ハルヤスミ句会 第二百四回

2017年10月

《 句会報 》

01 秋うらら日曜画家のアンリ・ルソー  ルカ

02 解体も残り鉄骨秋うらら       つよし(高)

03 落書きの馬這ひ上がり天高し     高弘(第)

04 秋の蜂鳥追ひ払ひ柿実る       ひろ子

05 秋渇き海のひかりのステンレス    佳子(乃・奥)

06 背かれた人あり釣瓶落しかな     みなと(の・益)

07 踏めば点くブレーキライト秋思ふと  一斗(乃)

08 秋風やにはとりいつも振り向かず   海音(佳)

09 浴室の一人の時間ちちろ鳴く     ちあき(の・光・海)

10 吾子早く眠りに入れり九月尽     第九

11 ひぐらしや田舎住まひの漢方医    案山子(さ・時)

12 脱衣所に鉦叩ゐて夜に入りぬ     ぐり

13 胡座かき膝に子を抱く月見かな    愛(ル・奥・三)

14 無花果に潜みし虫の酸つぱさよ    時人(春)

15 ピカソの目ふと台風の目の形     益太郎(ち・ル・高)

16 主婦がする夜食の用意町工場     光太郎(の・ち・さ・案)

17 書きかけの文を机に月を見に     春休(乃・一・時)

18 夕焼けの徳利片手に秋刀魚待つ    のりひろ

19 名月や夜の道日本酒買ひに行く    順一

20 ドミノピザと水平移動星月夜     さんきう(愛・高・益)

21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな    乃愛(光・ち・時・奥・高・三)

22 芋がらが椅子や各所で干されけり   順一

23 なまめきて鴉の背よ今日の月     春休(第・海・佳)

24 ざくろ裂け第一幕の長台詞      佳子(さ・一・愛・益・ぐ・春)

25 赤貧を洗ふが如く松手入れ      案山子(益)

26 直球の言葉は言えず草の花      ルカ(ち・案・海)

27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん   さんきう(案・愛・海・ぐ・三・鋼・春)

28 目印は濡れ土の色薬掘る       高弘(案・奥)

29 水霜やいつしか廃家増えてをり    みなと(時)

30 玉あがる塀の向かうは体育祭     愛(ル・ぐ)

31 蜘蛛の囲に包まれしまま柿三個    ひろ子

32 足袋素足小走り秋の簾かな      第九

33 借物競争また「先生」と運動会     つよし(の)

34 秋時雨車は濡れて居るだけだ     順一(一)

35 山裾の大きな屋敷蕎麦の花      つよし(第)

36 出来秋を垂るるがままの犬の頬    春休(高・ぐ・佳)

37 野分ゆく一部始終を大玻璃に     ちあき(ル)

38 広島の川を越えゆく秋の蝶      海音(第)

39 オカマコホロギ消火器の薄埃     佳子

40 乗り換へて単線電車稲穂中      ちあき(愛)

41 唐辛子丸ごと浮かぶスープかな    ぐり(乃・一・三)

42 鯊釣や見知らぬ人と話し込む     光太郎(ル)

43 [手偏に宛]ぎたての無花果並べ朝の市     時人

44 朝顔や昨夜の愚痴が口開く      益太郎(光・さ・案・時)

45 山麓の波にきらきら鳥威       一斗

46 吾亦紅風に遊んで弥次郎兵衛     案山子(奥)

47 本当の人を混じへて遠案山子     一斗(益・佳)

48 遠距離やホームで別れし檸檬かな   のりひろ

49 鳩吹に怪物呼ぶは止せなどと     高弘

50 声大き西町区長赤い羽根       愛(光・三・春)

51 星月夜片目をつぶりあう夫婦     ルカ

52 新蕎麦を打つ脱サラの小宇宙     さんきう(ち・愛)

53 独唱のソプラノ澄みし朝の虫     ひろ子

54 ベランダに唐辛子干す韓美人     第九

55 黒い群れ釧路の川に鮭のぼる     のりひろ(光)

56 終バスを降りてコロコロ虫の秋    乃愛(の)

57 午後九時の闇を白鳥渡りけり     みなと(鋼・春)

58 朝摘みのミント匂いし厨かな     乃愛(ぐ)

59 名を知らぬ陵へ星流れけり      海音(さ・佳)

60 サイレンの空を見上げて穴惑     益太郎(一・第・海・鋼)

61 秋耕や日本に溢れる食べ残し     光太郎

62 もう少し長生きせんとととろろ汁   時人(乃・鋼)

63 今年こそ万年青実となれ実となりぬ  ぐり(鋼)




