ハルヤスミ句会 第二百五回

2017年11月

《 句会報 》

01 秋寂や恵山ふもとの地蔵尊      案山子

02 夢多き平成人と居る良夜       みなと

03 轟々と工場明るき夜長かな      光太郎(え・ル・奥・ぐ・鋼)

04 うすれゆく飛行機雲や冬に入る    愛(の)

05 風邪の子や塵紙の山を作りたる    時人(の)

06 興に乗る掛合話柿の秋        ひろ子

07 独り言ぴたと止りしマスクかな    さんきう

08 枯蔦の窓にこするる茶房かな     春休

09 利酒や都の香り女酒         のりひろ

10 梟や図録にもどる聖母たち      佳子(ぐ)

11 とぎ汁の下茹でよろし大根かな    時人(三)

12 裏木戸に日本海ある暮秋かな     みなと(え・さ・一・時・奥)

13 そろそろと水に足つけ冬の鷺     ぐり(春)

14 洋館の重き扉や枯蟷螂        えみこ(さ・海・佳)

15 失恋やくつさめと屁のいちどきに   高弘

16 憲法に書かれぬ軍や菊の酒      光太郎(益)

17 神無月香りのブレンド食器買ふ    順一

18 CDもDVDも鳥威し        案山子(海・ぐ)

19 水鳥の醒めぎは土嚢積まれをり    佳子

20 牡蠣提げてパスタパスタと帰り道   さんきう(奥・愛・三)

21 神無月ラフマニノフを弾く少年    ルカ(海)

22 小春日や朗読会に五十人       ひろ子(一)

23 冬の日をビニールハウスのなかにゐる 一斗(奥)

24 名水の行き着く先の濁り酒      益太郎(高)

25 木の葉散る抹茶に饅頭食べる時    順一

26 語り部の天狗の話花八手       ひろ子(さ・時・益)

27 鞄より地図とガム出し冬日影     ぐり(高)

28 枇杷の花真昼に届く白封筒      ルカ(一)

29 お菓子より甘藷を選ぶ世代かな    光太郎

30 空席の人待つことも秋麗       一斗(佳)

31 カー公に喰ひちぎられて柿の蔕    つよし

32 神の旅設定温度を戻しけり      順一(一・時)

33 傘寿卒寿になほ説教とや報恩講    つよし(光・益)

34 しぐれまたしぐれて変はる湖の色   愛(案・奥・高・春)

35 新走淀の流れしくらわんか      のりひろ

36 雑炊を吹き窪ませて顔長き      春休(益・ぐ・三)

37 炬燵に息う母の姿を吾知らず     えみこ(光)

38 しばらくは外したマスク手に歩き   ぐり(愛・佳・三)

39 月見酒通天閣も輝いて        のりひろ(光)

40 稲架掛けの終えたる親子夕づけり   みなと

41 冬めいて信玄堤うねりなし      高弘

42 ノーベルも子規も横顔文化の日    益太郎(え・さ・案・愛・高・春)

43 冬めきて立食い蕎麦を啜る音     一斗(の)

44 布団干す夢のしじまの裏おもて    ルカ(案)

45 背負われて死んでないぞと捨案山子  益太郎

46 かたはらにダーツの矢あり冬籠    海音

47 汚れなき笑顔の暦求めけり      つよし(光・春)

48 極月や子豚重なり眠りたる      海音(え・さ・ル・高・ぐ・佳・春)

49 インプラントにかかる概算星冴ゆる  えみこ(鋼)

50 どこに立ちても雪嶺と青空と     海音(ル・案・一)

51 亥の子餅アイドルなれど人妻で    高弘(愛)

52 外套や松の匂ひの老紳士       春休(ル・海・佳・鋼)

53 時雨るるや中華饅頭おみやげに    案山子

54 鯉の喉のすとんと深く雪来るか    佳子(え・ル・鋼)

55 訪なへば灯のぽと点きて石蕗の家   愛(案・時・三)

56 三日目のおでんの始末うどんすき   時人(の・鋼)

57 遠来の客いつの間に鍋奉行      さんきう(の・光・時・愛・海・益)




【 荒岩のりひろ 選(の) 】
○04 うすれゆく飛行機雲や冬に入る
○05 風邪の子や塵紙の山を作りたる
○43 冬めきて立食い蕎麦を啜る音
○56 三日目のおでんの始末うどんすき
○57 遠来の客いつの間に鍋奉行

【 荒木乃愛 選(乃) 】
(今回はお休みです。)

