ハルヤスミ句会 第二百三回

2017年9月

《 句会報 》

01 クレープのうす紙に秋立ちにけり   海音(乃・ち・ぐ・佳・春)

02 我も恥多き人生草の花        さんきう(案)

03 ちと鳴きて電話線発つ法師蝉     ひろ子

04 舟すすむ秋蝶止まらせしままに    春休(ル・案・奥・ぐ・佳)

05 お道化ては笑ひ取りたる宮相撲    時人(三)

06 新涼やベトナム人が介護して     光太郎(海・益)

07 水を吸ふ秋の蝶居る狭き土地     順一

08 本物の蚊に追はれけり飛蚊症     案山子(海・益)

09 塩ふれば皿に弾みて星月夜      春休(光・さ・一・佳)

10 この人とジルバのダンス夜の秋    ひろ子

11 露けくて全身使ひ窓みがく      ぐり(ち・奥)

12 父追ってついついと飛ぶ赤トンボ   乃愛(奥)

13 ぱっと逝く事も幸せ白木槿      ちあき(時・愛)

14 村芝居与太の頭に張扇も       高弘

15 秋でちゆねレースカーテンくるくるん さんきう

16 再発行コスモス僅かばかり咲き    順一(一)

17 台本のその先真白胡桃の実      高弘(草・ぐ)

18 新涼の椅子足して家族になりぬ    佳子(ち・一・益・ぐ・三)

19 虫の音寂し豪雨続きに流るるや    つよし

20 芒原聞き覚えなき名で呼ばれ     ルカ(草・高・海・佳)

21 紙芝居路地に見し日のとんぼかな   ちあき(光・海)

22 コスモスに承認されておともだち   佳子

23 ひたひたと夜を満たして曼珠沙華   乃愛(ち・奥・益・三・春)

24 ひとながれ風行くごとし風の盆    案山子

25 去り際のいつもの言葉草の花     ルカ(草・愛・高・春)

26 出窓より漏れるソナチネ秋桜     みなと(乃・ち・愛)

27 コスモスの揺れが眼鏡に映りこむ   佳子(一)

28 下腹に太鼓の余韻秋まつり      高弘(光・さ・時)

29 洋館に寄り添ふ湖やダイアナ忌    さんきう(海)

30 老斑の数妻と競ひし敬老日      草太(益)

31 駅舎より人散りぢりに秋夕焼     ちあき(乃・草・一)

32 子を前で抱くママばかり汀女の忌   草太(奥・高)

33 ドトールに雨よけ入る原爆忌     愛

34 ミサイルの軌道のごとき猫じゃらし  益太郎(ル)

35 象逝くや二百十日の風の中      海音(光・ル・草・案・時・愛・鋼・春)

36 夜学して蕪村句集を書抜きす     時人

37 墓参して願う娘の嫁ぎ先       光太郎

38 コスモスや犬だく少女を横に退き   順一(ル)

39 酢作りの甕のぞきこむ今朝の秋    愛(案・三)

40 指先のネイルアートや百日紅     益太郎(乃)

41 パンケーキふわり湯気立ち秋うらら  乃愛

42 真葛原風ひるがへりひるがへり    案山子(佳)

43 登高や走れば奴も野良の犬      愛(さ・ぐ・春)

44 障子張る手馴れた捌き五十年     つよし(光)

45 台風を前にはじまり月の物      春休(三)

46 大根蒔き腰に痛みの走るなり     つよし

47 ミサイル放つ国も民あり黍嵐     草太

48 いぶし銀の巌(いわを)のやうな黒葡萄 みなと

49 山霧の助手席に飲む紅茶かな     ぐり

50 ティンパニを太く打ちたる敬老日   みなと(さ・鋼)

51 耳澄ます地蔵ばかりよ秋うらら    ルカ(さ・高・鋼)

52 冬瓜の裾分けをまた裾分けし     ひろ子(乃・時・愛・鋼)

53 どんぐりとマルコポーロの旅行記と  海音(ル)

54 母鵯の子を呼ぶ声に目覚めけり    ぐり(鋼)

55 今日のこと明日に延ばせぬ葛の蔓   益太郎(時・高)

56 西瓜切るシルクロードの長い旅    光太郎(案)

