ハルヤスミ句会 第二百十九回

2019年4月

《 句会報 》

01 我が妻の裏切り知らぬたんぽぽ路   誠章

02 売れ残る屑の浅蜊がおしゃべりで   みなと(光・益)

03 春の雪吾より若き父の写真      ルカ

04 堅香子やささめく風に耳傾げ     ひろ子(案・第)

05 春宵のゾンビ活躍するドラマ     ぐり(順)

06 串焼のどれがどれやら花の雨     こげら(奥)

07 プリクラの長き横顔落第生      みなと(明)

08 若者は島を出てゆく春の海      光太郎(奥・鋼)

09 雨音に覚め満身の花疲れ       春休(マ・明・こ・案・タ・ぐ・佳)

10 蘇鉄並木なべて暮春の日を受けて   高弘

11 昼飯は五種のサプリや新社員     マンネ(木・光・奥・佳)

12 ふくらはぎの筋肉凛々し阿国の忌   ぐり(第)

13 段落を二つとばすや目借時      木人(マ・時・益)

14 皇の諱を決めて万愚節        一斗

15 椿咲く島の灯りや沖泊まり      時人

16 入園の雨傘頼りなさげなる      みなと(時)

17 茶頭なく八十八夜すすりあう     誠章

18 俳人と彫られ墓石春うれひ      高弘

19 花の下いつまで鬼でゐるのやら    佳子(マ・明・こ・一・奥・順・春)

20 春愁と回転木馬に相乗りす      明治(佳・三)

21 いたいけの児等の遊びやすみれ草   案山子

22 卒業す進学組と就職組        光太郎

23 富士霞む東照宮はまだ遠し      順一

24 空ばかり映す鏡の蜃気楼       一斗

25 清濁をあわせ源平しだれ桃      益太郎

26 鳥交る水辺の波紋幾重にも      ひろ子(光)

27 マーチングバンドの予行演習(リハ)や桜まじ 明治(タ・春)

28 時差ぼけに眩しき富士よ桜狩     こげら

29 棚田かな田植え未だの田終へたる田  高弘(案)

30 野遊やデニムの裾を巻上げて     時人(木・明・愛)

31 初蝶のまだ下描きのやうな翅     佳子(マ・木・明・こ・ル・時・第・愛・益・ぐ・三・春)

32 花筵何が何でも死守せよと      マンネ(高・益・佳)

33 花粉舞い八十八夜茶葉を吹く     誠章

34 スマホよりガラケー好きと亀鳴けり  益太郎(光・愛)

35 春愁の小さき鍵の鈴の音       ルカ(一・時・第・タ・高)

36 土くれが左目のうへ初蛙       タロー(時・愛・高・三・春)

37 お澄ましのボックス席や花衣     木人

38 吾が戸籍士族とありぬ西行忌     愛(順)

39 薄衣纏ふて寝釈迦山笑ふ       案山子(一・奥)

40 牡丹のふふめる尖(さき)のあをきかな 明治(佳)

41 チューリップ絵筆でペンでカメラでも 木人(益)

42 幾千の壺を沈めて蜃気楼       一斗(高・ぐ)

43 春北風や波止場にバイク乗り付けて  ぐり(一・タ)

44 通学の定期窓口入学子        つよし

45 シューベルトピアノソナタの余寒かな ルカ

46 大振のケーキにコーヒー花の雨    つよし

47 花筏千鳥ヶ淵を抜けられず      時人(案・三)

48 耳元に寄せて大声花筵        つよし(第)

49 パンジーや布の後ろの花壇かな    順一

50 うららかや分け合うて食ふオムライス マンネ(木・一)

51 山颪裾野を舐る厄日かな       第九(春)

52 花曇りビルはますぐに湯気吐いて   愛

53 階を風に抗ひ仏生会         第九(ル・三)

54 つばくろに咎められつつ御手洗    こげら(案)

55 春深し本に埋もれて本いづこ     春休(こ・ル・ぐ・鋼)

56 食べ終へて蕎麦湯待つ間や藤の花   タロー

57 口をつく恋の鼻歌春炬燵       第九(高・順)