【 荒岩のりひろ 選(の) 】
○06 背かれた人あり釣瓶落しかな
○09 浴室の一人の時間ちちろ鳴く
○16 主婦がする夜食の用意町工場
○33 借物競争また「先生」と運動会
○56 終バスを降りてコロコロ虫の秋

【 荒木乃愛 選(乃) 】
○05 秋渇き海のひかりのステンレス  無機質ともとらえられる海の様子が伝わってきます。
○07 踏めば点くブレーキライト秋思ふと  何気ない行動の中にも秋思は潜むのでしょうか。
○17 書きかけの文を机に月を見に  秋の月は見事。
○41 唐辛子丸ごと浮かぶスープかな  急に寒くなった日の体をほっとさせるスープ。
○62 もう少し長生きせんとととろろ汁  とろろ汁の粘りの様子に人生が元気なるといい。

【 えみこ 選(え) 】
(今回はお休みです。)

【 森本光太郎 選(光) 】
○09 浴室の一人の時間ちちろ鳴く
○21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな
○44 朝顔や昨夜の愚痴が口開く
○50 声大き西町区長赤い羽根
○55 黒い群れ釧路の川に鮭のぼる

【 ちあき 選(ち) 】
○15 ピカソの目ふと台風の目の形
○17 書きかけの文を机に月を見に
○21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな
○26 直球の言葉は言えず草の花
○52 新蕎麦を打つ脱サラの小宇宙

【 さんきう 選(さ) 】
○11 ひぐらしや田舎住まひの漢方医  漢方医はどちらかというと都市にいそうですが、まあ雰囲気で。でもやっぱり、この句だと漢方医が見えて来ないかなあ。
○16 主婦がする夜食の用意町工場  推敲希望ということで選。題材はいいと思うんですが、「主婦『がする』」はこなれてないし、「用意」は余計かな?と。
○24 ざくろ裂け第一幕の長台詞  これは上五のあとの大胆なワープが良かった。ちなみに、ざくろは唯一嫌いな果物です。
○44 朝顔や昨夜の愚痴が口開く  この句を見て気づきましたが、朝顔と人間の関係って特殊なんですね。朝顔の句は花の扱い(花の立ち位置)が独特。
○59 名を知らぬ陵へ星流れけり  これは詩的でいい。ただ、句を読んだ時にデジャヴ感があり、「ぬおぉ!」でも「うふふ..」でもなかった。

【 ルカ 選(ル) 】
○13 胡座かき膝に子を抱く月見かな
○15 ピカソの目ふと台風の目の形
○30 玉あがる塀の向かうは体育祭
○37 野分ゆく一部始終を大玻璃に
○42 鯊釣や見知らぬ人と話し込む

【 青野草太 選(草) 】
(今回はお休みです。)

【 石黒案山子 選(案) 】
〇16 主婦がする夜食の用意町工場
〇26 直球の言葉は言えず草の花
〇27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん
〇28 目印は濡れ土の色薬掘る
〇44 朝顔や昨夜の愚痴が口開く

【 一斗 選(一) 】
○17 書きかけの文を机に月を見に
○24 ざくろ裂け第一幕の長台詞
○34 秋時雨車は濡れて居るだけだ
○41 唐辛子丸ごと浮かぶスープかな
○60 サイレンの空を見上げて穴惑

【 中村時人 選(時) 】
○11 ひぐらしや田舎住まひの漢方医
○17 書きかけの文を机に月を見に 
○21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな
○29 水霜やいつしか廃家増えてをり
○44 朝顔や昨夜の愚痴が口開く
 他に気になった句は
 12 脱衣所に鉦叩きゐる夜に入りぬ 
 13 胡座かき膝に子を抱く月見かな
 16 主婦がする夜食の用意町工場
 以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
○03 落書きの馬這ひ上がり天高し  ダリの絵を想像しました。
○23 なまめきて鴉の背よ今日の月  鴉と月とは中々ユニークな取り合わせです。
○35 山裾の大きな屋敷蕎麦の花  富士の裾野の雄大さに驚いたことを思い出しました。
○38 広島の川を越えゆく秋の蝶  やはり原爆と重ねて読んでしまいます。
○60 サイレンの空を見上げて穴惑  浮世は騒々しくておいそれと眠りに入れないのでしょう。 