57 名物のきぬかつぎ喰ふ法華経寺    時人 




【 荒木乃愛 選(乃) 】
はじめて選句というものにチャレンジしました。
どうぞ、宜しくお願い致します。
○01 クレープのうす紙に秋立ちにけり  クレープの薄きにも、静かにやってきた秋の気配が◎
○26 出窓より漏れるソナチネ秋桜  実家で暮らしていたときの思い出と重なる。ほのぼの。
○31 駅舎より人散りぢりに秋夕焼  町並みに立つそれぞれの夕飯の匂いまでが届きそうな景。
○40 指先のネイルアートや百日紅  艶やかな、女の性。
○52 冬瓜の裾分けをまた裾分けし  冬瓜を小さな子供が、大きなスイカととらまえた。裾分しても足りる大きさ

【 えみこ 選(え) 】
(今回はお休みです。)

【 森本光太郎 選(光) 】
○09 塩ふれば皿に弾みて星月夜
○21 紙芝居路地に見し日のとんぼかな
○28 下腹に太鼓の余韻秋まつり
○35 象逝くや二百十日の風の中
○44 障子張る手馴れた捌き五十年

【 ちあき 選(ち) 】
○01 クレープのうす紙に秋立ちにけり
○11 露けくて全身使い窓みがく
○18 新涼の椅子足して家族になりぬ
○23 ひたひたと夜を満たして 曼珠沙華
○26 出窓より漏れるソナチネ秋桜

【 さんきう 選(さ) 】
○09 塩ふれば皿に弾みて星月夜  これは言われてみて「なるほど」と思いました。あと、「星月夜」という季語はそれだけで点数稼げますよね  ^^;)
○28 下腹に太鼓の余韻秋まつり  お祭りは踊りに注目してしまいそうですが、太鼓、しかも余韻というのが珍しくて良かった。
○43 登高や走れば奴も野良の犬  これ、雰囲気は◎でしたが、「登」高と「走る」にやや(動詞動詞の)ダブり感が…。また、「野良犬」「野犬」という言葉があるのに、「野良の犬」といっているのが引っかかりました。
○50 ティンパニを太く打ちたる敬老日  敬老日にはこのぐらいの言葉をぶつけて欲しいと思ったことでした。敬老日はいかにも老人を連想させるような描写が多いですからね。
○51 耳澄ます地蔵ばかりよ秋うらら  これは秋の透明感が前面に強く出てくるので、下五は「秋うらら」ではなく植物か何かの方がいいと思いました。

【 ルカ 選(ル) 】
○04 舟すすむ秋蝶止まらせしままに
○34 ミサイルの軌道のごとき猫じゃらし
○35 象逝くや二百十日の風の中
○38 コスモスや犬だく少女を横に退き
○53 どんぐりとマルコポーロの旅行記と

【 青野草太 選(草) 】
○17 台本のその先真白胡桃の実
○20 芒原聞き覚えなき名で呼ばれ
○25 去り際のいつもの言葉草の花
○31 駅舎より人散りぢりに秋夕焼
○35 象逝くや二百十日の風の中

【 石黒案山子 選(案) 】
〇02 我も恥多き人生草の花
〇04 舟すすむ秋蝶止まらせしままに
〇35 象逝くや二百十日の風の中
〇39 酢作りの甕のぞきこむ今朝の秋
〇56 西瓜切るシルクロードの長い旅

【 一斗 選(一) 】
○09 塩ふれば皿に弾みて星月夜
○16 再発行コスモス僅かばかり咲き
○18 新涼の椅子足して家族になりぬ
○27 コスモスの揺れが眼鏡に映りこむ
○31 駅舎より人散りぢりに秋夕焼

【 中村時人 選(時) 】
○13 ぱっと逝く事も幸せ白木槿
○28 下腹に太鼓の余韻秋まつり
○35 象逝くや二百十日の風の中
○52 冬瓜の裾分けをまた裾分けに
○55 今日のこと明日に延ばせぬ葛の蔓
 他に気になった句は
 11 露けくて全身使ひ窓みがく
 25 去り際のいつもの言葉草の花
 27 コスモスの揺れが眼鏡に映りこむ
 54 母鵯の子を呼ぶ声に目覚めけり
 以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○04 舟すすむ秋蝶止まらせしままに  ゆっくりと進む小舟についていきます。。
○11 露けくて全身使い窓みがく    鬱陶しさをはらいのけたい。身も心も秋晴れが待たれます。
○12 父追ってついついと飛ぶ赤トンボ 父を追いかけていたころの自分を思い出します。
○23 ひたひたと夜を満たして曼珠沙華 作者の心持ちを想像します。
○32 子を前で抱くママばかり汀女の忌 子も母も安心しますが、転ばないように。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇13 ぱっと逝く事も幸せ白木槿  ’ぴんぴんころり’などともよく聞きますね。同感です。只”白木槿”が付き過ぎかな。
〇25 去り際のいつもの言葉草の花  素敵な句です。”草の花”の季語がさりげなくて、二人の関係がよくわかります。
〇26 出窓より漏れるソナチネ秋桜  洋館の出窓からピアノの練習をしているのか聞こえる。弾いているのは少女、”秋桜”の季語ですものね。
〇35 象逝くや二百十日の風の中  ご苦労様でした。どんなに広いサバンナを仲間と一緒に全力疾走したかった事でしょうに。”風の中”に作者の思いが感じ取られます。
〇52 冬瓜の裾分けをまた裾分けし  冬瓜は丸ごとではとても食べきれない。それでお裾分け。親しい人間関係が思われます。