【 えみこ 選(え) 】
○03 轟々と工場明るき夜長かな
○12 裏木戸に日本海ある暮秋かな
○42 ノーベルも子規も横顔文化の日
○48 極月や子豚重なり眠りたる
○54 鯉の喉すとんと深く雪来るか

【 森本光太郎 選(光) 】
○33 傘寿卒寿になほ説教とや報恩講
○37 炬燵に息う母の姿を吾知らず
○39 月見酒通天閣も輝いて
○47 汚れなき笑顔の暦求めけり
○57 遠来の客いつの間に鍋奉行

【 ちあき 選(ち) 】
(今回はお休みです。)

【 さんきう 選(さ) 】
○12 裏木戸に日本海ある暮秋かな  ありがちな内容かと思いましたが、そつなく描写している感じ。
○14 洋館の重き扉や枯蟷螂  洋館の高さ、大きさが見えてきますよね。で、蟷螂との対比、と。
○26 語り部の天狗の話花八手  大辞林に「天狗話」という項目が立っているので、「天狗話や」などとするのも一案か。
○42 ノーベルも子規も横顔文化の日  「横顔」で一括りにできないような気もするけど。(ノーベル即ち横顔写真、ではないので)
○48 極月や子豚重なり眠りたる  季語はこれで良いのかと思いつつ…。(なんか、「臨月」みたいな感じがするんですよね)

【 ルカ 選(ル) 】
○03 轟々と工場明るき夜長かな
○48 極月や子豚重なり眠りたる
○50 どこに立ちても雪嶺と青空と
○52 外套や松の匂ひの老紳士
○54 鯉の喉のすとんと深く雪来るか

【 青野草太 選(草) 】
(今回はお休みです。)

【 石黒案山子 選(案) 】
○34 しぐれまたしぐれて変はる湖の色
○42 ノーベルも子規も横顔文化の日
○44 布団干す夢のしじまの裏おもて
○50 どこに立ちても雪嶺と青空と
○55 訪なへば灯のぽと点きて石蕗の家
 以上です。よろしくお願い致します。

【 一斗 選(一) 】
○12 裏木戸に日本海ある暮秋かな
○22 小春日や朗読会に五十人
○28 枇杷の花真昼に届く白封筒
○32 神の旅設定温度を戻しけり
○50 どこに立ちても雪嶺と青空と

【 中村時人 選(時) 】
○12 裏木戸に日本海ある暮秋かな
○26 語り部の天狗の話花八手
○32 神の旅設定温度を戻しけり
○55 訪なへば灯のぽと点きて石蕗の家
○57 遠来の客いつの間に鍋奉行
 他に気になった句は
 08 枯蔦の窓にこするる茶房かな
 14 洋館の重き扉や枯蟷螂
 以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○03 轟々と工場明るき夜長かな  工場の夜景見学のツアーも人気のようです。
○12 裏木戸に日本海ある暮秋かな  日本海の景が目に浮かびます。
○20 牡蠣提げてパスタパスタと帰り道  生きの良い美味しそうな牡蠣が手に入ったのでしょう。
○23 冬の日をビニールハウスのなかにゐる  寒さも忘れ作業に余念がありません。
○34 しぐれまたしぐれて変はる湖の色  湖の宿に滞在しているのでしょうか。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇20 牡蠣提げてパスタパスタと帰り道
〇38 しばらくは外したマスク手に歩き
〇42 ノーベルも子規も横顔文化の日
〇51 亥の子餅アイドルなれど人妻で
〇57 遠来の客いつの間に鍋奉行

【 小林タロー 選(タ) 】
(今回はお休みです。)

【 森高弘 選(高) 】
○24 名水の行き着く先の濁り酒  手にするものの流れにまで思いをはせる。
○27 鞄より地図とガム出し冬日影  地図のほかに心を休められる存在も。
○34 しぐれまたしぐれて変はる湖の色  リフレインから大きな風景に。
○42 ノーベルも子規も横顔文化の日  俳人も文化に貢献しているんだぞ。自尊心のうかがえる句。
○48 極月や子豚重なり眠りたる  いつも餌を求めて騒ぐ子豚も静かになる夜。      
 02 夢多き平成人と居る良夜  平成の人、と分けるように直してみたい。
 05 風邪の子や塵紙の山を作りたる  鼻をかんだ後の山ともっとわかるようにしたい。
 53 時雨るるや中華饅頭おみやげに  これは季重なりか。
 57 遠来の客いつの間に鍋奉行  選べなかったのは中七のせい。うまくつながれば。

【 石川順一 選(順) 】
(今回は選句お休みです。)

