【 えみこ 選(え) 】
(今回はお休みです。)
【 森本光太郎 選(光) 】
○02 夕立や二階へ急ぐ妻の音
○19 手品師の鞄を開く木下闇
○27
雲の峰今日一日の外仕事
○33 夏逝きにけり夕焼も見ざるまま
○45 母の呆けまた戻り来て盆終る
【 ちあき 選(ち) 】
(今回は選句お休みです。)
【 さんきう 選(さ) 】
○03
箱庭に釣り人一人増やしやる 「なるほど、箱庭ってのはそういうもんなのね」と思いました。最後の「やる」がいいかも。
○04
黙祷に折り畳み置く夏帽子 漢字「祷」と「折」は似ていることを知りました。祈るとは何かを折ること。
○10
鯊釣りやまだらまだらに父のこと 「まだら」の使い方がちょっと新鮮。ハゼともイメージが繋がっていい感じ。
○48
八月は忌日忌日の金太郎 「金太郎飴のように忌日ばかりある」ということなんでしょうけど、「飴」は省略できないと思う。「金太郎」は飴とは無関係にイメージで置いただけかもしれませんが…。
○49
きやうだいは皆腹違ひ墓洗ふ ちょっと普通ではない家の人が普通に墓掃除をしている、というのが良かった。「墓洗ふ」の安定感。
【 ルカ 選(ル) 】
○01 おたがいの声確かむる残暑かな
○02 夕立や二階へ急ぐ妻の音
○10
鯊釣りやまだらまだらに父のこと
○17 泳ぐ手は人を忘れてゆくやうに
○41 我が畑へ這ひ越えきたる西瓜かな
【 青野草太 選(草) 】
○01 おたがいの声確かむる残暑かな
○06 対岸にディズニーシーや鯊日和
○27
雲の峰今日一日の外仕事
○43 晩年の普羅ゆふぐれの朴の花
○50 ひぐらしの止むやがらりと夜に入る
以上です。
【 石黒案山子 選(案) 】
(今回は選句お休みです。)
【 一斗 選(一) 】
○01 おたがいの声確かむる残暑かな
○15 星月夜文字なき絵本読みはじむ
○17
泳ぐ手は人を忘れてゆくやうに
○32 朝虹の着信音が胸の位置
○34 天の川列車二両を切り離す
【 中村時人 選(時) 】
○02 夕立や二階に急ぐ妻の音
○03 箱庭に釣り人一人増やしやる
○26
原爆忌アサノヒザシニ痛キコト
○35 太眉の一族がひまはりを背に
○49
きゃうだいは皆腹違ひ墓洗ふ
他に気になった句は
04 黙祷に折り畳み置く夏帽子
09
まだ雲を遊ばせている青田かな
42 ビー玉の転がる机汀女の忌
以上宜しくお願いいたします。
【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○05 シーサイドホテルに溢れ浴衣女子 賑やかな夏の夜、たのしそうですね。
○06
対岸にディズニーシーや鯊日和 平和な一日。
○15 星月夜文字なき絵本読みはじむ 星月夜の美しさに文字はいりません。
○17
泳ぐ手は人を忘れてゆくように 魚になってすーいすい。
○19 手品師の鞄を開く木下闇 これから始まる手品が楽しみです。
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇04 黙祷に折り畳み置く夏帽子
〇19
手品師の鞄を開く木下闇
〇30 穀象は死んだふりして殺される
〇39
ターザンにジェーンにチーター夏木立
〇44 議論して冷酒で終る町内会
以上お願いします。
【 小林タロー 選(タ) 】
(今回はお休みです。)
【 小早川忠義 選(忠) 】
(今回はお休みです。)
【 石川順一 選(順) 】
○03
箱庭に釣り人一人増やしやる 季語は「箱庭」。釣り人が一人増えて賑やかに。そして句にも花が。
○17
泳ぐ手は人を忘れてゆくやうに 季語は「泳ぐ」。人を忘れて行く手。真夏の思い出。
○23
伏せ置きし背表紙わたる里の蟻 季語は「蟻」。背表紙を行く里の蟻。伏せ置かれた本の放つ抒情。
○34
天の川列車二両を切り離す 季語は「天の川」。切り離される地上の列車と空の天の川。
○46
今日もまた子規読み返す花糸瓜 季語は「花糸瓜」。正岡子規の忌日も近い。
以上5句選でした。他に3句取りました。
06
対岸にディズニーシーや鯊日和 季語は「鯊日和」。ディズニーシーは娯楽施設。
15
星月夜文字なき絵本読みはじむ 季語は「星月夜」。絵の無い絵本もあります。
41
我が畑へ這ひ越えきたる西瓜かな 季語は「西瓜」。越境西瓜。許すまじ。
【 涼野海音 選(海) 】
○06 対岸にディズニーシーや鯊日和 「ディズニーシー」という現代的なものに注目し、成功。
○15
星月夜文字なき絵本読みはじむ 「文字なき」だから、音読なしで絵本をめくるのみ。その静けさが星月夜に合っている。
○17
泳ぐ手は人を忘れてゆくやうに 必死に泳いでいるとき、手だけが分離されるような感覚か。
