ハルヤスミ句会 第二百七回

2018年1月

《 句会報 》

01 凍蝶や退職したる我のごと       光太郎(草)

02 冬将軍まいあさの四股欠かさずに    佳子(益)

03 トピツクは幼子パンダ小春かな     案山子

04 ティーカップ置きて小さくくさめかな  春休(一・時・愛・高・海)

05 耳鐘の止みて薄暮に橇の声       こげら

06 竃猫次の一手を思案せり        ルカ(草)

07 老後にも明日はありけり年用意     案山子(光・草・鋼)

08 餃子鍋鍋の汚れがしつこくて      順一

09 まあきれい目に実山茱萸雪兎      案山子

10 除夜の鐘三つかぞへて湯に沈む     さんきう(愛・佳・三)

11 水仙やいつの間にやら地に倒れ     順一

12 北鮮の漁民出てゆく冬の海       光太郎

13 ちと早く生まれ過ぎしよ久女の忌    愛

14 正座てふ一声響くお年玉        つよし(こ・光・高)

15 あをいろの栞を挟む夢始        佳子(ル・タ)

16 寒柝やふと江戸の夜と鬼平と      草太(案・益)

17 冬ざれや一つ文字無き電看板      こげら(さ・ル)

18 草城忌青きグラスに日の差して     ルカ(さ・草・時・高・順・海)

19 歯固や鉄(かね)の箸にて肉食らふ    時人(三)

20 初雪や飛び跳ねてゆく子犬追ふ     ひろ子(案)

21 源内のふるさと過ぐる初電車      海音

22 寄って来し鳩に交じりし冬鴉      ひろ子(高・順・佳)

23 靴あとは一尺余り寒に入る       高弘(一・佳・三・春)

24 寒晴のとみに咳込む深呼吸       一斗(光)

25 着ぶくれてお悔やみ欄を見据えたる   みなと(さ・鋼・春)

26 がりりりと電気剃刀寒四郎       高弘(こ・草・愛・海・三)

27 足袋うらの眞白もいなせ梯子乗     愛(光・さ・タ)

28 ものもらひ赤み増しをり初鏡      ぐり(時)

29 片方の手袋ばかり泣かされる      益太郎(こ・一)

30 夫婦別姓夫婦別室初メール       佳子(光・益)

31 向かうからくつさめ聞こえ行止り    タロー

32 待春や客の罵りいなしては       高弘

33 いけしゃあしゃあと寒烏風になる    みなと(ル)

34 庭先や家族総出の初雀         時人(奥)

35 人日や華氏5度を告ぐカーラジオ    こげら

36 亡き人がつぎつぎうかぶ小正月     草太

37 限界集落小道小路の御慶かな      みなと

38 手袋の左手いつも紛れがち       一斗

39 霜雫上り列車の窓へ垂れ        タロー(順)

40 人日の湯屋に桃源郷の額        ぐり(案・愛)

41 ブータンの破戒聖(ひじり)を読始    つよし

42 檻奥の獣のやうに冬籠る        一斗(案・奥)

43 独り居に年玉取立てのチャイム     さんきう(時・益・鋼)

44 女正月目は笑つてはをらざりき     春休(時)

45 暖炉の火揺れ父の声母のこゑ      さんきう(こ・ル・一・奥)

46 若菜高騰一人前を分かちあふ      つよし

47 猫カフェの猫に御慶を致しけり     海音(順)

48 年齢は百歳ですと賀状来る       ひろ子

49 初日さす机の上のプロテイン      海音(奥・タ・佳・春)

50 越冬の蛹は長い眠りかな        順一

51 窓秋忌シネマトグラフ見ておりぬ    ルカ(タ・海)

52 果てしなき落葉の愚痴を聴く大地    益太郎(こ・順)

53 防空頭巾母に二十才の冬ありき     草太(ル・鋼・春)

54 逃げるごと亭主出てゆく煤払      光太郎

55 干し物のからりと乾く餅あはひ     愛(佳・春)

56 終活と円周率と冬桜          益太郎(一・奥)

57 蓬莱や酔うて詣でるお諏訪さま     ぐり

58 冬萌やかぼそき草の影長き       タロー(案・益)

59 着物にて初みくじ引くエトランゼ    時人

60 ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図     春休(さ・愛・タ・高・海・三・鋼) 