【 涼野海音 選(海) 】
○14 洋館の重き扉や枯蟷螂  いかにも洋館の扉。枯蟷螂もずっと動かずにここにいるのだろう。
○21 神無月ラフマニノフを弾く少年  ラフマニノフと神無月が不思議と響きあう。
○18 CDもDVDも鳥威し  「CDもDVDも」とメディアを重ねた所がよい。
○52 外套や松の匂ひの老紳士  「松の匂ひ」ってどんな匂いだったなと・・・。
○57 遠来の客いつの間に鍋奉行  遠くから来て鍋奉行とは一体。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○16 憲法に書かれぬ軍や菊の酒  軍と明記するのは怖い。現状をいじらないでほしい。
○26 語り部の天狗の話花八手  語り部も、原爆の話だけをしている訳ではない。
○33 傘寿卒寿になほ説教とや報恩講  幾つになっても煩悩は消えない。
○36 雑炊を吹き窪ませて顔長き  雑炊を食べる時の表情を面白く表した。
○57 遠来の客いつの間に鍋奉行  どこの世界にも口うるさいのがいる。鍋は特に多い。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○03 轟々と工場明るき夜長かな
○10 梟や図録にもどる聖母たち
○18 CDもDVDも鳥威し
○36 雑炊を吹き窪ませて顔長き
○48 極月や子豚重なり眠りたる

【 水口佳子 選(佳) 】
○14 洋館の重き扉や枯蟷螂  「重き」と「枯」が響きあう。周囲の景も想像できるが、少し物足りなさもある。 
○30 空席の人待つことも秋麗  秋の気持ちのいい日なので人を待つことも苦にならない・・季語がやや説明しているかも。
○38 しばらくは外したマスク手に歩き  こういう何でもないことも俳句になるのだなあと目の付け所に感心。 
○48 極月や子豚重なり眠りたる  人間が忙しくしているときも子豚は重なり合って眠っている。子豚の体温が感じられほっこりさせられる。 
○52 外套や松の匂ひの老紳士  背筋の伸びた帽子の似合う紳士を想像した。きっとお金持ち。「松の匂ひ」が良かった。

【 三泊みなと 選(三) 】
○11 とぎ汁の下茹でよろし大根かな
○20 牡蠣提げてパスタパスタと帰り道
○36 雑炊を吹き窪ませて顔長き
○38 しばらくは外したマスク手に歩き
○55 訪なへば灯のぽと点きて石蕗の家

