並びけり       阿昼

17 おひさまにおしりをむけて田植えかな やすみ(夏・む・春)

18 五月雨に軒を軒をと帰りけり     むかご

19 六月の水を濁らすチョークの粉    ふみ(つ)
            
ジ ュ リ ー
20 虫干やまだきらきらと沢田研二の歯  春休(阿)

21 夏負の体に皮のソファアかな     ふみ



【 かたぎり夏実 選 】
◎15 畳まれて 鯉幟というのは間近で見たことも無いのですが、しまうときの大きさが見えてきて面白いと思いました。
○17 おひさまに 黙々と農業に勤しむ人々の生きる姿勢…とでもいうのでしょうか。力強いです。『かな』が、どうかな?
○01 永き日の 猫はいつでもどこででも眠いのです。暖かいところが好きなだけ。

【 鋼つよし 選 】

 08 鯉幟見上げる口や前歯欠け
 14 病室の父のお膳に豆の飯
 19 六月の水を濁らすチョークの粉
選評
 08 藤山寛美 という役者を思い出した。丁稚奉公のスタイルで前掛をしている。たしかに前歯が欠けていた。
 14 豆飯がでるのだから病状も軽いのだろう。栄養よりも食欲が回復の決め手。
 19 六月は水が豊富な季節だが、環境に配慮するために、気にもなりつつ撒いているのだろうか。
* 17 おひさまに  「かな」で終わるときは黄金を打伸ばすようにするするとは辻先生の強調されるところ「おしりむけたる」でどうでしょうか。
 *三句選には入れなかったけど。 ひんやり感があって良いと思いました。21 夏負の体に皮のソファアかな

【 松尾むかご 選 】
01 永き日の・・・布団屋にこんな猫がいるのです案外、夜中のショーウインドウで踊ってたりして
15 畳まれて・・・可笑しいね、空を泳いでた時はあんなに、悠々としてたの 畳んで見ると大きな顔に、ガバアッと、口あけて・・・
17 おひさまに・・・健康的で、力強い句は、まさに私のめざすところ むかご、特選、こんな風に田植えを、詠みたかった。
(その他)
13 風薫る・・・観念が、強いような気もするが、なぜか、落とせない、わかったようなわからないような、私の読む力が足りないのかも知れません、もう少しはっきりと、つかめる物があると、深い世界にすんなり、入れる気がします。
20 虫干しや・・・昔のポスターの中のジュリーですね、にっこり笑って、おじさんになたジュリー、もなかなかだけど、タイガースのジュリーじゃなくちゃ虫干しの季が、多くのことを引き出している。

【 中村ふみ 選 】
04相槌や 蟻同士が相槌を打ちながら歩き回っているようでおかしい。童話的で良いのではないでしょうか。
07草花に それっくらい勝手で身構えないほうが花の美しさがきちんと分かるのではないか、そう思ったりして。ただ、「風薫る」を具体的な言葉に変えたほうがもっと良いのでは。
15畳まれて 鯉幟ってよく見るとなんだか変なフォルム。そのことをあらためて感じさせてくれた句です。

【 中村阿昼 選 】
◎15 畳まれて  畳まれた鯉幟の真中に鯉の大きな目玉が見えてくる。畳まれてなお迫力のある立派な鯉幟という感じ。
○03 病葉の  「ぽつたり落つや」と切れを入れたほうがいいのではと思うが、「ぽつたり」というのに病葉の量感がでている。鯉もちょっとびっくりしたかも。
○20 虫干や  若き日のジュリーのポスターも虫干? ジュリーも太っちゃったけど、きらきらの歯は昔のままなんでしょうね。虫干が効いている。 
04 相槌や  「只中で」にちょっと無理があるかな。上五と中七以降を全然関係なくすると面白くなるのでは。下五を例えば「粛々と」などと蟻のことだけにして軽く流すとか。
08 鯉幟  田舎の子って感じなのがいいな。歯が見えているのだから「口」と言わなくてもよいと思う。
17 おひさまに  五月の日差しは結構強いですよね。日の当たっているおしりが見えてくる。ただ、「かな」という感嘆で締めるにはちょっと内容が平凡かと。 
19 六月の   「水を濁らすチョークの粉」はよく描写されているのに、「六月の水」だと梅雨ですでに濁った感じがあるのでもったいない。