【 こげら 選(こ) 】
○14 正座てふ一声響くお年玉  躾が行き届いている家ですね。響く声に淑気を感じます。
○26 がりりりと電気剃刀寒四郎  寒い朝、ヒゲも硬いのでしょう。上手い取り合わせと思います。「が」「か」「か」の音も面白い。
○29 片方の手袋ばかり泣かされる  セリフのような口語調でさらりと心情を詠んでいるのが上手いなあと。
○45 暖炉の火揺れ父の声母のこゑ  厳格な父の「声」、それに続く優しい母の「こゑ」が上手く描写されていると感じました。
○52 果てしなき落葉の愚痴を聴く大地  童話のような世界。面白い擬人化と思います。

【 荒岩のりひろ 選(の) 】
(今回はお休みです。)

【 荒木乃愛 選(乃) 】
(今回はお休みです。)

【 えみこ 選(え) 】
(今回はお休みです。)

【 森本光太郎 選(光) 】
○07 老後にも明日はありけり年用意
○14 正座てふ一声響くお年玉
○24 寒晴のとみに咳込む深呼吸
○27 足袋うらの眞白もいなせ梯子乗
○30 夫婦別姓夫婦別室初メール

【 さんきう 選(さ) 】
○17 冬ざれや一つ文字無き電看板  「文字無き」より「文字ひとつ欠く」などが良いかと思いました。
○18 草城忌青きグラスに日の差して  草城の世界に乗っかってるだけで終わらず、新しい世界をプラスしているのが良かった。
○25 着ぶくれてお悔やみ欄を見据えたる  「見据えたる」は何か違う気がする…。お悔やみ欄がどうだったのかを言った方がいいのかも。
○27 足袋うらの眞白もいなせ梯子乗  「梯子乗がいなせというのはありがちな形容では?」「『も』はどうなの?」と言われそうではありますが。
○60 ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図  これ、いいんですけど、造りが普通の文で俳句っぽくないのがちょと嫌。

【 ルカ 選(ル) 】
○15 あをいろの栞を挟む夢始
○17 冬ざれや一つ文字無き電看板
○33 いけしゃあしゃあと寒烏風になる
○45 暖炉の火揺れ父の声母のこゑ
○53 防空頭巾母に二十才の冬ありき

【 青野草太 選(草) 】
○01 凍蝶や退職したる我のごと
○06 竃猫次の一手を思案せり
○07 老後にも明日はありけり年用意
○18 草城忌青きグラスに日の差して
○26 がりりりと電気剃刀寒四郎
 以上です。

【 石黒案山子 選(案) 】
〇16 寒柝やふと江戸の夜と鬼平と
〇20 初雪や飛び跳ねてゆく子犬追ふ
〇40 人日の湯屋に桃源郷の額
〇42 檻奥の獣のやうに冬籠る
〇58 冬萌やかぼそき草の影長き

【 一斗 選(一) 】
○04 ティーカップ置きて小さくくさめかな  
○23 靴あとは一尺余り寒に入る       
○29 片方の手袋ばかり泣かされる      
○45 暖炉の火揺れ父の声母のこゑ      
○56 終活と円周率と冬桜 

【 中村時人 選(時) 】
○04 ティーカップ置きて小さくくさめかな
○18 草城忌青きグラスに日の差して
○28 ものもらひ赤み増しをり初鏡
○43 独り居に年玉取立のチャイム
○44 女正月目は笑つてはをらざりき
 他に気になった句は
 05 耳鐘の止みて薄暮に橇の声
 14 正座てふ一声響くお年玉
 25 着ぶくれてお悔やみ欄を見据えたる
 以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
〇34 庭先や家族総出の初雀  めでたいですね。
〇42 檻奥の獣のやうに冬籠る  まるで私のことをいわれているような気がしました。
〇45 暖炉の火揺れ父の声母のこゑ  昔を懐かしく思い出します。
〇49 初日さす机の上のプロテイン  蛋白質を摂って今年も元気に活躍しましょう。
〇56 終活と円周率と冬桜  いつまでも終活は就活でありたいですが。冬桜がいいですね。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇04 ティーカップ置きて小さくくさめかな  
〇10 除夜の鐘三つかぞへて湯に沈む     
〇26 がりりりと電気剃刀寒四郎       
〇40 人日の湯屋に桃源郷の額        
〇60 ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図