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○03 轟々と工場明るき夜長かな  大きな工場ではなく、作業してるのを見ながら通りすぎてると読みました。
○49 インプラントにかかる概算星冴ゆる  滑稽味と冴える感じとよく出てる。
○52 外套や松の匂ひの老紳士  匂いでも松の匂いとは意外。
○54 鯉の喉のすとんと深く雪来るか  特選の句、すとんと深くと雪の取り合わせがすっきり。
○56 三日目のおでんの始末うどんすき  やっと終わりが見えた。
     以上 お願いします。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○13 そろそろと水に足つけ冬の鷺  どこか動きが緩慢に感じるのは、やはり寒さのせいなのでしょうか。臨場感のある句です。
○34 しぐれまたしぐれて変はる湖の色  降っては止み、止んでは降る時雨。「しぐれまたしぐれて」という表現は、時雨の降り方をしっかりと言い止めている。少しずつ色合いを変えてゆく湖に、季節の移り変わりを見出した所も鋭い。
○42 ノーベルも子規も横顔文化の日  最近の偉人の顔写真は、正面からかせいぜい斜め前から。よく知られた写真が横顔というのは、現代の偉人にはあまりない例のように思います。昔の偉人のノーベルや子規という名前だけでなく、横顔の写真であるという所が、時代を感じさせるポイントになっている所が面白い(他にはアンデルセンの横顔写真なども思い出されます) 。「文化の日」という季語も悪くない。子規が横顔の写真を残したのは、子規本人が横顔の方が男前だと思っていたから(正面から見ると目が左右に離れていて不細工なので)、という文章を碧梧桐が書き残しており、本当かなとも思いますがなかなか興味深い。
○47 汚れなき笑顔の暦求めけり  シンプルなようですが、なかなかこうストレートには言えないもの。京極杞陽的な天衣無縫を感じる句。
○48 極月や子豚重なり眠りたる  子豚などの句では、可愛らしさに流されたような句も多いのですが、これはしっかり「もの」として描いている。季語が語り過ぎておらず、いろいろと想像させてくれるのも良いです。
 02 夢多き平成人と居る良夜  感慨としては分からなくもないのですが、「と居る」が蛇足と感じる。「平成人」という呼び方も少し違和感があり、「平成生まれ」と言うのが自然だと思います。「夢多き平成生まれ○○○○○」か「○○○○○平成生まれ夢多き」として季語を再考されてはいかがでしょう。
 03 轟々と工場明るき夜長かな  景のよく見える句。聴覚「轟々と」と視覚「明るき」の両方が上手く働いている。
 05 風邪の子や塵紙の山を作りたる  中七下五の内容が、季語の説明になってしまっているようです。
 09 利酒や都の香り女酒  「利酒」という季語で、中七下五でも酒のことを詠むのは、ツキスギと感じます。
 12 裏木戸に日本海ある暮秋かな  これも「ある」が蛇足と感じます。例えば「秋行きにけり裏木戸に日本海」などとした方が印象も鮮明になるのではないかと思います。
 14 洋館の重き扉や枯蟷螂  出来てはいるのですが、「重」「枯」のイメージが近く、出来すぎ、まとまりすぎのようにも感じます。
 15 失恋やくつさめと屁のいちどきに  中七下五に対して上五が答えになってしまっているように感じます。上五はもっとずらすか、とぼけた内容の方が味が出るのではないでしょうか。
 18 CDもDVDも鳥威し  そのうちBlu-rayDiscもここに加わるのでしょうか。現代の景をさらりと詠まれています。
 24 名水の行き着く先の濁り酒  意味としては分かるのですが、具体的にどのような景を想像すれば良いかというと、困ってしまう句です。目の前にあるのは水なのか濁り酒なのか、それすらも判然としない。
 26 語り部の天狗の話花八手  八手うちわと天狗とで連想されたのでしょうが、作者の連想が容易に想像がついてしまうのも読み手としては味気ないものです。
 27 鞄より地図とガム出し冬日影  「ガム」が出て来ることで、仕事などではないリラックスした感じが伝わってくる。残念なのは「冬日影」という季語があまり働いていないこと。町を歩く中で目に入った印象的な季の物など、もっと良い季語があるのではないかと思います。
 29 お菓子より甘藷を選ぶ世代かな  戦時中に嫌と言うほど食べたのでさつま芋や南瓜を嫌がる世代がいるのは知っていますが、それ以外の世代がお菓子と甘藷のどちらを好むかは、個人個人の好みに過ぎないと思うのですが…。
 31 カー公に喰ひちぎられて柿の蔕  「カー公」という呼び方は面白いのですが、句の仕立てが平坦というか、驚きがありません。もう少し驚きが出るような仕立てにしてほしいところです。
 37 炬燵に息う母の姿を吾知らず  昔の女性は休む間もないほどよく働いた、ということでしょうね。
 38 しばらくは外したマスク手に歩き  変わった所に目を付けた句ですが、もう少し状況が想像されるようなポイントがあれば、もっと良い句になりそうです。たとえば「○○○○を行くや外したマスク手に」などとして、歩いた場所を詠み込むとか。
 43 冬めきて立食い蕎麦を啜る音  内容は悪くないと思うのですが、上五なり下五なり、びしっと切れ字で切る訳にはいかなかったのでしょうか。どうもずるずると切れが悪い句になってしまっているように感じる。
 50 どこに立ちても雪嶺と青空と  見渡す限り雪嶺と青空だけ、山歩きの合間合間の一休みと言った所でしょうか、いかにも気分の良い句です。
 53 時雨るるや中華饅頭おみやげに  歳時記によっては採用されていない場合もあるかも知れませんが、中華饅頭(いわゆる肉まん)は冬の季語、つまり季重ねです。
 54 鯉の喉のすとんと深く雪来るか  冷たい水の中の鯉の喉の暗がりと、雪の気配とを重ね合わせた感覚の鋭敏さは素晴らしいと思うのですが、その点を評価するからこそ気になる点もある。あまり必要性の感じられない上五の字余りと、「深く」の掛かり方が少し曖昧なこと。もしこれが「雪来るかすとんと深く鯉の喉」であれば文句なしで採っていた句です。
 55 訪なへば灯のぽと点きて石蕗の家  ちょうど夕方、町に灯がともり始めるぐらいの時間に訪問したのでしょう。素朴な喜びが伝わってきます。中七は少し言葉が詰まっている感じがしますので、「ぽつと灯りて」などとした方が良さそうです。
 57 遠来の客いつの間に鍋奉行  ユーモラスな句ですが、「いつの間に」の読みが分かれるのが難点。(1)以前は鍋奉行をするような人ではなかったのにキャラが変わった、(2)遠くから来たかと思えばもう鍋奉行をし始めている、この(1)とも(2)とも読めてしまう。きちんと作者の意図が伝わるように、本質を掴んだ言葉でずばりと詠みたい所です。


来月の投句は、12月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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