ハルヤスミ句会 第二百十八回

2019年3月

《 句会報 》

01 古仙住む霞組まざる飛花落花     誠章

02 眼鏡して花粉マスクの客来る     時人(鋼)

03 山頂に届くよ春の潮騒が       春休(こ・奥)

04 履歴書に資格いろいろ獺祭      愛(こ・奥)

05 リラ咲くや黒澤映画二本立て     明治(マ・一・時・愛・順)

06 新草は薄緑色春は来ぬ        ひろ子

07 夕暮れは本降りとなり春椎茸(はるご)焼く ぐり(明・時・タ・佳・三・春)

08 風除けにすつと傾げし春日傘     タロー(明・案)

09 梅林の雀はケキョと鳴きにけり    益太郎

10 霾ぐもり頭(づ)が石臼になる途中   佳子(益)

11 蕗味噌や水増し予測覚えあり     つよし(益)

12 おぼろ夜のかるくおほきな贈りもの  春休(こ・光・一・ぐ・佳)

13 覚悟して春泥の道歩きけり      時人(案)

14 マネキンの白きスカート春ショール  木人

15 エリートも先ずは雑用新社員     光太郎

16 アパートを漏るるコーラン鳥雲に   佳子(こ・時・奥・愛・順・ぐ・春)

17 鉤型の尻尾ふるはせ猫の夫      マンネ(木・佳)

18 浮いてきた金魚めだかや水温む    案山子

19 春泥や肉球なめる青き猫       時人

20 吉野山千年かすむ飛花落花      誠章(鋼)

21 百千の春灯豪華客船に        春休

22 多喜二忌やバケツの蟹の離れざる   こげら(愛)

23 癌の芽は乙女にもかや蕗の薹     益太郎

24 菫咲き三角花壇の土乾く       順一(タ)

25 パスワード忘れ野遊にも行けず    佳子(明・光・一・愛・タ・高)

26 バス継ひで友持ちくるる釘煮かな   タロー(明・ぐ)

27 すれ違ふ女装の彼氏修司の忌     明治(高・順・益・三・鋼)

28 一湾に颯々と風鳥帰る        みなと(タ)

29 啓蟄や携帯用の修了書        ひろ子

30 魚島や花よめのりし舟ならむ     明治(光・案・益)

31 石鹸玉川向かひより飛び来たり    高弘(三)

32 ひなあられ成分表示読みなされ    こげら(鋼)

33 薔薇の芽や人工芝は替えられて    順一

34 じんわりと春の灸効く向う脛     愛(案)

35 ワイパーのゴムに張りつく黄砂かな  木人(マ・光・益・鋼・春)

36 ふつくらと粒も選られて蜆汁     案山子(木・高・順)

37 犬ふぐり夜はみ空の星になる     愛

38 春の服肥えて見ゆるか風纏ひ     高弘

39 狡休み何もせぬ日のクロッカス    みなと(木)

40 真夜中のラジオがうなる目借時    誠章(木)

41 春三日月下弦にぶら下がりたき夜   マンネ(明・奥・三)

42 傘させば風柔らかき雨水かな     光太郎

43 囀や始発列車をまちあぐむ      マンネ

44 蛇穴を出て壇上のクラリネット    こげら(案・ぐ)

45 花冷や少し無口に子を抱く      みなと(こ・一・奥)

46 野遊びの蓋固くしめ魔法瓶      ぐり(マ)

47 独り身の火は賑やかに目刺し焼く   案山子(一・時・高・ぐ・佳)

48 芝墓地に焦げ跡顕わ春彼岸      ひろ子(木・タ)

49 三椏の咲いてもつれるあの話     益太郎(高・三)

50 庭石に置物のごと牛蛙        光太郎(マ)

51 もてなしは二日がかりの桜餅     つよし(マ・光・順・佳・春)

52 地虫出づ誌代切れなるご案内     つよし

53 水路よりぽろりと圧され初蛙     高弘(時)

