【 こげら 選(こ) 】
○12
ステーキを貫く炎昭和の日 力強い描写(比喩?)で音まで聞こえて来そう。「昭和の日」らしい雰囲気があると思います。
○17
引越しの日取り決まりて鴨涼し 懸案解決の安堵感が「鴨涼し」によく現れていると思いました。
○33
誕生日キャベツ一玉蒸し焼きぞ これはご馳走と言えるのかなあと思いつつ。
○49
永き日のマイクのテストテストかな 何かと行事の多い春、リハーサルでしょうか。
○51
短夜や塩素のにほふ布巾干し 大変だった一日、掃除も終わりやっと夜に。明日も朝は早いのでしょうか。
その他気になったのは、
09
暮の春駅の向かうへ行つてみる
20 甲板に光るは砂よ夏立ちぬ 戦闘準備のため撒かれた砂、と読みましたがどうなのでしょうか。
29
子ら搾る牛の乳はね聖五月
【 森本光太郎 選(光) 】
○06
若さとは免罪符らし夏めく日 「若さ」を簡単に浪費します。
○13 余生とて発展途上青き踏む 前向きな姿勢が良いと思います。
○26
言ひました聞きおきました労働祭 「労働祭」の形骸化でしょうか?
○27
詩投稿しては蜥蜴と巡り合ふ 不思議な俳句だと思います。
○39 若葉して往生際の悪い奴 多くの人は往生際が悪い、と思います。
【 さんきう 選(さ) 】
(今回はお休みです。)
【 ルカ 選(ル) 】
○05 犬ほどの寿命を電気冷蔵庫
○10
水平線打ちくづすはつ夏の雨
○12 ステーキを貫く炎昭和の日
○18 喉仏定かに動く柏餅
○24
みほとけの此処は死角か蟻地獄
【 青野草太 選(草) 】
(今回はお休みです。)
【 石黒案山子 選(案) 】
(今回はお休みです。)
【 一斗 選(一) 】
○09 暮の春駅の向かうへ行つてみる
○36
ゆでたまご剥くやぺらりと夏に入る
○39 若葉して往生際の悪い奴
○40 中耳炎痛し日傘のレース透け
○50
やどかりをつついてゐたる留学生
【 中村時人 選(時) 】
○03 吾もまた更衣えして友迎え
○23
母の日や姑(はは)レシピの醤油染み
○44 御開帳人があふれる過疎の村 上五、下五の名詞が少し気になるので 過疎村や、、、
○48
頑固さも柔軟性も磯巾着 (いしぼたん)で五文字になるが
○51 短夜や塩素のにほふ布巾干し
他に気になった句は
10
水平線うちくづすはつ夏の雨 夏雨や水平線を崩したる
11 薇煮る厨に潮騒満たしつつ
15 草餅やいつも笑顔の祖母だった
【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)
【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○12
ステーキを貫く炎昭和の日 戦火の炎、原爆、火山の噴火、色々な出来事がありました。
○20
甲板に光るは砂よ夏立ちぬ さあ、これからぎんぎらの夏がやってくる。
○21
新緑やラベル剥がせぬまま終わり 古い物がこびりついたまま落とせません。
○36
ゆでたまご剥くやぺらりと夏に入る 今年は、まさしくぺらりと夏の暑さがやってきました。
○47
花虻やドローンのごときホバリング 早朝、庭にでると花虻がホバリングしていました。
栗の花が満開です。むんむんします。
皆様、体調に気を付けてお過ごしください。
【 滝ノ川愛 選(愛) 】
〇05
犬ほどの寿命を電気冷蔵庫 なる程そうですね。犬と電気冷蔵庫の寿命の離れ具合が面白いです。
〇09
暮の春駅の向かうへ行つてみる いつもはわざわざ駅の向こうに行く気がしませんが、「暮春」のなせる技ですね。
〇26
言ひました聞きおきました労働祭 ”ました””ました”の繰り返しが若き日の強い決意を感じさせます。「労働祭」とよく合ってます。
〇36
ゆでたまご剥くやぺらりと夏に入る ゆで卵の薄皮はいつでも”ぺらり”と剥がれますが、「夏に入る」に響きます。
〇50