○46
今日もまた子規読み返す花糸瓜 子規といえば糸瓜。作者自身も子規になった気分で読書しているのかもしれない。
○12
散りながら咲き継いでゆく葵かな 葵の生命力を端的に表現。
【 川崎益太郎 選(益) 】
○01 おたがいの声確かむる残暑かな 夫婦で声を掛け合って、生を確認する。
○11
デパートの屋上淋し油蝉 昔は沢山いた油蝉が減って、最近は熊蝉が多い。デパートの屋上も同じ。
○15
星月夜文字なき絵本読みはじむ 星月夜と文字なき絵本の取り合わせが上手い。
○20
落蝉の骸にしかと硬さあり 落蝉は、生きているように死んでいる。
○49
きやうだいは皆腹違ひ墓洗ふ そんな、きやうだいでも仲良く父の墓参り。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○17
泳ぐ手は人を忘れてゆくやうに 見事な泳ぎなのだと思う。その泳ぐ手は人間から遡って魚になっていくような。読み手によって印象が全く変わる句かもしれない。
○23
伏せ置きし背表紙わたる里の蟻 里の蟻なら大蟻か。帰省のしみじみした思いを感じさせる。
○35
太眉の一族がひまはりを背に ひまわりの黄色と立派な黒い眉。人数が揃うと壮観だろうなあ。
○40
天井扇ゆるりゆるりと夏の果 避暑地の高い天井に。もうかすかにだが秋の気配も。
○49
きやうだいは皆腹違ひ墓洗ふ 小説のようだ。若いとなかなかできないかもしれない。お盆には皆なで集まって和気あいあいと。
【 水口佳子 選(佳) 】
○01
おたがいの声確かむる残暑かな 夫婦かなあ。いつも一緒にいながら声を確かめ合う関係がビミョー。
○08
文書かぬ日のつづきたる金魚玉 忙しさのせいか、暑さのせいで手紙を書く気分になれないのか、そんな自分を金魚は涼し気に見ている。おそらく金魚だけが身近な友達・・という人。
○15
星月夜文字なき絵本読みはじむ 絵本を開いたとたんに世界が広がり、文字はなくても空想の物語が始まる。そんな星月夜。
○34
天の川列車二両を切り離す 切り離された2両はこの世に留まる、ということ。後の数両は闇の彼方へ消えていく。天の川の季語がそんな気分に。
○40
天井扇ゆるりゆるりと夏の果 天井扇も珍しくなった。ゆるりゆるりはいつもの光景でありながら、夏の果の倦怠感と通じる。
【 三泊みなと 選(三) 】
○01 おたがいの声確かむる残暑かな
○08 文書かぬ日のつづきたる金魚玉
○26
原爆忌アサノヒザシノ痛キコト
○35 太眉の一族がひまはりを背に
○49 きやうだいは皆腹違ひ墓洗ふ
【 鋼つよし 選(鋼) 】
○03 箱庭に釣り人一人増やしやる 景色が浮かぶ。
○04
黙祷に折り畳み置く夏帽子 強い日差しと敬虔な場がよく見える。
○26
原爆忌アサノヒザシノ痛キコト かたかな表記が生きている。
○40 天井扇ゆるりゆるりと夏の果 大きな天井扇が見える。
○51
Suicaをピ涼新たなる無人駅 スイカと涼新たがマッチしている。
【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)
【 小川春休 選(春) 】
○03
箱庭に釣り人一人増やしやる 一旦、もろもろの物を箱庭に配置し終えてから見渡すと、釣り人が少し寂しそうに感じたのでしょう。釣り仲間を一人増やす動作に、優しさが垣間見えます。
○06
対岸にディズニーシーや鯊日和 ディズニーシーには様々な水辺の景がありますが、いずれも人工のもの。そこを一歩出れば日常の、観賞用でない自然が広がっている。その対比が面白い。
○23
伏せ置きし背表紙わたる里の蟻 縁側から上がってきたのか、伏せて置いてある本の背表紙を蟻が渡ってゆく。「里の」というところから、蟻の逞しさが窺われる。もしかすると、帰省の一コマかも知れない。
○34
天の川列車二両を切り離す 街でも天の川は見えなくもないが、田舎や山に行くと天の川が鮮明に見えてくる。列車二両を切り離して、恐らくこれからもっと田舎か山へと行く列車。どんどん鮮明になってくる天の川が目に浮かんでくる。
○43
晩年の普羅ゆふぐれの朴の花 白く、くっきりとした端正な朴の花の姿に、晩年の普羅を重ね合わせる作者の感性と把握の鋭さ、正確さに唸らされました。
01
おたがいの声確かむる残暑かな 普段から頻繁に会話を交わしていれば、わざわざ確かめる必要もない。会話が少ないからこそ、お互いの声を確かめる。
02
夕立や二階へ急ぐ妻の音 急な夕立で、洗濯物を取り込もうとしているのでしょう。場面はよく見えます。
04
黙祷に折り畳み置く夏帽子 夏帽子といっても様々な種類がありますが、これは女性物のつばの広いタイプでしょう。物が見え、状況もよく見えてくる。