58 春満月タビビトノ木を水上る     佳子(こ・ル・タ・ぐ)

59 擂鉢を膝でかかえて木の芽和     愛(木)

60 菜花咲き畑に魚粉の匂ひたる     タロー

61 金魚の子孵れば百千集ひけり     案山子(鋼)

62 水鉢のここは太平蛙の子       ひろ子(ル・鋼)

63 花の夜を先輩梅酒持参かな      春休(光)

64 設定のぼやける写真鳥帰る      順一

65 改元より総理変えたい春の泥     益太郎(愛・鋼)

66 春暁や行商人の集ふ駅        光太郎(マ・順) 




【 浅井誠章 選(誠) 】
(今回は選句お休みです。)

【 大越マンネ 選(マ) 】
○09 雨音に覚め満身の花疲れ
○13 段落を二つとばすや目借時
○19 花の下いつまで鬼でゐるのやら
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅
○66 春暁や行商人の集う駅

【 木下木人 選(木) 】
○11 昼飯は五種のサプリや新社員
○30 野遊びやデニムの裾を巻き上げて
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅
○50 うららかや分け合うて食うオムライス
○59 擂鉢を膝でかかえて木の芽和え

【 槇 明治 選(明) 】
○07 プリクラの長き横顔落第生  最近の画像加工技術には驚かされるが、よき記念写真になったかな。
○09 雨音に覚め満身の花疲れ  老いの春が身に沁むとき。
○19 花の下いつまで鬼でゐるのやら  春愁にも似た倦怠感がありそう。
○30 野遊やデニムの裾を巻上げて  素直でシンプル。
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅  はかなげな翅を下描きとは。

【 こげら 選(こ) 】
○09 雨音に覚め満身の花疲れ  花見の帰りの車中か家に戻ってからなのか、疲れて少しウトウト。目覚めると外は雨。酔いも覚め、体中に倦怠感が。「花疲れ」の感じがよく伝わってくる。
○19 花の下いつまで鬼でゐるのやら  子供の頃の記憶でしょうか。鬼ごっこの鬼、いつまでやらされるんだろう。追憶にあるのは桜の花の下のイメージ。雰囲気があり良いと思います。また鬼ごっこではなく、本物の鬼が嘆いていると読んでも面白い。
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅  ユニークな比喩。羽化したばかりでしょうか、翅の色の薄さや透明感も見えるよう。
○55 春深し本に埋もれて本いづこ  沢山の本に埋もれて探している本が見つからない。深まる春、草木が繁ってゆくイメージと重なり面白い。
○58 春満月タビビトノ木を水上る  初めて知りましたが変わった植物ですね。本句は心証風景でしょうか。滴るような春の満月の下、タビビトノキを水が昇ってゆく。不思議な力に導かれるかのよう。
 その他気になった句、
 07 プリクラの長き横顔落第生  ちょっと面白い。なぜ横顔なんだろう。
 26 鳥交る水辺の波紋幾重にも  千鳥などの水辺の鳥でしょうか。動く度に波紋が出来て重なる。描写がうまい。採りたかった句。
 36 土くれが左目のうへ初蛙  面白い着眼と思います。でも「が」が少し散文的な気がしました。
 40 牡丹のふふめる尖(さき) のあをきかな  丁寧な描写で心惹かれました。ただ、牡丹の蕾の先端は、私がネット上で写真を幾つか見た限りではどちらかと言うと花弁の色のようでした。実物を確かめたい。
 66 春暁や行商人の集ふ駅  もう少しクローズアップされた部分が見たかった。

【 森本光太郎 選(光) 】
○02 売れ残る屑の浅蜊がおしゃべりで  ユーモラスな俳句だと思います。
○11 昼飯は五種のサプリや新社員  新社員は心身ともに疲れます。
○26 鳥交る水辺の波紋幾重にも  「鳥交る」という表現に、インパクトがあります。
○34 スマホよりガラケー好きと亀鳴けり  簡単、単純なのが一番。
○63 花の夜を先輩梅酒持参かな  梅と桜。欲張りですね。