54 料峭の磴や園児の声大き       木人

55 鳩の巣や黄色のインクすぐに切れ   ぐり

56 面接の廊下丸椅子柳の芽       タロー(愛・春)

57 木村屋のあんぱん思ふ風光る     順一




【 浅井誠章 選(誠) 】
(今回は選句お休みです。)

【 大越マンネ 選(マ) 】
○05 リラ咲くや黒澤映画二本立て
○35 ワイパーのゴムに張りつく黄砂かな
○46 野遊びの蓋固くしめ魔法瓶
○50 庭石に置物のごと牛蛙
○51 もてなしは二日がかりの桜餅

【 木下木人 選(木) 】
○17 鉤型の尻尾ふるはせ猫の夫
○36 ふっくらと粒も選られて蜆汁
○39 狡休み何もせぬ日のクロッカス
○40 真夜中のラジオがうなる目借時
○47 独り身の火は賑やかに目刺し焼く

【 槇 明治 選(明) 】
○07 夕暮れは本降りとなり春椎茸(はるご) 焼く  採り立ての春子を焼きながら一献ですか。
○08 風除けにすつと傾げし春日傘  着物に日傘かな、髪の乱れを嫌って傾けたか。
○25 パスワード忘れ野遊にも行けず  焦りますね!落ち着こう。
○26 バス継ひで友持ちくるる釘煮かな  仕事で訪れた神戸の舞子で食べたくぎ煮と蛸は絶品でした。
○41 春三日月下弦にぶら下がりたき夜  腕を伸ばせな届くような!そんなことはないか。

【 こげら 選(こ) 】
○03 山頂に届くよ春の潮騒が  さほど高くない山でしょうね。山頂で耳を澄ませば微かに潮騒が聞こえてくる。やさしい呼びかけの口調が穏やかな春の日を想わせます。
○04 履歴書に資格いろいろ獺祭  採用担当者でしょうか、応募者の履歴書を並べて品定めをしている様子は、獺が魚を並べている様を彷彿とさせます。
○12 おぼろ夜のかるくおほきな贈りもの  一体中身は何だろう?おぼろ夜がミステリアスな雰囲気を醸し出している。「お」の韻もよいと思う。
○16 アパートを漏るるコーラン鳥雲に  住人にイスラム教徒がいるのでしょう。コーランを唱える時、心は遠い故郷にあるのかも知れない。「鳥雲に」が良い。
○45 花冷や少し無口に子を抱く  綺麗なお母さんを想像しました。手馴れた仕草で子供を抱き上げるが、表情はやや硬く必要な事以外は喋らず唇をきっと結んでいる。「花冷」がよく効いている。
 その他気になった句、
 10 霾ぐもり頭(づ)が石臼になる途中  ひどい頭痛の比喩でしょうか。不透明感のある「霾ぐもり」が合っている気も。
 23 癌の芽は乙女にもかや蕗の薹  「蕗の薹」の春の明るいイメージと対照的な上五中七がどうか。
 27 すれ違ふ女装の彼氏修司の忌  すれ違った人が女装した自分の彼氏だと気づいた、ということ?しかも彼は知らんぷり?衝撃的な内容ですね。
 30 魚島や花よめのりし舟ならむ  瀬戸の花嫁ですね。この季語は子孫繁栄も連想させて面白い。ただ「のりし」と過去形なのが気になりました。
 37 犬ふぐり夜はみ空の星になる  童話のようなやさしい味わい。
 42 傘させば風柔らかき雨水かな  繊細な感覚と思います。

【 森本光太郎 選(光) 】
○12 おぼろ夜のかるくおほきな贈りもの  何でしょうか?何だかホノボノとします。
○25 パスワード忘れ野遊にも行けず  便利さと不便さは、表裏一体ですね。
○30 魚島や花よめのりし舟ならむ  まるで一幅の絵を見ている様です。
○35 ワイパーのゴムに張りつく黄砂かな  細かい所まで、よく観察しています。
○51 もてなしは二日がかりの桜餅  手間暇かけた最高の御もてなしですね。