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○05 秋渇き海の光のステンレス  ステンレスと表現したところが斬新だと思います。
○13 胡坐かき膝に子を抱く月見かな  ほのぼのとしたお月見です。 
○21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな  和紙に静かに滲んでいく思い。
○28 目印は濡れ土の色薬掘る  今年はどんなものが収穫できたのでしょうか。
○46 吾亦紅風に遊んで弥次郎兵衛  捉え方が楽しいです。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○20 ドミノピザと水平移動星月夜 ドミノピザとの関係がよく分からないのですが、”水平移動”の表現が面白いです。
○24 ざくろ裂け第一幕の長台詞 ”ざくろ裂け”がシェイクスピア等の重厚な台詞を思わされます。
○27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん ゛栗ごはん”のリフレインが店側の意気込みを感じ取られます。
○40 乗り換へて単線電車稲穂中 乗り換えが進むうちに鄙びた田園風景が広がる。気持ちのよい句です。
○52 新蕎麦を打つ脱サラの小宇宙 蕎麦が好きで好きでとうとう蕎麦屋を開業してしまった。上手くゆくといいですね。
 以上です。

【 小林タロー 選(タ) 】
(今回はお休みです。)

【 森高弘 選(高) 】
○02 解体も残り鉄骨秋うらら  土埃の舞うような慌ただしさもひと段落。寂しいようで清々しい秋の空。
○15 ピカソの目ふと台風の目の形  ピカソの画の目が作者の心象からぐいぐいと形を変えて、騒ぐ心の中心の静寂さを映す。
○20 ドミノピザと水平移動星月夜  落ちることも傾くこともなく星の世界を堪能する中、恭しく抱えられたピザが到着した。愉快。
○21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな  墨が落ちたら先に透明な水の輪が和紙に広がっていく。書き損じたことや書くことが思い浮かばないことなどの様々な思いの交錯。
○36 出来秋を垂るるがままの犬の頬  下五の意外性にやられた。さぞかし愛嬌のあるブルドッグなのだろう。
 04 秋の蜂鳥追ひ払ひ柿実る  蜂と鳥、どちらが追い払ったのだろうか。
 18 夕焼けの徳利片手に秋刀魚待つ  これは、残念ながら季重なりでは。
 22 芋がらが椅子や各所で干されけり  椅子だけで良かったような気がする。
 26 直球の言葉は言えず草の花  目立たない存在である草の花と、直球ではなくとも相手にものを言っている状況とがどうも噛み合っていない。
 30 玉あがる塀の向かうは体育祭  語順を入れ替えれば種明かし的な下五がもっと面白くなりそう。
 33 借物競争また「先生」と運動会  季語を変えた方が面白くなると思う。     
 34 秋時雨車は濡れて居るだけだ  これは山口優夢さんの「あぢさゐはすべて残像ではないか」を彷彿とさせる。
 41 唐辛子丸ごと浮かぶスープかな  その唐辛子って大きいのか小さいのか、本体や周りの色はどんなのか、知りたい。
 42 鯊釣や見知らぬ人と話し込む  如月真菜さんの「裸にて世間のことをどうかうと」を何故か思い出す。人が誰かとかはもしかしたら十七音の外に置くのが良いのか。     
 51 星月夜片目をつぶりあう夫婦  もしウインクなら「つぶりあう」がさらっと入って来ない。
 57 午後九時の闇を白鳥渡りけり  白鳥座のことか。季語としてどうだろうか。

【 石川順一 選(順) 】
(今回は選句お休みです。)

【 涼野海音 選(海) 】
○09 浴室の一人の時間ちちろ鳴く  浴室の一人の時間を楽しんでおられるのでしょう。ゆっくりと。
○23 なまめきて鴉の背よ今日の月  「なまめきて」という形容が、鴉の背中に用いられると新鮮。
○26 直球の言葉は言えず草の花  ストレートな言葉はたしかに言いにくい。「草の花」の配合の仕方がベスト。
○27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん  なるほど、たくさんの栗ごはんが積まれていたのでしょう。リズミカルでよい。
○60 サイレンの空を見上げて穴惑  サイレンの空を見上げたのは作者かそれとも蛇か。大きな景が詠まれている。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○06 背かれた人あり釣瓶落しかな  小池知事のこと。人気も釣瓶落し。
○20 ドミノピザと水平移動星月夜  宅配ピザと星月夜の取り合わせ。水平移動が上手い。
○24 ざくろ裂け第一幕の長台詞  今まで秘めていたものが一気に爆発。長台詞が上手い。
○25 赤貧を洗ふが如く松手入れ  松手入れは爪に火を灯すよう。言われて見ればの句。
○47 本当の人を混じへて遠案山子  過疎の村の景。本当の人が上手い。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○24 ざくろ裂け第一幕の長台詞  芝居は室内だか裂けたざくろは舞台美術だろうか。ざくろの赤い粒々が長台詞と呼応するようだ。
○27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん  コンビニでも秋は栗ごはんフェアなどがあってどんどんお弁当として積まれるのだろう。栗ごはんのリフレインがうきうきしてくる。
○30 玉あがる塀の向かうは体育祭  塀の向こうというと刑務所の運動会!?塀で人は見えないが紅白の玉が飛び交う様が見えるのだろう。面白い景だ。
○36 出来秋を垂るるがままの犬の頬  出来秋と垂れた犬の頬の関係がわからないのだがブルドッグやグレートデンの垂れた頬に豊年の喜びを見つけるのも楽しい。
○58 朝摘みのミント匂いし厨かな  素直で気分がいい。朝の厨にミントの香りがしたらいい1日が始まるりそう。