【 ルカ 選(ル) 】
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅 
○53 階を風に抗ひ仏生会     
○55 春深し本に埋もれて本いづこ 
○58 春満月タビビトノ木を水上る 
○62 水鉢のここは太平蛙の子 

【 石黒案山子 選(案) 】
〇04 堅香子やささめく風に耳傾げ
〇09 雨音に覚め満身の花疲れ
〇29 棚田かな田植え未だの田終へたる田
〇47 花筏千鳥ヶ淵を抜けられず
〇54 つばくろに咎められつつ御手洗

【 一斗 選(一) 】
○19 花の下いつまで鬼でゐるのやら
○35 春愁の小さき鍵の鈴の音
○39 薄衣纏ふて寝釈迦山笑ふ
○43 春北風や波止場にバイク乗り付けて
○50 うららかや分け合うて食ふオムライス

【 中村時人 選(時) 】
○13 段落を二つとばすや目借時
○16 入園の雨傘頼りなさげなる
○31 初蝶のまだ下書きのやうな翅
○35 春愁の小さき鍵の鈴の音
○36 土くれが左目のうへ初蛙
 他に気になった句は
 26 鳥交る水辺の波紋幾重にも
 44 通学の定期窓口入学子
 56 食べ終へて蕎麦湯待つ間や藤の花
 59 擂鉢を膝でかかえて木の芽和
 以上宜しくお願いいたします。

【 土曜第九 選(第) 】
○04 堅香子やささめく風に耳傾げ  早春の静かで美しい景色が伝わります。
○12 ふくらはぎの筋肉凛々し阿国の忌  マラソン選手はふくらはぎで練習量が分かるらしいです。小出監督合掌。
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅  これからへの期待が膨らむ夢を感じる句です。
○35 春愁の小さき鍵の鈴の音  頼りなげな音が季語と合っていると思いました。
○48 耳元に寄せて大声花筵  車椅子を押して「きれいだね」と話し掛けている様子が目に浮かびます。

【 奥寺ひろ子 選(奥) 】
○06 串焼きのどれがどれやら花の雨  宴もたけなわ、もう何の串焼きかさえ不明に、雨さえもふりだして。
○08 若者は島を出てゆく春の海  新しい門出です。
○11 昼飯は五種のサプリや新社員  時代は変わりましたね。
○19 花の下いつまで鬼でいるのやら  結構鬼を楽しんでいるのかも。
○39 薄衣纏ふて寝釈迦山笑ふ  春ですよ。御釈迦様

【 滝ノ川愛 選(愛) 】
○30 野遊やデニムの裾を巻上げて  見たままの素直な表現が好きです。
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅  まだ濡れているのでしょうか、”下描きのやうな”でよく表現されています。
○34 スマホよりガラケー好きと亀鳴けり  スマホとかガラケーはダメという結社もありますが、そろそろ良いのでは。「亀鳴く」のとぼけた季語が合ってます。
○36 土くれが左目のうへ初蛙  私も見たことがあります。”左目のうへ”は良く見ましたね。
○65 改元より総理変えたい春の泥  時事俳句ですね。よくぞ詠んで下さった!「春の泥」がいいですね。

【 小林タロー 選(タ) 】
○09 雨音に覚め満身の花疲れ  満身の疲れは、楽しさ満喫の裏返しであろう。
○27 マーチングバンドの予行演習(リハ)や桜まじ  桜真風(まじ)で明るく楽しいけれども一心不乱の様子が表現された。
○35 春愁の小さき鍵の鈴の音  小さき鍵の小さき鈴の音。大した愁いではあるまい。
○43 春北風や波止場にバイク乗り付けて  乗り付けるで、昭和の日活映画(きっと白いマフラーをしているな)のイメージがわいた。
○58 春満月タビビトノ木を水上る  タビビトノキはじめて知りました。紅梅の紅の通へる幹ならん 虚子 を思い出しますが、満月が水を吸い上げているようで面白いです。