【 ルカ 選(ル) 】
(今回はお休みです。)

【 石黒案山子 選(案) 】
○08 風除けにすつと傾げし春日傘  中七に春らしい馴れた軽やかさに感動。
○13 覚悟して春泥の道歩きけり  覚悟して が素晴らしい。
○30 魚島や花よめのりし舟ならむ  季語がよく効いているし 取り合わせが素晴らしい。
○34 じんわりと春の灸効く向う脛  春の灸は大変良いと。
○44 蛇穴を出て壇上のクラリネツト  蛇使いなどいろいろ考えましたが 魅力のある 説得力も。面白いお句。

【 一斗 選(一) 】
○05 リラ咲くや黒澤映画二本立て
○12 おぼろ夜のかるくおほきな贈りもの 
○25 パスワード忘れ野遊にも行けず 
○45 花冷や少し無口に子を抱く
○47 独り身の火は賑やかに目刺し焼く 

【 中村時人 選(時) 】
○05 リラ咲くや黒沢映画二本立て
○07 夕暮れは本降りとなり春椎茸焼く
○16 アパートを漏るるコーラン鳥雲に
○47 独り身の火は賑やかに目刺焼く
○53 水路よりぽろりと圧され初蛙
 他に気になった句は
 03 山頂に届くよ春の潮騒が
 17 鉤型の尻尾ふるはせ猫の夫
 22 多喜二忌やバケツの蟹の離れざれ
 36 ふつくらと粒も選られて蜆汁
 46 野遊びの蓋固くしめ魔法瓶

【 土曜第九 選(第) 】
(今回はお休みです。)

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○03 山頂に届くよ春の潮騒が  山にも海にも春の訪れが。
○04 履歴書に資格いろいろ獺祭  いろいろな資格が役だつ時が。
○16 アパートに漏るるコーラン鳥雲に  異国での生活はどうだったのでしょうか?
○41 春三日月下弦にぶら下がりたき夜  月の舟に乗って見たい夜。
○45 花冷えや少し無口に子を抱く  いとしい子の温もりだけが伝わってきます。

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○05 リラ咲くや黒澤映画二本立て  
○16 アパートを漏るるコーラン鳥雲に
○22 多喜二忌やバケツの蟹の離れざる
○25 パスワード忘れ野遊にも行けず 
○56 面接の廊下丸椅子柳の芽 

【 小林タロー 選(タ) 】
○07 夕暮れは本降りとなり春椎茸(はるご)焼く  椎茸農家が榾木から直接取ってきた椎茸を雨を避けながら七輪と焼き網で焼いている、景ととった。当然、熱燗の用意もある。
○24 菫咲き三角花壇の土乾く  中八が気になるが三角花壇では破調も楽しい。上下入れ替えればうまく納まるとおもうが如何?
○25 パスワード忘れ野遊にも行けず  実景か世評(見立て)か迷ったが実景とした。
○28 一湾に颯々と風鳥帰る  颯々が効いていて、清々しい景となっている
○48 芝墓地に焦げ跡顕わ春彼岸  墓地の芝焼の跡ととり、景として面白くいただきました。ただ焦げ跡というと線香の火でも燃え移ったようなので工夫がほしいと思いました。