【 小川やすみ 選 】
○01 永き日の  猫はあったかいところを見つけてひなたぼっこをしているだけなのに、ショーウィンドウの飾りのようにも見えてしまうところがおもしろい。
○15 畳まれて  畳んだら、鯉幟の、目の大きな顔だけになってしまった。おもしろい目のつけどころ。
○06 蟻道を  五匹掛かりの毛虫かな、というので毛虫の大きさがよく伝わってくる。

【 小川春休 選 】
○03 病葉の  擬音語・擬態語は平凡になりやすいですが、この「ぽったり」は葉の重みや質感をけっこううまく伝えられているように思いました。中七「ぽったり落ちぬ」と「と」をはぶいて切れを入れた方がより良いかもしれません。
○17 おひさまに  「おひさま」「おしり」と話し言葉的な言葉で簡単にまとめられているところが良いですね。飾らない句、単純な句は強いです。
○05 熱気球  この句もぱっと見は単純ですが、季語である「新樹」がイメージを広げさせてくれる、なかなか巧みな句でもあるようです。
01 永き日の  私の好きな景を描いていて、なかなか良い句なのですが、切れがないせいかちょっとだらっとした感じがします。上五で切ってはいかがでしょうか。
04 相槌や  相槌を打つ人(それとも蟻が相槌を打っている?)と蟻の流れとの位置関係がよくつかめませんでした。下五「只中で」よりもっと正確な表現があるのでは?
06 蟻道を  「五匹掛かり」というところから毛虫の大きさなどが見えてきて、良い句だとは思うのですが、「道」と言ったことでちょっと句がぼやけているように感じました。蟻五匹と毛虫だけで一句にした方が焦点が絞れて、すっきりした句になりそうです。
08 鯉幟  おもしろい句ではありますが、ちょっとそのおもしろさが分かりやすすぎるような気もします。感覚的な言い方になりますが、俳句よりも川柳に近い感じになっている気がします。
10 しりとりの  花の名前でしりとりをしながら花を摘んでいたのでしょうか。かなり花の名前に詳しい人みたいですね。これも私なら「姫女苑摘んでしりとり果てにけり」などとして切れを入れたいところ。
11 薫風や  季語も合ってて切れもあってなかなか良い句なのですが、「子」の句はどうしてもちょっと甘い感じになってしまうので、三句選には入りませんでした。
14 病室の  入院していると、栄養バランスは良いのでしょうが毎日似たようなものばかり食事に出て来るので、たまに豆ごはんなど出て来るとほんとにうれしいものですよね。
16 電線に  この場合、「四羽」と数を述べることはあんまり必要ないのではないかと思います。何羽並んでいたかよりも、どのように並んでいたか。そちらをもっと伝わるようにすると、その作者にしかできない句になってくると思います。
18 五月雨に  季語の中にも「春雨」「五月雨」「夕立」「秋雨」「時雨」など、雨に関するものがたくさんありますが、それぞれの本意をしっかりつかんで句を作らなくては、一句の中で核になるべき季語が動いてしまうことになりかねません。この句の場合、傘を忘れていたところに雨が降った、という内容ですから、「夕立」「時雨」などの方が合っているように思います(五月雨は一日中降り続く性質のものなので、傘を忘れることは少ない)。
19 六月の  中七下五、即物的でリアルな描写だと思うのですが、その分上五はもう少しイメージを広げてくれる季語の方が良いのではないでしょうか。


来月の投句は、5月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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