【 森 高弘 選(高) 】
○32 花筵何が何でも死守せよと  花見の事情。大袈裟なところがまた良い。
○35 春愁の小さき鍵の鈴の音  春愁で片付けてよいかどうかは疑問が残るがどこの鍵かを知りたくなる。
○36 土くれが左目のうへ初蛙  逃げずに初蛙とにらめっこ。
○42 幾千の壺を沈めて蜃気楼  何がどうかということではないが、どんな所以なのか聞いてみたい。興味をそそる句。
○57 口をつく恋の鼻歌春炬燵  口と鼻がどっちつかずになっているのが気になる。しかし春炬燵で「忘れたいのに」という気持ちが透けて見えたのが良かった。

【 石川順一 選(順) 】
○05 春宵のゾンビ活躍するドラマ  季語は「春宵」。想像力を掻き立てられます。季語も合っているのではないでしょうか。
○19 花の下いつまで鬼でゐるのやら  季語は「花」。「鬼」が象徴的な意味を持っているようで興味深い句だと思いました。「いつまで」と言う呆れかえったような表現も句の効果を高めて居るかと。
○38 吾が戸籍士族とありぬ西行忌  季語は「西行忌」。発見の句。主情と客観的な事実の混交が絶妙な句。
○57 口をつく恋の鼻歌春炬燵  季語は「春炬燵」。恋の鼻歌は永遠の序章なのかもしれませんが、思わず口を突いて出る。
○66 春暁や行商人の集ふ駅  季語は「春暁」。行商人が集う駅は何かちょっとミステリアス。

【 川崎益太郎 選(益) 】
○02 売れ残る屑の浅蜊がおしゃべりで  出来が悪いのに、口だけは達者という、面白い句。
○13 段落を二つとばすや目借時  有り勝ちの句であるが、「段落」が、面白い。
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅  「まだ下書き」が、上手い。
○32 花筵何が何でも死守せよと  社長命令。命令形が面白い。
○41 チューリップ絵筆でペンでカメラでも  絵、俳句、写真を上手く表現した。

【 草野ぐり 選(ぐ) 】
○09 雨音に覚め満身の花疲れ  花疲れの半分は人疲れ。目が覚めても気だるさにうとうとしている感じがいかにも春。
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅  頼りなさと初々しさ。まさに下描き。絶妙なたとえだ。
○42 幾千の壺を沈めて蜃気楼  これは心象風景だと思う。幾千の壺に何が入っていたのか。どこか寂寥感漂う。
○55 春深し本に埋もれて本いづこ  心当たりがある人がたくさんいるのでは。春深しがそんな状況をしみじみしちゃっているようで可笑しい。
○58 春満月タビビトノ木を水上る  タビビトノキを知らず調べました。旅人の飲み水を供給したり、コンパスの役割を果たすとか。水上るが効いている。ひっそりとまだ来ぬ旅人を待っているみたいだ。

【 水口佳子 選(佳) 】
○09 雨音に覚め満身の花疲れ  満開の花を味わった高揚感が、眠っている間もおさまらないといった感じか。身体は疲れ切っているのにふとした雨音に脳が覚醒してしまう。
○11 昼飯は五種のサプリや新社員  今どきの若者はこうなのか。マニュアル通りに話す店員さん等見ていると、ロボットのようだと思うこともあるが、食べ物も燃料補給のようで。
○20 春愁と回転木馬に相乗りす  春愁と回転木馬は、ややつき過ぎかとも思ったが〈相乗りす〉が上手いと思う。私は回転木馬には酔いますが。
○32 花筵何が何でも死守せよと  その昔、新社員は花見の場所取りで大変だった。中7、下5の措辞がおかしくて、ちょっとかわいそう。
○40 牡丹のふふめる尖のあをきかな  「白藤やゆりやみしかばうすみどり」のように、対象をじっと観察してできている句だと思う。〈ふふめる〉につぼみのまろやかさ、〈尖〉という字も考えてある。

【 三泊みなと 選(三) 】
○20 春愁と回転木馬に相乗りす 
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅 
○36 土くれが左目のうへ初蛙 
○47 花筏千鳥ヶ淵を抜けられず 
○53 階を風に抗ひ仏生会