【 森 高弘 選(高) 】
○25 パスワード忘れ野遊にも行けず  自然に触れたくとも文明を何とかしなければならない矛盾。
○27 すれ違ふ女装の彼氏修司の忌  テーマに季語は合っているのだが、女装する彼氏なのか女装家の彼氏さんなのかがピンと来ない。
○36 ふつくらと粒も選られて蜆汁  あの蜆汁が粒に着目されるほど大きなものを選られているとは大したものだ。
○47 独り身の火は賑やかに目刺し焼く  大袈裟だけど寂しいのが好き。
○49 三椏の咲いてもつれるあの話  三椏が各方向性に分かれるという意味合いで詠まれた句はあった気がするが、まとまっていてそう思わせるところもあったのかも知れない。
 02 眼鏡して花粉マスクの客来る  今どきの句になるだろうが、マスクが春にも読めるようになるにはまだ年月が必要か。
 04 履歴書に資格いろいろ獺祭  季語は最初に持って行った方がオチにならずに済むか。
 05 リラ咲くや黒澤映画二本立て  北海道と黒澤監督と何か関係があっただろうか。
 23 癌の芽は乙女にもかや蕗の薹  池江選手のことだろうか。

【 石川順一 選(順) 】
○05 リラ咲くや黒澤映画二本立て  季語は「リラ咲く」。どんな二本立てだったか想像力を掻き立てられます。
○16 アパートを漏るるコーラン鳥雲に  季語は「鳥雲に」。異国情緒と、もしかしたら、アラビア語を学んで居たのかも知れません。
○27 すれ違ふ女装の彼氏修司の忌  季語は「修司の忌」。気付いた所が手柄かと。5月4日ですね、修司忌。
○36 ふつくらと粒も選られて蜆汁  季語は「蜆汁」。ちょっと高価だったのかもしれませんが満足度も高そうで。
○51 もてなしは二日がかりの桜餅  季語は「桜餅」。一日終えてもまだ終わらぬ接待。季語の桜餅がくきやかに。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○10 霾ぐもり頭(づ)が石臼になる途中  頭が石臼に、が面白い。
○11 蕗味噌や水増し予測覚えあり  「水増し」をした記憶は、誰にでもある心の棘。今は永田町ではびこっている。
○27 すれ違ふ女装の彼氏修司の忌  女装と修司の忌の微妙な取り合わせが上手い。
○30 魚島や花よめのりし舟ならむ  「魚島」という季語と「花よめ」の取り合わせが絶妙。
○35 ワイパーのゴムに張りつく黄砂かな  よく見る景だが、「ゴムに張りつく」が、中国に対する批判も読めて共感。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○12 おぼろ夜のかるくおほきな贈りもの  季語がつきすぎかと思ったが、ひらがなでのおぼろ、かるくおほきながいかにも春のぼんやりした夜にあっている。果たしてこの贈り物は何だ? 
○16 アパートを漏るるコーラン鳥雲に  こういった情景はこれからは増えていくのだろう。鳥雲にが、異国(遠方)に思いを馳せる気持ちと重なりすぎかもしれないが この句は説得力があると思う。 
○26 バス継ひで友持ちくるる釘煮かな  継いでというからには何本か乗り継いで来てくれたのだろう。この釘煮、美味しそう。
○44 蛇穴を出て壇上のクラリネット  よく状況が読めなかったが惹かれた。うっかり壇上に蛇が出てしまったのか、ポツリと置かれているクラリネットも謎だが。
○47 独り身の火は賑やかに目刺し焼く  グリルではなくちょっと凝って七輪で焼いているのか。独り身の気楽であっけらかんとした明るさがいい。

【 水口佳子 選(佳) 】
○07 夕暮れは本降りとなり春椎茸焼く 
○12 おぼろ夜のかるくおおほきな贈り物 
○17 鉤型の尻尾ふるはせ猫の夫 
○47 独り身の火は賑やかに目刺焼く
○51 もてなしは二日がかりの桜餅

【 三泊みなと 選(三) 】
○07 夕暮れは本降りとなり春椎茸(はるご)焼く 
○27 すれ違ふ女装の彼氏修司の忌 
○31 石鹸玉川向かひより飛び来たり 
○41 春三日月下弦にぶら下がりたき夜 
○49 三椏の咲いてもつれるあの話