【 水口佳子 選(佳) 】
○08 秋風やにはとりいつも振り向かず  「秋風」とあるので、庭に放された鶏かと思う。首を前に突き出しながら歩く鶏の滑稽さが浮かぶが、これが一生を鶏舎に閉じ込められた鶏だったら、と思うと哀れである。   
○23 なまめきて鴉の背よ今日の月  月光を浴びた鴉のつややかさ。「なまめきて鴉の背背よ」という言葉の並びがうまい。
○36 出来秋を垂るるがままの犬の頬  垂れている稲穂と犬の頬、因果はないがゆったりした空気感が良いと思う。
○47 本当の人を混じへて遠案山子  案山子の数のほうが多い・・・そういう村も最近ある。「本当の人」といったところに滑稽と皮肉が。
○59 名を知らぬ陵へ星流れけり  過去から流れてきた星とも。陵に埋もれている長い時間に思いが及ぶ。

【 三泊みなと 選(三) 】
○13 胡座かき膝に子を抱く月見かな
○21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな
○27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん
○41 唐辛子丸ごと浮かぶスープかな 
○50 声大き西町区長赤い羽根  
 以上です 宜しくお願いします。

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん  最近のコンビニはずいぶん変化しているようでこの句もそれに眼を瞠られたのでしょう。
○57 午後九時の闇を白鳥渡りけり  闇を飛ぶ白鳥を目撃されさぞとの事でしたでしょう。
○60 サイレンの空を見上げて穴惑  オリジナルで句で好感しました。
○62 もう少し長生きせんとととろろ汁  とろろが良い。
○63 今年こそ万年青実となれ実となりぬ  リズムよく頭に入る。
 以上 お願いします。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○14 無花果に潜みし虫の酸つぱさよ  そういうこともあるのでしょうね。虫が入っている!などと大騒ぎしたりせず、「酸つぱさよ」と言って大らかに受け止めている所が良い。
○24 ざくろ裂け第一幕の長台詞  取り合わせと言うか、場面転換の仕方が上手い。これから始まってゆく劇の内容を暗示するような季語の提示の仕方が良いです。
○27 コンビニに積む栗ごはん栗ごはん  「積む」とリフレインの効果とで、大量の栗御飯が見えてくるところが巧み。軽快な詠みぶりで景が非常によく見え、気分も伝わってきます。
○50 声大き西町区長赤い羽根  声の大きい区長というキャラクターがなかなか強烈で、面白い。西町区というのはどこの地名なのでしょうか。
○57 午後九時の闇を白鳥渡りけり  最初は「夜の闇を」くらいで充分なのではないかと思ったのですが、やはり「午後九時」という具体性が句を引き締めていると思い直しました。闇に突然現れた白鳥の鮮烈さが印象に残る句です。
 02 解体も残り鉄骨秋うらら  上五中七、分かるようでよく分からない。もっと良い言い方があるのかも知れないが、シンプルに「鉄骨のみとなりし家」などと言って、後は読み手の想像に任せた方が良いように思う。
 04 秋の蜂鳥追ひ払ひ柿実る  助詞が省略されているために、蜂が鳥を追い払ったのか、鳥が蜂を追い払ったのか分からない。
 05 秋渇き海のひかりのステンレス  一読、印象的な句ではあるのですが、海の光り方がステンレスのようだったとも、(窓サッシなどの)ステンレスに海の光が反射しているとも読める。ちょっと言葉足らずのように感じてしまう。
 06 背かれた人あり釣瓶落しかな  雰囲気は良いと思いますが、かな止めの句は途中で切れてしまうとまとまりがないように感じます。
 07 踏めば点くブレーキライト秋思ふと  これも雰囲気は良いと思うのですが、「秋思」と「ふと」の組み合わせは少々ありがちと感じます。個人的には、下五は「秋惜しむ」ぐらいに抑えた方が好みです。
 08 秋風やにはとりいつも振り向かず  「いつも」と言ってしまうと、その時、その瞬間の特別さが薄れ、季語である「秋風」の働きを阻害してしまうように感じます。