【 鋼つよし 選(鋼) 】
○08 若者は島を出てゆく春の海  春の海には独特の赴きがある。
○55 春深し本に埋もれて本いづこ  実感がある。
○61 金魚の子孵れば百千集ひけり  老若の集いを思う。
○62 水鉢のここは太平蛙の子  一茶のまなざしにもにて。
○65 改元より総理変えたい春の泥  卆直な気持や良し。
  以上お願いします。

【 小川春休 選(春) 】
○19 花の下いつまで鬼でゐるのやら  かくれんぼか鬼ごっこと思いましたが、どちらかというとかくれんぼですかね。私は、子供と親(もしくは祖父母)で遊んでいて、親がずっと続けて鬼をさせられている場面を想像しました。
○27 マーチングバンドの予行演習(リハ)や桜まじ  リハですから、まだ観客はほとんど無いですが、本番さながらの演奏が行われている。吹き過ぎる桜南風とマーチングバンドの勢いとが、景を活き活きとしたものにしています。
○31 初蝶のまだ下描きのやうな翅  本当に生まれたての、まだ全身がへなへなしている初蝶の様子が目に浮かぶ。それにしても「下描き」とは的確な比喩。
○36 土くれが左目のうへ初蛙  「初蛙」という季語は、その鳴き声を愛でる句が多いような気がしますが、この句では実体をよく見て、ディテールを掴む事に成功している。小さな蛙の左目の上の小さな小さな土くれ。ミクロな景が拡大されたかのように見えてくる。
○51 山颪裾野を舐る厄日かな  景が大きく、吹き荒れる山颪の様子を擬人化を用いて活き活きと描き出していると思います。
 03 春の雪吾より若き父の写真  内容はよく分かる、共感もしますが、下五の字余りが締まらないように感じる。私なら上下を入れ替えて、「写真の父吾より若し春の雪」としたい。「童子」ではおなじみの、「字余りにするならなるべく上五」ですね。
 05 春宵のゾンビ活躍するドラマ  面白い句材だが、季語が効いているか疑問。中七下五の叙述も説明的に感じるので、「ドラマにゾンビ活躍す」ぐらいの方が良いのではないでしょうか。
 06 串焼のどれがどれやら花の雨  上五中七、書かれてはいませんが、たくさんの人がいろいろな串焼きを注文した場面だろうな、と想像します。そこまでは良いのですが、季語が効いていないというか、季語の扱いが軽いように感じます。季語次第でとても良い句になりそうな気がします。
 10 蘇鉄並木なべて暮春の日を受けて  雰囲気はよく分かるのですが、叙述がやや緩いように感じる。「なべて」と「を受けて」は本当に必要か、適切な描写なのか。「蘇鉄並木に暮春の日」と言えばそれだけで充分伝わる内容ではないのか。残りの字数で違うアプローチ、違うニュアンスを加えることが出来るのではないかという気がします。ここから推敲を深めてほしい句です。
 12 ふくらはぎの筋肉凛々し阿国の忌  何でもより正確に、より具体的に表現した方が良いか、というと必ずしもそうでないのが表現の難しい所なのですが、私の好みから言うと、この上五中七は、「凛々しきふくらはぎ」程度の表現でもう充分のような気がします。それで仕立て直すと、「ふくらはぎ凛々し出雲の阿国の忌」。
 13 段落を二つとばすや目借時  本を読んでいる途中でついうとうとと…、という句ですね。二つ段落飛ばしちゃあ話がつながりませんよね。分かる分かる。
 15 椿咲く島の灯りや沖泊まり  雰囲気は何となく分かるのですが、夜、島に灯が見えて、沖泊まりとなると、せっかくの「椿」が全然見えなくないですか? 椿が咲いているのは知ってるけど実際には見えない、という状態では季語として弱い。
 16 入園の雨傘頼りなさげなる  いかにも入園児童らしい、体がまだ小さくて傘の大きさを持て余しているような様子が見えてきます。