【 小林タロー 選(タ) 】
(今回はお休みです。)

【 森高弘 選(高) 】
○20 芒原聞き覚えなき名で呼ばれ  いつの間についた名前なのか、それとも新たに名乗った名前なのか。他に人のいなさそうな芒原。
○25 去り際のいつもの言葉草の花  もしかしたら二度と会えないかも知れない人との別れと、気付きにくい草の花の存在と。
○32 子を前で抱くママばかり汀女の忌  背負いこんであやす母親の姿はそういえば見なくなった。母親の愛情は変わったか否か。
○51 耳澄ます地蔵ばかりよ秋うらら  他に何も聞こえてなさそうな景。そこで秋うららが生きてくる。
○55 今日のこと明日に延ばせぬ葛の蔓  延ばせず、で採る。明日に延ばせばいいということが多い中それだけは許されないという事柄に対する作者の強い思い。
 06 新涼やベトナム人が介護して  「介護」の言葉が硬い。ここはベトナムからの介護士が何をしているかというのが解るようにしたい。
 08 本物の蚊に追はれけり飛蚊症  下五は上五に持って行った方が。
 16 再発行コスモス僅かばかり咲き  何の再発行?
 22 コスモスに承認されておともだち  承認されたらおともだちになる、というのは昨今のSNSのことだから、そこから先どうなったかが知りたかった。
 39 酢作りの甕のぞきこむ今朝の秋  酢を仕込んで発行熟成には1年以上かかるらしいが、出来上がっているのかそれともまだまだ途中なのかが見えてくればいい。
 48 いぶし銀の巌(いわを)のやうな黒葡萄  あんまり美味しくなさそうな。

【 石川順一 選(順) 】
(今回は選句お休みです。)

【 涼野海音 選(海) 】
○06 新涼やベトナム人が介護して  いかにも現代の介護現場。新涼の前向きさがよい。
○08 本物の蚊に追はれけり飛蚊症  滑稽すぎる感もあるが、こういうことは「あるある!」俳句。
○29 洋館に寄り添ふ湖やダイアナ忌  まさかダイアナ忌が俳句に詠まれるとは。いかにもありそうな景だと思わせられた。
○20 芒原聞き覚えなき名で呼ばれ  呼び間違えということでしょうか。詩的な雰囲気がある句。
○21 紙芝居路地に見し日のとんぼかな  普遍的ななつかしさといえばいいでしょうか。紙芝居をみたことがなくても、こういうことは経験した気がするという不思議さ。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○06 新涼やベトナム人が介護して  外国人の介護にも違和感なし。
○08 本物の蚊に追はれけり飛蚊症  俳味あふれる句。
○18 新涼の椅子足して家族になりぬ  椅子を足す、が上手い。
○23 ひたひたと夜を満たして曼珠沙華  夜の曼珠沙華が斬新。
○30 老斑の数妻と競ひし敬老日  老斑も老いの勲章。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○01 クレープのうす紙に秋立ちにけり  街で買うクレープを包む紙の薄さにほのあたたかさが伝わる。確かに真夏はクレープって食べる気がしない。
○04 舟すすむ秋蝶止まらせしままに  動きが少し緩慢になった蝶と静かに進む舟。
○17 台本のその先真白胡桃の実  その先が真白な台本。なんとも不安が募る。胡桃とどう響きあうか。
○18 新涼の椅子足して家族になりぬ  色々な想像が湧くが、新涼に増えた家族はとても歓迎されているのだろう。
○43 登高や走れば奴も野良の犬  登高がぴったりくるかわからないのだが、奴になんとも言えない愛情を感じて微笑ましくて。