やどかりをつついてゐたる留学生 内陸から来た留学生でしょうか、不思議な生き物に興味を惹かれたのでしょう。
【 小林タロー 選(タ) 】
〇11
薇煮る厨に潮騒満たしつつ 薇のにおいと湯気が満ちている、窓を開け放てば汐の香りと音が聞こえる。
〇18
喉仏定かに動く柏餅 柏餅と言ったところに子の成長を願う気持ちが伝わり、定かに動く喉仏にその気持ちが表れた、と読みました。
〇27
詩投稿しては蜥蜴と巡り合ふ 上六に字余りのごつっとした感じが、投稿した詩の内容も想像させる
〇34
花冷や曙光を翔るレース鳩 中七にうますぎるかんはあるが、スピード感がうまれた。
〇49
永き日のマイクのテストテストかな しょうがねえなあ〜 はやく始めろよ〜
【 森高弘 選(高) 】
〇08
後始末ばかりの一日卯月波 やり始めたらあとからあとから目につくこと。
〇18
喉仏定かに動く柏餅 固めの柏餅。お茶をちゃんと飲もう。
〇27
詩投稿しては蜥蜴と巡り合ふ 投稿されたら尻尾を切るような虚しさが。
〇44
御開帳人があふれる過疎の村 その人々はきっとよそ者ばかり。
〇49
永き日のマイクのテストテストかな 本番までなかなかたどり着けず。
01
分別の袋の数や祭り後 ごみはごみと言っておかないと。
12
ステーキを貫く炎昭和の日 網焼きかフランベかわからないが、ステーキって昭和の方が食われていただろうか。
【 石川順一 選(順) 】
〇08
後始末ばかりの一日卯月波 季語は「卯月波」。「ばかり」に悲哀が籠って居ると思いました。
〇20
甲板に光るは砂よ夏立ちぬ 季語は「夏立つ」。砂の存在感。
〇34
花冷や曙光を翔るレース鳩 季語は「花冷」。嘗ては伝書鳩もありました、伝書鳩を想起させられます。
〇43
かがやきの蛾の死よ水に浮きながら 季語は「蛾」。水に浮く蛾。死んで居る。輝きの蛾、美しい。
〇49
永き日のマイクのテストテストかな 季語は「永き日」。「テストテスト」。厳粛な事前準備。
【 涼野海音 選(海) 】
〇05
犬ほどの寿命を電気冷蔵庫 電気冷蔵庫を犬ほどの寿命といったところ、グッド!
〇17
引越しの日取り決まりて鴨涼し 人間は引っ越すが、鴨はまだこの池にとどまるのかな。
〇28
雨止まずジャズ鳴り止まず修司の忌 やまない雨もジャズも修司の生き様にふさわしい。
〇30
麦秋の風にかすかな火の匂ひ 不思議な雰囲気の麦秋の句。
〇47
花虻やドローンのごときホバリング ドローンを比喩に用いたところが巧み。
【 川崎益太郎 選(益) 】
○17
引越しの日取り決まりて鴨涼し 残っている鴨が、引越しをするのが、面白い。
○26
言ひました聞きおきました労働祭 様変わりしたメーデーに対する皮肉。
○46
少女らの襞新緑へ消えゆけり これから少女らに起ることは何? 襞が意味深。
○48
頑固さも柔軟性も磯巾着 磯巾着を上手く捉えた。
○50 やどかりをつついてゐたる留学生 留学生の自虐的行為。
【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○25
空仰ぐ金眼喉笛青蛙 金の眼で喉笛を膨らませている青蛙、雨を待っているのか
○35
草笛や言霊はるかよりきたる 言霊もはるかも掴みきれない言葉だが草笛に合っている
○36
ゆでたまご剥くやぺらりと夏に入る ペラリのオノマトペ が脱力するようでこれから来る長い夏への心構えゼロみたいな感じがいい
○49
永き日のマイクのテストテストかな 学校の放課後の放送とか、運動会の練習、どこかのんびりした懐かしさを感じた
○51
短夜や塩素のにほふ布巾干し 使った布巾を漂白して干して一日が終了、塩素に惹かれた。
【 水口佳子 選(佳) 】
○09
暮の春駅の向かうへ行つてみる 何でもないことをさらりと言ってのけただけの句のように見えるが、「駅の向かう」とは?分かるようでわからない。陽炎の中へ消えていく感じ。
○18