 20 春愁と回転木馬に相乗りす  くよくよしている友人と、「元気出せよ」と一緒に回転木馬に乗ったものの…、という場面ですね。採りたかった句なのですが、中八なのが残念。「回転木馬に」の「に」は不要と思いますがいかがでしょうか。
 28 時差ぼけに眩しき富士よ桜狩  なかなか面白い状況の句。中七、「富士の眩しき」とした方が、切れは無くなりますが、すんなり読めるように思います。
 30 野遊やデニムの裾を巻上げて  いかにも「野遊」らしい、気分の良い句です。
 34 スマホよりガラケー好きと亀鳴けり  十数年前は「携帯電話を持つか持たないか」ということが意見の分かれ目で、現在は「スマホとガラケーどっちが好きか」が意見の分かれ目になっている。大きく見ると、携帯電話自体はすっかり普及してしまっている、ということですね。
 35 春愁の小さき鍵の鈴の音  この語順では、鈴の音が小さいのか、鍵が小さいのか、鈴が小さいのか、はっきりしない。こういう曖昧な作りは、作者の意図しない誤読などを生み出すばかりで、損だと思います。たとえば「春愁の鍵の鈴の音(ね)小さかり」とすれば、鈴の音が小さかったのだとはっきり分かる。
 38 吾が戸籍士族とありぬ西行忌  「私は武士の娘です」が決めゼリフのキャラクターがつい先日までの朝ドラに登場してましたが、ああいう感じでしょうか。「西行忌」だと句全体があまりにも堅くなってしまうので、もっと可愛気のある季語の方がバランス的には良いような気もします。
 40 牡丹のふふめる尖(さき)のあをきかな  まだまだ堅いつぼみ。内容的にはそんなに目新しい発見がある訳ではありませんが、言葉に無理をかけず、きれいに仕立てられているおかげで、素直に景が見えてきます。
 42 幾千の壺を沈めて蜃気楼  何となく惹かれる句ではあるのですが、何の壺かよく分からない。たこ壺でしょうか、それとも壺をたくさん積んだ船でも沈没したのでしょうか。
 46 大振のケーキにコーヒー花の雨  これも「06 串焼のどれがどれやら花の雨」と同じく、今一つ季語が効いていないように感じます。「花の雨」という季語を、「花より団子」的な意図で用いているのでしょうか。それにしても何だかぴんと来ません。
 50 うららかや分け合うて食ふオムライス  気分としてもよく分かる句で、採りたかった句でもあるのですが、「オムライス」に対して「食ふ」が必要かと少し気になってしまい…(といって「食ふ」を省くと字数が…。推敲が必要ですね)。
 54 つばくろに咎められつつ御手洗  燕は鳴いているだけで咎めている訳ではないと思いますが(燕に危害を加えようとすれば咎められるかも…)、作者はそう感じたんでしょうね。ちょっと表現が大げさかな、と感じます。
 56 食べ終へて蕎麦湯待つ間や藤の花  蕎麦を食べ終えて蕎麦湯を待つ、ちょっと一息ついたところに窓外の藤の花に目をやった訳です。さりげない贅沢な時間ですね。私もこんな蕎麦屋に行きたい。
 59 擂鉢を膝でかかえて木の芽和  言わんとする所は分かりますが、「かかえて」が少々正確な表現ではないような気もします。「支へて」か、「押さへて」か、「挟んで」か…。擂鉢がかなり大きい物であれば、「かかえて」でOKなのかも知れません。
 60 菜花咲き畑に魚粉の匂ひたる  肥料として魚粉を撒いたのでしょう、匂いに生々しいリアリティを感じる。句の仕立ては、かな止めで「菜花咲き魚粉の匂ふ畑かな」とした方がまとまりが良い気がしますが、いかがでしょうか。
 66 春暁や行商人の集ふ駅  薬売りにしろ他の商品にしろ、電車移動では運べる量が少ないので、現代の行商人は自動車を使用すると思いますが…。現代の景ではなく、回想の中の景を詠まれたのかも知れませんね。

 

 


次回の投句は、5月15日までに、3句お送り下さい・・・・・・投句はこちら

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