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○02 眼鏡して花粉マスクの客来  景色が目に浮かぶ
○20 吉野山千年かすむ飛花落花  訪れたことありませんが想像できます。
○27 すれ違ふ女装の彼氏修司の忌  装いの色まで浮かびます。
○32 ひなあられ成分表示読みなされ  成分表示に着眼したところ新鮮。
○35 ワイパーのゴムに張りつく黄砂かな  同情します。

【 小川春休 選(春) 】
○07 夕暮れは本降りとなり春椎茸(はるご)焼く  降り続く雨が、暮れてきて本降りに。湿度と、焼けてきた椎茸の匂いまでも漂ってくるような、実感のある句。上五中七の表現がやや硬いように感じて、「焼けてきし春椎茸(はるご)や暮れて本降りに」などと別案も考えてみましたが、冷静に比べてみると原句の方が素直で良い句と感じる。
○16 アパートを漏るるコーラン鳥雲に  「アパートを漏るる」という表現に臨場感があり、ムード過多になりがちな「鳥雲に」という季語を上手く転じている。日本に生まれて日本に暮らす人もいれば、遠い国に生まれて日本に暮らし、故郷を懐かしんでいる人もいる。なかなか深みのある句。
○35 ワイパーのゴムに張りつく黄砂かな  車体やフロントグラスの黄砂は洗車で簡単に落とせても、ワイパーのゴムは事情が違う。「張りつく」という表現に力がある。
○51 もてなしは二日がかりの桜餅  純粋に美味しそう、食べたいと思わされる。無駄な言葉のない実直な句で、即興性が感じられるのが良い。
○56 面接の廊下丸椅子柳の芽  上五の「の」以外は、全て名詞を並べて構成された句。硬質な響きで、かちっ、かちっと景が構成されている。季語が明るく希望を感じさせるのも良い。
 04 履歴書に資格いろいろ獺祭  さてさて、数だけはたくさん並んでいますが、どの程度役に立つ資格なのか…などと想像させられるのは、「獺祭」という季語の働きでしょうか。
 05 リラ咲くや黒澤映画二本立て  どこかの名画座のような映画館か、それとも回想の中の情景か。余計なことを語ってない所が良い。採りたかった句。
 06 新草は薄緑色春は来ぬ  「新草」が「薄緑色」なのは特に珍しくなく、当然と感じます。「新草」自体が春の季語なので、下五は完全なる季重ね。季重ねの句が全て駄目という訳ではありませんが、一つ一つの季語をしっかりと活かすことをまず考えたい。
 09 梅林の雀はケキョと鳴きにけり  寡聞にしてこの句のような雀の鳴き声を聞いた事がないのですが、そういうこともあるものなんですかね〜。
 10 霾ぐもり頭(づ)が石臼になる途中  本当に石臼になってしまう訳ではなく、比喩としての表現だと思いますが、だとすると「途中」が中途半端に感じる。例えば「石臼となりにけり」と断言した方がイメージが鮮明になるのだが、作者の意図はイメージを不鮮明にすることにあるのかも知れない。
 13 覚悟して春泥の道歩きけり  靴などが汚れることを覚悟した、ということでしょうか。ちょっと面白さが見え過ぎる嫌いがあるように感じる。
 19 春泥や肉球なめる青き猫  「青き猫」とは…。ドラえもんを想像してしまったのですが、作者はそういう意図で作った句なのかどうか…。不思議な句。
 20 吉野山千年かすむ飛花落花  初心者向けの俳句の心得に、上下名詞の形は避けるべし、というのがあるが、この句も出来れば上下名詞の形は避けたい。ついでに言えば、上五と下五を入れ替えた方が景の見え方が自然なのではないかとも思う。
 23 癌の芽は乙女にもかや蕗の薹  上五中七の感慨は、水泳の池江選手についてのものだろう。こういう感慨に対して、季語がどのように働いているか。「蕗の薹」は、長い冬の寒さに耐えた後の、春の訪れを感じさせる。池江選手の闘病生活にも、明るい春の訪れを祈って、下五に「蕗の薹」を据えたのであろうか。