【 水口佳子 選(佳) 】
○01 クレープのうす紙に秋立ちにけり  秋は日常のこんな小さな場面でも感じることができる、そんな季節だと思う。〈うす紙〉と〈秋〉で秋の透明感が感じられる。
○04 舟すすむ秋蝶止まらせしままに  秋も深まってくる頃には蝶もそれ歩で敏捷でなくなる。動き出した舟を飛び立とうともしない蝶に淋しさがある。
○09 塩ふれば皿に弾みて星月夜  さらに弾んだ塩は少し皿からこぼれたかもしれない。真っ白な塩と星月夜に秋の空気の透き通った感じが。
○20 芒原聞き覚えなき名で呼ばれ  誰かと間違えられて呼ばれたのか、もしかしたら呼んだ人の姿はこちらから見えていないのかも。〈芒原〉の持つイメージの不思議さが、非日常へと導く。
○42 真葛原風ひるがへりひるがへり  葛の葉が風でひるがえるとき、そうか風もひるがえっているのだと納得。生命力あふれる葛の葉だからこそ言い得ること。

【 三泊みなと 選(三) 】
○05 お道化ては笑ひ取りたる宮相撲 
○18 新涼の椅子足して家族になりぬ
○23 ひたひたと夜を満たして曼珠沙華
○39 酢作りの甕のぞきこむ今朝の秋
○45 台風を前にはじまり月の物

