【 こげら 選(こ) 】
○02
雪掻いて掻いて捨雪粗大なる この冬はうちも雪掻きが大変でした。正にこんな感じです。的確な描写と思います。
○10
北開き玄界灘を確かめり 「確かめり」がいいですね。勉強になります。
○24
店長の似顔は破顔種袋 興じているのは若い店員たちでしょうか。季語から伸びゆくエネルギーみたいなものを感じました。
○34
白梅や死んで平たくなる乳房 生きる儚さを白梅が際立たせるようです。
○37
多喜二の忌こんなところに昼の月 多喜二が死の間際に見た月なのでしょうか。そう思うと凄い句と思いました。
【 荒岩のりひろ 選(の) 】
(今回はお休みです。)
【 荒木乃愛 選(乃) 】
(今回はお休みです。)
【 えみこ 選(え) 】
(今回はお休みです。)
【 森本光太郎 選(光) 】
○15 雪女初のデートと言つて消ゆ
○28
黙々と足元見つめ雪の道
○35 風船の空の色より濃かりけり
○44 日時計は影を失ひ冴返る
○52
城址の昼のベンチや猫の恋
【 さんきう 選(さ) 】
(今回はお休みです。)
【 ルカ 選(ル) 】
○27 黒鍵に躓くロンド冴返る
○34
白梅や死んで平たくなる乳房
○35 風船の空の色より濃かりけり
○51 カルナヴァル馬車馬くいと首もたげ
○60
臘梅の香りどこまで老いの恋
【 青野草太 選(草) 】
○19 硝子戸に歪む運河や冬館
○34
白梅や死んで平たくなる乳房
○37 多喜二の忌こんなところに昼の月
○43 ひょいひょいと猫追い越して風生忌
○50
血しぶきが飛ぶ春昼の予告編
以上です。
【 石黒案山子 選(案) 】
○26 水仙へ朝の光の流れそむ
○27
黒鍵に躓くロンド冴返る
○41 はないきにうぐいすもちをとぶきなこ
○54 春泥が跳ぶ黒澤映画のやうに跳ぶ
○60
臘梅の香りどこまで老いの恋
【 一斗 選(一) 】
○04 雪寄せの小山は長き影を曳き
○16
日脚伸ぶ玻璃に去年の綿ぼこり
○24 店長の似顔は破顔種袋
○32 菰巻の新しきまま春立ちぬ
○44
日時計は影を失ひ冴返る
【 中村時人 選(時) 】
○07 あかがりや母は生涯水仕事
○16
日脚伸ぶ玻璃に去年の綿ぼこり
○19 硝子戸に歪む運河や冬館
○24 店長の似顔は破顔種袋
○38
金縷梅や谷戸を超ゆればまた谷戸に
他に気になった句は
10 北開き玄界灘を確かめり
26
水仙へ朝の光の流れ込む
29 若人や疲れを知らぬ神楽舞
48 恋の猫一心不乱に水をなめ
【 土曜第九 選(第) 】
○04 雪寄せの小山は長き影を曳き
○12
砂鉄掘る一族のこと冬旱
○35 風船の空の色より濃かりけり
○38 金縷梅や谷戸を越ゆればまた谷戸に
○60
臘梅の香りどこまで老いの恋
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
(今回は選句お休みです。)
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○08 役立たぬ忖度もあり寒烏
○09
頭蓋骨ゆるみ北窓開きけり
○17 夭折の画家の生家や犬ふぐり
○26 水仙へ朝の光の流れそむ
○39
春日差缶コーヒーを熱くして
【 小林タロー 選(タ) 】
○05
足首に底冷まとひつく夜かな 「まとひつき」がぴったりです。
○09
頭蓋骨ゆるみ北窓開きけり 北窓開くや雪囲い解く、などの季語は東京にいると実感がわかないが、「頭蓋骨ゆるみ」で実感とはいかないが待ち焦がれていた気持ちはわかった。
○11
証明写真BOXの椅子冴え返る 閉鎖空間に漂う空気感と自分の気持ちが捉えられている。
○34
白梅や死んで平たくなる乳房 中七下五に共感。季語はもう少しいいものがありそう。
○38
金縷梅や谷戸を越ゆればまた谷戸に 金縷梅で谷を昇りつめた寂しい山村の景が浮かびます。
【 森高弘 選(高) 】
○11
証明写真BOXの椅子冴え返る これから提出する写真を撮るための緊張感。社会か学校かの新しい世界への不安。
○22
腹さすりながら入試のあひだ中 空腹か体調不良か。もっと集中しなければ。
○34
白梅や死んで平たくなる乳房 死に対する恐怖などない、という達観と読んだが、死んで好ましい人を詠んだと誤解される危険性もある。
○44
日時計は影を失ひ冴返る いつの間にか厚い雲に覆われた空も見える。
○56
半身を濡らす雨なり西行忌 強いのか、人を匿って自身が濡れているのか。無欲であった西行と響く。
03
冬の日を遮光カーテン閉ぢしまま 報告だけのような。
08
役立たぬ忖度もあり寒烏 まだまだ流行語といえる段階で句に乗るとは思えない。
09
頭蓋骨ゆるみ北窓開きけり 屍派のような言い回し。
17 夭折の画家の生家や犬ふぐり もっと良い季語がありそう。
21
手にズシリ芽吹き新たな広辞苑 広辞苑から芽が?