 25 パスワード忘れ野遊にも行けず  一体何のパスワードだったのか。パスワードを忘れて仕事が終わらなかったのか、お金が下ろせなかったのか。少しユーモラスだが本人にとっては切実な問題なのでしょう。
 26 バス継ひで友持ちくるる釘煮かな  上五は「バスを乗り継いで」という意味だと思いますが、少々無理のある表現と感じます(それと、正しい旧かな表記では「継いで」です)。例えば、「持ちくるる釘煮やバスを乗り継いで」などとした方が、句にメリハリが出ると思いますが、いかがでしょうか。
 30 魚島や花よめのりし舟ならむ  「魚島」という漁場と、嫁入りの交通船の航路とは重ならないような気もするが、たまたまそういう場所があったのだろうか。それとも「や」の切れで、がらっと景が展開しているということか。
 31 石鹸玉川向かひより飛び来たり  「石鹸玉」の句で、「飛び来たり」という表現は当たり前すぎてほとんど効果が無く、文字数の無駄遣いと感じる。例えば「○○○○○川向かひより石鹸玉」とすれば、上五で別のことも言える。
 32 ひなあられ成分表示読みなされ  「読みなされ」とは、誰が誰にそのように言っているのだろう。ここが少し分かりにくい。よく物語で老婆などが「○○しなされ」と言っていますが、この「読みなされ」もそういうニュアンスなのでしょうか。
 39 狡休み何もせぬ日のクロッカス  気分は分かるような気もするのですが、句がぶつぶつ切れているような感じがします。「クロッカス狡休みして何もせず」などとした方がまだすんなり読めるような。
 40 真夜中のラジオがうなる目借時  ラジオを自分が聴いていたのではなく、誰か別の人が大ボリュームでラジオを聴いていたせいで熟睡できなかったのか。状況がちょっとよく分からない。
 42 傘させば風柔らかき雨水かな  傘を差さなければ、気付かないほどの弱い風。その柔らかさを感じ取る心の繊細さがよく出ている。
 43 囀や始発列車をまちあぐむ  始発列車よりもさらに早い時刻、静けさの中に響く囀りが想像されます。
 44 蛇穴を出て壇上のクラリネット  夜、口笛を吹くと蛇が来る、などと言われますが、この蛇はクラリネットを目掛けて進んでゆく。この後、クラリネットの演奏者と蛇はどうなってしまうのか、少し気になります。
 45 花冷や少し無口に子を抱く  全然発言しないのが「無口」なら、どのぐらい発言すれば「少し無口」になるのか。「無口に子を抱く」だけなら分かりますが、「少し」のせいで少々曖昧になっている。
 46 野遊びの蓋固くしめ魔法瓶  これは上五を「や」で切りたい。これから野遊びへ行くのだ!という気持ちの高揚が、「の」か「や」かで大きく違ってくる。
 49 三椏の咲いてもつれるあの話  「三椏」と音の通じる「みつまた」が直ぐに連想されるので、惚れた腫れたの話だろうか、と想像される。個人的には下五、「あの話」よりも「話かな」としたい所。
 52 地虫出づ誌代切れなるご案内  俳句誌を購読していると、毎年同じ時期に「誌代切れ」となる。この人の場合は、毎年「地虫」の出る時期だったという訳。とぼけた味わいで、採りたかった句です。
 55 鳩の巣や黄色のインクすぐに切れ  プリンターの多色インクでしょうか。なかなか面白い所に目を付けたと思いますが、季語があまり合っていないような…。
 57 木村屋のあんぱん思ふ風光る  雰囲気は分かりますが、「思ふ」では少し淡いように感じる。「あんぱん欲しや」などとより直截に表現した方が句の表情がくっきりしてくるように思う。

 


次回の投句は、4月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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