【 小林タロー 選(タ) 】
○15.あをいろの栞を挟む夢始  栞を挟んでいったん見るのをやめた初夢はどんなものだったのだろう。あをいろ、というのが青春、未熟、発展途上を感じさせる。続きを見るのは何年後だろうか。
○27.足袋うらの眞白もいなせ梯子乗  言い過ぎ感はあるが、新春のめでたさだ。
○49.初日さす机の上のプロテイン  いかにも現代の景。初日さし、として取合せとして如何?そのほうが景に広がりがでるような気もします。
○51.窓秋忌シネマトグラフ見てをりぬ  シネマトグラフとは世界最初の映写機のようなものらしい。高屋窓秋とは、ふらんす堂の「現代俳句ノート」(HPにて高柳克弘氏連載中)を読むと、「窓秋の句には実態がない」とは山本健吉の評だ。そうだ、この句は映写機とイメージだけで実体のない句との取り合わせなのだ。と、ああなのかしらこうなのかしらと遊ばせてくれるところが面白い、のであって意味を探ってみても仕方がないのだ。
○60.ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図  ラガー等のそのかちうたのみじかけれ 横山白虹 が試合終了後。この句は試合開始前。睨む、がどうか?普通に、見つめ などいいのではとも思うが、「かちうた」が「ウォークライ」の事であれば、睨む、が相當でしょう。

【 森高弘 選(高) 】
○04 ティーカップ置きて小さくくさめかな  居住まいは乱さず直前までは慎重にして。
○14 正座てふ一声響くお年玉  親の威厳と子の畏まり振りが。
○18 草城忌青きグラスに日の差して  そこから伸びる影もグラスの形を留め透き通る青。冒険的で純粋だった草城のように。
○22 寄って来し鳩に交じりし冬鴉  寂しそうに寄ってきながら実は気高く蹴散らしそうな。
○60 ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図  動きが要求させれがちな季語に静かな闘志。
 01 凍蝶や退職したる我のごと  我よりも凍蝶にスポットを当てて欲しかった。
 19 歯固や鉄(かね)の箸にて肉食らふ  箸か肉かどちらかに絞った方が。
 25 着ぶくれてお悔やみ欄を見据えたる  屋内?屋外?
 27 足袋うらの眞白もいなせ梯子乗  「も」よりもいなせさを際立たせる繋げ方がありそう。
 35 人日や華氏5度を告ぐカーラジオ  語順を入れ替えたい。
 53 防空頭巾母に二十才の冬ありき  かつては小学生が各人ひとつ持っていたものだが、今はどうなんだろう。
 56 終活と円周率と冬桜  円周率のキリのなさ。繋がりがなさそうなありそうな。
 59 着物にて初みくじ引くエトランゼ  エトランゼ(外人)の具体的描写が欲しい。

【 石川順一 選(順) 】
○18 草城忌青きグラスに日の差して  季語は「草城忌」。グラスの存在感ですね。日野草城の事も思いました。
○22 寄って来し鳩に交じりし冬鴉  季語は「冬鴉」。鳩に鴉はあまり珍しくない光景かもしれませんが結構「寄って来し」鳩に季語を引き立てるものを感じました。
○39 霜雫上り列車の窓へ垂れ  季語は「霜」。窓へ垂れた霜雫。上り列車の動き。
○47 猫カフェの猫に御慶を致しけり  季語は「御慶」。猫とはユーモラスです。猫にも御慶を。
○52 果てしなき落葉の愚痴を聴く大地  季語は「落葉」。果てしなきに愚痴の深さを思い、大地の盤石感も感じられました。

【 涼野海音 選(海) 】
○04 ティーカップ置きて小さくくさめかな  「ティーカップ置きて」という細かい描写に面白さがある。
○18 草城忌青きグラスに日の差して  「青きグラス」から、草城の初期の句を思い出す。
○26 がりりりと電気剃刀寒四郎  誇張的な擬音語がユニーク。面白い音。
○51 窓秋忌シネマトグラフ見ておりぬ  窓秋の句のモダンさと「シネマトグラフ」がうまくマッチ。
○60 ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図  いかにもラガーの情熱が伝わってくる1句。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○02 冬将軍まいあさの四股欠かさずに  冬将軍と四股の面白い取り合わせ。
○16 寒柝やふと江戸の夜と鬼平と  まさにピッタリの景。「仕事人」の方が不気味か。
○30 夫婦別姓夫婦別室初メール  別姓に感じる違和感、皮肉。
○43 独り居に年玉取立てのチャイム  独り居に来るは、年玉狙いと詐欺師くらいのもの。老人哀史。
○58 冬萌やかぼそき草の影長き  かぼそくも力強い冬芽。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
(今回は選句お休みです。)