33
枕元顔覗き込む雪女 雪女郎の句は本当に難しいと思う。想像上の人物ならとことん夢想に拘らないと。
35
風船の空の色より濃かりけり 空の色は様々に変化する。
40 ヒヤシンス詩人の使命に躓きぬ その詩人の使命はどのようなもの?
43
ひょいひょいと猫追い越して風生忌 歩み越す?飛び越す?それとも猫が作者を追い越した?
45
港湾の備品倉庫も春めきし 春めいても夏めいても秋めいても。
48
恋の猫一心不乱に水をなめ 言い回しよりも舐めるしぐさにスポットを。
53
ひよこ組てふ園児の輪なり春の雪 上下逆にした方がよかった?
59
老いしとは見えぬ白蛇夕永き 老いたとは見えぬ何を発見したかが知りたかった。
【 石川順一 選(順) 】
○05
足首に底冷まとひつく夜かな 季語は「冷たし」。足首にまといつくほどの寒さ。
○16
日脚伸ぶ玻璃に去年の綿ぼこり 季語は「日脚伸ぶ」。去年の綿ぼこりに時間の隔絶を思いました。
○21
手にズシリ芽吹き新たな広辞苑 季語は「芽吹き」。広辞苑の重さをあらたに実感して居る。
○36
うちかちて凍滝の上越えて滝 季語は「凍滝」。滝の上にさらに滝が。自己克己心のたまものであると同時に滝に俳味を見ている
○43
ひょいひょいと猫追い越して風生忌 季語は「風生忌」。富安風生の忌日。俳句に飄逸味が。
【 涼野海音 選(海) 】
○10
北開き玄界灘を確かめり 「確かめり」まで言う必要があるか、季語は決まっています。(「確かむ」は下二段動詞なので、「り」は使えないという問題もまたあります)
○17
夭折の画家の生家や犬ふぐり 「夭折の画家」、色々と想像がふくらみますね。
○43
ひょいひょいと猫追い越して風生忌 「風生忌」がユーモラスに詠まれているところがよい。
○52
城址の昼のベンチや猫の恋 城址のベンチ、いかにもそんなところにあるなあと。田舎の城址でしょうか。
○19
硝子戸に歪む運河や冬館 寒々とした運河が映っているのでしょう。
【 川崎益太郎 選(益) 】
○07
あかがりや母は生涯水仕事 あかがりと水仕事は、やや付き過ぎだが、実感がある。
○24
店長の似顔は破顔種袋 破顔と種袋の意外な取り合わせが面白い。
○27
黒鍵に躓くロンド冴返る 黒鍵に躓く、が上手い。季語も効いている。
○43
ひょいひょいと猫追い越して風生忌 ひょいひょい、と風生忌との取り合わせが上手い。
○44
日時計は影を失ひ冴返る 影のない日時計は、役立たず。そこが面白い。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○03
冬の日を遮光カーテン閉ぢしまま 有難い冬の日を遮る遮光カーテンが閉ざされたままの部屋。そんな日もある。
○05
足首に底冷まとひつく夜かな 体の部分で首とつくところは大事と言われるが、足首って冷えますよね。足首からだんだんと体全体に冷えが回る寒き夜。まさに底冷え。
○11
証明写真BOXの椅子冴え返る 証明写真Boxの椅子と字数構わず丁寧にいったところがいい。あの丸いちょっと安定感のない椅子に座ったひやっとした感じがまざまざと浮かぶ。
○50
血しぶきが飛ぶ春昼の予告編 本編はほのぼのものだったのだろうか、春昼がビシッと決まっている。
○55
この星をめぐる流感 AとB この冬猛威を振るったインフルルエンザもこんな風に詠めるのですね。面白い!