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○35 象逝くや二百十日の風の中  一読すっきり頭に入る良い句。
○50 ティンパニを太く打ちたる敬老日  太くと敬老日がうまく合っている。
○51 耳澄ます地蔵ばかりよ秋うらら  景色が良く見える。
○52 冬瓜の裾分けをまた裾分けし  今時分の季節が表れている。
○54 母鵯の子を呼ぶ声に目覚めけり  けり止めがきっちりしていて良い。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○01 クレープのうす紙に秋立ちにけり  立秋は八月の上旬ですから、まだまだ暑い時期ですが、そこから秋へと向かって行く気配を、クレープの薄紙に見て取った。なかなか繊細な把握だと思います。
○23 ひたひたと夜を満たして曼珠沙華  いつの間にか殖えている曼珠沙華。夜の間にひっそりとその花を増やして行ってるのかも知れません。夜の闇に満たしてゆく曼珠沙華の紅が印象的。
○25 去り際のいつもの言葉草の花  個別の花の名を挙げるのに比べると、草の花は親しみやすい、普段着の印象を与えます。いつものような言葉でお別れ、いつものような草の花の中で。時にはそれが、特別なお別れになってしまうことも。
○35 象逝くや二百十日の風の中  二百十日は、日本の農家にとっての厄日のようなものですから、動物たちには本来関わりない。ただ、日本という異国の地でその命を終えようとしている象の身の上を思うと、少し複雑な感慨があります。
○43 登高や走れば奴も野良の犬  季語がしっかり働いているのか、描写も少々整理が必要ではないか、など思わない訳ではないのですが、テンションが上がって普段とは様子の違う犬の姿がよく見えてくる。そういう点では力のある句です。
 02 我も恥多き人生草の花  太宰治『人間失格』の、第一の手記の冒頭「恥の多い生涯を送って来ました。」を念頭に置いての句と思います。太宰治の魅力は共感、シンパシーを掻き立てる所で、この句の作者の強いシンパシーが「我も」に出ていますね。
 06 新涼やベトナム人が介護して  介護の現場にも海外からの人材が入って来ています。「新涼」という季語で、歓迎ムードを感じさせている所が良いですね。
 07 水を吸ふ秋の蝶居る狭き土地  「狭き土地」が具体的にどういう場所なのかよく分からないのと、「居る」が蛇足なのが気になる。どんな場所のどんな水か、そこから景をもっとクリアにしていってほしい所です。
 11 露けくて全身使ひ窓みがく  「露けし」と動詞二つの合わせ技、くどく感じてしまいます。上五は「朝露や」ぐらいで良いのではないかと思います。
 12 父追ってついついと飛ぶ赤トンボ  赤蜻蛉の父子ということでしょうか。私は蜻蛉の父子というものを見たことがない(見ても気付かない?)ような気がします。
 13 ぱっと逝く事も幸せ白木槿  感慨12音プラス季語5音という、俳句の作り方としては基本パターンの句ですが、感慨の内容が、自分の願望とも一般論として言っているとも解釈できる点が弱い。ここは「白木槿ある朝ぱつと逝きたけれ」などとして、あくまで自分の願望として一句にしたい所です。
 17 台本のその先真白胡桃の実  雰囲気のある句ではあるのですが、「台本のその先」が案外分からない。物語がきちんと終わっていれば「その先真白」なのは当然、物語が途中なのに「その先真白」だと少し不思議・不穏な印象になってくる。そういう曖昧さを季語の力でフォローできているかと言うと、そうはなっていないように感じる。
 18 新涼の椅子足して家族になりぬ  内容は良いと思うのですが、せずもがなの句またがりという印象です。単純に「椅子足して家族となりぬ涼新た」で良いように思うのですが…。
 20 芒原聞き覚えなき名で呼ばれ  これも内容は良いと思うのですが、「聞き覚えなき名で呼ばれ芒原」とした方が、呼ばれて周囲を見渡しても芒が揺れるばかり…、というような余韻が生まれると思います。
 21 紙芝居路地に見し日のとんぼかな  実は私は生まれてこの方、路地での紙芝居というものを見たことがありません。追憶の中の景を詠まれたのでしょう。とんぼに追憶を呼び起こされたのかも知れませんね。
 22 コスモスに承認されておともだち  いわゆるSNSの友人関係を詠まれているのだと思いますが、コスモスがどの程度働いているのかというと少し疑問が残ります。
 29 洋館に寄り添ふ湖やダイアナ忌  ダイアナ忌の句は初めて見ました。句としてはしっかり出来ていると思います。
 32 子を前で抱くママばかり汀女の忌  昔は背中におぶっていたのが今は前で抱っこするのが主流。句の意味は分かりますが、説明に過ぎず、特に感興が起きません。
 36 夜学して蕪村句集を書抜きす  感心感心。私も蕪村ファンです。
 37 墓参して願う娘の嫁ぎ先  お墓に入っている御先祖様にお願いしても、御先祖様には御利益は期待できません、多分。元は普通の人間ですから、御先祖様。願掛けは寺か神社でどうぞ。
 39 酢作りの甕のぞきこむ今朝の秋  米からもろみを造り、もろみを酢酸発酵させて酢を造ります。この甕はどういう段階だったのでしょうね。その辺りが想像できる手がかりでもあれば、句の実感も増したのではないかと思います。なお、「酢作り」は「酢造り」と表記した方がより正確でしょうね。
 40 指先のネイルアートや百日紅  「ネイルアート」が「指先」なのは当たり前のように感じるのですが…。
 41 パンケーキふわり湯気立ち秋うらら  美味しそうではあるのですが、下五の季語が働いていないというか、ピントが合っていないようなぼんやりした印象です。例えば「パンケーキふわりと湯気が秋灯へ」などとして、季語も場面もしっかりと目に見えるようにしたい所です。
 42 真葛原風ひるがへりひるがへり  気分の良い句なのですが、中七下五、いつかどこかで見たような気もする。
 47 ミサイル放つ国も民あり黍嵐  ミサイルを打つ方も打たれる方も、ひとたび事が起これば犠牲になるのは民衆、指導者たちは高みの見物です。そのことを忘れないようにしなくてはなりません。
 48 いぶし銀の巌(いわを)のやうな黒葡萄  黒葡萄に対する比喩が「いぶし銀」と「巌のやう」とで二つになっている。どちらか一方だけでまとめたい。
 49 山霧の助手席に飲む紅茶かな  水筒に温かい紅茶を入れておいたのでしょう。運転は人に任せて、山霧を車窓に見ながら飲む紅茶、優雅ですね。
 52 冬瓜の裾分けをまた裾分けし  冬瓜の大きさと同時に、核家族化という現実もちらりと脳裏をよぎりました。
 55 今日のこと明日に延ばせぬ葛の蔓  上五中七の感慨に対して、季語が合ってないように感じる。葛の蔓は明日になっても(場合によっては冬に入っても)はびこったままだからだ。もっと命の短いものを季語として用いた方が、感慨にすんなりと共感できる。たとえば「今日のこと明日に延ばせず蓮の花」など。
 56 西瓜切るシルクロードの長い旅  日本とは多くのことが異なるシルクロードの旅先でも、馴染みのある西瓜が出てくると少しほっとする。そんな心情が伝わってくる。


来月の投句は、10月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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