【 水口佳子 選(佳) 】
○10 除夜の鐘三つかぞへて湯に沈む  三つかぞえたところで安堵。ああ新年が始まるなあという感慨。
○22 寄って来し鳩に混じりて冬鴉  気弱な鴉?賢い鴉?混じっていながらある程度の距離はありそう。  
○23 靴あとは一尺余り寒に入る  雪の上の靴あとかと。この書き方だと靴あとが寒い方へと向かっているようにも感じられる。 
○49 初日さす机の上のプロテイン  初日の出を拝んでプロテインを補給。ペンや本ではなく、机上にあるのがプロテインであるところが面白い。   
○55 干し物のからりと乾く餅あはひ  正月気分も抜けて日常が戻ってくる。干し物のからりと乾くことの幸福感。季語によって平凡なフレーズが生きた。

【 三泊みなと 選(三) 】
○10 除夜の鐘三つかぞへて湯に沈む 
○19 歯固や鉄(かね)の箸にて肉食らふ  
○23 靴あとは一尺余り寒に入る 
○26 がりりりと電気剃刀寒四郎  
○60 ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図   

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○07 老後にも明日はありけり年用意  意気を感じます。
○25 着ぶくれてお悔やみ欄を見据えたる  着膨れの句多々ありますが、中七 下五新鮮に見えます。
○43 独り居に年玉取立てのチャイム  下五のチャイムが良い。
○53 防空頭巾母に二十才の冬ありき  もう90を超えていらしゃると思います。いろいろなことが脳裏をめぐります。
○60 ラガーらの真つ直ぐ睨む作戦図  景色が力強くて良い。
 五句に惜しくも、よいと思う句
 28 ものもらひ赤み増しをり初鏡  初鏡の季語との取り合わせでよい句です。
    以上お願いします。

【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)