他に気になった句
19
硝子戸に歪む運河や冬館
49 鉄橋を見上げてをりぬ北きつね
51 カルナヴァル馬車馬くいと首もたげ
【 水口佳子 選(佳) 】
○05 足首に底冷まとひつく夜かな
○19
ガラス戸に歪む運河や冬館
○22 腹さすりながら入試のあひだ中
○32 菰巻の新しきまま春立ちぬ
○35
風船の空の色より濃かりけり
【 三泊みなと 選(三) 】
○01 太平や爺婆だけの小正月
○07
あかがりや母は生涯水仕事
○17 夭折の画家の生家や犬ふぐり
○50 血しぶきが飛ぶ春昼の予告編
○51
カルナヴァル馬車馬くいと首もたげ
【 鋼つよし 選(鋼) 】
○21
手にズシリ芽吹き新たな広辞苑 第一感がズシリ、うまく特徴を表現している。
○33
枕元顔覗き込む雪女 八雲の怪談がよみがえる。
○37 多喜二の忌こんなところに昼の月 難しい季語に昼の月が決まっている。
○54
春泥が跳ぶ黒澤映画のやうに跳ぶ オリジナリテイでよい。
○56 半身を濡らす雨なり西行忌 気分は西行か
以上願います。
【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)
【 小川春休 選(春) 】
○09
頭蓋骨ゆるみ北窓開きけり 北窓を開いたら頭蓋骨もゆるんだ、というのなら何となくありそうな気もしますが、頭蓋骨もゆるんださあ北窓を開こう、とは凄い。自分の頭蓋骨の具合で春の訪れが分かる、ある種の生物としての進化と言って良いのではないでしょうか。
○24
店長の似顔は破顔種袋 「破顔一笑」の「破顔」ですね。この言葉をよく持ってきました。意外なところから面白みを見出だす、見事な句です。
○27
黒鍵に躓くロンド冴返る 聴衆のいるような演奏ではなく、恐らく一人でピアノを練習しているのでしょう。同じ所でしくじりながらも、何度も何度も練習してゆく。ディテールを活かした「黒鍵に躓く」という描写が良い。季語「冴返る」も実感を持って、辺りの雰囲気を伝えている。
○34
白梅や死んで平たくなる乳房 生前は豊満だった女性が遺体になると、生前の印象よりもボリュームを少なく感じる。実感として非常によく分かる句です。ただ、中七下五の言い回しがもっと文語的でかっちりしていた方が、一句の完成度は上がるのではないかと思います。
○44
日時計は影を失ひ冴返る 巧みな表現で、曇りがちな空模様まで見えて来る。この時期ならではの風の冷たさ、空気の冷たさが実感を持って感じられる。
05
足首に底冷まとひつく夜かな 「足首」というポイントに絞った所が上手い。「まとひつく」も「夜」も、描写の丁寧さを感じます。採りたかった句。
07
あかがりや母は生涯水仕事 水仕事とあかがりはツキスギですし、「母は生涯」と言われてしまうと、あまりにも時間のスパンが長すぎて、具体的な物や景が全く見えて来ない。
11
証明写真BOXの椅子冴え返る もちろん、季節的に「冴え返る」だったのでしょうが、これから履歴書を提出して就職試験でも受けるという、心理的な重さも感じさせる。これも採りたかった句です。
12
砂鉄掘る一族のこと冬旱 上五中七はとても印象的なのですが、季語が今一つしっくり来ない印象です。
14
太平燕春節の胃にすると往き 「太平燕(タイピンイェン)」は中国福建省福州市の郷土料理で、アヒルのゆで卵を入れたスープワンタンのようなものだそうです。春節らしいと言えば春節らしい料理ですが、「往き」かなぁ。「落ち」じゃないかなぁ、と個人的には思いました。
17
夭折の画家の生家や犬ふぐり 「夭折の画家」と言うよりも、具体的な名前を出した方が句としては強いのではないかと思います。
18