喉仏定かに動く柏餅 それまであまり意識しなかった喉仏だったが「定かに動く」ことを確認。大人へと成長したことを実感した瞬間だったのだろう。
○34
花冷や曙光を翔るレース鳩 朝桜の咲き満ちている中を飛び立つ鳩は想像しただけで美しいが、花冷えの中の過酷なレースであることには間違いない。
○38
鯉幟うろこ一枚風になり 鯉幟のうろこがはずれる訳もなく、風になるはずもない。風に翻る鯉幟のうろこが一瞬風に舞ったように作者には思えたのかもしれない。言い切ったところが良かった。
○51
短夜や塩素のにほふ布巾干し 「塩素のにほふ」が嗅覚を刺激する。実感のある句。
【 三泊みなと 選(三) 】
○08 後始末ばかりの一日卯月波
○13
余生とて発展途上青き踏む
○21 新緑やラベル剥がせぬまま終はり
○35 草笛や言霊はるかよりきたる
○40
中耳炎痛し日傘のレース透け
【 鋼つよし 選(鋼) 】
○26
言ひました聞きおきました労働祭 社会の変化、働く人の意識変化如実。
○32 孑孑の立ち泳ぎして水溜 新発見に驚き
○49
永き日のマイクのテストテストかな ますます日永を思わす。
○50
やどかりをつついてゐたる留学生 われも同じくやどかりと読んだ。
○51
短夜や塩素のにほふ布巾干し あたりに一晩匂いが漂っているイメージ。
【 中村阿昼 選(阿) 】
(今回はお休みです。)
【 小川春休 選(春) 】
○12
ステーキを貫く炎昭和の日 平成の世も終わろうとしている昨今ですが、昭和とは熱気に満ちた時代だったな、と思い返します。今では美味しい物の種類も増えましたが、ごちそうといえばステーキ!というのがいかにも昭和を思わせる。
○17
引越しの日取り決まりて鴨涼し 運送業界などの人手不足で、なかなか希望した日に引越しができない状態が続いているそうです(特に三月・四月)。日取りが決まった安堵感も出ているし、何より湿っぽくならず、からりと健康的なところが良い。
○26
言ひました聞きおきました労働祭 今のメーデーはほとんど形骸化してしまって、メーデーで何かを言ったから世の中が変わる、といったものではなくなっている。そういったメーデーの在り様に対する諷刺の目も感じる句。
○36
ゆでたまご剥くやぺらりと夏に入る 私だけでしょうか、ゆでたまごの殻を剥くときに大きなかけらがきれいに剥けると気持ち良いのは。この句の「ぺらりと」もかけらが大きそうで気持ち良い。そこに季節の移り変わりを重ね合わせる感覚も面白いです。
○40
中耳炎痛し日傘のレース透け 何やら、日傘越しに日が当たるのさえ、痛みを感じさせるような、とても繊細かつ実感のある句になっていると思います。
02
自転車を将棋倒しや夏嵐 強い風が吹いて自転車が倒されているという句はよく目にします。よくある発想という点もマイナスなのですが、そもそも発想自体が理屈っぽいように感じます。
04
年下の年下諭し蘆あをし ちょっと微笑ましい、人間関係の機微を感じさせる内容で、季語も良いと思います。個人的には、上五の「の」は「は」か「が」にしたい所です。
07
登り来て清水味わふ新茶かな 「味わふ」は旧かなでは「味はふ」ですが、新茶に対してわざわざ「味はふ」と言う必要があるかどうか。例えば「登り来て新茶に清水沸かしをり」と飲む前の場面を描写したとしても、読者はその味を充分想像できるでしょう。全部言ってしまうのではなく、「ここまで言えば読者は作者の意を汲み取ってくれるだろう」と読者を信用することも必要だと思います。
09
暮の春駅の向かうへ行つてみる 雰囲気はあるが具体性に乏しい。「駅」というものは、都会にもあるし、山間部にもあるし、イメージにかなりブレがある。そのイメージをどうやって補強するかといえば、上五の季語で周囲の自然を見せたり、「駅の向かう」にあった景を描くとか、様々な方法がある訳です。
11