【 小川春休 選(春) 】
○23 靴あとは一尺余り寒に入る  一尺は約30.3センチメートル。かなり大きな靴跡です。靴跡からアスファルトなどではなく土が見え、実感を持って寒が伝わってくる。
○25 着ぶくれてお悔やみ欄を見据えたる  言葉には出していませんが、いろいろと思うところがあるのは伝わってくる。心の声も、着膨れの奥に隠しているのです。
○49 初日さす机の上のプロテイン  意外な組み合わせで、少しおかしい。元日も休まずトレーニングしている人のことを「おかしい」とは失礼かも知れませんが、ちょっとくすりとさせられました。
○53 防空頭巾母に二十才の冬ありき  今も大事に防空頭巾を取っておいてあるのでしょう。防空頭巾というものが、過去の記憶をありありと思い出させてくれる。
○55 干し物のからりと乾く餅あはひ  健康的な生活感の感じられる句。中七下五の「か」「ら」「乾」「あ」「は」という「あ」の響きの多さが、句の印象を明るいものにしています。
 01 凍蝶や退職したる我のごと  「ごとし」を使った比喩は、よほど意外性のあるものでないと、陳腐な句になりがちです。それに、「凍蝶」と「退職したる我」とが書かれていれば、わざわざ「我のごと」などと言わなくても、読み手の方でそのつながりを読み取ってくれます。もっと読み手を信じて書きましょう。
 02 冬将軍まいあさの四股欠かさずに  気分はとてもよく分かるのですが、「まいあさの」「欠かさずに」はともに視覚的な具体性が乏しいようにも感じます。どんな様子で四股を踏んだのか、その動きの描写の方が良い句になりそうな気もします(描写の仕方によっては「この人毎日やってるな」というニュアンスを出すことも可能なはず)。
 03 トピツクは幼子パンダ小春かな  パンダのことを「幼子」と言うかどうか(特に「子」)。ちょっとしっくり来ない表現です。
 05 耳鐘の止みて薄暮に橇の声  「耳鐘」とは耳鳴りのこと。一句の言葉がずるずると全部つながっているのが気になりますので、「耳鐘の止みて薄暮や橇の声」「耳鐘の止むや薄暮を橇の声」などと切れを入れた方が良さそうです。
 07 老後にも明日はありけり年用意  「けり」は過去のニュアンスが強いので、このままだと「明日はあった」という意味になる。「明日はあるなり」と言う方が表現としては自然だと思います。
 09 まあきれい目に実山茱萸雪兎  「まあきれい」と言ってしまわずに、どのように表現して読み手にきれいさを伝えるか、というのが俳句の表現を考える上での工夫のしどころと思います。例外として、普段「きれい」とは思われないような意外なものが「きれい」だった場合には、こういう直球表現が活きる例もありますが、雪兎の目の実ではあまり意外性はない。
 10 除夜の鐘三つかぞへて湯に沈む  感慨としては比較的よくあるものかな、と思いますが、「湯に沈む」と言う動きの描写が具体的で、共感を覚えますね。採りたかった句。
 12 北鮮の漁民出てゆく冬の海  「出てゆく」とは、漁に出るということでしょうか、それとも出て行っていなくなるということでしょうか。「出てゆく」よりもっとすっきりと意味が伝わる表現があるのではないかと思います。
 15 あをいろの栞を挟む夢始  「あをいろ」と言ったら、空か海か。どんな初夢を見たことでしょうか。印象的な句です。
 17 冬ざれや一つ文字無き電看板  ネオン管の文字看板などで、一文字点灯しなくなっているものをたまに見かけますね。どこか寒々しさを感じさせる景をしっかり描かれています。
 18 草城忌青きグラスに日の差して  日野草城という作家も、颯爽と若手作家として登場しましたが晩年はいろいろと苦労もしており、そのイメージもなかなかに複雑です。この句の印象は、颯爽と登場した若手時代の草城を思い起こさせる内容ですね。
 26 がりりりと電気剃刀寒四郎  「がりりり」とはなかなか勢いの良い音、ひさびさに剃ったのか、それとも髭の濃い人なのか。季語も男性の名前っぽいところが、いろいろと想像を誘います。個人的には、上五と下五が逆の方が面白いような気もしますが、いかがでしょうか。
 27 足袋うらの眞白もいなせ梯子乗  出初式の梯子乗りとはこういうもの、という範疇を出ていないように感じます。「いなせ」も出初式にはツキモノという感じです。もう少し違った角度からアプローチしてほしいところ。
 28 ものもらひ赤み増しをり初鏡  言わんとするところは確実に伝わるのですが、中七の「赤み増しをり」という表現が説明的で少し気にかかります。「ますます赤く」「いよいよ赤く」などと副詞を用いて表現した方が、気分が出るように思います。
 30 夫婦別姓夫婦別室初メール  情報量が多すぎてごちゃごちゃしています。上五中七はこのままでも良いので、下五はもっとぼんやりした季語の方が良いのではないかと思います。
 31 向かうからくつさめ聞こえ行止り  行き止まりなのにその先からくしゃみが聞こえたというのでしょうか。少し把握が理屈っぽいように感じます。
 32 待春や客の罵りいなしては  中七下五、勢いがあって良いと思いますが、季語があまり合っていないような気もします。内容的には近い季語でも、「春近し」であれば活気のある内容に負けないのではないかとも思います。
 33 いけしゃあしゃあと寒烏風になる  上五中七は思い切った表現でなかなか面白いのですが、下五の「風になる」という表現は、歌詞などで使い古された表現であまり面白くない。結局のところ、具体的に、よく見えるように、と心がけて書くことが、こういう表現を避ける有効な手段でもあるのだと思います。
 38 手袋の左手いつも紛れがち  手袋と言えば「片方失くす」と言うのはよくあるパターン。パターンを再生産されてもあまり面白くはない。
 39 霜雫上り列車の窓へ垂れ  列車の車体に生じていた霜が少しずつ解けて、車窓へ垂れてくる。上り列車という所から、田舎から都心へと向かう列車が想像されます。様々な要素が上手く関連付けて詠み込まれている、巧みな句です。採りたかった句。
 45 暖炉の火揺れ父の声母のこゑ  何やらこの声、実際に聞こえたのではなく、暖炉の火を契機にして、思い起こされたもののように感じますね。
 46 若菜高騰一人前を分かちあふ  発想が少々川柳的というか、理屈っぽく感じます。
 54 逃げるごと亭主出てゆく煤払  これは「煤逃」という季語を説明しただけではありませんか。
 56 終活と円周率と冬桜  「円周率」が何のことか(どうしてここで出てくるのか)よく分かりませんでした。
 58 冬萌やかぼそき草の影長き  私はよく選評で「切れを入れた方が良い」と言いますがこの句は逆で、切れを入れない方が良い。「かぼそき草」が「冬萌」に含まれるのか否か、またその位置関係等、「や」切れのせいで曖昧になっている。「冬萌にかぼそき草の影長き」とすれば、まだ丈の低い冬萌へと、一本すらりと長い草の影が落ちている様子がしっかり見えます。
 59 着物にて初みくじ引くエトランゼ  珍しい場面ではありますが、状況の説明に終始しているようにも感じます。


来月の投句は、2月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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