森に射す一すじの帯薄霞 薄い霞は、その薄さゆえに、「一すじの帯」のようなくっきりとした形を持って目に見えないのでは? 実際に目で見た景ではなく、言葉で組み立てただけの景という印象です。
21
手にズシリ芽吹き新たな広辞苑 これは本物の「芽吹き」ではなく比喩としての「芽吹き」だと思いますが、季語を比喩として用いると、あまり力を発揮してくれません。現実の具体的なものとして詠み込んでも、書き手の扱い方次第で比喩的なイメージをも喚起してくれるのが季語ではないかと考えます。
25
夜更けより降りしきる雪膝埋まる 意味はよく分かるのですが、雪がよく降ったことの説明になってしまっています。下五は全く別の方向へ目を向けるなど、一句に広がりを出してほしい。
29
若人や疲れを知らぬ神楽舞 中七下五の内容が、「若いから」という原因と結果の内容になってしまっている。因果関係を消すか隠すかして、疲れを知らぬ舞いっぷりそのものをしっかりと描写してほしい所です。
30
激辛カレーコップに雪解の水添へて 上五の字余りは許容範囲ですが、中七の字余りに必然性を感じません。「雪解の」の「の」を削れば良いことではありませんか。
32
菰巻の新しきまま春立ちぬ 出来ている句なのですが、個人的には、「春立つや菰巻新しきままに」とした方が句の鮮度・余韻が出るように思います。
35
風船の空の色より濃かりけり 色彩の鮮やかな句ではありますが、語順を少し入れ替えて、「空の色より風船の濃かりけり」とした方が、ベースとなる空の色と、その中で中心となる風船の色との対比がよりくっきりするのではないかと思います。
36
うちかちて凍滝の上越えて滝 後藤夜半の〈滝の上に水現れて落ちにけり〉を少し思い出させる句です。
37
多喜二の忌こんなところに昼の月 何となく雰囲気で読ませる句ですが、「こんなところ」がどんな所かがよく分からない点が弱く感じる。
38
金縷梅や谷戸を越ゆればまた谷戸に 金縷梅ならではの、野趣のある景ですね。
41
はないきにうぐいすもちをとぶきなこ 全部ひらがなで表記されていますが、「はないき」だけは漢字で書いた方が良いように感じました。
42
目に涙ベランダの上花粉来る 花粉が来たから涙が出る、というのは理屈に過ぎないのではないでしょうか。
45
港湾の備品倉庫も春めきし 上五中七だけで見たときに、描写としては踏み込みが浅く感じます。上五中七の内容を下五の季語でフォローできているかというと、それほどでもない。描写自体の精度を上げるか、もっと景のよく見える季語を持ってくるか。
50
血しぶきが飛ぶ春昼の予告編 非常に印象的な句ですが、「春昼」というのどかなイメージの季語と合っていないような。そのギャップを狙ったにしても、ギャップもそれほど上手く機能していないような気がします。
51
カルナヴァル馬車馬くいと首もたげ 「カルナヴァル」はキリスト教の謝肉祭のこと。独特の仮面をつけた仮装が有名ですね。馬も少々興奮気味の様子。
54
春泥が跳ぶ黒澤映画のやうに跳ぶ 俳句の持つリズムは、枷のように感じる人もいるのかも知れませんがそうではなく。活かせば句を躍動感のあるものにも、強靭なものにもしてくれるものです。この句、目の付け所は面白いのですが、リズムがもたもたしていて足を引っ張っている。削るべき所は削って五七五に収めたら良くなりそうな句。
55
この星をめぐる流感 AとB スケールが大きくて面白い。
56
半身を濡らす雨なり西行忌 西行忌は旧暦二月十六日ですから、太陽暦の三月初旬から中旬にあたります。西行を慕って旅の身の上、という所でしょうか。
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