 09 浴室の一人の時間ちちろ鳴く     
 11 ひぐらしや田舎住まひの漢方医  田舎と言っても山奥や海辺と様々な田舎がある。「田舎住まひ」と一言で片付けてしまうとその辺りの背景が見えて来ず、想像が広がらない。例えば、「ひぐらし」の替わりに山奥にしかないような季語や海辺にしかないような季語を用いれば、そういう背景を季語に語らせることができる。
 12 脱衣所に鉦叩ゐて夜に入りぬ  発見、着想は非常に良いのですが、語り口にメリハリがなく、もったいなく感じます。例えば、「夜に入るや脱衣所に出で鉦叩」などでしょうか。
 21 墨ぽとと和紙に広がる秋思かな  墨がぽとりと落ちて和紙にじわじわと広がる、それと共鳴するように秋思が心の中に広がってゆく。視覚的な要素と心理的な要素がすっと入ってくる。採りたかった句です。
 25 赤貧を洗ふが如く松手入れ  「赤貧洗うが如し」という慣用句がありますが、別に赤貧「を」洗っている訳ではないのです。俳句の字数は少ないのですから、言葉はしっかり吟味して使いましょう。
 26 直球の言葉は言えず草の花  気分は非常によく分かります。「草の花」がさりげなくて良いですね。
 28 目印は濡れ土の色薬掘る  ほほう、そういうものなのですか。素人には見分けのつかなさそうな目印ですね。
 31 蜘蛛の囲に包まれしまま柿三個  個数を複数にしてしまうと、蜘蛛の囲に包まれていたという着眼点がぼやける気がします。
 33 借物競争また「先生」と運動会  「借物競争」とあれば「運動会」と察しは付くので、わざわざ「運動会」と言わなくても良かったかも知れません。
 37 野分ゆく一部始終を大玻璃に  野分が行き過ぎるまでの「一部始終」は時間的なボリュームが大き過ぎ、それを玻璃越しに全部見たと言われると、嘘っぽさを強く感じます。時間的な事柄よりも、玻璃の大きさを活かした視覚的な広がりを瞬間の景として描いた方が、鮮明な句になるのではないかと思います。
 38 広島の川を越えゆく秋の蝶  八月六日、広島の原爆記念日を過ぎるとすぐに立秋です。川は、水を求めて多くの被爆者が亡くなった場所ですので、その場所を越えてゆく秋の蝶も、特別な意味のあるもののように見えてきます。採りたかった句。
 41 唐辛子丸ごと浮かぶスープかな  面白い句なのですが、ちょっと一工夫足りないような気もする。中七の言い回し一つで化けそうな句です。
 48 遠距離やホームで別れし檸檬かな  何と何が遠距離なのでしょうか。遠距離恋愛の恋人同士ということでしょうか。その辺りがよく分かりませんし、季語も唐突な印象。「や」と「かな」を両方使うとまとまりがなくなります。
 52 新蕎麦を打つ脱サラの小宇宙  「脱サラ」という言葉を使ってはいけない、という訳ではありませんが、詠み込むのはかなり難しい言葉で、この句では消化し切れていないと感じます。
 55 黒い群れ釧路の川に鮭のぼる  上五の「黒い群れ」は何だろう、と思いつつ読み進めると鮭と後で分かるのですが、構成としては、鮭→川→鮭と循環しており、句の勢いを削いでいるように感じる。切れを活かして「○○○川のぼるや鮭の黒き群れ」などと仕立てた方が良いように思いますがいかがでしょうか。
 56 終バスを降りてコロコロ虫の秋  オノマトペは上手く活用すればリズミカルな活き活きとした句になりますが、意外性のない、ありがちな使い方で使ってしまうと、平凡な句になりがちです。この句の「コロコロ」は平凡かと思います。
 59 名を知らぬ陵へ星流れけり  景の広がりと同時に、歴史的な奥行きも感じる。良く出来た句だと思います。
 60 サイレンの空を見上げて穴惑  Jアラートなどという物騒なサイレンから、正午を伝えるだけのサイレンまでさまざまなサイレンがありますが、この句のサイレンはどんなサイレンでしょうか。蛇の様子から見ると、のんびりした印象を受けますが。
 61 秋耕や日本に溢れる食べ残し  ちょっと説教臭く感じます。


来月の投句は、11月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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