07
夏の夕明日転校を告げらるる 内容からすると、中七の「を」は「と」の方が適切でしょう。
08
文書かぬ日のつづきたる金魚玉 文を書かなかったのは、忙しかったからか、それとも気が乗らなかったからか。「金魚玉」を見ていると、どうやら気が乗らなかったからだろうな、という感じがしますね。
09
まだ雲を遊ばせている青田かな 景が広大なだけでなく、「まだ」が、たっぷりとした時間の流れを感じさせてくれる。気分の良い句です。
10
鯊釣りやまだらまだらに父のこと 「父のこと」を思い出したのか、誰かと語り合ったのか、少し言葉足らずのようにも感じますが、恐らく一人で鯊を釣りながら思い出しているという景を想像します。「まだらまだら」に実感がある。
15
星月夜文字なき絵本読みはじむ 「星月夜」に「文字なき絵本」を取り合わせるところが何ともロマンチック。個人的には、「文字なき絵本」であれば、「読む」よりも「ひらく」とか「めくる」などの方が正確かな、とも思います。
17
泳ぐ手は人を忘れてゆくやうに 目に浮かぶのは、完成されたクロールの手の動き。「人を忘れ」るとは、だれか特定の相手のことを忘れるという意味ではなくて、人間であることを忘れるという意味なのでしょう。水を掻く手が、人間であることを忘れ去って、魚のようにぐんぐん進み続ける様が想像されます。
18
背の曲る老婆を隠す日傘かな 老婆の描写として「背の曲る」はパターン過ぎる。原句とはだいぶ趣が変わるが、たとえば「小さき婆すつぽり隠す日傘かな」などとすれば、婆と日傘の大小の対比など、もっと具体的に見えてくるのではないかと思います。
19
手品師の鞄を開く木下闇 見せてほしいような、見てはまずいような、心惹かれる木下闇の句です。
20
落蝉の骸にしかと硬さあり ただ見ただけでなく、手で触ったか、箒で掃いたか、実際に硬さを感じたという実感が「しかと」から伝わってきます。
22
小菊買ふねぎぼうずちふ直売所 なかなか面白い名のついた直売所ですね。買うのが小菊というところも親しみが持てる。軽妙な味わいの句です。
25
揚花火八時半まで田の中に 揚げ花火が揚がるような時間まで田仕事をしていたということは充分分かるので、「八時半」という時刻を出す必要はあまりないように感じました。
27
雲の峰今日一日の外仕事 これは、「これから今日一日外仕事をするぞ!」という句なのか、「今日一日の外仕事がやっと終わった…」という句なのか、どちらなのか。季語からすると、前者かなぁとも思うのですが、夕方でも全く雲の峰が見られない訳でもなく、決め手に欠ける。朝もしくは夕方と想像しやすい季語で、他にもっと良いものがあるかも知れないっですね。
32
朝虹の着信音が胸の位置 何の知らせだろう、と少しどきりとさせられる。ただ、上五は「の」でつながずに切った方が、虹も着信音もより印象鮮明になるように思います。
35
太眉の一族がひまはりを背に 日差しの下の向日葵を背にした太眉の人が非常に印象的なのですが、「一族」でどの程度の人数なのか逆に想像しにくくなっている印象でした。一人に絞るか、母と娘の二人にするか、いろいろと推敲のしようがありそうです。
36
空蝉を胸元に付け遊ぶ児ら 言わんとするところはよく分かりますが、上五中七だけで、子供が遊んでいるんだろうな、と想像できるので、下五がほぼ蛇足です。下五を削った分で、どれだけ描写に臨場感を出せるかが勝負です。推敲してみてください。
38
旅の膳焼き空豆に塩ふりて 中七下五はなかなか野趣もあり美味しそうで良いと思うのですが、上五が説明的なのがもったいない。
40
天井扇ゆるりゆるりと夏の果 喫茶店やレストランなどで見かける天井扇、ゆっくり回る様に夏の終わりを実感する心情に共感を覚える句です。
44
議論して冷酒で終る町内会 お決まりの、という感じで出て来る冷酒が良い。議論も、本気で紛糾するような議論ではなく、文句を言わずにおれない御仁がいつも通り文句を言ってるだけ、という感じ。場面が良く見える句です。
45
母の呆けまた戻り来て盆終る 意図するところはだいたい分かるのですが、「呆け」が「戻り来」るという言い方に少し違和感がありました。
48
八月は忌日忌日の金太郎 金太郎というとまさかりかついで熊にまたがっていたアレですよね。もしかして金太郎こと坂田金時の忌日って八月なんでしょうか。
49
きやうだいは皆腹違ひ墓洗ふ たぶんこの「きやうだい」、それなりに年齢も重ねた世代。若い頃は対立したりもしたけれど、今はこうして一緒に墓を洗っている。重ねて来た時間のボリュームを感じる句です。
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