薇煮る厨に潮騒満たしつつ 描かれている内容自体は悪くないのですが、上五中七ともに字余りでかなりもたついた感じ。「つつ」もわざわざ言うほどの内容ではないので、「つつ」を省くことで少しは字余りを解消できそうな気もします。
13
余生とて発展途上青き踏む 気分は分かりますが、具体的に見える物が乏しい。
15
草餅やいつも笑顔の祖母だつた こういう句を見ると私も「いつも」言っているような気がするのですが、「いつも」などという長い期間を指す言葉を使うと、印象がぼんやりしてしまいます。「いつも」で成功している句がない訳ではありませんが、印象的な「瞬間」の景として描き、そこから読者に想像を広げてもらう方が、句に広がりが出るように思います。
21
新緑やラベル剥がせぬまま終はり 何のラベルかが分からないと、「終はり」とは何なのかがよく分からない。
22
片方の白き靴下たかしの忌 靴下や手袋と言えば「片方失くす」のがツキモノですね。たかしの忌であれば、靴下よりも白足袋の方が合うような気もします。
23
母の日や姑(はは)のレシピの醤油染み 「母の日」で「レシピ」はややツキスギ。そこに「姑(はは)」まで出てくると完全にツキスギです。
27
詩投稿しては蜥蜴と巡り合ふ 様々な想いの込められた詩歌を投稿した後の、ぽっかり心に隙間ができたような、エアポケットのような一瞬。蜥蜴と目が合ったのは、そんな一瞬だったと。臨場感のある句です。
29
子ら搾る牛の乳はね聖五月 良い所に着目しているとは思うのですが、一句に要素を盛り込み過ぎという印象も受けました。
31
笠智衆ひとえの袖の軽きこと 雰囲気は良いのですが、気になる点が二つ。「ひとえ」は旧かなでは「ひとへ」ですが、ここは漢字で「単衣」と書いた方が良いのではないですか(個人的には、ひらがなにするなら「軽き」の方)。あと、「ひとえの袖」が「軽」いのは当たり前のような気がします。
33
誕生日キャベツ一玉蒸し焼きぞ 「キャベツ一玉蒸し焼き」というのも、馬鹿馬鹿しいほどの率直な描写のようでいて、一人暮らしではまずやらないことなので、健康的な家族の姿というのが見えてくる表現です。採りたかった句。
35
草笛や言霊はるかよりきたる 中七下五は、俗に「言葉がおりてくる」などという、あの感じでしょうか。
38
鯉幟うろこ一枚風になり 鯉幟のうろこが風になる、というのは、言葉遊びとしては面白いですが、具体的な映像としてはどういうことかあまり見えてきません。
42
万緑の鳥飛び立ちて静寂なる 鳥が飛び立つと静寂が訪れた、というのは、少し「あれがこうして、こうなった」的な印象を受けます。「万緑の」と「の」でつなげている所も少し理屈っぽく感じる。切れを入れたり、語順を工夫したり、色々と改善の余地がありそうな句です。
44
御開帳人があふれる過疎の村 「過疎」という言葉も、新聞などではよく目にする言葉ですが、これを詠み込んだ良い句というのをまず見たことがありません。
45
朝虹や酔ひ潰れたる背白く 「背白く」とは、裸の背中でしょうか、それとも服でしょうか。
46
少女らの襞新緑へ消えゆけり 「少女らの襞」とはスカートのことかな、とは思いますが、ちょっと思わせぶりな表現がひっかかる句です。
47
花虻やドローンのごときホバリング 飛ぶ生き物(主に虫)をドローンに喩える句はよく目にするので、やや食傷気味です。
49
永き日のマイクのテストテストかな 「テストテスト」とマイクのチェックをする、よく目にする場面ですね。「永き日の」とすることで、遠い昔から目にしてきた景までも思い出させるような。採りたかった句です。
50
やどかりをつついてゐたる留学生 地元の国では、やどかりをあまり目にしなかったのか。この留学生の来し方など、想像を誘う句です。
51
短夜や塩素のにほふ布巾干し 「短夜」という季語の持つ情趣を、生活感のある中七下五で裏切っている。
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